別居調停とは?別居調停のメリット・デメリットとその後(成立後)!

別居調停

夫婦関係に関する調停として、離婚調停と円満調停以外に別居調停というものがあります。

別居調停は、その名のとおり別居について夫婦で話し合うことを求める調停です。

もしかすると、夫婦の別居を決めるだけの単純な調停だと思うかもしれません。

しかし、離婚を前提とした別居か否か、誰が家を出ていくのか、子どもは誰が引き取るのか、別居期間中の婚姻費用はどうするのかなど協議すべき点が多く、調停の経過によっては夫婦間の対立が深まるリスクもあります。

別居調停とは

別居調停とは、夫婦関係が悪化して同居を継続することが困難または苦痛になった場合などに、当面の間の別居を求めて申し立てる家事調停です。

夫婦関係が修復不可能なほどに破たんすれば離婚調停を申し立てて離婚を目指し、配偶者への未練や修復可能性がある場合は円満調停を申し立てて関係修復を目指すのが一般的です。

また、夫婦が別居する場合に調停を申し立てる必要はなく、調停を経ずに別居を開始している夫婦の方が圧倒的に多数です。

離婚調停や円満調停ではなくあえて別居調停を申し立てるのは、主に以下のような事情がある場合です。

  • 別居中の子どもの監護や婚姻費用を公的な場で取り決めておきたい。
  • 既に別居を開始しているが、別居中の婚姻費用分担について夫婦間で合意できない。
  • 同居中の自宅から配偶者に出て行ってもらいたい。
  • 別居について配偶者と協議したいが、配偶者のDV(ドメスティックバイオレンス)やモラハラ(モラルハラスメント)が怖くて、1対1では協議できない。

また、「相手方との別居を求めるが、それが実現できない場合には同居中の約束事を決めたい。」と希望して別居調停を申し立てる人もいます。

別居調停という事件はない

家庭裁判所が取り扱う家事調停に、別居調停という事件類型はありません。

別居調停を希望する場合、夫婦関係調整(離婚)調停または夫婦関係調整(円満)調停を申し立て、調停の中で別居を主張します。

いずれの調停を申し立てても手続き、調停の流れや終わり方は同じですが、調停の相手方となる配偶者や調停委員に与える印象が大きく異なります。

つまり、離婚調停を申し立てた場合は「離婚を前提として別居を希望している。」という印象を与え、円満調停を申し立てた場合は「冷却期間を置くための別居を希望している。」という印象を与えます。

配偶者には調停期日に先立って調停の申立書などが郵送され、申立書には夫婦関係調整(離婚または円満)という事件名が表示されているため、離婚調停を申し立てた場合は、調停前から口論などになる可能性があります。

