同居義務違反とは?慰謝料の相場、調停・裁判で慰謝料請求する方法

同居義務違反
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配偶者が同居に応じない場合、同居義務違反を主張して離婚や慰謝料を請求できることがあります。

例えば、夫が家を出て帰って来なくなった、妻が里帰り出産後に帰宅しなくなったなど正当な理由なく同居に応じない場合、同居義務違反を主張できる可能性があります。

夫婦の同居義務とは

夫婦の同居義務とは、民法に規定された夫婦の義務の1つです。

夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

(民法第752条)

民法第752条は、同居義務、協力義務、扶助義務という3つの義務を規定しています。

同居義務 夫婦が同居する義務
協力義務 夫婦が互いに協力し合う義務
扶助義務 夫婦が互いに扶助しあう義務

夫婦間の扶助義務は生活保持義務(自分と同水準の生活を相手に保証する義務)

民法上、同居することは夫婦の義務であると明示されており、同じく、夫婦が互いに協力したり助け合ったりすることも義務として規定されています。

法律婚に限らず、内縁関係の男女にも同居・協力・扶助義務が課せられています。

同居義務違反への対応

札幌家庭裁判所決定平成10年11月18日は、同居を拒否する夫婦の一方に対して同居を命じる審判をする場合の判断基準について、以下のとおり示しています。

同居を命じることにより、同居が実現し、円満な夫婦関係が再構築される可能性がわずかでも存在すると認められることが必要である

引用:札幌家庭裁判所決定平成10年11月18日

つまり、審判によって同居が実現して夫婦関係が修復される可能性がゼロでなければ審判をすることができるが、同居が実現する見込みがない場合は審判はできないということです。

また、同審判では、「同居義務は、その性質上任意に履行されなければその目的を達成できないものである」、「いかなる方法によってもその履行を強制することは許されない」として、同居を強制することは認められないとしています。

同居義務の例外

原則として、同居義務に違反した人は有責となり、配偶者から離婚や慰謝料を請求されることがあります(詳しくは後述)。

しかし、正当な理由がある場合、夫婦が別居に合意している場合、やむを得ない場合には、同居を解消しても有責とはなりません。

正当な理由がある場合

以下のような正当な理由があれば、同居を解消しても有責にはなりません。

  • 別居時点ですでに婚姻関係が破綻している
  • 別居された人に別居の原因がある

例えば、同居を解消する時点で夫婦関係が冷え切り、互いに家にはほとんど帰らず、長期にわたって夫婦生活も会話も無くなっていた場合や、配偶者のDVやモラハラ、浮気などを理由に同居を解消した場合が考えられます。

夫婦が別居に合意している

例えば、単身赴任や長期の海外出張など夫婦が合意の上で別居するなど、夫婦が合意した上で別居している場合は、有責性は問われません。

やむを得ない場合

夫婦が同居できないやむを得ない事情がある場合も、同居義務違反による有責性は問われません。

例えば、長期入院や収監などで夫婦が別々に暮らすことになった場合が考えられます。

同居義務違反と悪意の遺棄

夫婦の合意も正当な理由もなく別居を継続した場合、配偶者から「同居義務に違反した悪意の遺棄である」と主張され、離婚や慰謝料を請求されることがあります。

悪意の遺棄とは、民法第770条第1項第2号に規定された法定離婚事由です。

離婚訴訟では、同居義務違反が悪意の遺棄が認定されると離婚原因となり、別居した人が有責配偶者となります。

関連記事

悪意の遺棄とは?証明方法と離婚や慰謝料が認められる別居期間は?

