調停と裁判の違いは?手続きの流れや終わり方などが違う?

当事者の中には、調停と裁判を同じ手続きのように認識している人がいます。

調停も裁判も裁判所の手続きなので、「裁判所の手続き=裁判官が判断する手続き」、「調停は略式の裁判」、「調停は裁判前の駆け引き」などと勘違いしやすいようです。

しかし、同じ裁判所手続きでも調停と裁判は異なる手続きです。

離婚紛争を裁判所の手続きで解決しようと思った場合、夫婦関係悪化の程度、家庭の状況、解決を求める事項、紛争の深刻さなどを踏まえ、調停での解決を目指すのか、裁判を見越して手続きを進めるのかを決める必要がありますが、その前提として、調停と裁判の違いを押さえておかなければなりません。

調停と裁判の違い:「裁判所の判断」か「当事者の合意」か

調停と裁判の最も大きな違いは、紛争解決の方法です。

裁判は裁判所が判断する

裁判は、原告(裁判を起こした人)と被告(裁判を起こされた人)から出された主張とそれを裏づける証拠に基づいて、裁判所が法的な判断を下す手続きです。

通常、当事者の話し合いで解決できない紛争について裁判所の判断を求めるために裁判が起こされ、原告と被告が自分に有利な判断が下されるよう激しく主張と証拠を戦わせ、紛争状態が続く中で裁判所の判断が示されます。

裁判の流れの中で請求の認諾(被告が原告の主張を全面的に受け入れること)や和解(原告と被告が話し合いで紛争を解決すること)に至ることもありますが、原則として、裁判所が判決を出します。

裁判所の判決は、当事者の気持ちや感情は抜きにして法的に適当な判断が示され、通常、原告と被告の間に勝ち負けや優劣をつけるものになっています。

判決に不服があれば上訴することが認められていますが、確定した判決には従わなければなりません。

調停は当事者の合意

調停は、当事者の合意を前提とする手続です。

調停を運営する調停委員会(裁判官1人と調停委員2人で構成される組織)が助言や提案はしますが、当事者双方が合意しなければ調停は不成立で終了し、合意できた場合のみ調停が成立します。

裁判所の手続きでありながら、裁判所が判断を示さず、紛争解決が当事者の合意に委ねられているのです。

そのため、当事者双方が、調停委員会の仲介を得ながら自発的に解決を図る意欲を持っている必要があり、当事者の一方または両方に自ら解決する意欲がなければ調停による解決は望めません。

しかし、裁判のように強制的に紛争が解決されることがないため、当事者の気持ちや感情を踏まえた、互いにある程度は納得できる解決を目指すことが可能な制度です。

調停と裁判の違い:かかる費用

調停と裁判では、手続きにかかる費用が大きく異なります。

裁判は費用がかかる

民事訴訟であれば訴額によって訴えの提起にかかる手数料が変わります。

例えば、訴額が1000万円であれば5万円、3000万円であれば11万円かかります。

人事訴訟の場合も、離婚のみの場合でも1万3000円の訴訟費用がかかり、附帯処分(財産分与や養育費など)を求める場合は追加で費用がかかります。

また、弁護士に依頼すれば高額な弁護士費用がかかります。

調停は費用がかからない

調停は、申立てだけなら1件につき2000円程度しかかかりません。

離婚紛争中で、離婚調停と同時に面会交流(子ども2人)や婚姻費用分担調停を申し立てたとしても1万円未満です。

調停期日を重ねれば交通費がかかりますし、時間給や日給の場合は仕事を休んだ分だけ給料は減りますが、それでも訴訟と比較すると安く済みます。

調停と裁判の違い:公開か非公開か

手続きが公開で行われるか非公開で行われるかの違いもあります。

裁判は公開が原則

裁判は、原則として、公開の法廷で行われます。

裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。

(日本国憲法第82条第1項)

