法定離婚事由とは?離婚裁判では離婚原因がないと離婚できない?

    最終更新日: 2019.11.14

協議離婚や調停離婚で離婚する場合、夫婦間で離婚とその条件が合意できれば離婚することができます。

しかし、裁判(離婚訴訟)で離婚する場合は、夫婦間に法定離婚事由が存在していないと離婚が認められません。

法定離婚事由(離婚原因)は5つ

民法770条第1項では、5つの法定離婚事由(離婚原因)が定められています。

夫婦の一方は、以下の場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。

  • 配偶者に不貞な行為があったとき。
  • 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
  • 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
  • 配偶者が強度の精神病に罹り、回復の見込みがないとき。
  • その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

(民法第770条第1項)

配偶者とは、法律上の婚姻をした相手(夫または妻)のことです。

家庭裁判所が離婚を認める判決をするには、夫婦間に法定離婚事由が存在している必要があります。

そのため、裁判離婚で離婚を目指す場合、原告(離婚裁判を起こした人)は、被告(離婚裁判を起こされた人)に法定離婚事由に該当する原因や理由があることを立証しなければなりません。

原告に法定離婚事由がある場合

離婚裁判を起こした原告側に法定離婚事由が存在する場合、原則、離婚が認められません。

原告がに法定離婚事由が存在する例としては、不貞相手との再婚を目的として離婚訴訟を起こす、何年も帰宅せず生活費も渡さなかった人が離婚を主張するなどが挙げられます。

ただし、長期間の別居により夫婦関係が破たんしていることが明らかである、被告にも法定離婚事由がある、被告や夫婦間の子どもに対する離婚後の援助が約束されているなどの事情がある場合には、離婚が認められることもあります。

離婚原因:配偶者の不貞行為

不貞行為とは、貞操義務に違反すること(不履行)です。

法律上の婚姻をした夫婦の間には、婚姻相手以外と性的関係を持たない(貞操を守る)という貞操義務が生じるとされており、これに違反することが法定離婚事由の不貞行為です。

不貞行為により離婚が認められるのは、不貞行為が原因で夫婦の関係が破たんしたことが明らかな場合です。

不貞行為があったとしても、不貞行為と夫婦関係の破たんとの間の因果関係が立証できないと、離婚は認められません。

過去の判例では、婚姻相手以外の相手と性交渉があることが不貞行為とされており、婚姻相手以外の異性とデートや買い物に出かける、電話やLINEなどでやりとりをするなど性交渉がない場合は、不貞行為とは認められていません。

以前は、法定離婚事由の不貞行為が認定されるには、反復した不貞行為が必要とされていましたが、現在は、一回限りであっても不貞行為と認定されるようになりました。

また、不貞行為の認定には、不貞行為の直接的な証拠だけでなく、不貞行為があったと推認される証拠でも足りるとする判例も多くなっています。

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離婚原因:悪意の遺棄

悪意の遺棄とは、正当な理由がないのに、婚姻相手と同居せず、夫婦としての協力を拒み、婚姻相手を扶養をしないことです。

法律上の婚姻をした夫婦の間には、同居・協力・扶助義務が発生します(民法752条)。

  • 同居義務:夫婦が同じ場所で同居する義務
  • 協力義務:婚姻生活の継続に必要な協力をする義務(家事分担や子育てなど)
  • 扶助義務:収入の高い人が収入の低い人を扶養する義務(夫婦の生活水準を同レベルに維持する生活保持義務)

いずれも、「正当な理由がないのに」義務を果たさない場合に悪意の遺棄に該当することになります。

例えば、自宅があるのに同居することを拒否する、十分な収入があるのに生活費を渡さない、婚姻相手を家から追い出すなどは、悪意の遺棄に該当します。

一方で、単身赴任や長期入院などやむを得ない事情で同居できない、給料が低く十分な生活費が渡せない、婚姻相手の暴力から逃れるために家を出たなどの場合は、「正当な理由がない」とは言えず、悪意の遺棄には該当しません。

悪意の遺棄と別居

夫婦関係が悪化して別居に至った場合、夫婦が納得した上で別居したかどうかが、悪意の遺棄と認定されるか否かに影響します。

婚姻相手に無断で別居することは同居・協力・扶助義務に違反であり、離婚裁判で婚姻相手から悪意の遺棄を主張されることになります。

一方で、別居することや別居中の生活について夫婦で話し合い、同意した上で別居をしていれば、悪意の遺棄を主張されることはほとんどなく、主張されたとしても家庭裁判所が認定することはありません。

