付調停とは?審判移行とは?別表第2事件に特徴的な制度と管轄について

婚姻費用分担事件など、家庭裁判所の手続きの中には調停と審判の両方を利用できる事件類型(別表第2事件)があります。

しかし、調停を経ず審判を申し立てた場合、家庭裁判所の職権で調停に付されることがあります。

一方で、調停が不成立で終了しても手続きが終了せず、自動的に審判手続きに移行します。

別表第2事件とは

別表第2事件とは、家事事件手続法の別表第2に掲載された家事事件の一類型です。

別表第2事件は、まずは当事者間の協議による解決を目指し、協議による解決ができない場合は家庭裁判所が判断を示すべきとされており、調停と審判の両方の手続きが利用できます。

一方で、人事訴訟事項や公益性の高い事項が含まれておらず、調停または審判で事件が終結します(審判に不服がある場合の即時抗告制度は設けられていますが、訴訟提起はできません)。

人事訴訟事項本来的には訴訟で争われるべき事項(一般調停事件、特殊調停事件(合意に相当する審判事件)など)
公益性の高い事項当事者同士の解決は認められず、家庭裁判所が判断を示すべき事項(別表第1事件など)

主な別表第2事件は、以下のとおりです。

子の監護者指定、子の引渡し、面会交流、財産分与請求、祭祀承継者指定、親権者指定、親権者変更、扶養請求、遺産分割、寄与分、年金分割、婚姻費用分担など

調停と審判のいずれを先に申し立てることもできる

いずれの事件も、手続上は調停と審判のいずれを先に申し立てることもできます。

例えば、当事者間の紛争性が極めて高く、話し合いによる解決が困難と思われる場合、調停を経ずに審判を申し立てることも認められています。

しかし実際のところ、審判を先に申し立てても付調停となることがほとんどです。

別表第2事件の終わり方

  • 調停成立
  • 調停不成立で審判移行して家庭裁判所がした審判が確定
  • 家庭裁判所がした調停に代わる審判が確定
  • 家庭裁判所がした調停に代わる審判が当事者の異議申立てで却下され、その後、家庭裁判所がした審判確定

調停成立で終了した場合でも確定審判と同じ効力をもちます。

つまり、取り決めた内容について、義務者に履行させる履行勧告、履行命令、強制執行などの手続きを利用することができます。

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付調停とは

付調停とは、別表第2事件について調停を経ずに審判が申し立てられた場合に、家庭裁判所が職権で調停に付す手続きです。

第244条の規定により調停を行うことができる事件についての訴訟又は家事審判事件が係属している場合には、裁判所は、当事者(本案について被告又は相手方の陳述がされる前にあっては、原告又は申立人に限る。)の意見を聴いて、いつでも、職権で、事件を家事調停に付することができる。

(家事事件手続法第274条第1項)

条文上、家庭裁判所が付調停をするには当事者の意見を聴く必要がありますが、付調停に対して即時抗告することは認められていません。

付調停となる理由

別表第2事件の当事者の多くは家族や親族の関係にあるため、家庭裁判所に持ち込まれた紛争の解決のされ方が家族関係や親族関係に直結します。

当事者同士が紛争について十分に話し合い、互いに譲歩しあって「まあ、これくらいで紛争を解決させようか。」と思える妥協点を見つけることができれば、紛争は解消または沈静化するでしょう。

一方で、家庭裁判所が審判で判断を示すと、紛争自体は一応の決着をみますが、当事者間で勝ち負けがつくことになり、その後の関係性に深刻な影響を与えてしまうおそれがあります。

そのため、家庭裁判所の実務では、自主的な解決を第一次的には当事者の話し合いによる解決が望ましいという別表第2事件の性質を重視されており、調停を経ず審判が申し立てられたとしても、申立書などから当事者間に話し合いの余地があると認められる場合には、職権で調停に付されるのです。

付調停にならない場合

調停を経ず審判が申し立てられた場合に、必ず付調停となるわけではありません。

例えば、申立書などから紛争性が極めて高く話し合いの余地がないことが明らかな場合や、申立てまでに当事者同士の協議が繰り返されたにも関わらず解決に至っていないことが明らかな場合などは、調停を経ず審判を申し立てても付調停とならないことがあります。