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別居調停のメリットとデメリット

別居調停のメリットとデメリットについて、離婚調停や円満調停と比較して確認しておきます。

別居調停のメリット

別居調停のメリットは、婚姻費用が確保できることと、夫婦が合意して別居した事実が残ることです。

別居調停のメリット1:婚姻費用が確保できる

別居自体は合意できても、別居中の婚姻費用で折り合わない夫婦は多いものです。

例えば、「自分の都合で別居するのだから、別居中の生活費は自分で何とかしろ。」などと言われ、やむなく婚姻費用を取り決めずに別居を開始する人が少なからずいます。

別居調停であれば、別居中の婚姻費用を当然の権利として主張できます。

また、調停でも合意が難しそうな場合は、別途「婚姻費用分担」調停を申し立てておけば、合意できない場合は自動的に審判移行し、裁判所に婚姻費用を決めてもらえます。

別居調停のメリット2:夫婦が合意して別居した事実が残る

離婚を視野に入れて別居を求める場合、別居調停成立によって「夫婦が合意して別居した事実」が残ること自体がメリットになります。

民法第752条には、夫婦の同居義務が規定されています。

夫婦は、単身赴任や長期入院などやむを得ない事情(正当な理由)がない限り、同居しなければならないのです。

正当な理由なく同居を拒否すると、「悪意の遺棄」という離婚原因を作った有責配偶者にされたり、慰謝料を請求されたりするリスクを抱えることになります。

しかし、別居調停が成立すると夫婦が別居に同意した事実が残るため、夫婦の合意なく別居したとして悪意の遺棄を主張されるリスクが下がります。

別居調停のデメリット

別居調停のデメリットは、時間と手間がかかることと、調停成立という事実が残ることです。

別居調停のデメリット1:時間と手間がかかる

夫婦関係調整調停事件は、離婚でも円満でも申立て費用は1200円、郵便切手が数百円で、費用面の負担は大きくありません。

一方で、申し立ててから第1回調停期日まで1ヶ月~1ヶ月半程度かかる上、その後は概ね1ヶ月間隔で調停期日が重ねられるため、相当な時間がかかります。

また、仕事をしている場合は、調停期日の度に家庭裁判所へ出向く手間も大きな負担となります。

別居調停のデメリット2:調停成立という事実が残る

離婚の前段階として別居を求める場合、別居調停が成立すること自体がデメリットとなります。

通常、夫婦が離婚するときは、まず夫婦の協議による離婚(協議離婚)を目指し、それができない場合は調停で離婚紛争の解決を図ります。

そして、調停でも解決できない場合は離婚裁判を起こし、裁判所に離婚を決めてもらうことになります。

しかし、離婚裁判を起こすには夫婦関係調整(離婚)調停が不成立または取下げで終了している必要があり、調停が成立した場合は離婚裁判を起こす要件を満たしません。

したがって、別居調停を成立させた場合は、その後、改めて離婚調停を申し立て、不成立または取下げで終了させなければなりません。

別居調停で協議する内容

別居調停で協議する内容は限定されていませんが、別居や別居中の生活に関する内容が中心となります。

  • 別居するか否か
  • 別居する場合は誰が出ていくのか
  • 別居中の生活費(婚姻費用)の金額、支払開始時期、支払期限など
  • 子どもを誰が監護するか
  • 別居中の面会交流の回数、場所、時間、夫婦の連絡手段など

別居調停の成立

当面の間、別居する旨の合意が夫婦間でまとまると、調停が成立します。

調停調書には、当面別居する旨の調停条項が記載されます。

例えば、申立人と相手方が当面別居し、その間の婚姻費用と面会交流を定めた場合の調停条項は、以下のとおりとなります。

1 申立人と相手方は、当分の間、別居する。

2 申立人は、相手方に対し、別居期間中の婚姻費用として、平成○○年○○月から別居の解消または婚姻の解消をするまで、月額○○万円を、毎月末日限り、○○銀行○○支店の相手方名義の預金口座(口座番号○○○○○○○)に振り込む方法により支払う。

振込手数料は、申立人の負担とする。

3 相手方は、申立人に対し、上記記載の長女と、月一回程度の面会交流することを認める。面会交流の日時、場所、方法等の具体的な内容については、子どもらの福祉を慎重に考慮して、当事者間で事前に協議して定める。

夫婦が別居に合意しても、民法上の同居義務を放棄することが認められるわけではありません。

したがって、「当分の間、別居する。」という調停条項は、夫婦が任意で別居することを事実上約束したに過ぎず、夫婦の一方が約束を破ったとしても別居を強制することはできません。

ただし、婚姻費用については給付条項であり、調停調書を債務名義として強制執行を行うことが可能です。

面会交流については、当事者、日程(回数、時間、泊付の有無など)、場所、引き渡し方法、連絡方法などを特定した条項を作成すれば、強制執行(間接強制)ができます。

配偶者を自宅から出て行かせたい場合

配偶者を自宅から出て行かせたい場合、夫婦間で合意ができれば、自宅から退去させる旨の調停条項を作成することもできます。

相手方は、平成○○年○○月○○日限り、別紙物件目録記載の建物から退去する。

この調停条項であれば、相手方が任意に退去しない場合、強制執行によって強制的に退去させることが可能です。

別居期間は「当分の間」

別居調停では、別居期間を明確に定めず、調停調書には「当分の間」とだけ記載します。

すでに書いたように、別居は、夫婦の同居義務という民法の規定を前提としつつ夫婦が任意で行うものであり、たとえ具体的な別居期間を決め、それが守られなくても強制執行はできません。

そのため、夫婦が具体的な別居期間を挙げて合意しても、調停調書には「当分の間」と記載されるのが一般的です。

離婚調停や円満調停を別居で成立させることはできるか

離婚調停や円満調停を、当面別居で成立させることもできます。

例えば、離婚調停において離婚するか否かで対立したものの、離婚裁判を起こしてまで離婚することには抵抗がある場合、当面別居と別居中の婚姻費用や面会交流を取り決めて調停を成立させることがあります。

円満調停についても、思うように円満解決の道筋が描けず、冷却期間を置くために別居する内容で調停を成立させることがあります。

その後(別居調停成立後)

別居調停成立後は、「当分の間、別居する。」という調停条項のとおり、夫婦が別居します。

調停成立時点で既に別居していればその状態を継続し、同居中であれば調停で合意した内容に従い、夫婦の一方が家を出て別居します。

退去する旨の調停条項がない場合は、夫婦の一方が別居に応じるか否かは任意であり、強制することはできません。

別居開始後は、調停で取り決めた内容に基づいて婚姻費用分担や面会交流が実施されます。

別居調停成立後の離婚調停・円満調停

別居調停が成立した後、「離婚したい。」、「夫婦関係を円満に修復したい。」と考えた場合、改めて夫婦で協議し、話がまとまらなければ夫婦関係調整(離婚または円満)調停を申し立てて話し合います。

調停には申立ての回数や頻度の制限は設けられていないため、別居調停成立後すぐに別の調停を申し立てることも可能です。

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離婚ハンドブック編集部

投稿者プロフィール

家事事件(離婚、遺産分割、成年後見など)を専門に取り扱って11年になります。
これまでの実務経験から、当事者自身が離婚に関する知識を得て、自分で考えて判断することが「後悔の少ない離婚」につながるという考えており、その考えに基づいて「離婚ハンドブック」を運営しています。
サイト上では詳細なプロフィールは明かしておらず、仕事の依頼も受けていません。

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