境界性人格障害(パーソナリティ障害)の夫や妻の特徴と離婚する方法

境界性パーソナリティ障害

配偶者の病気や障害を理由に離婚したいと考える人は一定数います。

境界性パーソナリティ障害(人格障害)も、離婚理由として挙げられる配偶者の障害の一つです。

境界性人格障害(境界性パーソナリティ障害)とは

境界性人格障害(境界性パーソナリティ障害)とは、対人関係、自己や他者のイメージが不安定さ、感情や思考の制御不全、衝動的な自傷行為(自己破壊行為)などを特徴とする障害です。

英語では「Borderline personality disorder」と表記され、日本語では「境界性パーソナリティ障害」や「境界性人格障害」と訳されるか、英語表記の頭文字を並べて「BPD」と表記されます。

また、「境界例」や「ボーダーライン」と呼ぶこともあります。

1900年代の初めにドイツの精神分析家ロールシャッハ,H.ロールシャッハによって報告された後、1980年に境界性人格障害という名称でDSM-Ⅲに掲載され、DSM-5においてもパーソナリティ障害として第 II 軸に掲載されています。

  • 境界(ボーダーライン):精神病と神経症の境界にある状態という意味で使用されてきた単語(現在はパーソナリティの障害と考えられている)
  • パーソナリティ(人格):ある人に特有の認知の仕方、感情表現の仕方、行動パターンなど
  • DSM-5(mental illness, mental disorder、日本語訳は「精神障害の診断と統計マニュアル」):精神障害の分類のための共通言語と標準的な基準を提示する、アメリカ精神医学会が出版している書籍の第5版

境界性人格障害(境界性パーソナリティ障害)の原因

遺伝要因と環境要因が複雑に絡み合って発症すると考えらえています。

例えば、遺伝要因を有する人が幼少期に親から虐待を受け、安定した愛着関係が築けず基本的信頼感も育まれないまま成長すると、青年期に境界性人格障害を発症することがあります。

ただし、解明されていないことも少なくないのが現状です。

境界性人格障害(境界性パーソナリティ障害)の特徴

境界性人格障害の本人が抱く主観的な特徴と、周囲の人から見た客観的な特徴は、以下のとおりです。

主観的な特徴

  • 空虚感(「自分は価値のない存在である」、「生きている意味がない」と感じるなど)
  • 孤独感(「誰も自分を理解してくれない」と感じるなど)
  • 被害感(「○○のせいで自分は苦しんでいる」と感じるなど)
  • 自分の中で生きがいや目標が定まらない
  • 他人の言動を常に気にする
  • 感情が制御できない
  • 衝動的に自傷行為に及ぶ(アルコールの過剰摂取、薬物濫用、性的逸脱など)
  • 自傷行為に及ぶと一時的に安心する(「リストカットして流血を見ると落ち着く」など)

客観的な特徴

  • 青年期の女性が発症しやすい
  • 他人との距離感
  • 親密になった相手に依存する
  • 親密になった相手の一挙手一投足に過剰に反応する
  • 衝動的に自傷行為(自己破壊行為)に及ぶ(リストカット、薬物濫用、アルコールの過剰摂取、性的逸脱など)
  • 極端なものの見方をする(「白か黒か」、「善か悪か」、「理想的か無価値か」など)
  • ものの見方が頻繁に変わる(「先ほどは白と主張したのに、今は黒と主張する」など)
  • 気分の変化が激しい(「些細なことでキレたかと思うと、すぐケロッとする」など)

境界性人格障害(境界性パーソナリティ障害)の診断基準

DSM-5では、以下のうち5項目以上に当てはまる場合に境界性人格障害と診断されます。

  1. 実際のまたは想像上の見捨てられる体験を避けようとする懸命の努力。但し、5.の自殺、自傷行為を含めないこと。
  2. 過剰な理想化と過小評価との両極端を揺れ動く特徴をもつ不安定で激しい対人関係の様式。
  3. 同一性障害:著明で持続的な自己像や自己感覚の不安定さ。
  4. 衝動性によって自己を傷つける可能性のある領域の少なくとも2つにわたるもの。例えば、浪費、セックス、薬物常用、万引、無謀な運転、過食。但し、5.に示される自殺行為や自傷行為を含まない。
  5. 自殺の脅かし、そぶり、行動、または自傷行為の繰り返し。
  6. 著明な感情的反応性による感情的な不安定さ (例えば、一過性の強烈な気分変調性障害、焦燥感や不安、通常2-3時間続くが、2-3日以上続くことは稀)。
  7. 慢性的な空虚感、退屈。
  8. 不適切で激しい怒り、または怒りの制御ができないこと (例えば、しばしばかんしゃくを起こす、いつも怒っている、喧嘩を繰り返す)。
  9. 一過性の,ストレスに関連した妄想的念慮,もしくは重症の解離症状。

引用:DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル

成人期早期までに特定のパーソナリティの特徴が明らかになっていることに加え、苦痛や機能障害が臨床的に顕著な場合に診断されます。

境界性人格障害(境界性パーソナリティ障害)と離婚

境界性人格障害は、青年期の女性が発症しやすい病気であり、婚姻後の夫婦関係が原因で発症することよりも、発症したことに気づかず(または気にせず)婚姻することの方が多いと考えられます。

