明石市の養育費立替えパイロット事業とは?背景にある養育費の状況は?

明石市 養育費立替えパイロット事業

離婚時または離婚後に取り決めた養育費を、支払い終期まで継続して受給できている家庭は限られています。

離婚時に養育費の取り決めができていない、取り決めたが不払いが生じて泣き寝入りせざるを得ないなど事情は様々ですが、養育費を受給できず子どもにかかる費用が支払えないという家庭は少なくなく、子どもの健全な成長にも深刻な影響を及ぼしています。

こうした状況下で兵庫県明石市が開始したのが「養育費立替えパイロット事業」です。

明石市の養育費立替えパイロット事業

養育費立替えパイロット事業とは、養育費の不払い対策として兵庫県明石市が試行を開始した事業です。

明石市は、「子どもを核としたまちづくり」を標榜し、子どもに関連する施策を次々と打ち出してきた自治体です。

例えば、全国の自治体で初めて「子どもの養育に関する合意書」を作成し、離婚時に養育費や面会交流を取り決めるよう促したり、面会交流の日程調整や交流当日の親子の引き合わせを行う面会交流サポートを行ったりしています。

今回、従前の施策で改善されなかった養育費不払いをターゲットとして新たに開始するのが「養育費立替えパイロット事業」です。

明石市は、パイロット事業として1年間実施した後で、本格導入の可否を検討するとしています。

養育費立替えパイロット事業の内容

養育費立替パイロット事業は、まず、希望者(養育費を受け取る権利がある人)が明石市にモニターの申込を行い、明石市がモニターを決定して保証会社と業務委託を行います。

その後、モニターと保証会社が養育費保証契約を締結(初回の保証料は明石市が負担)します。

そして、契約締結後に養育費の不払いが生じた場合は、保証会社が同居親に養育費の立替え払い(上限5万円)を行い、別居親(支払義務者)に立替え分を督促して回収します。

明石市が公表している保証期間や保証会社などは、以下のとおりです。

①保証期間

契約締結日から1年間

(2年目以降は更新料の自己負担により継続可)

②年間保証料

初回:養育費1か月分

更新:養育費0.5か月分

③保証内容

ひとり親家庭が受け取れなかった月の養育費を保証会社が立て替えて支払う(最大12か月分)

④保証会社

株式会社イントラスト(総合保証会社・一部上場)

⑤予算措置90万円(平成30年度当初予算)

引用:「明石市養育費立替パイロット事業」について

以上の流れをまとめておきます。

  1. 明石市が、申込者の中からモニターを決定する
  2. 明石市が保証会社に業務委託する
  3. モニターと保証会社が養育費保証契約を締結する
  4. 明石市が保証会社に初回の年間保証料を納める
  5. 取り決めた養育費が支払われなかった月は、保証会社がモニターに養育費相当分(上限5万円)を立替え払いする
  6. 保証会社が別居親(支払義務者)に立て替えた養育費を督促し、回収する

注意したいのは、明石市が不払い分の養育費を負担する制度ではないということです。

モニターと保証会社の民間契約を基本とする制度であり、明石市が負担するのは初回の年間保証料のみで、養育費が支払われなかった場合に明石市が負担することはありません。

モニター募集

現在、養育費立替えパイロット事業のモニターが募集されています。

明石市ウェブサイトに掲載されている募集要項は、以下のとおりです。

①期間

2018年11月から12月28日まで

(定員に満たない場合、期間後も受け付ける。)

②対象

離婚をしてこどもと明石市に居住しているひとり親で、以下のいずれかに該当

【Aグループ】

現に養育費の債務名義(※)を有する者

【Bグループ】

新たに養育費の債務名義

(公正証書を除く)を作成する者

※債務名義

強制執行によって実現されることが予定される請求権の存在、範囲、債権者、債務者を表示した公の文書

例:確定判決、調停調書など

③定員18名

(Aグループ6名、Bグループ12名)

