離婚前に別居する方法と生活費や住民票は?児童扶養手当は受給できる?

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近年、離婚する前に別居する夫婦が増加しています。

配偶者のDVやモラハラから逃れるためなどやむを得ない事情がある場合に加え、離婚裁判では別居期間が離婚が認められるか否かのポイントの一つとなるなどのメリットを意識して別居を選択する人が増えているためです。

しかし、夫婦間の合意なく別居すると「悪意の遺棄」を理由として慰謝料を請求されることがありますし、子連れ別居を強行すると「連れ去り」と認定され、子どもの親権争いで不利になることがあります。

また、別居中の婚姻費用分担も夫婦間で協議して決めることができず、家庭裁判所で決めても支払われない可能性が高くなります。

つまり、円滑に離婚するために別居から離婚することをしたにも関わらず、余計に夫婦関係をこじらせたり、不利な立場に追い込まれたりするなどデメリットもあるのです。

したがって、正しい別居理由や方法を理解した上で別居することが大切になります。

離婚前に離婚するメリット

日本では協議離婚制度が設けられており、夫婦が離婚に合意し、離婚届が市区町村役場で受理されることで離婚が成立します。

つまり、離婚前に別居期間がなくても、夫婦間に離婚の合意さえあれば離婚することができるのです。

しかし、離婚前に別居することで得られるメリットを重視して、別居してから離婚するという選択をする人が増えています。

別居のメリット:離婚後の準備ができる

離婚後の住まいの確保は、離婚するまでにやっておきたいことの一つです。

実家に帰る、婚姻中の自宅に住む、賃貸住宅に住む、公営住宅に住む、自宅を購入するなどの選択肢がありますが、最も多い賃貸住宅に住む選択をする場合、離婚前から準備しておきたいものです。

また、離婚前に別居して離婚後の住まいで一定期間生活し、離婚後の職場や子どもの学校を探すなど周辺環境に慣れておけば、離婚後に慌てて新しい生活をスタートさせずに済みます。

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別居のメリット:離婚裁判では「別居期間」が重要になる

裁判離婚で離婚が認められるには、法定離婚事由があり、夫婦の婚姻が破綻していることが認定される必要があります。

民法上、婚姻した夫婦には同居・協力・扶助義務が課されているため、別居した夫婦は同居協力扶助義務を放棄したとみなされ、同居中と比較して夫婦関係が破綻していると認定されやすくなるのです。

婚姻の破綻が認定されるために必要な別居期間

判例を確認すると、別居期間が長く、その間の夫婦の関わりが乏しいほど婚姻の破綻が認定される傾向があります。

婚姻の破綻が認定される平均的な別居期間は5年間です。

ただし、別居期間が10年間以上でも離婚が認められていない判例もあれば、約2年間で認められている判例もあり、個々の事案によって大きな差があります。

また、いくら別居期間が長くても、民法に規定された法定離婚事由が認められない場合、離婚裁判で離婚が認められることはありません。

別居のメリット:離婚に応じない相手に離婚を意識させる

配偶者に離婚したいと伝えても応じてもらえない場合や真剣に取り合ってもらえない場合、別居することで状況が動くことがあります。

同居したまま離婚したいと言い続けても、配偶者が応じる可能性は低く、調停や裁判で離婚を目指しても、離婚に対する「本気度」が疑われます。

別居をすることで、配偶者が「本気で離婚する気かもしれない。」という危機感を抱いたり、気持ちを離婚に切り替えて協議に応じたりすることがあります。

また、家庭裁判所の調停や裁判で離婚を主張する場合、別居していることが離婚を主張する側のスタンダードであり、調停委員や裁判官に離婚する意思を暗に示すことにもつながります。

別居の準備と方法

別居すると決めた後は、別居に向けた準備を開始します。

夫婦間で別居の合意をする

別居するのは何らかの原因で夫婦関係が悪くなったためであり、関係の悪い配偶者に黙って別居したい気持ちは分かりますし、事情はあると思います。

しかし、配偶者に無断で別居を強行することは常識的に考えて望ましいことではありませんし、夫婦関係をより一層悪化させて離婚自体が困難になったり、「悪意の遺棄」を理由に慰謝料を請求されたりする可能性があります。