婚姻前の交際相手に境界性人格障害の症状が見られたとしても、「あばたもえくぼ」という諺(ことわざ)があるように都合よく捉えがちです。

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例えば、「気分の変化が激しい」という特徴を「自分の言動に心を揺さぶられている。愛情がある証だ。」などと肯定的に受け止めてしまうことがあります。

また、衝動的に自傷行為に及ぶ姿を見て、自分が支えないといけないという責任感や義務感を抱き、婚姻に至る人もいます。

「配偶者が境界性人格障害(境界性パーソナリティ障害)=夫婦関係が破たんする」というわけではない

夫婦の一方が境界性人格障害であっても、もう一方が障害特性を理解して受け入れることができれば、円満な夫婦関係を維持することができます。

実際に、障害特性とうまく付き合いながら大きな問題なく婚姻生活を送り、子どもも生まれて幸せに暮らしている夫婦はたくさんいます。

また、そうした安定した家庭生活を送る中で症状が落ち着き、目立たなくなるケースも確認されています。

配偶者への配慮に疲弊して離婚を希望する

しかし、婚姻生活を継続するうちに配偶者への配慮に疲弊し、離婚を希望するようになる人が一定数いるのも事実です。

例えば、以下のような言動が繰り返されたことで婚姻生活に疲弊し、離婚を決意したケースがあります。

  • 浪費癖を指摘すると、稼ぎが少ないせいだと罵られた
  • 残業で帰宅が遅れると連絡すると、1~2時間に罵詈雑言が書かれたメッセージが数百件も届き、帰宅するなり暴言を吐かれて殴る蹴るの暴行を受けた
  • 家事分担をめぐって口論になり、感情的になって壁や窓ガラスを素手で叩き割り始めたため110番通報したところ、駆け付けた警察官にも詰め寄って暴行を加え、公務執行妨害で逮捕された
  • 同性の友人と遊びに出かけたいと言うと、激怒して包丁を突き付けられた
  • 子どもの前で頻繁に自傷行為に及んだ
  • 八つ当たりで子どもを執拗に殴った

境界性人格障害(境界性パーソナリティ障害)の配偶者と離婚できるか

結論からいうと、離婚することは可能ですが、障害のない配偶者との離婚と比較するとハードルは高くなります。

まず、境界性人格障害の人は、自分の非を認めようとしないことが多いため、夫婦間の協議でお互いに譲歩しながら合意形成を目指すことが困難です。

離婚調停を申し立てたとしても、自分の主張や言い分を一方的に述べるだけで解決に向けた話し合いにはなりにくく、離婚の合意に至るのは難しいことが多いものです。

気分によっては離婚に合意する旨の主張をすることもありますが、直後に主張を翻したり、体調不良を訴えて調停を中断したり、無断で帰宅したりし、結局は合意に至らないケースが少なくありません。

また、調停期日に攻撃的な言動を繰り返して調停委員と口論になり、その期日が空転したというケースもあります。

離婚訴訟を提起する場合、夫婦関係を破たんさせた事情(法定離婚事由)があることを示さないと離婚が認められません。

配偶者の境界性人格障害を理由に離婚を求める場合、原則として「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」という法定離婚事由を主張しますが、障害だけを理由に離婚請求が認められた判例は見当りません。

一般的には、配偶者から受けたDVやモラハラ、子どもへの虐待などの事情と併せて障害を主張します。

離婚訴訟では主張を裏付ける証拠が判断材料となるため、配偶者の言動の記録や、暴行を受けた場合の診断書などを保管しておくことが大切です。

境界性人格障害(境界性パーソナリティ障害)の配偶者との離婚を進める場合のポイント

離婚を決意したら、配偶者との間に一線を引くことが大切です。

自傷行為や薬物濫用などが心配で傍にい続けたり、一時的に優しく振る舞ったりすると、関係修復の期待を抱かせたり、より一層依存されたりする可能性があります。

また、自分自身も後ろめたさを感じ、離婚をためらってしまうかもしれません。

物理的に距離を置くために別居する、同居を継続する場合も生活空間や家計を明確に分けるなど、離婚の意思を態度で示すことが大切です。

そして、離婚するまでの婚姻費用分担や連絡手段を定め、配偶者がそのルールに慣れるまで継続した上で、離婚やそれに伴う条件面の協議を切り出します。

1対1の話し合いではまとまりにくいため、配偶者の状態によっては、配偶者をサポートしたり、夫婦の仲裁をしたりできる人を見つけておくことも求められます。

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【参考】

  • DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル|日本精神神経学会監修高橋三郎翻訳、大野裕翻訳、染矢俊幸翻訳、神庭重信翻訳、尾崎紀夫翻訳|医学書院
  • 境界性パーソナリティ障害|岡田尊司著|幻冬舎新書
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離婚ハンドブック編集部

投稿者プロフィール

家事事件(離婚、遺産分割、成年後見など)を専門に取り扱って11年になります。
これまでの実務経験から、当事者自身が離婚に関する知識を得て、自分で考えて判断することが「後悔の少ない離婚」につながるという考えており、その考えに基づいて「離婚ハンドブック」を運営しています。
サイト上では詳細なプロフィールは明かしておらず、仕事の依頼も受けていません。

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