離婚調停や離婚訴訟を依頼した弁護士との接し方

離婚紛争について弁護士に依頼した場合、その弁護士と二人三脚で離婚まで辿り着くことが理想です。

しかし実際のところ、途中で依頼した弁護士との関係が悪化して契約を解消したり、弁護士側から解約を求められたりするケースが後を絶ちません。

弁護士側に問題があるケースも多いですが、依頼者側または双方の問題が原因で関係が悪化するケースも少なくありません。

この記事では、依頼した弁護士との関係性を良好に保つために、依頼者として気を付けておきたい点について解説します。

依頼した弁護士以外への相談は控える

依頼者と弁護士の関係は、契約で結ばれた仕事上の関係ですが、依頼者も弁護士も血の通った人と人との関係です。

そして、人と人との関係である以上、互いに相手を信頼しなければ良好な関係を築くことはできません。

例えば、ある弁護士に依頼したにも関わらず、セカンドオピニオンを求めて他の弁護士への相談を繰り返し、依頼した弁護士の意見や提案に対して「他の弁護士は〇〇と言っている。」と反論したら、依頼した弁護士はどう感じるでしょうか。

少なくとも「依頼者に信頼してもらえていない。」と思って依頼者に対する信頼感が揺らぐでしょうし、「依頼しておいて他の弁護士に相談するなんて失礼な。」などと依頼者に対して不快さや不満を抱く弁護士もいるでしょう。

「セカンドオピニオンを求めてはならない」というルールは存在しませんが、医療分野ほど一般的に浸透しているわけではありませんし、契約を結んでいるということもあり、他の弁護士に相談することに違和感を覚える弁護士は多いものです。

当事者として「本当に一人の弁護士だけに任せるのは不安がある。」と思うのは自然なことですが、弁護士に「この依頼者が希望どおりの離婚を実現できるよう尽力しよう。」と思わせるためには、依頼した弁護士を信頼することが大切です。

依頼前には十分に下調べをする

弁護士に対する不安を少なくするためには、依頼前に十分なリサーチをすることが重要です。

弁護士会、法テラス、ネット検索、「離婚サポート」などで弁護士を探し、以下の点を意識しながら弁護士と十分に話をして、信頼できるかどうかを見極めてください。

  • 親身になって話を聞いてもらえるか
  • 疑問、悩み、不安に対して具体的な解決策を提示してもらえるか
  • 説明が分かりやすく納得できるか
  • 気が合うか

また、事前に弁護士の経歴をネットなどで確認しておくことも大切です。

離婚弁護士の探し方や選び方については、関連記事で詳しく解説しています。

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離婚調停に弁護士は必要ない?メリットとデメリット、雇う時の選び方

弁護士に嘘を言わない、隠し事をしない

弁護士は、客観的な事実を把握した上で、法律に基づいて依頼者の利益と権利を守るために働きます。

前提となる事実は依頼者からの聴取が中心であり、仮に依頼者とその配偶者との主張が食い違っていたとしても、依頼者の言い分を信頼して手続を進めるのが基本です。

したがって、依頼者が弁護士に対して嘘をついたり、隠し事をしたりしていた場合、弁護士が間違った前提に立って手続きを進めることになってしまいます。

例えば、離婚原因が依頼者自身の浮気であるにも関わらず、弁護士には浮気を伝えず、配偶者のモラハラや浪費の問題ばかり伝えていた場合、弁護士は(浮気の事実を知らないため、)配偶者のモラハラなどが離婚原因だと主張し、強気の離婚条件を提示します。

しかし、配偶者から依頼者の浮気の証拠を突きつけられて形勢が逆転し、その後は劣勢のまま離婚紛争を戦わなければならなくなります。

当然、依頼者と弁護士の関係は悪化し、「依頼者のために尽力しよう。」という意欲も低下するため、依頼者の希望どおりの離婚が実現する可能性は極めて低くなります。

無意識のうちに歪んだ事実が伝わることもある

離婚紛争中の夫婦は、互いに自分のことを棚に上げ、相手のことを責め立てる傾向があります。

弁護士に依頼する場合も、依頼者自身が意識せず事実を歪めて弁護士に伝えてしまうことがあり、結果、弁護士が歪んだ事実に基づいて活動して離婚紛争を悪化させてしまうというケースもあります。

そのため、弁護士に依頼して夫婦関係や過去の生活状況などを説明する場合は、あらかじめ説明したいことを書き出し、内容の正確性を確認しておくことが大切です。

弁護士費用の出し惜しみをしない

弁護士費用は高額です。

相談するだけでも30分で5000円程度の相談料がかかりますし、依頼するとなれば離婚調停だけでも100万円程度、離婚調停と離婚訴訟をセットで依頼し、財産分与や慰謝料など多額の金銭給付を得た場合には、数百万円の費用がかかることも珍しくありません。

したがって、離婚紛争を弁護士に依頼するかどうかは自分の収入、返済能力、費用対効果などを十分に検討した上で判断しなければなりません。

そして、一度弁護士に依頼した以上、弁護士費用を出し惜しみしないことが大切です。

何らかの成果を得るために対価を支払うのは世の常ですし、弁護士にも自分の生活があり、家族を養う義務があるため、依頼者から報酬が支払われないと弁護士活動にも支障が出てしまいます。

弁護士費用を支払えないまたは支払いたくないというのであれば、そもそも弁護士に依頼するべきではなく、依頼するのであれば依頼時に合意した金額をきちんと支払うべきです。