このように、夫婦の合意なく別居することにはデメリットが多いため、別居する前に夫婦で十分に話し合い、お互いに納得した上で別居するのが原則です。

また、別居中に誰が子どもを監護するか、別居中の生活費(婚姻費用分担)、住民票を移動させるかどうかも協議しておきましょう。

別居後の住まいを決めておく

夫婦間で別居の合意ができても、住む場所がないと別居することができません。

同居中の自宅、子どもの学校、職場、実家からの距離、家賃、間取りなどを考慮し、別居前に住まいを決めて契約を済ませておくのが理想的です。

実家に帰ることを希望する場合、事前に受入れの可否を確認しておく必要があります。

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別居後の収入源を確保しておく

別居後の生活を安定させるには、住まいとともに収入源の確保が欠かせません。

配偶者に婚姻費用分担を請求することはできますが、それだけでは同居中と比較すると生活水準が低くなることが多いため、自ら働くことを検討することになります。

同居中に専業主婦(主夫)やパート・アルバイト勤務をしていた場合、別居する前に仕事を探して働き始めるか、別居後すぐ働くことができるよう準備しておきましょう。

なお、実家の親が健在の場合、実家から援助が受けられるかどうかも確認しておきます。

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別居中に利用できる支援制度を確認しておく(別居中の児童扶養手当)

離婚後に利用できるひとり親家庭向けの支援制度の中には、一定の要件を満たすことで別居中でも利用できるものがあるため、事前に確認しておきましょう。

例えば、児童扶養手当は、「父(または)母が法令により引き続き1年以上拘禁されている児童・あるいは父(または母)がDV防止法の保護命令を受けた児童」などの要件を満たす場合も支給されます。

つまり、父または母が未決交流中や服役中の場合や、父または母が保護命令を受けている場合などは、別居中でも児童扶養手当を受給することができるのです。

各自治体が独自に設けている制度の中にも、別居中に利用できる制度があるため、住んでいる自治体に確認してください。

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離婚前に別居することが望ましいケース

夫婦関係や家庭環境などによっては、別居することが望ましいケースもあります。

配偶者からDVやモラハラを受けている

配偶者からDVやモラハラを受けている場合、同居を継続すると心と身体に危害が及ぶため、早急に別居を検討して実行することが望ましいです。

配偶者に離婚したいと伝えても、夫婦間で合意ができる見込みは乏しく、より酷いDVやモラハラの被害に遭う危険が高いでしょう。

そのため、まずは別居して安全と安心が得られる環境へ避難し、心と体の傷を癒してください。

離婚について協議するのは、心と体の傷が回復し、配偶者と対等に話し合うことができるだけの準備をした後です。

また、DVやモラハラを理由に離婚を求める場合や、慰謝料請求や刑事告訴を検討する場合は、DV被害を証明する資料として医師の診断書など証拠を残しておくことが大切です。

配偶者から子どもが虐待を受けている

配偶者から子どもが虐待されている場合も、早急に子どもを連れて安全な場所へ避難する必要があります。

夫婦間の合意がないまま子どもを連れて別居すると、配偶者から「子どもの連れ去り」を主張される可能性があるため、虐待の証拠を収集しておくことが大切です。

夫婦間で離婚協議ができない場合

夫婦間で離婚の合意はできているものの、子どもの親権や養育費などの条件面で折り合わず、協議する度に激しく対立する場合も、別居を検討するケースです。

同居したまま協議を継続しても協議離婚ができる見込みは乏しく、むしろ、夫婦仲がより険悪になって協議自体が困難になる可能性もあります。

また、夫婦間に子どもがいる場合、子どもの前で夫婦喧嘩を繰り返すと強いストレスを与えることになってしまいます。

別居することで、夫婦がお互いに落ち着き、自分が置かれた状況を踏まえて離婚について冷静に考え直すことができます。

別居中の配偶者に連絡先を伝えるべきか

「別居した配偶者に連絡先を伝えたくない。」という人は多いものです。

しかし、原則として別居中であっても配偶者に連絡先を伝え、夫婦間の連絡手段の確保しておくべきです。

離婚協議を行うために必要ということもありますが、それ以外にも子どもの急病や入院、面会交流の調整、婚姻費用が支払われなかった場合の催促など、別居中でも夫婦で連絡を取り合うことがあるためです。

