フレンドリーペアレントルールとは?最高裁の判例と欧米の状況は?

ペアレントフレンドリールール

フレンドリーペアレントルールは、離婚時に親権者の適格性を判断するときの基準の一つです。

近年、家庭裁判所が「より寛容な面会交流計画を立てたこと」を理由に非監護親を親権者に指定し、フレンドリーペアレントルールを採用した判決として注目を浴びました。

フレンドリーペアレントルールとは

フレンドリーペアレントルールとは、離婚に伴う親権者の指定において、元配偶者とより寛容かつ友好的な関係を築くことができる親を優先する基準です。

英語では「friendly parents rule」と表記され、日本ではフレンドリーペアレントルールとカタカナ表記されるか「非監護親への寛容性の原則」、「友好的親条項」などと訳されています。

フレンドリーペアレントルールでは、以下の内容が親権者の適格性の判断基準とされます。

  • 夫婦の問題と親子の問題を切り離し、子どもと非監護親の面会交流に協力することができるか
  • 面会交流の円滑な実現・継続や、面会交流に消極的な子どもへの働きかけが、監護親の責務であることを理解しているか
  • 子どもに対して非監護親の存在を肯定的に伝えることができるか

離婚は夫婦の問題であり、面会交流や養育費の支払いは親子の問題です。

しかし、離婚した相手へのネガティブな感情から夫婦の問題と親子の問題を切り離せず、離婚後の面会交流に消極的な意向を示したり、非監護親の悪口や誹謗中傷を繰り返して子どもを洗脳し、子どもを片親疎外(片親引き離し症候群)にする監護親が一定数いるのが現状です。

片親引き離し症候群とは、離婚または別居後に子どもを引き取って育てている親(同居親、監護親)が、もう一方の親(別居親、非監護親)の悪口や誹謗中傷を吹き込んで子どもを洗脳し、子どもが非監護親を拒否するよう仕向けて面会交流実施を阻んでいる状態です。

片親疎外(PA)とは、子どもが監護親の影響を受けて、正当な理由がないのに非監護親との交流を拒否している状態のことです。

引用:離婚ハンドブック

フレンドリーペアレントルールでは、夫婦の問題が離婚後の親子関係に及ぼす影響を最小限に抑えて子どもの健全な成長を守るために、より元配偶者に寛容で面会交流に肯定的な親が親権者として優先されます。

欧米におけるフレンドリーペアレント

離婚後共同親権を採用する欧州諸国では、非監護親は親権者として当然に子どもと面会交流を行うことができます。

つまり、離婚後共同親権という制度自体が、離婚した夫婦にフレンドリーペアレントであることを要請しているのです。

アメリカ合衆国では、離婚後の子どもの親権について、原則として「共同親権(共有親権)」か「面会交流権付きの単独親権」を選択します。

親権の種類 内容
共同親権(共有親権)
  • 法的共同親権:父母それぞれが子どもに関する主要な決定をする権利
  • 物理的共同親権:父母それぞれが子どもと多くの時間を過ごす権利

【例】

  • 一週間ごとに交代で父母と過ごすなど

全ての州が共同親権を選択肢として規定(共同親権を法的推定としている州もあり)

面会交流権付きの単独親権 父母の一方が「子どもを監護養育し、子どもに関する主要な決定をする権利」を持ち、もう一方が「一定時間を子どもと共に過ごす権利(面会交流権)」を持つ。

【例】

  • 隔週末に泊付(金曜日の夜から日曜日の夜までの2泊3日など)
  • 週に一度平日の夜
  • 祝日のうち半分
  • 夏休みの数週間程度

いずれの場合も、非監護親には子どもと多くの時間を過ごす権利が与えられており、その実現には元夫婦同士がフレンドリーペアレントであることが求められます。

日本の家庭裁判所における親権者指定の基準

日本の家庭裁判所における親権者指定の主な基準は、以下のとおりです。

基準 概要
監護の継続性 特段の事情がない限り、子どもの生活環境を変えずに維持すべきという基準
子どもの意思 親権者についての子どもの意思を尊重するという基準

  • 子どもが15歳以上:子どもの意思が最大限尊重される
  • 子どもが15歳未満:子どもの意思に加え、家庭環境や関係機関からの情報などを総合して判断される
監護態勢 子どもが健全に成長するために親が準備できる監護養育の態勢を考慮する基準

