逆DVの特徴と事例は?妻からの暴力の相談先と離婚や慰謝料の請求方法

逆DV 妻 夫 暴力

DVといえば「夫が妻に暴力を振るう」というイメージを持つ人が多いですが、近年、「妻が夫に暴力を振るう」ケースが増えています。

逆DVとは

逆DVとは、妻から夫に対する家庭内暴力です。

DVは、「domestic violence(家庭内暴力)」の略であり、妻から夫に対する暴力も含まれます。

しかし、一般的にDVといえば「夫から妻に対する暴力」を指して使われることが多く、一般的なDVとは反対という意味で「逆DV」と呼ばれるようになったのです。

法律婚の夫婦間だけでなく、内縁・事実関係にある男女間における女性から男性に対する暴力も逆DVと呼ばれます。

日本では近年、女性の社会進出や地位の向上が進み、「男は仕事、女は家事育児」という性別に対する役割意識が薄れつつあります。

それに伴って、仕事中心の生活を送る女性や、家事育児に積極的に参加する男性が増加し、夫婦の役割が逆転している家庭も増えています。

こうした状況で、妻から夫に対するDVが増加するとともに、夫も被害を訴えやすくなったと考えられています。

逆DVの状況

日本労働組合総連合会が発表している「ハラスメントと暴力に関する実態調査(2017年11月16日)」では、逆DVに関する調査結果が示されています。

調査は、589人(女性294人、男性295人)の事実婚を含む婚姻経験者に対して行われました。

配偶者から暴力を受けた経験があるか
  • 心理的攻撃(モラハラ)が24.4%
  • 身体的暴力(身体的DV)が14.8%
  • 経済的圧迫(経済的DV)が13.9%
  • 性的強要(性的DV)が9.8%
男女別
  • 女性:37.1%(約3人に1人)
  • 男性:26.1%(約4人に1人)

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逆DVの種類・特徴・事例

逆DVには、夫から妻に対するDVと同じく、身体的DV、モラハラ(精神的DV)、経済的DV、性的DVなどがあります。

身体的DV

身体的DVとは、実際に殴る蹴るなどの暴行を加えて身体を傷つけることです。

殴る、蹴る、引っかく、つねる、物を投げる、包丁を突き付ける、物で殴るなど

逆DVの場合、力では夫に及ばない妻が、刃物や鈍器など凶器を使って暴力を振るい、夫に大きな怪我や後遺症を負わせることがあります。

また、感情的になって包丁を夫に突きつけるなどして、要求をのむよう強要するケースも少なくありません。

モラハラ(精神的DV)

モラハラ(モラルハラスメント)とは、身体的暴力を伴わず、罵詈雑言や嫌がらせなどで配偶者を精神的に負いおいつめるDVです。

暴言を吐く、責めを負う理由がない配偶者を執拗に責め立てる、配偶者の人格を否定する発言を繰り返す、束縛するなど

逆DVの場合、妻が「私より稼ぎが少ない無能な夫」、「仕事も家事育児もろくにこなせないダメなやつ」などと夫の人格を否定したり、「お前なんかと結婚したせいで人生台無しだ。」などと八つ当たりで暴言を吐いたりします。

経済的DV

経済的DVとは、資力のある夫婦の一方が、資力がないまたは乏しい配偶者の金銭的自由を制限することです。

生活費を渡さない、夫の給料を全額巻き上げる、小遣いや食事代を渡さない、仕事に必要な交通費や被服費などを渡さないなど

性的DV

性的DVとは、配偶者の同意なく性行為を強要することです。

仕事で疲れていても強引に性行為を求められる、望まない性的嗜好を強要されるなど

性的DVは、身体的DVと同じく「夫から妻に対して」行われると思われがちですが、「妻から夫に対して」行われるケースも報告されています。

身体的DVとモラハラの訴えが多い

逆DVとして夫から訴えがあるのは、身体的DVとモラハラが圧倒的に多くなっています。

ただし、逆DVの被害を受けている夫は、明らかなDVを受けている場合でも、DVではなく妻との性格の不一致の一事情としてDVを主張したり、「言い返したからかな。」などと自分に非があるように主張したりすることがあります。

逆DVの相談先と相談時の特徴

上で示した「ハラスメントと暴力に関する実態調査」では、配偶者や交際相手などからDVを受けた経験があると回答した331人に対して、誰に相談したかも質問しており、以下の結果となっています。

相談した 35.3%
どこにも相談しなかった 64.7%

逆DVの相談先

また、相談したと回答した人117人に相談先を質問した結果は、職場の上司や人事担当者が26.5%、職場以外の知人・友人が24.8%、職場の同僚などが20.5%、警察が11.1%、公的な機関が6.8%となっていますが、男女で差が生じています。

女性
  • 1位:親など身近な人(38.0%)
  • 2位:職場以外の知人・友人(26.8%)
  • 3位:職場の同僚など(21.1%)
男性
  • 1位:職場の上司や人事担当者(39.1%)
  • 2位:親など身近な人(28.3%)
  • 3位:職場以外の知人・友人(21.7%)

逆DVを受けた男性は、親など身近な人よりも職場の関係者に相談することが多くなっているのです。

また、警察に相談した男性は10.9%、行政の相談窓口などは8.7%と低く、公的機関への相談率の低さも目立っています。

逆DVが認知されるようになったといっても、女性からDVやモラハラを受けていると相談することに恥ずかしさを感じる男性は依然多く、身近な人に相談するのはハードルが高いというのが現状のようです。