したがって、最初から家庭裁判所の判断を求めたい場合は、紛争性の高さ、話し合いの余地がないこと、申立て前の協議の経過などを具体的に主張し、それを裏づける資料を提出することが大切になります。

付調停と管轄の家庭裁判所

付調停となった場合の管轄については、家事事件手続法第274条第2項に規定されています。

裁判所は、前項の規定により事件を調停に付する場合においては、事件を管轄権を有する家庭裁判所に処理させなければならない。ただし、家事調停事件を処理するために特に必要があると認めるときは、事件を管轄権を有する家庭裁判所以外の家庭裁判所に処理させることができる。

(家事事件手続法第274条第2項)

調停の管轄は、原則として、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所ですが、審判の管轄は、事件によっては夫または妻(申立人または相手方)の住所地を管轄する家庭裁判所となっています。

そのため、居住地域で手続きを行うために、自分の住所地を管轄する家庭裁判所に審判を申し立てたとしても、付調停となると、家事事件手続法第274条第2項の規定どおり、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所で調停が行われるのが原則です。

ただし、同条ただし書では「家事調停事件を処理するために特に必要があると認めるときは、事件を管轄権を有する家庭裁判所以外の家庭裁判所に処理させることができる。」と規定されており、管轄外の家庭裁判所に処理させることができます。

また、同条第3項では「家庭裁判所及び高等裁判所は、第一項の規定により事件を調停に付する場合には、前項の規定にかかわらず、その家事調停事件を自ら処理することができる。」と規定され、自庁処理することも可能です。

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審判移行とは

審判移行とは、別表第2事件の調停が不成立で終了した場合に、当事者が何ら手続きをしなくても審判へ移行する制度です。

離婚調停の場合、調停が不成立で終了すると手続きがいったん終了し、さらに離婚を求めるには別途離婚訴訟を提起しなければなりません。

しかし、別表第2事件の場合、調停が不成立になっても手続きが終了せず、自動的に審判手続きに移行し、家庭裁判所が判断を示します。

そのため、原則として、申立人が取下げをしない、調停をしない措置とならない限り、申し立てた内容について何らかの結果が得られます。

審判移行する理由

別表第2事件は、当事者間の紛争性が高い事件ですが訴訟事項ではなく、調停または審判以外に解決する方法がないため、調停が不成立になった場合に放置するのではなく、家庭裁判所が判断を示すべきとされています。

したがって、調停が不成立になった場合には調停申立てをしたときに審判の申立てがあったとみなされ、自動的に審判に移行して家庭裁判所が判断を示します。

審判移行と管轄の家庭裁判所

別表第2審判事件は、調停は、原則として、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てなければなりませんが、審判は事件によっては申立人の住所地を管轄する家庭裁判所への申立ても認められています。

例えば、婚姻費用分担請求審判は、夫または妻の住所地を管轄する家庭裁判所が管轄となっています。

しかし実務上は、審判移行によって管轄が増えたとしても、優先管轄の規定に基づいて調停が行われた家庭裁判所が優先されます。

この法律の他の規定により二以上の家庭裁判所が管轄権を有するときは、家事事件は、先に申立てを受け、又は職権で手続を開始した家庭裁判所が管轄する。

(家事事件手続法第5条)

調停が行われた家庭裁判所とは異なる管轄で審判をしたい場合、事件が移送される必要がありますが、移送は家庭裁判所の決定事項であり、当事者が移送の申立てをすることはできません。

移送の希望があることを伝える移送の上申は可能ですが、あくまで希望であり、認められるとは限りません。

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離婚ハンドブック編集部

投稿者プロフィール

家事事件(離婚、遺産分割、成年後見など)を専門に取り扱って12年の経験を踏まえ、「離婚ハンドブック」では、離婚に関する制度や手続きについて行政・司法機関よりも詳しく分かりやすく解説しています。
また、マイナンバー、国民年金、税金、養子縁組、青年後見など、日常生活の中で利用する制度や手続きを分かりやすく解説する記事も掲載しています。
サイト上では詳細なプロフィールは明かしておらず、仕事の依頼も受けていません。

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