ADR調停とは?ADRのメリットとデメリット(離婚調停との違い)!

ADR調停

日本においては、夫婦間で離婚協議がまとまらない場合、家庭裁判所に離婚調停を申し立てて離婚を目指すというルートが一般的になっています。

しかし近年は、離婚の解決方法としてADR調停が注目されるようになり、実際にADR調停を利用して離婚する夫婦も増加しています。

ADR調停とは

ADR調停とは、ADR(裁判に代替する紛争解決の手続き)による、第三者を交えた夫婦の話し合いの手続き(調停)です。

家庭裁判所という公的機関以外が行う調停であることから、「民間調停」とも呼ばれます。

家庭裁判所の離婚調停は、離婚紛争を解決する方法として定着していますが、申立てから離婚するまでに相当な時間を要するなどのデメリットも少なくありません。

ADR調停は、離婚紛争をよりスピーディーに解決することができるなど、離婚調停のデメリットをカバーする方法として注目されています。

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ADRとは

ADRとは、裁判手続以外の紛争解決方法の総称です。

裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(ADR法)では、以下のとおり規定されています。

訴訟手続によらずに民事上の紛争の解決をしようとする紛争の当事者のため、公正な第三者が関与して、その解決を図る手続

(裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律第1条)

英語では「Alternative Dispute Resolution」と表記し、日本語では英語の頭文字を並べてADRと表記されるか、「裁判外紛争解決」、「代替的紛争解決」と訳されます。

ADRは、「当事者間による協議」と「裁判所で行う手続き」の中間に位置する手続きで、離婚紛争においては、「夫婦間の協議」と「離婚調停」の間に利用することが想定されます。

ADRには、調停、あっせん、仲裁があります。

種類 内容
調停

あっせん

当事者の間を調停人、あっせん人が中立的な第三者として仲介し、トラブルの解決についての合意ができるように、話し合いや交渉を促進したり、利害を調整したりする手続
仲裁 当事者の合意(仲裁合意)に基づいて、仲裁人で構成される仲裁廷が実案の内容を調べた上で判断(仲裁判断)を示し、当事者がこれに従うべきこととなる手段

引用:裁判外紛争解決手続(ADR)について|法律にかかわる様々なトラブルの相談・話し合いによる解決のサポートのかいけつサポート

ADR調停の流れ

ADR調停の一般的な流れは、以下のとおりです。

  1. 申立人:ADR実施機関に申込み(申立書などADR実施機関が規定する書類を提出)
  2. ADR実施機関:申立書などを受理、相手方へ照会書を送付
  3. 相手方:照会書に回答
  4. ADR実施機関:相手方が調停に応じる意向の場合は初回期日を指定、応じない意向の場合はその旨を申立人に伝えて終了
  5. 調停期日:申立人と相手方が調停人を交えて協議(1期日1~2時間程度)
  6. 調停終了:夫婦が合意すれば合意書作成、合意しなければ不成立、申立人が取り下げると取下げで終了

ADR実施機関によっては流れが異なることがあるため、事前確認が必要です。

ADR調停のメリット

ADR調停には、離婚調停と比較して以下のようなメリットがあります。

ADR調停のメリット1:解決までの期間が短くて済む

離婚調停の期日は、初回期日が申立ての約1ヶ月後、その後の期日もおおむね1ヶ月に1回のペースで入ります。

家庭裁判所の繁忙度によっては、期日が1ヶ月以上先に指定されることも珍しくありません。

ADR調停の場合、実施機関の状況により、申立てから2週間前後で調停の初回期日が入ることがあり、その後も期間を空けずに期日を入れることができます。

そのため、離婚調停よりも短い期間で離婚紛争を解決できることがあります。

ADR調停のメリット2:家庭裁判所の開庁時間以外に利用できる

離婚調停の期日は、家庭裁判所の開庁時間である平日の日中にしか入りません。

つまり、平日の午前8時30分から午後5時00分(期日が入るのは、おおむね午前9時00分頃から午後4時30分頃まで)の間だけです。

土日祝日や年末年始に期日を入れることはできず、働いている場合は、調停期日の度に休みを取得しなければなりません。

ADR調停の場合、実施機関によっては土日祝日でも調停期日を入れられるところがあり、働いている人の負担が少なくて済みます。

ADR調停のメリット3:調停委員の質のばらつきが少ない

離婚調停の課題の一つとされているのが、調停委員会を構成する家事調停委員の質です。

家事調停委員は、調停に一般市民の良識を反映させることを目的として、原則として40歳以上70歳未満の、社会生活上または職業上の豊富な知識や経験を持つ民間人が選任されます。

しかし、離婚調停を適切に運営できる調停委員ばかりではなく、偏見に基づく男尊女卑の発言を繰り返したり、自分の考えを当事者に押し付けたり、当事者の主張を曲解して相手に伝えたりするなど問題のある人が一定数います。

