遺言認知とは?遺言書の書き方と認知の効果が発生する時期

遺言認知 遺言書

法律上の婚姻をしていない男女の間に生まれた子ども(非嫡出子)に父親を設定する手続きが認知です。

認知の方法には任意認知、認知調停(合意に相当する審判)、遺言認知、強制認知(認知の訴え)があります。

任意認知 父親が自らの意思で子どもを認知
遺言認知 遺言で子どもを認知
認知調停

(合意に相当する審判)

認知調停での父母の合意を前提に、家庭裁判所が審判で認知を判断
強制認知

(認知の訴え)

認知の訴えで家庭裁判所が認知を判断

この記事では、遺言認知とはどのような手続きか、メリットとデメリット、遺言認知の効力が生じる時期、遺言認知の方法について解説します。

遺言認知とは

遺言認知とは、遺言によって子どもを認知して法律上の父子関係を発生させる制度です。

遺言というかたちではありますが、父親が自らの意思で子どもを認知することから、任意認知の一つとされます。

通常の任意認知は、認知の届出が受理された時点で法律上の父子関係が発生しますが、遺言認知の場合、父親の死後に父子関係が生じることになります。

遺言認知は、民法第781条第2項に規定されています。

認知は、遺言によっても、することができる。

(民法第781条第2項)

認知の効果

非嫡出子(婚姻関係のない男女の間に生まれた子ども)は、分娩の事実によって母子関係は確定し、母親の戸籍に入り、母親の親権に服します。

しかし、「妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。(民法第771条第1項)」という嫡出推定ははたらかないため父子関係は明らかにならず、子どもの戸籍の父親欄は空欄のままで、父子間の扶養義務や相続権が発生せず、子どもに不利益が及びます。

父親が子どもを認知することで、法律上の父子関係が確定し、親子関係に基づく効果が生じます。

  • 子どもの戸籍:父親欄に認知をした男性の氏名が記載される
  • 親の戸籍:子どもを認知した旨が記載される
  • 親子の扶養義務:父親に子どもを扶養する義務が発生する(扶養義務に基づいて養育費を請求できる)
  • 相続権:父親が死亡すると、認知した子どもが相続人の一人になる(子どもが死亡すると父親が相続人の一人になる)
  • 準正:父母の婚姻により、子どもが嫡出子の身分を取得する(父母の婚姻→認知=認知準正、認知→父母の婚姻=婚姻準正)

いずれも子どもの生活に大きな影響を与える効果です。

遺言認知の目的

「自分の子どもだと認める意思があるのなら、生前に認知の届出をすれば良い。」と思うかもしれませんが、家庭の事情などにより、生前は認知できないというケースは少なくありません。

例えば、法律上の妻以外の女性との間に子どもができた場合、生前に子どもを認知すると妻やその他の家族に愛人の存在が知られるおそれがあり、愛人との間の子どもが「自分の子どもである。」と確信していても認知しないことがあります。

しかし、自分の血を分けた子どもであることは確かであり、せめて財産だけでも正妻の子どもと同じように分け与えたいと思い、遺言認知をする人が少なからずいるのです。

遺言認知のメリットとデメリット

遺言認知には、メリットとデメリットがあります。

遺言認知のメリット

遺言認知のメリットは、認知によって父子関係が生じることにより、父親の子どもとして父親の相続の第1順位の法定相続人になります。

以前は、非嫡出子と嫡出子の相続分に格差が設けられていましたが、現在は格差が廃止されており、父親の嫡出子である他の子ども(異母きょうだい)と同じ相続分を主張することができます。

遺留分権利者にもなるため、父親が全財産を妻や愛人、子どもの一人などに相続させる旨の遺言をしたとしても、遺言認知された子どもが遺留分を主張すれば、法定相続分の1/2の財産の相続は確保されます。

