嫡出子とは?推定されない・及ばない嫡出子との父子関係を否認する方法は?

日本の民法では、法律上の婚姻関係にある男女の間に生まれたか否かによって、男女の間に生まれた子供を嫡出子と非嫡出子に区別します。

聞き慣れないかもしれませんが、子供の身分の安定(父子関係の確定)、離婚や再婚の時期、養育費などと関わる重要なものです。

この記事では、嫡出子とは何か、嫡出推定の規定、嫡出子の種類(推定される嫡出子、推定されない嫡出子、推定の及ばない嫡出子)、嫡出子との父子関係を否定する方法について解説します。

嫡出子とは

嫡出子とは、法律上の婚姻関係にある男女から生まれた子供です。

「法律上の婚姻関係」にあることが嫡出子の要件で、同棲関係や内縁(事実婚)関係にある男女から生まれた子供は嫡出子の身分を得ることはできません。

嫡出子の読み方

嫡出子と書いて「ちゃくしゅつし」と読みます。

嫡出推定

母子関係は分娩の事実によって客観的に明らかになりますが、父親と子供の間に血縁関係があるか否かは外見からは必ずしも明らかになりません。

また、妻が婚姻中に妊娠したか否かを証明することも困難です。

そのため民法では、一定の条件下で生まれた子供は「夫の子と推定する」という嫡出推定の規定を設けています。

  1. 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。
  2. 婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。

(民法第772条)

嫡出推定は、生まれた子供の父子関係を確定させて子供の身分を安定させる目的で、明治民法時代に設けられた制度が現行民法にも引き継がれています。

現在は、DNA鑑定で科学的に父子の血縁関係を明らかにできますが、古い既定のためDNA鑑定を想定した内容とはなっていません。

また、2014年7月17日の最高裁判所第1小法廷は、「DNA鑑定で血縁関係が否定された父子関係を取り消すことができるか」について争われた訴訟の上告審において、父子関係は取り消せないという判決を言い渡しました。

これにより、DNA鑑定の結果よりも嫡出推定が優先されることが示され、現在もなお、嫡出推定に基づいて父子関係が決まっています。

ただし、無戸籍者対策の一環として嫡出避妊制度の見直しが法制審議会で進められており、今後、改正される可能性があります。

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嫡出子の種類(推定される嫡出子、推定されない嫡出子、推定の及ばない嫡出子)

嫡出子は、嫡出推定が及ぶか否かなどによって3種類に分類されます。

推定される嫡出子

民法の規定上、「婚姻中の夫婦の妻が妊娠した子供」、「婚姻日から200日以降に生まれた子供」、「離婚日または婚姻の取消し日から300日以内に生まれた子供」は夫の子供と推定され、生まれた時点で嫡出子の身分を取得できます。

こうした、嫡出推定が及ぶ子供を「推定される嫡出子」と呼びます。

ただし、嫡出推定はあくまで「推定」で、覆されることがあります。

法律上は、夫に対して、子供の出生を知ったときから1年以内であれば、嫡出否認の訴えを提起して「子供が嫡出であることを否認する」ことを認めています。

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推定されない嫡出子

嫡出推定の規定では、婚姻の成立の日から200日以内に生まれた子供には嫡出が推定されません。

例えば、「できちゃった婚(授かり婚)」で婚姻の成立の日から200日以内に子供が生まれた場合、生まれた子供には嫡出推定が及ばず、「推定される嫡出子」にはなることができません。

しかし、戸籍実務上は、法律上の婚姻関係にある夫婦が出生届を提出した場合、嫡出子として出生届を受け付けることになっています。

そのため、嫡出推定はされませんが、嫡出子としての身分を取得することができます。

こうした、嫡出推定はされないが嫡出子の身分を取得する子供を「推定されない嫡出子」といいます。

夫が推定されない嫡出子を「自分の子供ではない」と訴える場合、嫡出否認の訴えよりも要件が緩く期限もない親子関係不存在確認の訴えを提起することができます。

また、親子関係不存在確認の訴えは夫以外でも起こすことができるので、推定されない嫡出子は、推定される嫡出子と比較すると地位が不安定といえます。

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推定の及ばない嫡出子

嫡出推定の規定は、婚姻の事実と婚姻日や離婚日などからの日数で機械的に嫡出子か否かを判断します。

しかし、嫡出推定が及ぶ期間内に生まれた子供であっても、妻が夫の子供を妊娠することが不可能な事情がある場合まで嫡出推定を認めてしまうと、子供に不利益が及びます。

例えば、夫が服役中、夫が行方不明、夫婦関係が悪化して夫と別居中など、性的関係をもつことが物理的に不可能な事情がある場合は、嫡出推定期間に生まれたとしても、推定は及ばないものとされます。

