夫婦別姓のメリットとデメリットは?日本の現状で夫婦別姓にするには?

    最終更新日: 2019.08.4

日本では「婚姻した夫婦は同じ苗字(以下「姓」という。)を名乗ること」が民法上に規定されており、一般的にも常識となっています。

しかし、日本以外では、婚姻しても夫婦がそれぞれの姓を名乗る夫婦別姓制度の国もあり、日本においても夫婦別姓を求める声が強まっています。

この記事では、夫婦別姓制度のメリットとデメリット、諸外国と日本の現状、日本で夫婦別姓にするにはどうするかについて解説します。

日本は夫婦同姓が原則

日本では、民法第750条に夫婦同姓(夫婦同氏)が規定されています。

夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。

(民法第750条)

民法第750条は、夫婦が第3の姓(夫と妻のいずれの姓とも異なる姓)を称することも禁止しています。

また、戸籍法第74条では、「夫婦が称する氏」を婚姻届に記載して届出を行う必要があることが、戸籍法第14条第1項では、戸籍の記載の順序が規定されています。

婚姻をしようとする者は、左の事項を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。

一 夫婦が称する氏

二 その他法務省令で定める事項

(戸籍法第74条)

「夫婦が称する氏」を記載せずに婚姻届を提出しても受理されません。

氏名を記載するには、左の順序による。

第一 夫婦が、夫の氏を称するときは夫、妻の氏を称するときは妻

第二 配偶者

第三 子

(戸籍法第14条第1項)

婚姻中に夫の姓を称するときは夫が戸籍の筆頭者となり、妻の氏を称するときは妻が戸籍の筆頭者となります。

日本で夫婦同姓が規定された時期

夫婦同姓が規定されたのは、1898年(明治31年)法律第9号によって定められた旧民法です。

旧民法では、「婚姻は妻が夫の家に入ること」であるという考え方に基づいて、「妻が夫の氏を称する」と規定されていました。

1947年(昭和22年)、日本国憲法の原理に基づいて民法が改正され、両性の本質的な平等(日本国憲法第24条)に基づいて「夫または妻の姓」のいずれかを選択できるようになりました。

しかし、夫婦同姓制度そのものは引き継がれて現在に至ります。

夫婦同姓の例外

外国人と婚姻して配偶者の姓を名乗る場合、当然に夫婦別姓が認められています。

外国人と婚姻をした者がその氏を配偶者の称している氏に変更しようとするときは、その者は、その婚姻の日から6箇月以内に限り、家庭裁判所の許可を得ないで、その旨を届け出ることができる。

(戸籍法第107条第2項)

条文を見るだけでは分かりにくいですが、「外国人配偶者の姓に変更する場合は届出をすることができる=届出をしない場合は別姓のまま」ということです。

日本では、夫婦とその間の子ども(夫婦と氏を同じくする子ども)を単位として戸籍を編製されますが、外国人は日本人と婚姻しても戸籍を持てず、日本の正式な姓を持つことができないという事情から、夫婦別姓が認められています。

つまり、日本人同士の夫婦は夫婦別姓が認められないのに、外国人と日本人の夫婦には夫婦別姓が認められるという不平等が生じているのです。

夫婦別姓制度とは

夫婦別姓制度とは、夫婦が法律上の婚姻をした後もそれぞれの婚姻前の姓(氏)を名乗る制度のことです。

夫婦別氏と呼ばれることもあります。

日本で夫婦別姓を求める声が強まっていることは冒頭に書いたとおりですが、導入賛成派と反対派がそれぞれメリットとデメリットを主張しています。

夫婦別姓制度のメリット

夫婦別姓制度の主なメリットは、以下のとおりです。

女性差別撤廃につながる

「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(女子差別撤廃条約)では、選択的夫婦別姓の導入が要求されています。