また、父親の生前は法律上の父子関係が存在しないため、親子の扶養義務を果たす必要がありませんし、父親について他の親族と対立することも少なくて済みます。

遺言認知のデメリット

遺言認知のデメリットは、父親の死後にその家族や親族と対立する可能性が高いことです。

特に、父親が生前に認知すべき子どもがいることを親族に話していなかった場合、「遺産目当てで父親に認知させた。」、「父親の面倒を何も見ないで、今になって現れやがって。」などと父親の相続人などから批判されることは多いものです。

父親がすでに死亡しているため、父親の家族や親族の怒りや不満を、認知された子どもが一手に引き受けることになってしまいます。

遺言認知の効力はいつから生じるか

遺言認知では、認知の効力は相続が開始したとき(遺言者の死亡時)に遡って生じます。

遺言をした父親が死亡した後、遺言執行者が市区町村役場に認知の届出をしますが、市区町村役場への報告的届出に過ぎず、認知の効力は既に生じています。

「父親の死後(相続開始後)に認知の届出をしたのだから、相続人にはなれない。」と言われることもありますが、認知の効力は相続開始時に生じており、遺言認知によって父親の相続人になることができます。

遺言認知の方法

遺言認知をする場合、父親が自分で書く「自筆証書遺言」または公証人役場で作成する「公正証書遺言」を作成します。

いずれの遺言でも、以下の点に注意する必要があります。

  • 事前に承諾を得ておく(子どもが成人の場合は「子どもの承諾」、未成年の場合は「母親の承諾」が必要)
  • 子どもの母親を明らかにする
  • 子どもの氏名、住所、本籍、生年月日、戸籍の筆頭者を記入する
  • 遺言執行者を指定する

遺言執行者とは、遺言の効力が生じた後、遺言内容に基づいて認知の届出や相続人の廃除・取消しなどを行う人です。

遺言認知をした場合、遺言の効力が生じた後に遺言執行者が市区町村役場で認知の届出を行うことになります。

遺言執行者に指定する人については、法律上、未成年者、破産者、成年被後見人などの他に制限はなく、相続人の一人でも、弁護士や司法書士などの専門職でも問題ありません。

ただし、相続開始時に指名された人が困惑しないよう、本人には事前に遺言執行者に指定することを伝えておくべきです。

遺言執行者が指定されていない場合、家庭裁判所に遺言執行者の選任の審判を申し立てなければなりません。

遺言書の書き方の例

遺言認知をする場合の遺言書の書き方の例を示しておきます。

遺言書

1. 遺言者〇〇と××××(昭和○年○月○日生)との間に生れた以下の子について、自分の子供として認知する

住所 〇〇〇〇

氏名 〇〇〇〇

生年月日 〇〇〇〇

本籍 〇〇〇〇

戸籍筆頭者 〇〇〇〇

2. 遺言執行者として○○を指定します。

平成〇〇年〇〇月〇〇日
遺言者 〇〇〇〇 印

 

遺言執行者による認知の届出

遺言認知の届出の方法は、以下のとおりです。

届出人

遺言執行者です。

届出先

父の本籍地または住所地、認知される子の本籍地です。

届出期限

戸籍法上、遺言執行者が就職した日から10日以内と規定されています。

必要書類

遺言認知を行う場合、以下の書類を提出しなければなりません。

  • 認知届書:子どもの母の氏名と本籍を記載し、遺言執行者が署名・押印する
  • 印鑑:届出に使用した印鑑
  • 戸籍謄本(全部事項証明書):父または認知される子(胎児のときは認知される子の母)の戸籍謄本(本籍地以外で届出を行う場合)
  • 遺言書の謄本
  • 届出人の本人確認書類:運転免許証、パスポート、住民基本台帳カードなど

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離婚ハンドブック編集部

投稿者プロフィール

家事事件(離婚、遺産分割、成年後見など)を専門に取り扱って11年になります。
これまでの実務経験から、当事者自身が離婚に関する知識を得て、自分で考えて判断することが「後悔の少ない離婚」につながるという考えており、その考えに基づいて「離婚ハンドブック」を運営しています。
サイト上では詳細なプロフィールは明かしておらず、仕事の依頼も受けていません。

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