調停委員への苦情や変更(忌避)の申し出はできる?離婚調停は書記官?

法律相談を受けていると、離婚調停の担当調停委員を変更する方法や苦情を申し出る方法を尋ねられることがあります。

また、実際に依頼者の代理人として調停期日に出席したケースでは、調停委員の質の低さに驚かされることが少なくありません。

苦情や変更を申し出たくなるような調停委員は存在する

残念ながら、苦情や変更を申し出たくなるような質の低い調停委員は存在します。

調停委員は、任命された後に裁判所や調停協会主催の研修を受け、調停運営の基礎となる知識や作法を学習した上で調停事件を担当します。

また、任命されてからしばらくは、ベテラン調停委員とペアになったり、先輩調停委員の調停を見学したりするなど実務上のフォローも行われています。

しかし、それでも尚、調停委員一人ひとりの質はピンキリで、当事者から見ても明らかに質の低い調停委員が一定数いるのが実情です。

問題のある調停委員の例は枚挙にいとまがありませんが、あえて典型的な例をいくつかピックアップしておきます。

  • 初回調停期日から見下した態度で、敬語も使わない
  • 人を小ばかにしてくる
  • 「その程度で離婚するなんて我慢が足りない」などと無神経な発言をする
  • 明らかに相手の肩を持った発言を繰り返す
  • 気だるそうな態度で、話を真剣に聞こうとしない
  • 調停中に居眠りする
  • 主張した内容と異なることを相手に伝え、相手の主張も誤解したまま伝えてくる
  • 自分の価値観を押し付けてくる
  • 夫婦の主張を無視した調停案に基づいて調停を進行しようとする
  • 前回期日の内容を全く覚えていない(メモも取っていない)
  • 調停期日に平気で遅れてくる
  • 男性調停委員が女性調停委員を小間使いにしている
  • 調停委員2人が全く異なる助言をしてくる

目を疑うかもしれませんが、いずれも法律相談で相談者から聴取した内容、または、実際に離婚調停に出席して見聞きしたものばかりです。

調停委員の苦情を申し出る方法

調停委員の苦情を申し出る先は、調停事件を担当する裁判所書記官か、調停をしている家庭裁判所の総務課です。

離婚調停では裁判所書記官へ苦情を申し出る

調停委員の苦情は、まずは調停事件の担当裁判所書記官に申し出るのが基本です。

裁判所書記官に苦情を申し出ると、調停委員会を構成する裁判官に伝わり、裁判官が事実確認を行った上で調停委員に否があれば対応を改めるよう指導します。

また、苦情を受けた直後の期日には裁判官が直接参加し、調停委員の言動や態度を確認して不適切なところがあればフォローすることもあります。

調停委員の問題が裁判所として看過できないほどに大きい場合、例外的に調停委員が変更されることがあります。

総務課に苦情を申し出る

裁判所書記官に苦情を申し出ても状況が変わらない場合、調停をしている家庭裁判所の総務課に苦情を申し出ます。

総務課に苦情を申し出る場合は、口頭では担当者限りの対応で終わるおそれがあるため、以下の内容を記載した書面を作成します。

  • 宛名
  • 書面の作成年月日
  • 書面のタイトル
  • 事件番号
  • 事件名
  • 当事者名
  • 担当調停委員名
  • 苦情の具体的内容(5W1Hを意識し、できる限り具体的に記載する)
  • 書面作成者の日中に連絡がつく連絡先

宛名を家庭裁判所長にしておくと、少なくとも総務課長、事務局次長、事務局長レベルまで書面が回り、家事部にも情報が届いて何らかの対応がされることが多いです。

職員が書面の受け取りに消極的な姿勢を示した場合、夜間受付に提出すれば必ず受理されます。

調停委員に直接苦情を伝えないこと

調停委員の不適切な言動や態度に接すると、直に不満をぶつけたくなるかもしれません。

しかし、調停委員に不満を述べても、感情的に対立して調停の体をなさなくなるか、受け流されて終わり、何の解決にもなりません。

調停委員の問題は、調停委員個人や個別の事件の問題として片づけると、その場限りで終わって何ら改善されません。

家庭裁判所全体の問題として具体的な対応をさせるには、裁判所書記官や総務課などに苦情を申し出ることが重要です。

調停委員を変更できるか

結論から言うと、調停委員には忌避の規定がなく、変更することはできません。

調停委員の忌避と除斥

忌避とは、当事者からの申立てに基づいて、手続きの公正さを失わせるおそれのある人を、その手続きの職務執行から排除することです。

家事調停に関与する裁判所職員(裁判官、調停委員、裁判所書記官、家庭裁判所調査官)のうち、忌避の規定がないのは調停委員だけです。

一方で、調停委員の除斥については家事事件手続法第16条(第10条、第12条第2項・第8項・第9項の規定を、忌避に関する部分を除いて準用)に規定があり、以下の要件に当てはまる場合は除斥されます。