離婚に関する法律の知識が乏しい人や、当事者の話を聞かない人、当事者の話を聞くだけの人などもおり、中にはまともに話が通じない人や調停中に居眠りをする人もいます。

離婚調停では調停委員を選ぶことができないため、こうした質の悪い調停委員が担当になると調停自体が機能しなくなるおそれがあります。

ADR調停の場合、調停人を担当するのは家庭裁判所経験のある元裁判官や弁護士などが多く、知識不足の心配はほぼありません。

また、ビジネスとして調停を取り扱っている以上、担当者には最低限の対人マナーも備わっており、離婚調停ほど担当者の質に悩まされずに済みます。

ADR調停のデメリット

ADR調停のデメリットについても、離婚調停と比較しながら確認しておきます。

ADR調停のデメリット1:お金がかかる

離婚調停の場合、申立てにかかる費用は数千円程度です。

例えば、離婚調停のみを申し立てる場合の費用は、以下のとおりです。

  • 申立て費用:0円
  • 収入印紙代:1,200円
  • 郵便切手代:500円
  • 戸籍謄本取得費用:450円
  • 住民票取得費用:300円
合計:2,450円

離婚調停は、申し立てた後は期日の回数が増えても追加料金はかからないため、弁護士に依頼しなければ上記費用と交通費程度しかかかりません。

ADR調停の場合、申込費用に加えて1期日ごとに1~2万円の費用がかかるため、調停が長引くほど費用がかさみます。

また、原則として、相手方がADR調停に応じる意向を示した場合、相手方も利用料(実施機関によって名称は異なる)を支払わなければなりません。

そのため、事前にADR調停で離婚紛争を解決するという夫婦の合意をしておかないと、申し込んだけれど相手方が応じず、申込費用を支払って終了することになりかねません。

ADR実施機関の中には、費用面のデメリットを控えめに記載しているところがありますが、実際に利用する夫婦からすると大きなデメリットです。

ADR調停のデメリット2:調停前置主義が適用されない

調停前置主義とは、原則、訴訟を提起する前に調停を経ていなければならないという制度です。

引用:離婚ハンドブック

離婚訴訟を提起するには、離婚調停の申立てをして、「調停では離婚紛争解決には至らなかった」という結果を得る必要があり、調停を経ずに訴訟を提起しても手続きを進めることはできません。

家庭裁判所の離婚調停の場合は、不成立で終了すると調停前置の効力が生じ、離婚訴訟を提起できるようになります。

しかし、ADR調停は家庭裁判所の離婚調停とは別の手続きであり、ADR調停が不成立で終了しても調停前置の効力は生じません。

したがって、離婚訴訟を提起するには、あらためて家庭裁判所に離婚調停を申し立てて不成立で終了させる必要があります。

いくら費用と時間をかけてADR調停の期日を重ねても、不成立で終了した場合は、離婚調停を経ないと離婚訴訟を提起することはできません。

ただし、ADR法により認証を受けたADR実施機関のADR調停の場合、特例によって調停前置の効力が認められます(ADR法第27条)。

ADR調停のデメリット3:強制執行ができない

離婚調停で夫婦の合意ができると、合意内容が調停条項として調停調書に記載され、調停が成立します。

そして、調停条項(養育費や慰謝料など)の内容が守られない場合、調停調書を債務名義として強制執行手続きを行い、調停条項の内容を強制的に履行させることができます。

ADR調停の場合、夫婦の合意ができると合意書を作成しますが、合意書を債務名義として強制執行を申し立てることはできません。

強制執行を行うには、ADR調停で合意した内容について、別途、債務名義になる文言を加えた公正証書を作成しなければならないのです。

そのため、離婚調停よりも合意後の手間がかかりますし、「ADR調停では合意したけれど、公正証書の作成に応じない。」というケースも散見されます。

ADR調停の利用が離婚紛争解決に役立つ場合とそうでない場合

ADR調停は、全ての離婚紛争解決に適しているわけではありません。

ADR調停の利用が離婚紛争解決に役立つ場合

ADR調停が役立つ可能性があるのは、「夫婦関係が悪化して夫婦のみの協議は困難になっているものの、第三者を交えてであれば、話し合いで離婚紛争を解決する余地がある場合」です。

例えば、夫婦の一方が離婚に合意していない、夫婦で離婚の話し合いをすると感情的になってしまう、夫婦だけでは離婚に伴う条件面の整理ができないなどの場合は、ADR調停が選択肢の一つに入ります。

ADR調停は、離婚調停と同様、第三者を交えて夫婦の合意形成を目指す手続きであり、夫婦の合意さえできれば柔軟な取り決めが可能です。

また、調停人という第三者が仲介するため、感情的にならず落ち着いて離婚や離婚に伴う諸条件について考え、主張することもできます。

ADR調停の利用が離婚紛争解決に役立たない場合

ADR調停は民間が行う調停であり、離婚調停と同様、夫婦の合意がないと何も決めることができません。

したがって、夫婦間の紛争性が高く、互いに譲歩する気がなく協議による解決の見込みがない場合は、ADR調停を利用しても役に立ちません。

また、ADR調停の多くは、相手方も利用料を支払わなくてはならないため、夫婦がADR調停による離婚紛争解決に合意していないと、そもそも調停を開始することができません。

【参考】

離婚ハンドブック編集部

投稿者プロフィール

家事事件(離婚、遺産分割、成年後見など)を専門に取り扱って11年になります。
これまでの実務経験から、当事者自身が離婚に関する知識を得て、自分で考えて判断することが「後悔の少ない離婚」につながるという考えており、その考えに基づいて「離婚ハンドブック」を運営しています。
サイト上では詳細なプロフィールは明かしておらず、仕事の依頼も受けていません。

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