成年被後見人の死亡による後見終了時の成年後見人の事務は?

被成年後見人 死亡

成年被後見人が死亡すると、制度によって援助する対象がいなくなるので当然に後見が終了しますが、成年後見人には、本人の財産の清算と親族への引渡し、報酬の請求、家庭裁判所への報告など仕事が残っています。

この記事では、成年後見人の仕事はいつまで続くか、成年被後見人の死亡による後見終了時の成年後見人の事務について解説します。

成年後見人の仕事はいつまで続くか

通常、成年後見制度は、本人の不動産の処分、本人の施設入所契約や入院手続、遺産分割協議など、何らかの目的のために利用が検討され、家庭裁判所に申し立てられることが多いものです。

しかし、家庭裁判所の審判によって本人に後見が開始され、本人を援助する成年後見人が選任されると、申立てを行った当時の目的を達した後も成年後見人による後見事務は継続します。

成年後見人の仕事が終了するのは、以下の4つの場合のみです。

  • 成年被後見人の判断能力の回復
  • 成年後見人の辞任
  • 成年後見人の解任
  • 成年被後見人の死亡

成年被後見人の判断能力の回復

成年後見制度は、成年被後見人(本人)の判断能力が精神上の障害により不十分な場合に法律的に本人を保護・援助する制度です。

そのため、本人の判断能力が回復して法律的に保護・援助する必要がなくなった場合、家庭裁判所が後見開始の審判を取り消し、成年後見人もその役目を終えることになります。

通常、成年後見人や本人などから「後見開始の審判の取消し」を求める審判が申し立てられ、診断書など本人の判断能力が回復したことを示す客観的な資料が提出されることで、家庭裁判所が取り消すか否かの判断をします。

ただし、後見が開始されるのは、認知症、知的障害、精神障害など精神上の障害によって判断能力を欠く常況にある場合で、判断能力が低下前すると同じレベルまで回復することは稀です。

そのため、後見開始の審判が取り消されて保佐開始の審判がされるなど、法定後見制度の類型変更に留まるケースが多くなっています。

成年後見人の辞任

成年後見人は、家庭裁判所が審判で選任する公的な仕事であり、原則、本人が死亡するまで誠実に後見事務をこなすことが求められています。

しかし、正当な事由があり、家庭裁判所の許可したときは辞任することが認められています。

正当な事由の具体例は、以下のとおりです。

  • 成年後見人自身の判断能力の低下
  • 治療に長い期間を要する病気やケガ
  • 遠方への転居

つまり、成年後見人として本人の保護や援助を適切に行うことが難しい事情が生じたときには、家庭裁判所の許可を得て辞任することができるのです。

成年後見人を辞めるには、家庭裁判所に「成年後年人の辞任」の審判を申し立てると同時に、後任の成年後見人の候補者を探して「成年後見人の選任」の審判も申し立てなくてはなりません。

成年後見人の解任

家庭裁判所が、選任した成年後見人を解任することによっても、その仕事は終了します。

家庭裁判所が成年後見人を解任するのは、成年後見人に不正な行為、著しい不行跡、その他後見の任務に適さない事由がある場合です。

  • 不正な行為:本人の財産の横領など
  • 著しい不行跡:本人の財産の投機的運用による減少、本人に不利な契約など
  • その他後見の任務に適さない事由:ずさんな財産管理、職務懈怠など

家庭裁判所は、成年後見人を解任すると同時に後任を選任することにより、継ぎ目なく本人の財産や権利の保護に当たります。

本人の財産や権利が損害を受けたときは、後任の成年後見人に対して旧成年後見人に損害賠償請求をさせ、悪質な場合には業務上横領などで刑事告訴することもあります。

成年被後見人の死亡

通常、成年後見人の仕事が終了するのは、本人が死亡したときです。

本人死亡後の成年後見人の仕事については、以下の項で詳しく解説します。

成年被後見人の死亡による後見終了時の成年後見人の事務

成年被後見人(本人)が死亡した後に成年後見人が行う後見事務は、以下のとおりです。

  1. 家庭裁判所へ報告(本人の死亡について)
  2. 後見終了登記の申請
  3. 本人財産の清算
  4. 報酬の受領
  5. 本人財産の相続人への引渡し
  6. 家庭裁判所への終了報告

1.家庭裁判所へ報告(本人の死亡について)