④費用

無料

⑤募集

広報あかし11月1日号に掲載する。

⑥申込

市民相談室

⑦選考

聞き取りなどにより要件や遵守事項等について確認した上、

申込多数時は、公平を期すため、抽選とする。

引用:「明石市養育費立替パイロット事業」について

実施は2019年1月から

2019年1月に保証会社への業務委託が行われ、モニターが開始される予定です。

養育費の状況

明石市が、養育費立替えパイロット事業を開始したのは、養育費の不払いが深刻なレベルに達しているためです。

養育費の状況については、厚生労働省が公表している「平成28年度全国ひとり親世帯等調査の結果」で確認することができます。

全国ひとり親世帯等調査とは

全国ひとり親世帯等調査とは、福祉対策充実のための基礎資料を得る目的で、厚生労働省がおおむね5年ごとに実施する調査です。

「平成28年度全国ひとり親世帯等調査」は、2016年11月1日時点で調査が実施されました。

調査対象は、全国の母子世帯、父子世帯、養育者世帯のうち、平成22年国勢調査により設定された調査区から無作為に抽出された4,450調査区内の母子世帯、父子世帯、養育者世帯です。

種別 対象世帯数(有効回答世帯)
母子世帯 3,293(2,060)
父子世帯 653(405)
養育者世帯 60(45)

※熊本地震の影響により熊本県は調査未実施

養育費の取り決め状況

調査に対する有効回答の集計結果では、養育費の取り決め状況は以下のとおりとなっています。

取り決め
あり なし 不詳
母子世帯数

(割合)

780

(42.9)

985

(54.2)

52

(2.9)

父子世帯数

(割合)

64

(20.8)

229

(74.4)

15

(4.9)

調査結果では、離婚の方法別の取り決め割合も示されており、協議離婚した場合は、他の離婚方法で離婚した場合よりも養育費の取り決め割合が低くなっています。

また、取り決めをしなかった理由と最も多いのは、母子世帯が「相手と関わりたくない」、父子世帯が「相手に支払う能力がないと思った。」です。

養育費の受給状況

養育費の受給状況は、以下のとおりです。

受給中 受給歴 不詳
あり なし
母子世帯数

(割合)

442

(24.3)

281

(15.5)

1,017

(56.0)

77

(4.2)

父子世帯数

(割合)

10

(3.2)

15

(4.9)

266

(86.0)

18

(5.8)

父親(元夫)からの養育費の受給状況は、受給したことがない世帯が56.0%と半数以上を占めており、受給中が24.3%、過去の受給したことがある世帯が15.5%に留まっています。

母親(元妻)からの養育費の受給状況も、受給したことがない世帯が86.0%と圧倒的に多く、受給中は3.2%、受給したことがある世帯が4.9%と低い水準です。

また、調査時点で養育費を受給していない世帯が母子世帯で70%以上、父子世帯で90%以上に達しています。

養育費の金額

養育費を受給中または過去に受給歴がある母子世帯と父子世帯における養育費の金額(1世帯平均)は、以下のとおりです。

金額
定額 不定 不詳
母子世帯数

(割合)

(金額)

610

(84.4)

43,707

77

(10.7)

36

(5.0)

父子世帯数

(割合)

(金額)

20

(80.0)

32,550

3

(12.0)

2

(8.0)

養育費の状況

調査結果を概観すると、そもそも養育費を取り決めていない世帯が半数を超えており、その理由も母子世帯の場合は「相手と関わりたくない。」というネガティブなものであることが分かります。

養育費の取り決めがなされていない影響もあって、受給状況は、母子世帯も父子世帯も受給したことがない世帯が半数を超えています。

また、養育費を取り決めた後、途中で支払われなくなった世帯も一定数あることが確認できます。

つまり、子どもの健全な成長のために支払われるべき養育費ですが、取り決めすらせず離婚する夫婦が多く、取り決めても支払われなくなることがあるのです。

調査結果は、限られた対象世帯の回答を集計したものですが、養育費を取り巻く大まかな状況を把握する意味で確認しておく意味はあるでしょう。

【参考】

離婚ハンドブック編集部

投稿者プロフィール

家事事件(離婚、遺産分割、成年後見など)を専門に取り扱って11年になります。
これまでの実務経験から、当事者自身が離婚に関する知識を得て、自分で考えて判断することが「後悔の少ない離婚」につながるという考えており、その考えに基づいて「離婚ハンドブック」を運営しています。
サイト上では詳細なプロフィールは明かしておらず、仕事の依頼も受けていません。

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