補助開始とは?補助人の権限(代理権、同意権)、後見人、保佐人との違いは?

補助人 補助開始

成年後見制度には法定後見制度と任意後見制度があり、法定後見制度はさらに後見、保佐、補助に類型に分類されます。

補助類型は、法定後見制度の一つで、家庭裁判所が判断能力が低下した本人に補助を開始し、補助人を選任して本人の財産管理や身上監護に従事させます。

この記事では、補助の概要、補助人の権限(代理権、同意権)、後見人や保佐人との違いについて解説します。

成年後見制度の補助とは

補助とは、法定後見制度の3類型のうち、判断能力が不十分な人を援助するための類型です。

補助については、民法第15条に規定されています。

1 精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判をすることができる。ただし、第7条又は第11条本文に規定する原因がある者については、この限りでない。

2 本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。

3 補助開始の審判は、第17条第一項の審判又は第876条の9第1項の審判とともにしなければならない。

(民法第15条)

「事理を弁識する能力=判断能力」が不十分とは、一人では重要な財産行為を適切に行うことができない、または不安がある状態です。

重要な財産行為ができないとは必ずしも言えないけれど、本人の利益を考慮すると誰かに援助してもらうのが望ましい状態と言い換えることもできます。

民法7条は後見開始、民法11条は保佐開始について定めた条文です。

補助類型では、本人などが「補助開始の審判」を申し立てることにより、家庭裁判所が本人に補助を開始し、補助人を選任します。

本人以外の人が補助開始の審判を申し立てる場合、申立てについて本人の同意が必要です。

本人が補助開始に反対する意向を示した場合、家庭裁判所は申立人に対して取下げを促し、取り下げられないときは審判で却下します。

また、補助開始の審判だけでは補助人には何の権限も付与されないため、「同意権付与」と「代理権付与」の審判の一方または両方を同時に申し立てる必要があります(民法15条3項)。

同意権付与と代理権付与のいずれも、補助人に付与する権限は本人が同意した事項に限られており、包括的に付与することはできません。

補助人の権限(代理権、同意権)

補助開始の審判では、本人に補助が開始され、補助人が選任されますが、補助人には何の権限も付与されません。

補助人の権限は、補助開始の審判と同時に申し立てた「同意権付与」と「代理権付与」の一方または両方の審判で、本人が希望し、家庭裁判所が相当と判断されたものに限って付与されます。

補助人の同意権(取消権)

同意権とは、本人が重要な行為(民法第13条第1項所定の行為)をする場合に、その行為に同意して有効なものとする権限です。

本人が補助人の同意なくした民法第13条所定の行為を取り消したり(取消権)、追認したりすることもできます。

民法第13条第1項所定の重要な行為とは、以下のとおりです。

民法第13条第1項所定の行為備考
元本を領収し、又は利用すること預貯金の払い戻しや弁済の受領、不動産の賃貸、利息付きの金銭の貸付など
借財又は保証をすること借金、他人の債務の保証人になることなど
不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること不動産、有価証券、知的財産の売買、雇用契約、委任契約、介護契約、施設入所契約など
訴訟行為をすること人事訴訟の提起や応訴(原告の提起した裁判に応じ、被告として弁論などを行うこと)を除く訴訟行為
贈与、和解又は仲裁合意をすること贈与を受けることを除く
相続の承認若しくは放棄又は遺産分割
贈与若しくは遺贈の拒絶又は負担付の贈与若しくは遺贈の受諾
新築、改築、増築又は大修繕をすること新築、改築、増築又は大修繕を自ら行う場合を除く
民法602条に定める期間を超える賃貸借短期賃貸借(土地の賃貸借が5年、建物の賃貸借が3年)を除く

補助類型では、民法第13条第1項所定の行為の一部(同意権付与の審判で認められた内容について)のみ、補助人に同意権が付与されます。

民法第13条第1項所定の全ての行為が同意権の対象となる保佐類型とは異なるので、注意が必要です。

補助人の代理権

代理権とは、本人を代理して特定の法律行為を行う権限です。

補助人に代理権を付与するには、補助開始の審判とは別に「代理権付与」の審判を申し立てなければなりません。

家庭裁判所が補助人に付与する代理権は、本人の希望や置かれた状況など踏まえて相当と認めたもののみです。

代理権付与の審判の申立て時には、代理権を希望する法律行為を特定して付与を希望する必要がありますが、その特定の程度については2つの意見があります。

例えば、「本人の不動産に関する取引(売却)」の代理権付与を希望する場合、①売却予定の不動産の地番、地目、面積、評価額などを特定する必要があるという意見と、②「本人名義の不動産を売却する」程度の特定で足りるという意見に分かれています。

