保佐開始とは?保佐人の代理権(権限)、後見人や補助人との違いは?

保佐開始
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成年後見制度は、精神上の障害により判断能力が低下した人の財産や権利を保護するための制度です。

大きく法定後見制度と任意後見制度に分類され、法定後見制度はさらに後見、保佐、補助に類型に分けられています。

保佐類型は、法定後見制度の一つで、家庭裁判所が判断能力が低下した本人に保佐を開始し、保佐人を選任して本人の財産管理や身上監護を担わせます。

この記事では、保佐の概要、保佐人の代理権(権限)、後見人や補助人との違いについて解説します。

成年後見制度の保佐とは

保佐とは、法定後見制度の3類型の一つで、判断能力が著しく不十分な人の財産や権利を保護するための類型です。

民法第11条では、以下のとおり規定されています。

精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判をすることができる。ただし、第7条に規定する原因がある者については、この限りでない。

(民法第11条)

「事理を弁識する能力=判断能力」が著しく不十分とは、日常的な買い物は一人でできるものの、不動産の処分、金銭の貸借、遺産分割、訴訟提起など重要な法律行為を一人で行うことが困難な状態とされています。

保佐類型では、本人などの申立権者が「保佐開始の審判」を家庭裁判所に申立てを行うことにより、家庭裁判所が本人について保佐を開始し、保佐人を選任します。

保佐が開始された本人(被保佐人)は、医師資格など一定の資格や会社役員の地位を失います。

また、民法第13条第1項所定の重要な法律行為について保佐人の同意を得て行わなければならなくなります。

保佐人は、民法第13条所定の行為についての同意権(取消権)や、家庭裁判所から認められた代理権を行使して、本人を援助します。

保佐人の代理権(権限)

保佐開始の審判により選任された保佐人には、同意権(取消権)という権限が付与されます。

また、保佐開始の審判と同時または追加的に「代理権付与の審判」を申し立てることで、家庭裁判所が認めた法律行為について代理権を行使できるようになります。

保佐人の同意権(取消権)

同意権とは、本人が民法第13条第1項所定の重要な行為をしようとする場合に、その行為に同意して有効なものとする権限です。

本人が保佐人の同意なくした民法第13条所定の行為を取り消したり(取消権)、追認したりすることもできます。

民法第13条第1項所定の重要な行為とは、以下のとおりです。

民法第13条第1項所定の行為 備考
元本を領収し、又は利用すること 預貯金の払い戻しや弁済の受領、不動産の賃貸、利息付きの金銭の貸付など
借財又は保証をすること 借金、他人の債務の保証人になることなど
不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること 不動産、有価証券、知的財産の売買、雇用契約、委任契約、介護契約、施設入所契約など
訴訟行為をすること 人事訴訟の提起や応訴(原告の提起した裁判に応じ、被告として弁論などを行うこと)を除く訴訟行為
贈与、和解又は仲裁合意をすること 贈与を受けることを除く
相続の承認若しくは放棄又は遺産分割
贈与若しくは遺贈の拒絶又は負担付の贈与若しくは遺贈の受諾
新築、改築、増築又は大修繕をすること 新築、改築、増築又は大修繕を自ら行う場合を除く
民法602条に定める期間を超える賃貸借 短期賃貸借(土地の賃貸借が5年、建物の賃貸借が3年)を除く

保佐人の代理権

代理権とは、特定の法律行為について本人を代理する権限です。

保佐人に代理権を付与することを希望する場合、保佐開始の審判とは別に「代理権付与」の審判の申立てを行います。

家庭裁判所は、本人の状態や置かれた状況に応じて相当と認めた代理権についてのみ、保佐人に付与することを認める決定をします。

代理権付与の審判を申し立てる場合、代理権の行使を予定している法律行為を特定し、付与を希望しなければなりません。

法律行為の特定の程度は専門家の間で意見が分かれています。

例えば、「本人の不動産に関する取引(売却)」の代理権付与を希望する場合、①売却予定の不動産の地番、地目、面積、評価額などを特定する必要があるという意見と、②「本人名義の不動産を売却する」程度の特定で足りるという意見があります。