こうした、嫡出推定期間内に生まれたが夫との間に父子関係がない子供を「推定の及ばない嫡出子」といいます。

ただし、推定されない嫡出子の項目で解説したとおり、戸籍実務上は、「法律上の婚姻関係にある夫婦が出生届を提出した場合、嫡出子として出生届を受け付ける」ため、戸籍上は嫡出子の身分を取得します。

父子関係が存在しないことを明らかにするには、親子関係不存在確認の訴えを起こさなければなりません。

嫡出子と再婚禁止期間

再婚禁止期間とは、女性が離婚後に再婚することのできない期間のことです。

女は、前婚の解消又は取消しの日から起算して100日を経過した後でなければ、再婚をすることができない。

(民法第733条第1項)

嫡出推定と同じく、生まれてくる子供の父親を確定させ、子供の身分を安定させる目的で設けられている規定です。

ただし、離婚時に妊娠していない場合は、子供の父親を気にする必要がなく、再婚禁止期間は適用されません。

離婚日より後に妊娠したことを証明する医師作成の書面を添付すれば、再婚禁止期間中でも婚姻届が受理されます。

また、離婚後に出産した場合は、嫡出推定によって子供の父親が確定するため、出産後は離婚から100日以内でも再婚することができます。

離婚日以降に出産したことの証明書を持参することにより、再婚禁止期間中でも婚姻届が受理されます。

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嫡出子との父子関係を否定する方法(嫡出否認、親子関係不存在確認、父を定める訴え)

父子関係が発生すると、父親は親として子供を扶養する義務を負い、離婚しても子供が成熟するまで養育費を支払わなければなりませんし、死亡すると相続権も発生します。

そのため、妻が出産した子供が「自分の子供ではない」と確信している場合、嫡出子との父子関係を否定することになります。

嫡出子との父子関係を否定する方法には、嫡出否認、親子関係不存在確認、父を定める訴えの3つがあります。

嫡出否認の訴え

「推定が及ぶ嫡出子」との父子関係を否定する場合は、嫡出否認の訴えを提起する必要があります。

嫡出否認の訴えの提訴権者(訴えることができる人)は夫(子供の父)のみで、被告は子供または親権者である妻(子供の母)です。

夫以外は、妻(子供の母)も子供も訴えを提起することはできません。

夫も、子供が生まれたことを知ったときから1年を過ぎた場合や、子供が生まれた後に嫡出承認(自分の子供だと認めること)をした場合は、嫡出否認の訴えを提起できなくなります。

なお、嫡出否認の訴えは人事訴訟事件であり、調停を経ずに訴訟を提起した場合、調停前置主義によって調停に付されるので、まずは調停(審判)手続を踏むことになります。

また、夫婦(子供)間に嫡出否認の問題を審判で解決する合意があり、前提となる事実などに相違がない場合、それらを調停で確認し、家庭裁判所が必要な事実の調査をした上で相当と認めたときは、合意に相当する審判で嫡出否認がなされます。

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親子関係不存在確認の訴え

「推定されない嫡出子」または「推定の及ばない嫡出子」との父子関係を否定する場合、親子関係不存在確認の訴えを起こします。

親子関係不存在確認の訴えは、嫡出否認のように出訴期間(訴えを起こすことができる期限)がなく、また、親子関係の存否を確定する利益があれば、夫(子供の父)以外でも提起することができます。

ただし、嫡出否認と同じく調停前置主義が適用されるので、まずは親子関係不存在確認調停(特殊調停事件、合意に相当する審判)を行い、調停が不成立となった場合に訴訟で争うことになります。

調停で当事者間の合意ができ、事実関係などにも争いがないことが確認された場合、家庭裁判所が必要な調査をして相当と判断すれば、審判で親子関係不存在確認がなされます。

父を定める訴え

「離婚日(前婚を解消した日)から300日以内」かつ「再婚日(後婚の成立した日)から200日以降」に妻が出産した場合、「前婚の解消から300日以内」と「後婚の成立から200日以降」という2つの嫡出推定がはたらき、前婚の夫と後婚の夫の父性の推定が競合します。

こうした「二重に嫡出推定がはたらく子供」との父子関係を否定したい場合、父を定める訴えを提起して、裁判所の審理で父親を確定します。

父を定める訴えは、子供本人、子供の母、母の後婚の夫、母の前婚の夫から提起することができ、出訴期間はありません。

嫡出否認や親子関係不存在確認と同じく人事訴訟事件なので、調停前置主義が適用されます。

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離婚ハンドブック編集部

投稿者プロフィール

家事事件(離婚、遺産分割、成年後見など)を専門に取り扱って12年の経験を踏まえ、「離婚ハンドブック」では、離婚に関する制度や手続きについて行政・司法機関よりも詳しく分かりやすく解説しています。
また、マイナンバー、国民年金、税金、養子縁組、青年後見など、日常生活の中で利用する制度や手続きを分かりやすく解説する記事も掲載しています。
サイト上では詳細なプロフィールは明かしておらず、仕事の依頼も受けていません。

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