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離婚原因:配偶者の生死不明

婚姻相手の生死が3年以上明らかにならない場合も、裁判離婚で離婚することができます。

婚姻相手が生死不明になって夫婦関係が事実上消滅しているにも関わらず、法律上の婚姻の効果が残ると、残された人の不利益が大きいことから設けられた法定離婚事由です。

「生死が3年以上明らかでない」とは、警察に捜索願を出して捜索させる、戸籍をたどるなどしても、生きているか死んでいるか分からない状態であるということです。

別居しているものの電話・メール・手紙などで生きていることが分かっている、連絡先を知らず3年以上連絡をしていないだけなどの場合は該当しません。

判例上、生死不明になった婚姻相手と最後に連絡した時点を起点をしています。

生死不分明による離婚と失踪宣告

婚姻相手が長期間にわたって生死不分明の場合、生死不分明を理由として離婚する他に、失踪宣告という手続をとることもできます。

失踪宣告とは、家庭裁判所の審判により、生死不分明の婚姻相手について、法律上死亡したことみなす手続です。

生死不分明を理由とする離婚では、法律上の婚姻によって生じた権利や義務が解消され、相手とは他人同士になるので戸籍も別々になります。

一方の失踪宣告は、婚姻相手が法律上死亡したとみなされるため、相続が開始し、婚姻相手が残した財産を取得できます。

ただし、本人の生存していた場合、家庭裁判所で失踪宣告の取消しの審判をして、失踪宣告がはじめから無かったこととされます。

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離婚原因:配偶者の強度の精神病

悪意の遺棄のところでも書きましたが、夫婦には同居・協力・扶助義務があり、相手が病気にかかったときは、これを看護看病して支えるべきです。

しかし、婚姻相手が強度の精神病を発症し、夫婦としての精神的なつながりが失われてもなお婚姻の継続を求めることは酷であるという考えに基づいて、法定離婚事由に定められています。

判例上、強度の精神病によって離婚が認められているのは、以下の内容を満たす場合です。

  • 婚姻相手が、夫婦の協力・扶助義務を果たせなくなるくらい重度の精神病を発症している
  • 精神病により、夫婦としての精神的なつながりがなくなっている
  • 精神病が回復する見込みがない
  • 精神病の治療が長期間に及び、離婚を主張する人が献身的に看病を続けてきたことが認められる
  • 離婚後の看病や治療費など、精神病を発症した人の今後の生活の見通しがついている

※最高裁昭和33年年7月25日判決、最高裁昭和45年11月24日判決を参考に離婚ハンドブック編集部がまとめたもの

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離婚原因:その他婚姻を継続し難い重大な事由

その他婚姻を継続し難い重大な事由とは、不貞行為、悪意の遺棄、生死不分明、強度の精神病以外で、修復できないくらい夫婦関係を破たんさせ、婚姻生活の継続を困難にさせる原因や理由のことです。

裁判離婚の実務では、婚姻を継続し難い重大な事由があることを主張して離婚を求めるケースが多くなっています。

具体的な内容は、以下のとおりです。

  • 別居(長期間)
  • DV(ドメスティックハラスメント)
  • モラハラ(モラルハラスメント)
  • 児童虐待(身体的虐待、性的虐待、心理的虐待、ネグレクト)
  • 性的不調和
  • 過剰な宗教活動
  • 過剰な浪費
  • 収監(服役)

家庭裁判所は、原告と被告が置かれた状況、婚姻中の生活、収入、子どもの有無などの情報を総合的に検討し、婚姻を継続し難い事由の有無を判断し、事由がある場合に離婚を認めます。

いずれかの原因や理由があれば必ず裁判離婚できるわけでないので、注意してください。

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家事事件(離婚、遺産分割、成年後見など)を専門に取り扱って12年の経験を踏まえ、「離婚ハンドブック」では、離婚に関する制度や手続きについて行政・司法機関よりも詳しく分かりやすく解説しています。
また、マイナンバー、国民年金、税金、養子縁組、青年後見など、日常生活の中で利用する制度や手続きを分かりやすく解説する記事も掲載しています。
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