長谷川式認知症スケール(簡易知能評価スケール)とは?点数が何点以下で認知症?
- 認知症
最終更新日: 2020.09.15
認知症の診断に用いられる検査のうち、認知機能の低下をみる検査の一つが長谷川式認知症スケール(長谷川式簡易知能評価スケール)です。
長谷川式認知症スケールは、簡易かつ迅速に実施できることから、認知症を診断する医師の多くに使用されています。
この記事では、長谷川式認知症スケールの概要、長谷川式認知症スケールの内容、点数の見方について解説します。
目次
長谷川式認知症スケール(長谷川式簡易知能評価スケール)とは
長谷川式認知症スケールとは、精神科医である長谷川和夫が開発した臨床家向けの簡易知能検査です。
もともとは長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)という名称でしたが、2004年に痴呆症が認知症という名称に改正されたことに伴い、長谷川式認知症スケールに改められました。
ただし、医師の間では現在も長谷川式簡易知能評価スケールまたは単に「長谷川式」と呼ばれることも多いです。
長谷川式認知症スケールの特徴
長谷川式認知症スケールの特徴は、「広い場所を必要とせず、短時間で実施でき、その場で点数を算出できること」です。
「広い場所を必要とせず」とは、病院の診察室でも問題なく実施できるということです。
例えば、プライベートには十分配慮する必要がありますが、施設の一室、病院の病室、自宅でも実施することができます。
事前説明から検査終了までの手順が10~15分程度で終わり、その場で点数を算出して認知症の疑いがあるかどうかを確認することができます。
長谷川式認知症スケールの項目
9項目の設問で構成されており、設問ごとに細かく点数が割り振られています。
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長谷川式認知症スケールの質問
長谷川式認知症スケールについて、動機づけ、質問の内容、質問の点数の内訳を確認していきます。
動機づけ
他の認知機能検査でも同じですが、長谷川式認知症スケールでも検査前の動機づけがとても大切です。
本人が検査を受ける気になり、持っている認知機能をフル活用して検査に取り組まないと、本人の認知機能を正しく評価することができないからです。
検査への動機づけは、医師の役割ではありますが、家族など周囲の人も、本人が検査に前向きになれるよう働きかけてあげましょう。
本人が乗り気でない場合、検査結果を参考程度に考えるか、日を改めて検査を実施するのが基本です。
質問
具体的な質問項目と点数を見ていきましょう。
1.お年はいくつですか?(1点)
- 年齢:正解が1点(実際の年齢の±2歳までは正解とする)、不正解は0点
2.今日は、何年の何月何日ですか?(4点)
- 年:正解が1点、不正解は0点
- 月:正解が1点、不正解は0点
- 日:正解が1点、不正解は0点
- 曜日:正解が1点、不正解は0点
3.私たちが今いるところはどこですか?(2点)
- 自発的に答えた:正解が2点、不正解は0点
- 質問から5秒おいて「家ですか?病院ですか?施設ですか?」と質問:正解が1点、不正解は0点
4.これから言う3つの言葉を言ってみてください。後でまた聞きますので、よく覚えておいてください。(3点)
- 系列1:桜、猫、電車:言葉1つ正解につき1点(3つ全て正解で3点)
- 系列2:梅、犬、自動車:同上
(系列1または系列2から選択)
5.100から7を順番に引いてください。(2点)
- 質問1「100から7を順番に引いてください」:正解(93)が1点、不正解は0点
- 質問2「そこから7を引くと?」(質問1に正解した場合のみ質問):正解(86)が1点、不正解が0点
6.これから言う数字を逆から言ってください。(2点)
- 質問1「6-8-2」:正解が1点、不正解が0点
- 質問2「3-5-2-9」(質問1に正解した場合のみ質問):正解が1点、不正解が0点
7.先ほど覚えてもらった言葉(質問4の3つの言葉)をもう一度言ってみてください。(6点)