従前の家事育児、収入、子どもと接する時間、子どもとの関係性、健康状態、監護補助者の有無と補助の程度、住む場所、周辺環境など

子の連れ去りの有無や程度 違法に子どもの監護者になっていないかという基準
きょうだいの同居 できる限り、きょうだいが同居できるようにするという基準

特に、従前の判例で重視されているのが監護の継続性です。

つまり、子どもの生活環境を頻繁に変えるべきではないという考えに基づいて、裁判所が関与した時点の子どもの監護に特段の問題がなければ、その時点で子どもを監護する親を親権者に指定するということです。

近年は、ハーグ条約との兼ね合いもあって、子の連れ去りなどで違法に子どもの監護を開始した場合には監護の継続性が認められにくくなりましたが、従前は、いわゆる「連れ去った者勝ち」となっていました。

また、ここ数年の判例を見ても、依然として監護の継続性を理由として親権者を指定する判例が多くなっています。

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フレンドリーペアレントルールを採用した判例と最高裁判所の判断

フレンドリーペアレントルールを採用した判決として注目されたのが、千葉家庭裁判所松戸支部が2016年3月29日に出した離婚裁判の判決です。

この裁判は、父親に無断で長女(当時2歳4ヶ月)を連れて家を出た母親が、離婚や長女の親権者になることを求めて起こしたもので、父母のいずれが長女の親権者になるかが争われていました。

原審判決(千葉家庭裁判所松戸支部、2016年3月29日)

千葉家庭裁判所松戸支部の庄司芳男裁判官は、以下の事情を考慮して、長女が両親の愛情を受けて健全に成長するためには、長女の親権者を非監護親である父親に指定することが相当という判断を下しています。

  • 母親が、父親の了解を得ずに長女を連れ出し、約5年10ヶ月にわたって長女を監護した。
  • 母親は、その間、長女と父親の面会交流には合計6回程度しか応じていない。
  • 母親は、今後も、一定の条件の下での面会交流を月1回程度の頻度とすることを希望している。
  • 父親は、長女との生活が実現した場合の監護計画と意欲を有している。
  • 父親は、緊密な親子関係の継続を重視し、年間100日に及ぶ長女と母親の面会交流の計画を提示している。

判決では、「長女を現在の慣れ親しんだ環境から引き離すのは、長女の福祉に反する」という監護の継続性に関する母親側の主張について、父親側の監護態勢や年間100日に及ぶ面会交流の予定を理由に退け、判決確定後すぐ長女を父親に引き渡すべきとしています。

控訴審判決(東京高等裁判所、2017年1月26日)

しかし、控訴審である東京高等裁判所の菊池洋一裁判長は、長女母親の下で安定した生活を送っていることなどを理由に、長女の利益の観点から現在の監護状況の変更が必要な事情は見当たらないとして、母親を親権者とする判断を下しました。

つまり、監護の継続性を重視した判断を下したのです。

また、長女の健全な成長や子の利益が面会交流だけで確保されるわけではなく、面会交流の意向が他の事情より重要なわけでもないとして、原審が父母の面会交流の意向を過剰に重視して親権者を判断していることを批判しています。

上告審決定(最高裁判所、2017年7月12日)

最高裁判所第二小法廷(鬼丸かおる裁判長)は、上告審で審理すべき事項(判例違反や法律解釈に関する重要な内容など)がないと判断し、父親の上告を退ける決定をしました。

この結果、控訴審判決が確定し、長女の親権者は母親となりました。

父親の敗訴というかたちで終局しましたが、フレンドリーペアレントルールを採用した原審判決がニュースなどで報道され、その認知度が高まった点において意義のあるケースです。

離婚ハンドブック編集部

投稿者プロフィール

家事事件(離婚、遺産分割、成年後見など)を専門に取り扱って11年になります。
これまでの実務経験から、当事者自身が離婚に関する知識を得て、自分で考えて判断することが「後悔の少ない離婚」につながるという考えており、その考えに基づいて「離婚ハンドブック」を運営しています。
サイト上では詳細なプロフィールは明かしておらず、仕事の依頼も受けていません。

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