2015年時点においても、結婚後に姓を変えるのは約96%が女性という実情があり、夫婦別姓を実現することが女性差別撤廃につながると考えられているのです。

日本は、過去に3度、国際連合の女子差別撤廃委員会から「夫婦同姓制度が同条約に違反するとして改正の勧告を受けています。

仕事上の悪影響を及ぼさない

婚姻によって姓が変わると、仕事上で悪影響を受けることがあります。

例えば、姓が変わることにより、旧姓でやりとりしていた職場や取引先の人から同一人物だと認識してもらえなくなるおそれがあります。

特に、学者、医師、弁護士、作家など氏名が屋号となる職業に就いている場合の悪影響は計り知れません。

夫婦別姓になれば、婚姻に伴って姓が変わることがなく、こうした問題が生じることはありません。

通称使用の必要がなくなる

通称とは、正式なものではないが、特定の人などを表す呼び名として社会生活の中で通用する呼称のことです。

旧姓の通称使用は個人の同一性を維持することには有効ですが、人事、経理、税務などの事務関係では戸籍上の姓を使用することになり、本人も事務担当者も混乱しがちです。

例えば、仕事上の書面には通称の印鑑を押印し、事務関係の書面には戸籍上の姓の印鑑を押印している場合、押し間違いのおそれがあります。

夫婦別姓になれば婚姻前の姓を使用することができるので、旧姓を通称使用する必要がなくなります。

プライバシーの保護になる

通常、姓が変わるのは婚姻や離婚、養子縁組など限られた場合のみです。

そのため、夫婦同姓のままでは、婚姻や離婚をしたという事実が本人の意思とは無関係に周囲に知られることになり、プライバシーの侵害になるという指摘があります。

夫婦別姓が実現すれば、婚姻や離婚によって姓が変わらなくなるため、プライバシーの保護につながります。

個人の尊重になる

姓は、名前と同じく個人を表す大切なものであり、アイデンティティの一つです。

たとえ夫婦になりたいと思える相手と出会えたとしても、自分のアイデンティティである姓を相手の姓に変えることが耐えられないという人もいます。

また、耐えられないほどではないが、姓を変更することに違和感を覚える人は少なからずいます。

特に、婚姻時に姓を変えるのは女性が大半という状況から、「男女平等が求められる現代において、どうして女性だけが姓を変えないといけないのか。」と疑問を持つ女性は多いものです。

夫婦別姓であれば、個人のアイデンティティを維持したまま好きな相手と婚姻することができますし、違和感や疑問を抱くことも無くなります。

姓の変更による手続きが不要になる

婚姻によって姓が変わった後に手間がかかるのが、姓の変更の手続きです。

職場への届出だけでなく、運転免許証、パスポート、社会保険、年金、クレジットカード、銀行口座など旧姓使用していたものは全て変更の手続きを行わなければなりません。

夫婦別姓が実現すれば、婚姻による姓の変更に伴う手続きを行う必要がなくなります。

夫婦別姓制度のデメリット

夫婦別姓制度は、デメリットも指摘されています。

家族の一体感が失われる

夫婦別姓のデメリットの最たるものとして挙げられるのが、夫婦の一体感や絆が失われるということです。

日本では長らく婚姻中の夫婦同姓制度が採用されてきたので、「夫婦(家族)は同じ氏」という考え方が定着しており、夫婦別姓が採用されると夫婦関係に悪影響が及ぶと考える人が少なくありません。

姓で婚姻関係を把握しにくくなる

夫婦同姓の場合、姓から夫婦かどうかを判断することができますが、夫婦別姓制度が採用されて夫と妻の姓が別になると判断できなくなります。

例えば、同じ家に住む男女の姓が違うと、第三者から夫婦ではなく単なる同居人だと思われるかもしれません。

扶養や税金などの手続きを行う場合も、現在よりも夫婦であることを証明するのに手間がかかるようになる可能性も指摘されています。

子供の姓

夫婦別姓制度が採用された場合、子供は夫婦のいずれか一方の姓を使用することになり、子供が生まれたときに「夫婦のどちらの姓を名乗らせるか」について夫婦で協議する必要が生じます。

また、制度導入時に子どもがすでに大きくなっている場合、誰が子どもの姓を決めるのかという問題が生じますし、夫婦間または親子間で争いが生じる可能性も否定できません。

子供が夫婦のいずれかの姓を名乗り始める時期についても議論がありますが、現時点では、夫婦の婚姻時に子供が名乗る氏を決めておくという考え方が有力です。

制度導入時すでに婚姻している夫婦が混乱する

例えば、妻が「夫婦別姓が認められるなら別姓にしたい」と希望したのに対して夫が「夫婦は同性でいるべきだ」と主張して夫婦が対立するなど、夫婦別姓をめぐる夫婦間紛争が起こるおそれがあります。

夫婦別姓をめぐる世論

内閣府は、2017年(平成29年)度の「家族の法制に関する世論調査」において選択的夫婦別氏制度の導入に対する考え方を調査しており、その結果を公表しています。

調査結果では、「夫婦が希望する場合には、同じ姓ではなく、それぞれの婚姻前の姓を名乗ることができるように法律を改めた方がよい。」という意見についてどのように思うかという質問に対して、以下のような回答であったとされています。

回答内容割合
婚姻した夫婦は必ず同じ姓を名乗るべきで、法改正は不要29.3%
夫婦が婚姻前の姓を名乗ることを希望する場合、夫婦がそれぞれ婚姻前の姓を名乗れるよう法改正をしてもかまわない42.5%
婚姻した夫婦は必ず同じ姓を名乗るべきだが、婚姻前の姓をどこでも通称使用できるよう法改正することはかまわない24.4%