成年後見人は、本人が死亡したという情報に接した時点で、本人の死亡とその情報源を家庭裁判所に報告する必要があります。

その後、死亡診断書のコピー、死亡の記載のある戸籍謄本、除籍謄本を取得して、家庭裁判所に提出します。

2.後見終了登記の申請

家庭裁判所が後見開始の審判が確定すると、家庭裁判所が東京法務局の後見登記担当課へ後見登記の嘱託(依頼)をかけ、以下の情報が登記されます(後見登記)。

  • 後見等開始の審判:①家庭裁判所名、②事件番号、③審判の確定日、④登記年月日、⑤登記番号
  • 成年被後見人等:①氏名、②生年月日、③住所、④本籍
  • 成年後見人等:①氏名、②住所、③選任の審判確定日、④登記年月日、(⑤辞任の審判確定日、⑥解任の審判確定日)
  • 後見監督人等:①氏名、②住所、③選任の審判確定日、④登記年月日、(⑤辞任の審判確定日、⑥解任の審判確定日)

本人の死亡後は、成年後見人が東京法務局へ後見終了登記を申請しなければなりません。

登記申請書(終了の登記)に必要事項を記載し、本人の死亡の事実が記載された戸籍謄本や死亡診断書のコピーを添付して申請します。

なお、住民基本台帳ネットワークにより本人の死亡が確認できるときは添付資料が不要となりますが、確認できない場合に備えて準備しておくのが確実です。

3.本人財産の清算

管理していた本人の財産について、本人死亡後の収支や財産を確認して収支報告書や財産目録を作成します。

この後、親族への引渡しや家庭裁判所への報告を行う必要があるため、収支や財産に関する資料も整理しておきます。

4.報酬の受領

法律上、本人が死亡した時点で後見が終了し、成年後見人の権限はなくなるため、本人の死亡後、本人の財産から成年後見人の報酬を受け取る法的根拠はありません。

しかし、相続人に財産を引き渡した後に報酬を請求するのは手間がかかりますし、相続人に拒否されることもあります。

そのため、本人の財産を清算してから相続人に引き渡すまでの間に、家庭裁判所に相談した上で報酬を引き出すことが多くなっています。

5.本人財産の相続人への引渡し

清算手続終了後、相続人の代表者に会って本人の財産を引き渡します。

相続人の代表者に財産目録、収支報告書、財産関係資料を確認させ、財産(遺産)の内容を照合して、引継書に住所・氏名の記入と押印をさせた上で財産関係資料一式を引き渡します。

引継書の書式は、家庭裁判所への終了報告時の提出書類の一つなので、家庭裁判所ウェブサイトからダウンロードして引渡し期日に持参し、相続人に記載してもらいましょう。

なお、本人の相続人が複数人おり、相続人間で相続をめぐる対立がある場合は、原則、以下のとおり対応します。

  1. 事前に相続人全員に対して財産目録などを送付して内容を確認させる
  2. 財産の引渡し日時や場所を指定して相続人全員を呼び出す
  3. 出席した相続人全員の合意を得る
  4. 相続人間で代表者を決めさせ、その人に引継書を書かせて財産関係資料一式を引き渡す

相続人がいないときは、家庭裁判所に相続財産管理人の選任の審判を申し立てるなどの手続きを検討することになります。

5.家庭裁判所への終了報告

本人財産の清算、報酬受領、相続人への引渡しなどが終了した後、家庭裁判所に後見事務の終了報告を行います。

家庭裁判所への終了報告は、本人の死亡日から2ヶ月以内に、終了報告書などの書類を作成・収集して家庭裁判所に提出する方法により行います。

  • 後見等事務終了報告書
  • 引継書(相続人の代表者の住所・氏名が記載され、押印があるもの)
  • 財産目録
  • 財産目録記載の内容を証明する資料(預貯金通帳のコピー、不動産登記簿謄本、施設利用料の領収書など)
  • 死亡診断書のコピーまたは除籍謄本(死亡時に提出した場合は不要)

終了報告書と引継書は、家庭裁判所の窓口でもらうことができる他、裁判所のサイトからデータをダウンロードすることもできます。

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家事事件(離婚、遺産分割、成年後見など)を専門に取り扱って11年になります。
これまでの実務経験から、当事者自身が離婚に関する知識を得て、自分で考えて判断することが「後悔の少ない離婚」につながるという考えており、その考えに基づいて「離婚ハンドブック」を運営しています。
サイト上では詳細なプロフィールは明かしておらず、仕事の依頼も受けていません。

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