婚姻費用の減額・増額請求の事由は?減額・増額調停や審判の方法は?

婚姻費用 減額 増額

婚姻費用は、取り決める時点における夫婦の収入・資産・社会的地位や子どもの人数・年齢など一切の事情を考慮して、夫婦の協議や家庭裁判所の調停・審判で決めます。

しかし、その後の夫婦の経済状況等の変化、子どもの進学や病気・ケガ、社会情勢の変化などにより、婚姻費用を調整する必要が生じることがあります。

家庭裁判所の調停や審判で決まった婚姻費用についても、婚姻費用の減額または増額の調停・審判を申し立てることにより、変更することができます。

婚姻費用の減額・増額が認められるには

婚姻費用の分担について、夫婦間の合意で取り決めていた場合、減額や増額についても夫婦間の合意に基づいて変更することができます。

一方で、家庭裁判所の調停や審判で決まった場合、減額や増額を請求するには婚姻費用の減額・増額の調停や審判を改めて申し立てる必要があります。

婚姻費用の減額・増額の調停では、夫婦間の合意に基づいて金額を調整し、調停を成立させることができます。

しかし、夫婦の協議や調停で話し合いがまとまらず、審判で婚姻費用の減額・増額を決める場合、減額・増額が認められるか否かは以下の基準で判断されます。

  • 事情の変化とその予測可能性
  • 婚姻費用を減額・増額することの必要性

事情の変化とその予測可能性

家庭裁判所の調停や審判では、その当時の夫婦の収入に応じて婚姻費用を分担する人(義務者)、分担額、支払方法を取り決めます。

そのため、調停成立後や審判確定後に夫婦の収入などが「大きく変化」し、その変化が「婚姻費用を取り決めた時点で予測できないものであった」場合には、婚姻費用の減額・増額が認められます。

平成26年11月26日に東京高等裁判所が出した判決では、婚姻費用の変更について、以下のとおり判示されています。

事情の変更による婚姻費用分担金の減額は、その調停や審判が確定した当時には予測できなかった後発的な事情の発生により、その内容をそのまま維持させることが一方の当事者に著しく酷であって、客観的に当事者間の衡平を害する結果になると認められるような例外的な場合に限って許される

(平成26年11月26日東京高等裁判所判決)

婚姻費用が頻繁に変更されることにより夫婦の生活が不安定になることを防ぐため、この基準が設けられています。

婚姻費用を減額・増額することの必要性

家庭裁判所で取り決めた婚姻費用を変更するには、減額や増額が必要になる程度の事情の変更があったことを主張しなければなりません。

夫婦の収入に変動があっても、取り決められた婚姻費用の範囲内で支障なく生活できていると判断されると、婚姻費用の減額・増額が認められません。

婚姻費用の減額事由

婚姻費用の主な減額事由は、以下のとおりです。

  • 義務者の収入や資産が減少した
  • 権利者の収入や資産が増加した
  • 物価変動などによる生活費の上昇

義務者の収入や資産が減少した

婚姻費用を取り決めた時点から、当時は予想できなかった事情によって義務者の収入や資産が大きく減少した場合、減額事由となります。

例えば、リストラによる失職、転職による収入の大幅な減少、病気やケガによる就労困難、自営業の経営破たん、自己破産、生活保護受給などが考えられます。

ただし、婚姻費用の支払義務は、夫婦の扶助義務や親の子どもに対する扶養義務に基づくもので、離婚により婚姻が解消されるまで消滅しません。(子どもの扶養義務は離婚後も継続する)。

したがって、収入や資産の減少は婚姻費用の減額事由であって免除事由ではなく、一時的に婚姻費用の支払が困難な事情が生じた場合でも、支払えるようになった時点で支払わなくてはなりません。