逆DVを相談できる公的機関

逆DVを相談できる公的機関としては、警察署や福祉事務所があります。

都道府県によっては男性のDV相談窓口を設置していないところもありますが、総合窓口で相談したい旨を伝えれば、担当者が対応してくれます。

逆DVを相談したときの相談先の反応

逆DVは、DVを相談したときの「相談先の反応」にも特徴があります。

上記調査では、暴力を受けて相談をした経験がある117人に対して相談時の反応を質問したところ、「相談を親身に聞いてくれなかった。」と回答した割合は男性が23.9%となっており、女性の14.1%と比較して有意に高くなっています。

逆DVを相談をすること自体のハードルが高いことに加え、相談しても親身になって聞き入れる体制が不十分で、二次被害を受けている人がいるということです。

相談先の反応で二次被害を受けるという問題は女性のDVでも少なくありませんが、逆DVの場合にも同じ問題が生じているのです。

したがって、逆DVの相談先は慎重に選択する必要があり、二次被害を受けた場合を想定して2ヶ所以上の相談場所を確保しておくことが大切です。

逆DVを理由に離婚する方法

逆DVを理由に離婚するには、協議離婚、調停離婚(審判離婚)、裁判離婚のいずれかの方法を選択します。

協議離婚

協議離婚する場合、夫婦間で離婚の合意ができれば理由に関わらず離婚することができるため、逆DVを主な理由として離婚の手続きを進めることもできます。

ただし、身体的DVやモラハラを受けている場合、夫婦だけで協議するとさらに被害を受けるおそれがあるため、第三者を同席させて離婚協議を進めるか、最初から離婚調停を申し立てることも検討してください。

また、逆DVによって生命や身体が危険にさらされる場合には、離婚の話し合いの前に別居し、警察への相談や保護命令の申立てを検討する必要があります。

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調停離婚(審判離婚)

調停離婚する場合も、協議離婚と同じく、夫婦が離婚に合意すれば離婚を成立させることができます。

調停委員会が運営する調停の場で離婚について話し合う手続きで、夫婦が交互に調停室に入って意見や主張を調停委員に伝えるという方法によって進行するため、基本的には夫婦が顔を合わさずに離婚の話し合いをすることができます。

しかし、逆DV加害者による待ち伏せや調停室への殴り込みなどのおそれがある場合には、事前に担当裁判所書記官に相談し、呼出し時間や期日の調整、動線の検討、警備などの配慮をしてもらってください。

なお、審判離婚は、離婚調停における夫婦の合意内容に基づいて裁判所が審判を出す手続きであり、留意事項は調停離婚と変わりません。

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裁判離婚

裁判離婚で離婚する場合、民法に規定された法定離婚事由がなければ、家庭裁判所に離婚を認めてもらうことができません。

夫婦の一方は、以下の場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。

  • 配偶者に不貞な行為があったとき。
  • 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
  • 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
  • 配偶者が強度の精神病に罹り、回復の見込みがないとき。
  • その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

(民法第770条第1項)

逆DVという離婚事由はないため、原則として、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」の事情の一つとして逆DVを主張することになります。

離婚裁判では、主張とそれを裏づける証拠資料の提出が重要な意味を持つため、モラハラ場面の録音データや、身体的DVで怪我をしたり精神疾患を発症したりした場合の診断書などを収集しておく必要があります。

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逆DV加害者である妻への慰謝料請求

逆DVを受けていた場合、離婚時に慰謝料を請求することができます。

逆DVによる慰謝料の相場は、夫から妻へのDVに対する慰謝料と同じく50~300万円程度ですが、請求の根拠となる事実が存在し、それを明らかにする証拠が揃っていないと請求が認められません。

逆DVの証拠資料

逆DVで慰謝料を請求する場合に求められる主な証拠資料は、以下のとおりです。

  • 身体的DV:診断書、患部を撮影した写真(年月日や撮影場所が分かるように撮影されたもの)
  • モラハラの場合:暴言などを録音したデータなど(録音日が分かるもの)
  • 経済的DVの場合:預貯金口座のコピーなど(生活費が入金されていない、または、給料が巻き上げられていることが分かるもの)
  • 性的DV:性的DVを受けたことを記した日記など
  • その他:逆DVによって精神疾患を患った場合の診断書など

逆DVの慰謝料の考慮事情

逆DVの慰謝料を決める場合、DVを受けた回数や期間などの事情も考慮されます。

  • 回数
  • 期間
  • 理由(夫側に何らかの落ち度があったか、互いにDVをしていなかったかなど)
  • 怪我の程度
  • 後遺症の有無
  • 精神的苦痛の程度など

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DVで離婚する方法は?暴力夫との調停・裁判の進め方と慰謝料の相場

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【参考】

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離婚ハンドブック編集部

投稿者プロフィール

家事事件(離婚、遺産分割、成年後見など)を専門に取り扱って11年になります。
これまでの実務経験から、当事者自身が離婚に関する知識を得て、自分で考えて判断することが「後悔の少ない離婚」につながるという考えており、その考えに基づいて「離婚ハンドブック」を運営しています。
サイト上では詳細なプロフィールは明かしておらず、仕事の依頼も受けていません。

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