夫婦別姓賛成派が反対派を大きく上回る結果となっています。

日本に導入されるか

法務省は、選択的夫婦別氏(別姓)制度と例外的夫婦別氏(別姓)制度の2つを検討しています。

選択的夫婦別氏制度夫婦同姓と夫婦別姓を夫婦が選択できる制度
例外的夫婦別氏制度夫婦同姓制度を原則として、例外的に夫婦別姓を認める制度

ただし、導入されるかどうかを含め、現時点で確定した情報はありません。

日本人の夫婦が夫婦別姓にするには

法律で夫婦同姓が規定されている日本において、日本人の夫婦が夫婦別姓にするには、大きく2つの方法があります。

婚姻前の姓を通称使用する

婚姻して姓を変えても、仕事上で不便が生じないように婚姻前の姓を通称使用する人は一定数います。

法律上の婚姻をしているため戸籍上は夫婦同姓になっていますが、職場など一定の場面では事実上、夫婦別姓となっているケースです。

婚姻の届出をせず内縁・事実婚関係を継続する

夫と妻の両方が婚姻によって姓を変えたくないという理由から、法律婚の夫婦と同じ生活を送りながら、婚姻の届出をせず内縁・事実婚関係を継続する夫婦も増えています。

婚姻が成立していないので、戸籍上も夫と妻の氏は別のままです。

ただし、法律上の婚姻の効力が生じず、夫婦間に相続権が発生しない、夫婦間に生まれた子どもが非嫡出子となるなどのデメリットがあります。

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内縁とは?内縁の妻の意味とメリット、事実婚・結婚との違いは?

日本以外の国は夫婦別姓か

諸外国では夫婦別姓の国が多く、日本のように婚姻中の夫婦同姓のみを法律で規定しているほぼありません。

アジア

中国夫婦別姓、夫婦同姓、複合姓を選択
台湾夫婦別姓または複合姓を選択
韓国夫婦別姓
北朝鮮規定なし(夫婦別姓の慣行)
モンゴル夫婦別姓
タイ夫婦同姓または夫婦別姓を選択
フィリピン女性が氏を変更(夫の姓をミドルネームとする、夫の姓を使用する、夫の氏名にMrsをつける)または夫婦別姓を選択
マレーシア婚姻による姓の変更なし
シンガポール夫婦同姓または夫婦別姓を選択
ベトナム婚姻による姓の変更なし
カンボジア婚姻による姓の変更なし
ミャンマーファミリーネームがない
インド婚姻による姓の変更に関する規定なし(自由に変更できる)
ブータン婚姻による姓の変更なし
パキスタン夫婦同姓または夫婦別姓(妻が夫の姓を使用する)を選択

アジア以外

欧米諸国についても確認しておきます。

アメリカ夫婦同姓、夫婦別姓、ミドルネームなどから選択(州による)
カナダ夫婦同姓または夫婦別姓を選択
イギリス夫婦が自由に選択
フランス法的な規定なし
ドイツ夫婦同姓、夫婦別姓、複合性を選択
イタリア夫婦同姓、夫婦別姓、複合性を選択
スウェーデン夫婦同姓、夫婦別姓、ミドルネームを選択
デンマーク夫婦同姓、夫婦別姓、ミドルネームを選択
ロシア夫婦同姓、夫婦別姓、結合姓を選択
オーストラリア夫婦同姓、夫婦別姓、結合姓を選択

夫婦別姓制度をめぐる裁判

夫婦別姓制度については1989年に家裁への不服申し立てがなされたのを皮切りに、同申立てや戸籍法規定に関する国家賠償訴訟、事実婚夫婦による国家賠償訴訟などが相次いでいます。

夫婦別姓制度をめぐる裁判の最近の動向として、最高裁判所の判例と直近の事件に触れておきます。

最高裁判所の判例

2015年12月16日、最高裁判所大法廷は、「婚姻時の夫婦別姓を認めず、夫婦同姓を義務づける民法第750条の規定が憲法に違反するかどうか」が争われた訴訟で、規定を合憲とする判決を言い渡しています。

このケースは、原告の男女5人が、「夫婦同姓の規定が女性への間接差別であり、憲法の法の下の平等に違反する」などと主張して合計600万円の国家賠償を求めていました。

判決では、「夫婦同姓制度は日本社会に定着してきた。」「家族の呼称を一つにするのは合理性がある」となどの理由を挙げて夫婦同姓規定が憲法に違反しないという判断を示すとともに、夫婦別姓を認めるべきかどうかについては国会の議論に委ねられるべきという見解が示されています。

また、女性裁判官3人を含む5人の裁判官が「違憲」という意見を表明しています。

東京地方裁判所の裁判

2019年3月25日、東京地方裁判所は、「婚姻時に夫婦別姓を選択できない戸籍法の規定が憲法に違反するかどうか」が争われた国家賠償請求訴訟で、戸籍法の規定は合憲であるとの判断を示しました。

このケースは、東京のソフトウエア開発会社「サイボウズ」の青野慶久社長ら男女4人が原告となって注目された裁判です。

戸籍法上、日本人と外国人の婚姻では夫婦別姓が選択できる一方で、日本人同士の婚姻では夫婦別姓が選択できないことが法の下の平等に反するなどと主張し、220万円の国家賠償を求めていました。

判決では、「日本人と外国人の結婚では民法が適用されないと解釈され、日本人同士の結婚とは状況が異なる」とした上で、「夫婦別姓によって法律上の姓が2つになる事態は現行法で予定されておらず、夫婦別姓を認めないことには制度上の合理性がある。」と訴えを退けています。

原告側は控訴する考えを示しています。

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