同居義務違反と慰謝料請求・慰謝料の相場

夫婦の別居の経緯や態様によっては、同居義務違反で慰謝料を請求できることがあります。

同居義務違反で慰謝料請求できる場合

同居義務違反で慰謝料請求できるのは、以下のような場合です。

  • ある日突然家に帰って来なくなり、同居を求めても拒否する
  • 家を出て行方をくらませる
  • 里帰り出産後に「実家の方が居心地が良い」という理由で同居に応じない
  • 無断で自宅以外の住居を借りて住み始めた
  • 浮気相手と同棲を始めた
  • 無断で単身赴任を決め、実際に単身赴任した

簡単に言えば、別居をする正当な理由や夫婦の合意がなく、帰宅できない事情もないにも関わらず別居が継続したい場合、慰謝料を請求できることがあります。

別居後に生活費が支払われなくなった場合、同居義務違反に加えて協力・扶助義務違反にも当てはまり、法的離婚事由の一つ「悪意の遺棄」が認定されやすくなりますし、慰謝料の金額が高くなる一因となります。

また、別居して浮気相手と同棲を始めた場合、同居義務だけでなく夫婦間の貞操義務にも違反しています。

したがって、同居義務違反と貞操義務違反を主張して慰謝料を請求することができます。

ただし、慰謝料請求が認められるためには請求の根拠となる事実を裏づける客観的証拠が必要であり、悪質な同居義務違反があったとしても、証拠を示すことができなければ請求は認められません。

同居義務違反で慰謝料が請求できない場合

同居義務違反で慰謝料請求が請求できないのは、「同居義務の例外」で解説した3つの事情がある場合です。

  • 別居に正当な理由がある
  • 夫婦が合意した上で別居した
  • やむを得ない事情がある

慰謝料の性質は、相手の不法行為で精神的苦痛を被ったことに対する金銭的賠償であり、相手が有責でなければ請求することはできません。

したがって、別居時点ですでに夫婦関係が破綻していた、DVやモラハラなどを理由に別居したなど別居に正当な理由がある場合は、慰謝料の請求ができません。

同じく、単身赴任や長期出張など夫婦が合意の上で別居した場合や、長期入院などやむを得ない事情がある場合も相手に有責性がなく、慰謝料請求は認められません。

ただし、別居前から浮気相手がいて別居後に同棲を開始したことが明らかな場合は、不貞を理由として慰謝料を請求することができますし、別居後に婚姻費用分担に応じない場合は、悪意の遺棄を主張して慰謝料を請求する余地があります。

同居義務違反による慰謝料の相場

同居義務違反だけで慰謝料請求をする場合の相場は、50~100万円程度です。

しかし実務上は、同居義務違反だけで慰謝料を請求することは稀で、不貞や悪意の遺棄などの法定離婚事由を前面に出したり、DVやモラハラなどを主な理由としたりすることが多くなっています。

同居義務違反+αで慰謝料請求する場合の相場は、以下のとおりです。

不貞 50~300万円
悪意の遺棄 50~200万円
DV 50~500万円
モラハラ 50~300万円

上記は、慰謝料を請求する根拠となる事実とそれを明らかにする客観的証拠が揃っている場合の相場です。

また、金額の幅が大きいのは、事実の程度や証拠の内容によって認定される金額が大きく変わるからです。

同居義務違反で慰謝料請求する場合の証拠

別居の経緯や態様が同居義務違反であることを示す証拠には、以下のようなものがあります。

  • 別居が夫婦の合意なく実行されたことを示す資料:メールやSNSのデータ、別居前後の夫婦の会話の録音データ、相手の置手紙など
  • 別居の事実を示す資料:自分と相手の住民票(異動の事実が分かるもの)

同居義務違反の証拠を集めるのは、想像以上に時間と手間がかかることが多く、また、探し回っても見つからないというケースも少なくありません。

そのため、同居義務違反の証拠とともに、その他の不法行為があったことを示す証拠も収集しておくことが大切です。

不貞
  • 浮気相手とのメールやSNSのデータ
  • 浮気相手との電話の録音データ
  • 浮気相手との写真など
DV
  • 診断書
  • 暴力を受けて怪我をした箇所の写真
  • 保護命令関連資料
  • 暴力場面の録音録画など
モラハラ
  • 暴言場面の録音録画
  • モラハラの具体的内容を書き記した日記など
悪意の遺棄
  • 生活費の振込みが途絶えたことを示す預貯金通帳のコピーなど