また、別居中の連絡を完全に拒否すると、反感を招き、離婚協議が難航する原因を作ることになりかねませんし、配偶者の気持ちや対応が把握しにくくなるのも困ります。

最低限の連絡ができるよう、電話番号、メールアドレス、LINEのアカウントなどのうち1つを教えておきましょう。

連絡先を伝えるべきではない場合

例外的に、別居中の配偶者に連絡先を伝えるべきではない場合もあります。

  • DVやモラハラ被害に遭っていた
  • 迷惑電話などを繰り返された経験がある
  • つきまといや住居への侵入などの危険がある
  • 子どもを奪い返される可能性がある

このように、連絡先を伝えることで本人や子どもに危害が及ぶ可能性がある場合は、連絡先を伝えるべきではありません。

注意したいのがSNSです。

夫婦間の連絡手段としてLINEやTwitterなどを使用している場合、ホーム画面やタイムラインに画像を投稿すると、背景に移り込んだ建物などから現住所を割り出される可能性があります。

配偶者に居場所を探されている場合などは、SNSの使用を中断するか、新しくアカウントを作り直してください。

別居中の生活費(婚姻費用分担)

婚姻中の夫婦は、お互いに協力・扶助する義務があり、また、婚姻生活にかかる費用(婚姻費用)を分担する義務があります。

いずれの義務も法律上の婚姻が継続している限り、同居か別居かに関わらず夫婦の両方に課されています。

これらの義務に基づいて、収入が少ない夫または妻は、夫婦のうち収入が多い夫または妻に対して婚姻費用を請求することができます。

婚姻費用分担を請求する方法には、夫婦の協議と家庭裁判所の調停または審判があります。

夫婦の協議

まずは夫婦で別居中の婚姻費用について協議し、お互いの収入や支出、どちらが子どもを監護するかなどを踏まえて、分担額や支払日などを決めます。

決めておきたい内容は、以下のとおりです。

  • 婚姻費用分担額(原則として月額)
  • 支払いの開始月と支払日
  • 支払方法
  • 支払いが滞る場合の対応

夫婦で婚姻費用分担の合意ができた場合、できる限り合意内容を公正証書に残しておきましょう。

夫婦の合意のみでは口約束に留まるため、別居後に「そんな約束をした覚えはない。」と開き直られてしまうリスクがあります。

合意内容を公正証書に残しておくことで、相手が支払いを中断した場合に、強制的に支払わせる手続きを利用することができます。

ただし、公正証書の作成には数万円の費用がかかるため、月々の婚姻費用の額を踏まえて検討してください。

家庭裁判所の調停を利用する

夫婦間の協議で合意ができない場合、家庭裁判所に婚姻費用分担の調停を申し立てて協議することができます。

夫婦の合意ができると調停が成立し、合意内容が調停調書という書面に記載されます。

調停調書に記載された内容が守られなかった場合、調停調書の内容に基づいて家庭裁判所が支払いを促す履行勧告という手続きや、強制的に支払わせる強制執行の手続きを利用することができます。

家庭裁判所の審判を利用する

調停でも夫婦の合意ができない場合、調停は不成立で終了して自動的に審判手続きに移行します。

審判では、家庭裁判所が夫婦の収入、子どもの人数、年齢などを踏まえて婚姻費用の分担額を決定します。

なお、調停を経ずに審判を申し立てることもできますが、家庭裁判所が先に調停をすべきであると判断した場合、調停の手続に移されることになります(付調停)。

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婚姻費用の算定方法

夫婦の協議や家庭裁判所の調停で婚姻費用の分担額を決める場合、夫婦が合意した分担額が支払われます。

ただし、調停においては、明らかに高すぎる分担額を請求したり、婚姻費用を支払わないと主張したりすると、調停委員から収入などに応じた分担額を検討するよう促されます。

夫婦間で合意ができない場合、調停委員が、婚姻費用分担の算定表というツールに夫婦の収入や子どもの人数を当てはめて標準的な分担額を算出し、調停案として夫婦に打診します。

審判の場合、婚姻費用分担の算定表を参考にしながら、各夫婦の事情を踏まえて分担額が決定されます。

別居中の住民票

別居して住む場所が変わったら、原則として、住民票を移さなければなりません。

別居に伴って子どもを転校させる場合、転校手続の中で学校から新しい住民票の提出を求められます。

ただし、配偶者のDVが原因で別居したなど別居後の住所を相手に知られたくない場合は、住民票を移さないで残しておくか、実際に住んでいる住所以外の地域に住民票を移すことを検討します。