弁護士費用は4種類

弁護士費用は、大きく着手金、実費、日当、成功報酬の4種類に分類されます。

着手金依頼時に支払う費用

20~50万円程度

実費訴訟費用や資料収集にかかる費用など

10万円~

日当調停期日や出張などで弁護士を拘束する場合にかかる費用

1時間1万円程度~

成功報酬調停成立や勝訴の場合に支払う費用

基本報酬:20~50万円程度

裁判離婚の場合は条件ごとに追加報酬が発生

依頼者が支払いを渋りがちなのが実費と日当ですが、これらの費用を出し渋ってしまうと弁護士が依頼者の希望に沿った活動ができなくなり、依頼者に対する不信感や不満を強めることになります。

依頼時点で伝えられていた費用については、出し惜しみなく支払うことが大切です。

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離婚調停の弁護士費用の相場は?裁判の弁護士費用とは金額が違う?

弁護士に依頼しても譲歩は必要

依頼者の中には、自分の主張を一方的に弁護士へ伝えて「このとおりに離婚させてください。」と希望する人がいますが、離婚紛争には相手がおり、互いに譲歩しながら最終的な解決プランを練り上げていくのが基本です。

離婚訴訟であっても、互いに主張を戦わせながら、譲歩できるところは譲歩しています。

裁判離婚のうち、和解で終局するケースの方が判決で終わるケースより多くなっているのも、裁判の中で原告と被告や彼らの弁護士が譲歩するケースが相当数あることの現れです。

既済合計8,813件
判決3,313件
和解4,354件
取下げ909件
その他237件

引用:人事訴訟事件の概況―平成28年1月~12月―(2016年1月~12月の裁判離婚の既済件数と終わり方)

「離婚するような相手と譲歩することは何もない。」というのは依頼者の心情として珍しいものではありませんし、特に、相手の浮気やDVなどが原因で婚姻関係が破綻した場合は「自分のしたことを後悔するまで叩き潰したい。」などと思う人も少なくありません。

しかし、自分の主張を100%押し通すことは現実的に困難です。

全く譲歩せず離婚訴訟の判決を待ったとしても、希望どおりの結果になることはほぼありませんし、離婚調停では譲歩なしには成立させることすらできません。

自分の希望ができる限り反映された離婚を実現するためには、互いに譲歩できるところは譲歩しあいながら手続きを進めることが重要であり、譲歩の内容やタイミングについて弁護士と詰めておくことが欠かせません。

依頼を受けた弁護士は、基本的には依頼者の希望をできる限り尊重して立ち回りますが、意欲があり、実力や経験も兼ね備えた弁護士ほど、ケースごとの「妥当な主張」が見えており、必要に応じて依頼者に対して譲歩を提案してきます。

弁護士から譲歩を提案された場合は、譲歩する意味と必要性を十分に説明してもらい、真剣に検討することが大切です。

良かれと思ってした譲歩の提案を無下に却下したり、「譲歩しないと解決できないなんて無能な弁護士が。」などと罵ったりすると、弁護士との関係が悪化しますし、やる気も低下させてしまいます。

納得できない譲歩をする必要はありませんが、まずは、弁護士の説明を聞き、譲歩について検討するようにしてください。

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和解離婚とは?手続きと和解調書の条項は?離婚届の届出と戸籍は?

知識は得ておくが、弁護士の前でひけらかさない

離婚ハンドブックは、離婚する人が自分で離婚に関する知識を得ることを推奨しています。

しかし、得た知識を駆使して弁護士に意見したり反論したりすることは、弁護士との関係性を悪化させる原因となるため、控えるべきです。

弁護士の説明を理解できるようにしておくことは大切ですが、弁護士の提案や方針に茶々を入れたり些細な言い間違いなどを指摘したりすると、不必要に弁護士の気持ちを害してしまいます。

他の項目で書いたことと共通しますが、弁護士に依頼した以上は弁護士を信頼し、関係性を壊す言動や態度は控えた方が良いでしょう。

不適切な提案には反論する

残念ながら、弁護士の中にh離婚紛争を金儲けの手段と考え、依頼者ひいては自分が有利な立場に立って手続きを進めるために、不適切な行動を依頼者に教示する人がいます。

例えば、「親権者になりたいなら、子どもを連れて別居すれば良い。」、「嘘でもDVを主張すれば慰謝料を請求できるし離婚しやすくなる。」など、明らかに不適切な提案をもちかける弁護士が実際に存在します。

こうした場合は不適切であることを明確に指摘し、依頼し続けるかどうか検討する必要があります。

「親権者になれるなら、子連れ別居しよう。」、「離婚後の生活に不安があるし、叩かれたことはないけどDVを主張して慰謝料を請求しよう。」などと思うかもしれません。

しかし、不適切な行動は離婚紛争の手続きの中で追及され、多くの嘘は見破られますし、何より必要以上に夫婦関係を悪化させてしまい、離婚後の養育費や面会交流などに悪影響を及ぼすおそれがあるため、思いとどまってください。

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離婚ハンドブック編集部

投稿者プロフィール

家事事件(離婚、遺産分割、成年後見など)を専門に取り扱って12年の経験を踏まえ、「離婚ハンドブック」では、離婚に関する制度や手続きについて行政・司法機関よりも詳しく分かりやすく解説しています。
また、マイナンバー、国民年金、税金、養子縁組、青年後見など、日常生活の中で利用する制度や手続きを分かりやすく解説する記事も掲載しています。
サイト上では詳細なプロフィールは明かしておらず、仕事の依頼も受けていません。

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