調停調書とは?効力と正本・謄本・抄本の違い、交付申請書の書き方
- 調停離婚
最終更新日: 2019.03.19
離婚調停において離婚やそれに伴う諸条件について夫婦間の合意ができると、裁判所書記官が調停調書を作成して調停が成立します。
目次
調停調書の効力とは
調停調書とは、裁判所書記官が作成する、調停の当事者が合意した内容を記載した書面です。
調停調書に記載された内容は、確定判決と同等の効力を持ちます。
つまり、当事者が話し合って取り決めた内容が、訴訟(裁判)や審判など裁判所が判断を下す手続きと同等の効力を持つのです。
取り決めた内容が履行されない場合、調停条項の内容によっては、履行を促す履行勧告や、強制的に履行させる強制執行の手続きを利用することができます。
また、当事者の合意に基づて作成されるという性質上、調停調書作成後に不服を申し立てることは認められず、審判や訴訟の結果のように覆ることもありません。
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離婚調停の調停調書の記載事項と調停条項の種類
離婚調停の調停調書に記載される調停条項は、離婚することだけでなく、離婚に伴う諸条件や清算条項など多岐にわたります。
以下、離婚調停の調停調書の標準的な記載事項と条項の種類について解説します。
離婚調停の調停調書の標準的な記載事項
離婚調停の調停調書には、以下のような内容が記載されます。
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実際の調停調書には、強制執行などを意識して当事者が合意した内容が調停条項として記載されます。
離婚調停成立時の調停条項の記載については、関連記事で詳しく解説しています。
強制執行ができる文言についても解説しているので、興味関心がある人は読んでみてください。
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調停条項の種類
離婚調停の調停調書に記載できる調停条項は6種類あり、種類によって強制執行ができるか否かが異なります。
調停条項 | 内容 | 強制執行 |
給付条項 | 金銭や不動産などを給付する合意に関する調停条項 例:養育費、財産分与、慰謝料、解決金など | 可 |
確認条項 | 法律関係の存在・不存在や特定の権利が存在することを確認する合意に関する調停条項 例:親子関係不存在、不動産の所有権など | |
形成条項 | 権利の発生・変更・消滅の効果を生じる合意に関する調停条項 例:離婚することなど | |
任意条項 | 調停条項にしなくても法的効果が生じる内容や、条項にしても法的効力が生じない内容に関する調停条項 例:調停費用の負担など | 否 |
道義条項 | 夫婦の一方または両方の道義的責任を認める合意に関する調停条項 例:復縁して円満な家庭を築く努力をする約束、飲酒を控える約束など | |
清算条項 | 離婚する夫婦が互いに相手への請求権を放棄することを約束する調停条項 |
強制執行手続きが利用できるのは給付条項、確認条項、形成条項の3つのみであり、任意条項、道義条項、清算条項については取り決めても強制執行はできません。
離婚調停では、当事者の感情面を考慮して道義条項を取り決めることが少なくありません。
しかし、道義条項では強制執行ができない旨の説明が調停委員からなされず、当事者が強制執行できるものと思い込んで道義条項を取決め、離婚後に裁判所ともめるケースが散見されます。
注意してください。
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調停調書の原本、正本、謄本、抄本の違い
調停調書には、原本、正本、謄本、抄本の4つの種類があり、離婚後の各種手続きにおいて提出を求められることがあります。
例えば、調停離婚後に市区町村役場へ離婚届を提出する(報告的届出)ときには調停調書の謄本を添付する必要がありますし、強制執行の申立てでは調停調書の正本を提出しなければなりません。
種類 | 説明 |
原本 | 裁判所書記官が作成して裁判官が押印した調停調書の原本 裁判所で保管される |
正本 | 調停調書の原本の写しで、「これは正本である。」という裁判所書記官の認証が入ったもの 原本と同一の効力をもつ |
謄本 | 調停調書の原本の全部の写しで、「これは謄本である。」という裁判所書記官の認証が入ったもの |
抄本 | 調停調書の原本の一部の写しで、「これは抄本である。」という裁判所書記官の認証が入ったもの |
離婚調停成立後に家庭裁判所から交付されるのは、謄本または抄本(省略謄本)です。
原本は家庭裁判所で保管されるため交付されることはなく、正本は強制執行を利用する場合などに申請しない限り交付されません。
したがって、離婚調停後に調停調書の内容が履行されないことが予想され、不履行が生じた時点ですぐ強制執行を申し立てたいと考えている場合は、あらかじめ正本を申請して取得しておく必要があります。
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調停調書謄本の交付申請
裁判所書記官が作成した調停調書を交付してもらうには、交付申請を行う必要があります。
申請者
原則として、当事者(離婚調停の場合は離婚した元夫または元妻)です。
調停成立後に代理人弁護士が申請する場合、新たな委任状の提出を求められます。
利害関係人が申請を行う場合、利害関係を証する資料(相続人であれば戸籍謄本、債権者であれば契約書など)を提出しなければなりません。
必要書類
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調停調書の申請には、通数ではなく用紙1枚ごとに手数料がかかります。
例えば、調停調書が2枚の場合、1通のみの申請であれば300円分、2通申請すると600円分の収入印紙がかかります。
郵送申請の場合
郵送申請の場合は、以下の資料を揃えて調停をした家庭裁判所宛に郵送します。
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申請書の書き方
申請書は、裁判所ウェブサイト内の記載例を参考にして記載してください。
出典:東京家庭裁判所|裁判所
調停成立直後に申請する場合、担当の裁判所書記官が記載方法を分かりやすく説明してくれることもあります。
事件番号
成立した調停の事件番号を記載します。
事件番号が複数ある場合は、全て記載してください。
申請年月日
申請年月日を和暦で記載します。
宛先
調停をした家庭裁判所の名称を記載します。
申請人欄
申請者の資格(当事者、代理人、利害関係人など)の当てはまる項目にチェックし、郵便番号、電話番号、氏名を記載して氏名の横に押印します。
交付・郵送・送達手続き
交付を希望する場合は交付、郵送による交付を希望する場合は郵送、送達を希望する場合は送達に〇をつけます。
交付を希望する書類
調停調書、調停調書省略謄本(戸籍届出用)、調停調書抄本(年金分割請求用)、審判書、審判書省略謄本(戸籍届出用)などの項目があるので、交付を希望する書類の番号に〇をつけます。
調停調書や審判書を申請する場合、正本、謄本、抄本のうち希望するものに〇をつけてください。
申請理由
内容確認、登記、戸籍届出、強制執行、金融機関に提出、()に提出、年金分割請求、訴訟準備、その他の中から当てはまるものの番号に〇をつけます。
調停調書の交付申請から交付されるまで
調停成立直後に申請した場合、交付されるまでに約1週間程度かかることがあります。
裁判所書記官が、調停成立後に調停調書の内容を確認して清書し、裁判官のチェックを得て調停調書を完成させるのに数日を要するからです。
窓口申請の場合は、調停調書が完成すると裁判所書記官から電話連絡が入るので、受取りに行きます。
郵送申請の場合、調停調書完成後に申請書に記載した送付先まで郵送されます。
なお、調停成立から期間を空けて申請した場合、窓口申請であれば当日、郵送申請でも2~3日で交付されることもあります。
受領書
調停調書を交付してもらった後は、受領書に署名押印します。
郵送申請の場合は、受領書と返信用封筒が同封されているので、受領書に署名押印して返信用封筒に入れて送り返します。
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