実際の住所以外の地域に住民票を移す場合、勤務先、学校、賃貸住宅のオーナーなど住民票の提出先に事情を説明し、配慮を求めなければなりません。

学校については、近年、子どもの転校や校区外通学、住所の秘匿などに柔軟な対応を見せるようになっており、住民票について相談しやすくなっています。

また、配偶者からのDVやストーカー行為、児童虐待などの被害を受けている場合、市区町村役場にDV等支援措置の申出を行うことにより、配偶者が住民票の写しを取得できなくなるなどの制限をかけることができます。

DV等支援措置の申出方法

DV等支援措置を申し出るには、DV被害者などが、警察や配偶者暴力相談支援センターなどに相談した上で、DV等支援措置申出書を提出し、相談機関に相談機関の意見を記載してもらいます。

その後、相談機関の意見が付された申出書を市区町村役場に提出すれば、審査の上で支援措置を講ずるかどうかが決定されます。

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子連れ別居と違法な連れ去り

夫婦間に子どもがいる場合、婚姻中は夫婦が共同して子どもの親権を行使することになります。

そのため、夫婦間に別居の合意がないにも関わらず無断で子連れ別居に踏み切ると、「違法な連れ去り」と認定されて子どもを連れ戻されたり、配偶者が子どもの監護者に指定されて親権争いで不利になったりします。

少し前までは、夫婦間の合意がないまま子連れ別居しても、多少強引に子どもを連れ去ったとしても、「子連れ別居して子どもの監護を継続していれば、離婚時に親権者になることができる。」という状態でした。

つまり、「連れ去った者勝ち」の状態だったわけです。

しかし、日本がハーグ条約に加盟する動きを見せる中で、家庭裁判所が「違法な連れ去りで子どもの監護が開始された場合、監護の継続性として正当化せず、別居前の監護状況に戻した上で改めて監護者や親権者を判断する。」という方針を打ち出しました。

そして、ハーグ条約に加盟した後は、「子連れ別居の原因を早急に確認し、違法な連れ去りが認められる場合は、子どもを別居前の状態に戻す。」という判断が示されるケースが増えています。

以上を踏まえると、別居前に子どもの監護について夫婦間で協議して合意しておく必要があることが分かるでしょう。

なお、夫婦で子どもの監護者を決めることができない場合、家庭裁判所の「子の看護者の指定」の調停または審判を利用して決めることができます。

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別居の強行と慰謝料請求

配偶者の反対を押し切って別居を強行した場合、配偶者から「悪意の遺棄」を理由に慰謝料を請求されることがあります。

悪意の遺棄とは、法定離婚事由の一つで、悪意を持って家族を見捨てて顧みないことです。

別居の強行が、夫婦の同居・協力・扶助義務を破って配偶者を悪意を持って見捨てたとみなされると、慰謝料を支払わなければならなくなります。

特に、夫婦のうち収入の多い夫または妻が別居を強行し、別居後に婚姻費用も分担しない場合は、悪意の遺棄と認定される可能性が高くなります。

別居と浮気(別居前の浮気と別居後の浮気)

別居前後で配偶者以外の異性と親密な関係になるケースもありますが、浮気の時期が別居前か別居後かによって影響の度合いが異なります。

別居前に浮気した場合

別居前に浮気をして、浮気が原因で配偶者と対立して家を出たり、浮気相手の元へ駆け込んだりした場合、法定離婚事由の「不貞」や「悪意の遺棄」により夫婦関係を破綻させた有責配偶者と認定される可能性が高くなります。

その結果、離婚請求の条件が厳しくなりますし、不貞や悪意の遺棄に対する慰謝料請求をされて経済的に困窮することもあります。

別居後に浮気した場合

通常、夫婦が別居した時点で夫婦関係が破綻したとみなされることが多く、別居後に浮気をして発覚したとしても、必ずしも浮気が原因で夫婦関係が破綻したと認定はされるとは限りません。

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ただし、離婚直後に浮気が発覚したり、通信記録などにより別居前からの浮気が確認されたりした場合、別居前に浮気した場合と同様のリスクが生じます。

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離婚ハンドブック編集部

投稿者プロフィール

家事事件(離婚、遺産分割、成年後見など)を専門に取り扱って11年になります。
これまでの実務経験から、当事者自身が離婚に関する知識を得て、自分で考えて判断することが「後悔の少ない離婚」につながるという考えており、その考えに基づいて「離婚ハンドブック」を運営しています。
サイト上では詳細なプロフィールは明かしておらず、仕事の依頼も受けていません。

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