裁判が公開されて国民の監視にさらされることで裁判の公正が維持され、また、国民の司法に対する信頼も得られるという考えに基づく規定です。

この公開の原則に基づいて、離婚訴訟も公開の法廷で行われます。

調停は非公開

調停は、調停室という非公開の場で行われます。

裁判所職員以外で調停室に入室できるのは、当事者双方(申立人、相手方)とその代理人弁護士だけです。

第三者はもちろん、同伴した家族や親族なども、原則として、調停室に入ることはできません。

また、裁判官、調停委員、裁判所書記官、家庭裁判所調査官など調停に関わる人には守秘義務が課されており、調停の内容が外部に漏れることもありません。

調停が非公開とされているのは、取り扱う内容が夫婦の離婚や親族間の紛争などプライベートな内容であることと、当事者に周囲を気にせず自由な発言をさせることにより、気持ちや感情を踏まえた紛争解決を目指そうとしているからです。

調停と裁判の違い:裁判官が常に同席するか否か

調停と裁判では、裁判官が常に同席するか否かという違いもあります。

裁判は常に同席

裁判手続きは、裁判官が常に同席して自ら進行し、原告と被告は裁判官の前で口頭弁論を行います。

一時的に退廷することはありますが、進行に関わる場面では必ず裁判官が法廷などにいる必要があります。

調停で裁判官が同席するのは限られた場面のみ

調停は、裁判官1人と調停委員2人から構成される調停委員会が運営します。

通常は、調停期日に同席するのは調停委員2人のみであり、裁判官は同席しません。

調停委員は、随時、調停の進行を裁判官に報告しており、裁判官は、必要な指示を調停委員に出したり、調停委員と一緒に調停案を考えたりしますが、調停期日に同席するのは調停成立時や、調停委員だけでは進行が困難になった場合だけです。

ただし、裁判官が単独で調停を行う場合は、裁判官が調停期日に同席して調停を進行しますが、例外的なケースです。

調停と裁判の違い:最終的な手続きかどうか

調停と裁判はいずれも紛争解決のための手続きですが、最終的な手続きかどうかという点で異なります。

裁判は最終的な手続き

裁判は、ある紛争を裁判所で解決するための最終手続きです。

判決に不満があれば上訴できますが、あくまで上級裁判所で裁判手続きが行われるのであって、他の手続きに移行するわけではありません。

調停は最終的な手続きではない

調停が合意に至らず不成立で終了した場合、その後、審判や裁判という裁判所が判断する手続きを利用することができます。

例えば、離婚調停が不成立になった場合、別途、離婚裁判を起こすことができます。

また、婚姻費用分担請求調停が不成立になった場合、自動的に審判に移行します。

裁判所が取り扱う事件の中には、一部の家事事件のように「まずは当事者間の話し合いで解決を目指すべき事件」があるため、当事者間で話し合う調停と裁判所が判断する審判や裁判という2段構えになっているのです。

この仕組みによって、当事者間で解決できる部分は調停で解決し、残った部分だけを審判や裁判で解決することができるため、当事者も裁判所も紛争解決にかけるコストを削減することができます。

一部の家事事件で調停前置主義(裁判をする前に調停を経る必要があるという制度)や付調停(調停を経ず裁判を起こしたり審判を申し立てたりした場合に、職権で調停手続にする手続)が規定されているのも、こうした理由からです。

関連記事

調停前置主義とは?条文と例外、調停を取り下げても離婚訴訟できる?