- 自発的に答えた:言葉1つ正解につき2点(3つ全て正解で6点)、不正解は0点
- ヒント(乗り物、動物、乗り物)を与えた:言葉1つ正解につき1点(3つ全て正解で3点)、不正解は0点
8.これから5つの品物を見せます。それを隠しますので何があったか言ってください。(5点)
- 品物1つ正解につき1点(5つ全て正解で5点)、不正解は0点
品物を1つずつ取り出し、名前を言いながら並べて覚えさせた後、隠します。
なお、見せる品物は、コイン、電池、ペン、綿棒、ハサミなど互いに関係のない品物を選びます。
9.知っている野菜の名前をできるだけ多く言ってください。(5点)
- 正答数が10個以上:5点
- 正答数が9個:4点
- 正答数が8個:3点
- 正答数が7個:2点
- 正答数が6個:1点
- 正答数が5個以下:0点
答えた名前の名前をメモし、正答数のみ数えます。
誤答が多くても、正答数が基準以上であればその点数を与えます。
また、途中で野菜の名前が出なくなり、10秒間経過したら検査を終了します。
長谷川式認知症スケールの点数の見方(採点)
長谷川式認知症スケールの満点は30点です。
21点以上の場合
21点以上の場合は、加齢による認知機能の低下が見られる可能性はあるものの、認知機能の低下が日常生活に与える影響は少ない状態です。
ただし、本人や家族が不安や心配を抱えている場合は、医師に相談することになります。
20点以下の場合
20点以下の場合は、「認知症疑い」となります。
認知機能の低下によって日常生活に支障が出ている可能性が高く、医療機関への相談や受診が望ましいでしょう。
ただし、あくまで「認知症疑い」であり、長谷川式認知症スケールの結果だけで認知症と診断されることはありません。
実際の診断は、長谷川式認知症スケールやその他の知能検査、身体検査、脳検査、脳画像診断検査などの各種検査と問診の結果を総合して行われています。
なお、認知症の確定診断が出ている場合、20点以下で軽度の認知症、11~19点で中等度の認知症、10点以下で高度の認知症と判定されます。
長谷川式認知症スケールにおける点数以外の着目点
医師は、長谷川式認知症スケールを実施する場合、点数以外に以下の点にも着目します。
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注意力
本人の意識がはっきりしており課題に注意を向けられているか、注意を持続できているか、注意が他の刺激に逸れていないかなどを確認します。
注意力は、認知症の症状が進行するにつれて低下する傾向があるため、検査時の注意力の程度は診断の材料の一つとなります。
態度
診察を受けるのにふさわしい態度であるかどうかを確認します。
前頭側頭型認知症では、反社会的行動(社会のルールや他人の目を気にせず不適切な言動や態度を繰り返すこと)が見られることがあり、そうした行動が検査場面でも現れることがあります。
自発性
検査に取り組む姿勢を確認します。
質問に対して真剣に答えようとしない(考え不精)など、認知症の人に見られやすい症状の有無や程度をチェックします。
言い繕い
言い繕いとは、適当なことを言ってごまかそうとすることです。
例えば、年月日を尋ねる質問に対して「今日は新聞を見ていない。」、場所を尋ねる質問に対して「教えてもらったことがない。」などと答える場合は認知症を疑います。
長谷川式認知症スケール以外の検査
認知症の診断では、長谷川式認知症スケール以外にも認知機能の低下を確認する検査が行われます。
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MMSE(ミニメンタルステートメント検査)
MMSEとは、認知症の疑いのある人を早期発見し、早期ケア・治療につなげる目的で実施される検査(スクリーニング検査)の一つです。
「Mini Mental State Examination(ミニメンタルステート検査)」の頭文字をとってMMSEと呼ばれています。
MMSEは、長谷川式認知症スケールと同じく短時間で実施できるため、認知症の診断において使用する医師がたくさんいます。