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権利者の収入や資産が増加した

権利者の収入や資産の大幅な増加も、婚姻費用を減額する事由となります。

例えば、権利者が就労した、権利者の就労形態がパートから正社員になった、起業したなどで権利者の収入や資産が増えた場合が考えられます。

ただし、権利者の収入が増えたからといって必ず婚姻費用の減額が認められるわけではなく、権利者が監護する子どもの教育費や医療費、生活費などを考慮して判断されます。

物価変動などによる生活費の上昇

物価変動などにより、取り決めた婚姻費用の支払いが困難になった場合、婚姻費用の減額が認められることがあります。

例えば、婚姻費用と取り決めてから何年も別居を継続するうちに、当時では予想できなかったくらい物価が高騰した場合などが考えられます。

婚姻費用の増額事由

婚姻費用の主な増額事由は、以下のとおりです。

  • 義務者の収入や資産が増加した
  • 権利者の収入や資産が減少した
  • 子どもの治療費や教育費が増加した

義務者の収入や資産が増加した

義務者の収入や資産が減少すると婚姻費用の減額事由になりますが、増加すると増額事由となります。

例えば、転職による収入の大幅増加、起業の成功などが考えられます。

減額の場合と同様、収入や資産の増加だけでなく、夫婦の生活水準や子どもの人数・年齢など、一切の事情を考慮して増額を認めるか否か判断されます。

権利者の収入が減少した

権利者の収入が減少し、取り決めた婚姻費用の分担額では生活できなくなった場合も、増額事由です。

例えば、病気やケガで長期療養が必要になった、リストラにより失職したなどで収入が減少することが考えられます。

義務者が「不足分は生活保護を受給すれば良い。」と主張することがありますが、生活保護よりも夫婦の扶助義務が優先されるので、生活保護を受給しないからといって増額が認められないことにはなりません。

子どもの治療費や養育費が増加した

婚姻費用には、子どもの扶養義務に基づく養育費が含まれています。

そのため、子どもが私立学校に進学して教育費が増加したり、子どもが病気やケガで継続的に治療が必要になったりした場合、婚姻費用の増額事由となります。

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婚姻費用分担(減額・増額)調停の申立て方法

家庭裁判所の調停や審判で取り決めた婚姻費用を変更するには、婚姻費用分担(減額・増額)調停や審判を申し立て、分担額や支払方法を決めなおすことになります。

夫婦間の合意により、事実上婚姻費用の分担額を変更することはできますが、法律上の効力はありません。

つまり、権利者は、いつでも調停や審判で決まった金額を支払うよう請求することができ、事実上減額していた分の婚姻費用を未払分として請求することもできます。

そのため、調停や審判で決まった婚姻費用の減額・増額を希望する場合は、調停や審判で決めなおすことが重要です。

婚姻費用分担(減額・増額)については、まず調停で話し合い、夫婦の合意ができない場合に不成立で終了させて審判移行となるのが一般的なので、調停の申立て方法について解説します。

なお、調停を経ずに審判を申し立てることもできますが、通常、家庭裁判所の職権により調停に付されます。

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申立権者

夫または妻です。

申立先(管轄)

婚姻費用分担の調停や審判をした家庭裁判所です。

調停や審判の後に転居している場合なども、調停や審判をした家庭裁判所に申立てを行うことになります。

他の家庭裁判所での調停を希望する場合は、申立て時に問い合わせてください。

申立ての必要書類

申立てに必要な書類は、以下のとおりです。

  • 申立書:原本1通とコピー2通(裁判所用1通、相手方送付用1通、申立人用1通)
  • 申立事情説明書:原本1通
  • 連絡先等の届出書:1通
  • 進行に関する照会回答書:1通
  • 夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書):1通
  • 婚姻費用分担を取り決めた調停調書または審判書
  • 夫婦の収入に関する資料:源泉徴収票のコピー、給与明細のコピー、確定申告書のコピーなど
  • 婚姻費用の減額・増額を請求する根拠となる資料:退職証明書、雇用保険受給者証、病気やケガの診断書、子どもの学費に関する資料、子どもの治療費に関する資料など

その他、追加で資料提出を求められることがあります。

申立てにかかる費用

申立てには、以下の費用がかかります。

  • 収入印紙:1200円分
  • 郵便切手:各家庭裁判所による

申立ての窓口

家庭裁判所の家事部(係)です。

申立権者である夫または妻が、必要書類と費用を持参する方法により申立てを行います。

窓口で書面審査や費用の確認が行われ、申立てが受理されます。

申立て後の流れ

家庭裁判所は、申立てを受理した事件について、担当裁判官1人と調停委員2人を決定し、調停の初回期日を指定します。

申立ての受理から2週間前後で、調停の初回期日(申立ての受理から1ヶ月程度後の平日)が記載された調停期日通知書が申立人と相手方に届きます。

相手方に対する封書には、申立書のコピーや進行に関する照会書が同封されています。

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離婚ハンドブック編集部

投稿者プロフィール

家事事件(離婚、遺産分割、成年後見など)を専門に取り扱って11年になります。
これまでの実務経験から、当事者自身が離婚に関する知識を得て、自分で考えて判断することが「後悔の少ない離婚」につながるという考えており、その考えに基づいて「離婚ハンドブック」を運営しています。
サイト上では詳細なプロフィールは明かしておらず、仕事の依頼も受けていません。

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