同居義務違反で慰謝料請求する方法

同居義務違反で慰謝料請求する方法には、夫婦の協議、夫婦関係調整調停、訴訟があります。

夫婦の協議

通常、同居義務違反で慰謝料を請求する場合、離婚の請求と同時に行うことが多いものです。

まずは別居中の配偶者に連絡をとって離婚と慰謝料を請求することを伝え、話し合いの場を設定します。

夫婦間の協議では、離婚するかどうか、慰謝料の支払いをどうするか、その他の離婚に伴う諸条件について包括的に離し合うことになることが多いので、慰謝料以外の条件についても詰めておくことが大切です。

配偶者が話し合いに応じない場合、慰謝料請求調停の申立てに進むことも考えられますが、その前に内容証明郵便を送る方法もあります。

内容証明郵便とは、「誰から誰宛に、いつ、どのような内容の文書が送られたか」を郵便局が証明する制度です。

法的拘束力はありませんが、相手に心理的圧力をかける効果が期待できますし、慰謝料を請求した時期も明らかにできるため時効の問題も解決できます。

配偶者が内容証明郵便に反応して連絡してきたら、通常の話し合いと同じように協議の場を設定して離婚や慰謝料について話し合います。

関連記事

離婚や慰謝料請求での内容証明郵便活用法は?書き方や出し方、料金は?

夫婦関係調整調停

夫婦間の協議では解決できない場合や、内容証明郵便を送付しても配偶者が協議に応じない場合、家庭裁判所に夫婦関係調整調停を申し立てる方法があります。

夫婦関係調整調停では、調停委員という裁判所の非常勤職員を交えて離婚や慰謝料について協議します。

夫婦だけで話し合うよりも冷静に意見や主張を述べることができますし、今後の夫婦関係について見つめなおす機会にもなります。

調停は夫婦の話し合いで物事を取り決める手続きですが、慰謝料を請求する場合は、ある程度は請求の根拠となる証拠を示すのが一般的です。

調停段階で一切証拠を出さずにいると、相手方が慰謝料請求の根拠となる事実を否定した場合、調停委員会がどちらの言い分が正しいか判断できず、調停の進行に支障が出てしまうからです。

ただし、証拠を出すと、その後の手続きで相手方から反論や反証が出される可能性が高くなるため、訴訟まで見越している場合は証拠の出し方に留意すべきです。

慰謝料請求調停

家事調停には慰謝料請求調停という調停もあります。

しかし、慰謝料請求調停を申し立てることができるのは離婚後であり、離婚前は夫婦関係調整調停で慰謝料についても主張することになっています。

なお、夫婦関係調整調停には離婚と円満の2種類あり、離婚を求める場合は離婚調停を、夫婦関係修復を求める場合は円満調停を申し立てることになりますが、いずれの場合でも慰謝料を請求することができます。

訴訟

調停で解決できない場合、訴訟による解決を図る方法があります。

離婚を目指す場合は、離婚訴訟の附帯事項としてまとめて慰謝料を請求します。

一方で、慰謝料のみを請求する場合は、損害賠償請求訴訟を請求することになります。

訴訟で重要になるのは、慰謝料請求の根拠となる事実を明らかにする客観的証拠です。

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客観的証拠が揃っているほど慰謝料が認められる可能性が高くなるため、できる限りの証拠を収集しておくことが大切です。

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離婚ハンドブック編集部

投稿者プロフィール

家事事件(離婚、遺産分割、成年後見など)を専門に取り扱って11年になります。
これまでの実務経験から、当事者自身が離婚に関する知識を得て、自分で考えて判断することが「後悔の少ない離婚」につながるという考えており、その考えに基づいて「離婚ハンドブック」を運営しています。
サイト上では詳細なプロフィールは明かしておらず、仕事の依頼も受けていません。

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