除斥とは、法律に規定された要件に当てはまり、手続きの公平さを失わせるおそれのある人を、当然にその手続きの職務執行から排除することです。

例えば、調停委員が、調停事件の当事者の配偶者(または配偶者であった)、四親等内の血族、三親等内の姻族若しくは同居の親族、後見人(成年後見人、保佐人、補助人)などの場合、その調停事件から当然に除籍されます。

除斥が規定されているのは、地方などにおいては、調停委員と当事者が血縁関係や顔見知りというケースがあり得るからです。

しかし、信じがたいことですが、調停委員の中には除斥の規定を知らず、顔見知りが当事者として調停に出席しても気にせず調停を進めようとする人がいます。

そのため、調停委員が血縁関係や顔見知りの場合、その旨を自分から担当裁判所書記官に伝えるようにしてください。

調停委員の忌避制度は検討されたが見送られた

実は、家事事件手続法制定前には、調停委員の忌避制度について検討が行われたが見送られたという経緯があります。

調停委員の忌避制度に賛成する意見もありましたが、以下のような反対が根強く、規定されないことになりました。

調停委員は民間人民間人から選出される調停委員には、他の裁判所職員と異なり、公平さを守るための当然の制度として除斥や忌避が認知されていないため、制度を設けると調停委員に過剰な精神的な負担がかかる
忌避制度の濫用当事者が調停員の忌避制度を濫用して調停を引き延ばし、早期解決を目指す当事者の不利益となるおそれがある
調停委員の選択当事者が主観的な理由で調停委員を変更することは容認されるべきではない

調停委員の忌避制度が規定されなかったことには、調停制度の特徴も影響しています。

調停は当事者の合意に基づいて物事を決める制度であり、調停委員には、調停事件の解決を目的として当事者を説得や助言をすることはできても、当事者を従わせることはできません。

当事者は、調停委員の説得や助言を拒否することができ、申立人については調停の取下げという選択肢もあります。

つまり、裁判のように判断を強制されることがないため、他の裁判所職員のように忌避制度を設ける必要性まではないと判断されたのです。

どうしても調停委員を変更したい場合

どうしても担当調停委員を変更したい場合、係属中の調停を取り下げ、改めて離婚調停の申立てをしなおす方法があります。

ただし、調停利用歴がある家庭裁判所に別の調停を申し立てた場合、「事情が分かっている」という理由で前の調停と同じ調停委員が割り当てられることが多いのが実情です。

そのため、取り下げ時に、「調停委員に不満がある。変更したいが認められないので取り下げるが、すぐに離婚調停を申し立てしなおす。」という旨を担当の裁判所書記官に宣言しておきましょう。

裁判所は、当事者から調停委員への不満が述べられたケースについて再び同じ調停が申し立てられた場合、原則として、別の調停委員に担当させる取扱いをしています。

調停委員に伝えても裁判官や書記官まで伝わらない可能性があるため、取下書を持参する裁判所書記官に直に伝えることが大切です。

なお、調停委員の人数が少ない地方の支部などで、何度申し立てても同じ調停委員が担当となる場合、合意管轄を利用して別の家庭裁判所で調停を行う方法もあります。

夫婦が管轄合意することが前提であり、調停を行う家庭裁判所までの時間と費用がかさむことになりますが、どうしても調停委員を変更したい場合は検討してください。

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離婚調停の管轄の家庭裁判所は?合意管轄の方法と合意できない時の対応

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【参考】

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離婚ハンドブック編集部

投稿者プロフィール

家事事件(離婚、遺産分割、成年後見など)を専門に取り扱って12年の経験を踏まえ、「離婚ハンドブック」では、離婚に関する制度や手続きについて行政・司法機関よりも詳しく分かりやすく解説しています。
また、マイナンバー、国民年金、税金、養子縁組、青年後見など、日常生活の中で利用する制度や手続きを分かりやすく解説する記事も掲載しています。
サイト上では詳細なプロフィールは明かしておらず、仕事の依頼も受けていません。

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