調停と裁判の違い:不服申し立てができるかどうか

不服申し立てができるかどうかも、調停と裁判の大きな違いです。

裁判は不服申し立てができる

判決に不服がある場合、当事者は上訴することができます。

離婚裁判の判決に不服がある場合は、高等裁判所に控訴し、高等裁判所の判断にも不服がある場合は最高裁判所に上告することが認められています。

調停は不服申立て制度がない

調停には、不服を申し立てる制度がありません。

調停は当事者の合意を前提とする手続であり、調停で取り決めることができるのは当事者が合意した内容だけです。

不服があれば調停を成立させなければ良いだけの話であり、合意した内容に基づいて調停を成立させた後に不服を申し立てる余地がないため、制度が設けられていないのです。

調停と裁判の法的効力に違いはない

当事者の合意に基づいて調停が成立して調停調書に記載された内容は、家事事件の別表第二事件は確定審判と同じ効力をもち、それ以外の調停は確定判決と同じ効力を持ちます。

当事者の合意に基づく内容が、裁判所の判断と同じ効力を持つのです。

したがって、調停で取り決めた内容が守られない場合、強制執行によって強制的に履行させることができます。

通常、裁判で勝訴するには相当な時間・手間・費用が必要になりますが、そうして得られる効力と同等の効力を、当事者間の話し合いで得られるのが調停という手続きなのです。

関連記事

調停調書の効力は?守らないと履行勧告・履行命令・強制執行で履行確保

>>>「調停離婚」の記事一覧に戻る

アバター

離婚ハンドブック編集部

投稿者プロフィール

家事事件(離婚、遺産分割、成年後見など)を専門に取り扱って12年の経験を踏まえ、「離婚ハンドブック」では、離婚に関する制度や手続きについて行政・司法機関よりも詳しく分かりやすく解説しています。
また、マイナンバー、国民年金、税金、養子縁組、青年後見など、日常生活の中で利用する制度や手続きを分かりやすく解説する記事も掲載しています。
サイト上では詳細なプロフィールは明かしておらず、仕事の依頼も受けていません。

この著者の最新の記事

ピックアップ記事

  1. 離婚後 選択的共同親権
    離婚後単独親権に対する問題提起や批判は以前からありましたが、近年、欧米諸国などで採用されている離婚後…
  2. 専業主婦 離婚 準備
    「専業主婦(主夫)だけど離婚したい。でも、離婚後の生活が不安。」、「離婚したいが、専業主婦は離婚後に…
  3. 離婚協議書 公正証書
    協議離婚する場合、離婚することと諸条件について夫婦で話し合い、合意した内容を離婚合意書にまとめた上で…
  4. 離婚調停 相手方 準備
    「ある日突然、見知らぬ住所と差出人の名前が書かれた茶封筒が自宅のポストに届き、中を開けてみると「調停…
  5. 弁護士会照会制度
    離婚紛争を弁護士に依頼すると高額な費用がかかりますが、依頼によって得られるメリットもあります。 …
  6. モラハラ 離婚
    配偶者のモラハラ(モラルハラスメント)を理由に離婚したいと考える人は少なくありません。 しかし…
  7. 離婚調停 成立 調停条項
    離婚調停は、夫婦間で離婚やそれに伴う条件面の合意ができると調停調書が作成され、調停が成立します。 …
  8. 養育費 強制執行 手続き 流れ
    夫婦間で取り決めた養育費が支払われない場合の対応には、履行勧告、履行命令、強制執行があります。 …
  9. 離婚 弁護士費用 相場
    離婚問題を弁護士に依頼する場合にトラブルになりやすいのが、弁護士費用です。 「離婚 弁護士費用…
  10. 離婚調停 弁護士
    「離婚調停で弁護士は必要か」と聞かれたら、弁護士の立場からは「必要です。ぜひご依頼ください!」と答え…

スポンサーリンク

ピックアップ記事

  1. 離婚後 選択的共同親権

    選択的共同親権とは?法務省が検討する「離婚後の親権の選択制」の意味

  2. 専業主婦 離婚 準備

    専業主婦の離婚準備:仕事と生活費、親権や年金について分かりやすく解説

  3. 離婚協議書 公正証書

    離婚協議書の書き方:自分で作成する方法と公正証書の作り方(雛型付)

  4. 離婚調停 相手方 準備

    離婚調停の相手方が第1回期日までに準備すること(調停を申し立てられた人用)

ページ上部へ戻る