実務上は、上の例であれば、「本人名義の不動産を売却する」という程度の特定ができていれば、申立ては受理されます。

なお、法律上、他人による代理行為が想定されていない身分行為(婚姻、離婚、認知、遺言など)などの代理は認められていません。

代理権付与の審判で申し立てられることが多い代理行為は、以下のとおりです。

代理行為備考
財産管理不動産本人の不動産に関する取引(売却、担保権設定、賃貸など)
他人の不動産に関する取引(購入、借地、借家)契約の締結・変更・解除
住居棟の新築・増改築・修繕に関する請負契約の締結・変更・解除
預貯金等預貯金に関する金融機関等との一切の取引(解約・新規口座の開設を含む)
その他の本人と金融機関との取引(貸金庫取引、保護預かり取引、証券取引、為替取引、信託取引など)
保険保険契約の締結・変更・解除
保険金の請求及び受領
その他定期的な収入の受領及びこれに関する諸手続(家賃・地代、年金・障害手当金その他の社会保障給付など)
定期的な支出を要する費用の支払い及びこれに関する諸手続(家賃・地代、公共料金、保険料、ローンの返済金など)
本人の負担している債務の弁済及びその処理
相続関係相続の承認・放棄
贈与、遺贈の受諾
遺産分割又は単独相続に関する諸手続
遺留分減殺の請求
身上監護関係介護契約その他の福祉サービス契約の締結・変更・解除及び費用の支払い
要介護認定の申請及び認定に関する不服申立て
福祉関係施設への入所に関する契約(有料老人ホームの入居契約等を含む)の締結・変更・解除及び費用の支払い
医療契約及び病院への入院に関する契約の締結・変更・解除及び費用の支払い
税金税金の申告・納付
登記・登録登記・登録の申請
訴訟本人に帰属する財産に関して生ずる紛争についての訴訟行為(民事訴訟法55条2項の特別授権事項を含む)(※保佐人が当該訴訟行為について訴訟代理人となる資格を有する者であるとき)
訴訟行為(民事訴訟法55条2項の特別授権事項を含む)について、当該行為につき訴訟代理人となる資格を有する者に対し受験をすること
その他以上の事務処理に必要な費用の支払い
以上の事務に関連する一切の事項

参考:代理行為目録

補助人と成年後見人、保佐人の違い

補助人と成年後見人、保佐人では、援助する本人の判断能力が違い、そのため付与される権限も違います。

成年後見人、保佐人、補助人が援助する人

  • 成年後見人:成年被後見人(判断能力が全くない人)
  • 保佐人:被保佐人(判断能力が著しく不十分な人)
  • 補助人:被補助人(判断能力が不十分な人)

成年後見人、保佐人、補助人に付与される権限

  • 成年後見人:包括的な代理権、取消権
  • 保佐人:民法13条1項所定の行為についての同意権(取消権)、特定の法律行為の代理権(代理権付与の審判で認められたものに限る)
  • 補助人:民法13条1項所定の行為の一部についての同意権(同意権付与の審判で認められたものに限る)、特定の法律行為の代理兼(代理権付与の審判で認められたものに限る)

表にまとめると、以下のとおりです。

法定後見
後見保佐補助
申立権者本人、配偶者、4親等内の親族、市区町村長、検察官など
本人の同意不要不要

(代理権付与の審判を申し立てる場合は必要)

必要
代理権の範囲財産行為に関する全ての法律行為申立ての範囲内で家庭裁判所が定める特定の法律行為
取消権の範囲日常生活に関する行為以外の行為民法第13条第1項既定の行為申立ての範囲内で家庭裁判所が定める特定の法律行為
後見人などの同意が必要な行為なし民法第13条第1項既定の行為の一部
本人と後見人などに利害関係がある場合特別代理人を選任臨時保佐人を選任臨時補助人を選任
資格などの制限医師、税理士などの資格、会社役員、公務員などの地位を失う

成年後見制度では、本人の援助のためとはいえその行為を制限することになるため、本人の判断能力の程度に応じて援助の内容(後見人の権限)が細かく決められているのです。

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