実際に代理権付与の審判を申し立てるときは、上の例でいえば「本人名義の不動産を売却する」という特定で申立てが受理されます。

なお、法律上、他人による代理が想定されていない婚姻、離婚、認知、遺言などを代理することは認められておらず、代理権付与を請求しても認められることはありません。

代理権付与の審判で申し立てられることが多い代理行為は、以下のとおりです。

代理行為 備考
財産管理 不動産 本人の不動産に関する取引(売却、担保権設定、賃貸など)
他人の不動産に関する取引(購入、借地、借家)契約の締結・変更・解除
住居棟の新築・増改築・修繕に関する請負契約の締結・変更・解除
預貯金等 預貯金に関する金融機関等との一切の取引(解約・新規口座の開設を含む)
その他の本人と金融機関との取引(貸金庫取引、保護預かり取引、証券取引、為替取引、信託取引など)
保険 保険契約の締結・変更・解除
保険金の請求及び受領
その他 定期的な収入の受領及びこれに関する諸手続(家賃・地代、年金・障害手当金その他の社会保障給付など)
定期的な支出を要する費用の支払い及びこれに関する諸手続(家賃・地代、公共料金、保険料、ローンの返済金など)
本人の負担している債務の弁済及びその処理
相続関係 相続の承認・放棄
贈与、遺贈の受諾
遺産分割又は単独相続に関する諸手続
遺留分減殺の請求
身上監護関係 介護契約その他の福祉サービス契約の締結・変更・解除及び費用の支払い
要介護認定の申請及び認定に関する不服申立て
福祉関係施設への入所に関する契約(有料老人ホームの入居契約等を含む)の締結・変更・解除及び費用の支払い
医療契約及び病院への入院に関する契約の締結・変更・解除及び費用の支払い
税金 税金の申告・納付
登記・登録 登記・登録の申請
訴訟 本人に帰属する財産に関して生ずる紛争についての訴訟行為(民事訴訟法55条2項の特別授権事項を含む)(※保佐人が当該訴訟行為について訴訟代理人となる資格を有する者であるとき)
訴訟行為(民事訴訟法55条2項の特別授権事項を含む)について、当該行為につき訴訟代理人となる資格を有する者に対し受験をすること
その他 以上の事務処理に必要な費用の支払い
以上の事務に関連する一切の事項

参考:代理行為目録

代理権付与の審判で保佐人に代理権を付与するには、本人の同意が必要です。

家庭裁判所調査官の調査において、本人がどの代理権付与に同意しているか確認されることになります。

保佐人と成年後見人、補助人の違い

保佐人と成年後見人、補助人では、援助する本人の判断能力が違い、そのため付与される権限も違います。

成年後見人、保佐人、補助人が援助する人

  • 成年後見人:成年被後見人(判断能力が全くない人)
  • 保佐人:被保佐人(判断能力が著しく不十分な人)
  • 補助人:被補助人(判断能力が不十分な人)

成年後見人、保佐人、補助人に付与される権限

  • 成年後見人:包括的な代理権、取消権
  • 保佐人:民法13条1項所定の行為についての同意権(取消権)、特定の法律行為の代理権(代理権付与の審判で認められたものに限る)
  • 補助人:民法13条1項所定の行為の一部についての同意権(同意権付与の審判で認められたものに限る)、特定の法律行為の代理兼(代理権付与の審判で認められたものに限る)

図にまとめると、以下のとおりです。

法定後見
後見 保佐 補助
申立権者 本人、配偶者、4親等内の親族、市区町村長、検察官など
本人の同意 不要 不要

(代理権付与の審判を申し立てる場合は必要)

必要
代理権の範囲 財産行為に関する全ての法律行為 申立ての範囲内で家庭裁判所が定める特定の法律行為
取消権の範囲 日常生活に関する行為以外の行為 民法第13条第1項既定の行為 申立ての範囲内で家庭裁判所が定める特定の法律行為
後見人などの同意が必要な行為 なし 民法第13条第1項既定の行為の一部
本人と後見人などに利害関係がある場合 特別代理人を選任 臨時保佐人を選任 臨時補助人を選任
資格などの制限 医師、税理士などの資格、会社役員、公務員などの地位を失う

本人と後見人などに利害関係があって特別代理人などが選任されるのは、成年後見監督人、保佐監督人、補助監督人がいない場合です。

成年後見制度では、本人の援助のためとはいえその行為を制限することになるので、本人の判断能力の程度に応じて援助の内容(後見人の権限)が細かく決められているのです。

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離婚ハンドブック編集部

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家事事件(離婚、遺産分割、成年後見など)を専門に取り扱って11年になります。
これまでの実務経験から、当事者自身が離婚に関する知識を得て、自分で考えて判断することが「後悔の少ない離婚」につながるという考えており、その考えに基づいて「離婚ハンドブック」を運営しています。
サイト上では詳細なプロフィールは明かしておらず、仕事の依頼も受けていません。

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