離婚や別居時に児童手当の受給者を夫から妻に変更する方法を解説

児童手当は父母のうち「所得が高い人(収入の多い人)」が申請者・受給者となるため、専業主婦の場合や、就労していても夫の方が所得が高い場合は「夫が児童手当の受給者」となります。

また、離婚や別居をして子どもを引き取っても、児童手当の受給者は自動的に変更されることはなく、夫婦が手続きをしなければなりません。

そのため、夫婦関係が悪化して離婚または別居した状態では、「夫が児童手当の受給者の変更に応じてくれない」という状況に陥ることがあります。

この記事では、離婚や別居をしたときに児童手当の受給者を夫から妻に変更する方法について解説します。

児童手当の受給者を変更する方法は住民票の異動の有無によって異なる

離婚後または別居中に児童手当の受給者を変更する方法は、それぞれ住民票を異動させたかどうかで大きく2つに分類され、難易度が大きく異なります。

住民票の異動難易度
別居中異動済低い
未済高い
離婚後異動済低い
未済高い

離婚や別居に伴って住民票を異動させている場合、妻だけで児童手当の受給者を変更することができるため、手続きの難易度は低めです。

一方で、住民票を異動させていない場合、手続きを進めるには夫の協力を得なければならないため、難易度は高くなります。

それぞれの方法について詳しく解説します。

別居中に児童手当の受給者を夫から妻へ変更する方法

まず、別居中の場合について解説していきます。

対象となるのは、以下のような状況にある女性(妻)です。

  • 同居中は夫が児童手当の受給者であった
  • 別居時に子供を引き取って養育している

別居に伴って住民票を異動させた場合

別居に伴って住民票を異動した場合、「妻だけ」で児童手当の受給者を変更することができます。

父母が別居して離婚協議中の場合、市区町村役場は父母が生計を同じくしないとみなし、子供と同居している父または母を受給者として取り扱うことになっています。

これを「児童手当における受給者の同居優先認定」といいます。

「児童手当・特例給付の受給資格に係る申立て」で受給資格が認められ、「児童手当認定請求」で認定されれば、夫の協力がなくても受給者を変更することができます。

なお、別居中で住民票上の住所が同じでも、世帯分離をしていれば別居とみなされるため、同様の手続きで児童手当の受給者を変更できることがあります。

申立先/請求先

住んでいる地域の市区町村役場の児童手当担当課です。

担当課の名称は地域によって異なるため、総合インフォメーションで確認してください。

児童手当・特例給付の受給資格に係る申立ての必要書類

別居中に児童手当の受給者を変更するには、以下の書類などが必要です。

児童手当・特例給付の受給資格に係る申立書窓口で交付

※HP上に書式を掲載している自治体もあり

離婚協議中であることが確認できる書類以下の書類のうち1つまたは複数

  • 離婚協議申入れに係る内容証明郵便の謄本
  • 家庭裁判所で発行される事件係属証明書
  • 調停期日呼出状のコピー
  • 離婚裁判に係る控訴状のコピー
  • 弁護士から申請者への離婚協議の進捗状況に係る報告書
身分証明書顔写真付きのもの(運転免許証、パスポート、住民基本台帳カード、マイナンバーカードなど)
印鑑(認印)届出用紙の記載に不備があった場合に使用

申立てが受理されると申立人の受給資格の有無が審査されます。

児童手当の認定請求の必要書類

受給資格があると認められた場合、以下の書類を揃えて児童手当の認定請求をします。

児童手当・特例給付認定請求書窓口で交付

※HP上に掲載している自治体もあり

請求者の所得証明書
  • 請求日が1~4月:前年度の所得証明書
  • 請求日が5~12月:本年度の所得証明書
請求者の健康保険証原本またはコピー
振込先口座の情報児童手当を振り込んでもらう口座の情報

届出人名義(本人が届け出る場合)の預貯金口座通帳を持参するのが一般的

印鑑認印

元夫に手続きを依頼する必要はなく、妻が住民票のある市区町村で児童手当の申請をすることで、新たに妻が児童手当の受給者として登録されることになっています。

別居後も住民票を異動させていない場合

別居して子どもを引き取った後も住民票が同居中のままになっている場合、「児童手当における受給者の同居優先認定」を受けることはできません。

そのため、受給者の変更には「夫の協力」を得る必要があります。

具体的には、夫の署名押印のある「児童手当・特例給付受給事由消滅届」を市区町村役場へ提出し、妻自身が児童手当認定請求を行うことになります。

夫の署名押印のある「児童手当・特例給付受給事由消滅届」を市区町村役場へ提出する

児童手当・特例給付受給事由消滅届とは、児童手当の支給停止を求めるための書類です。

別居して子どもを引き取らなかった場合、子供を養育していないことを理由に児童手当の支給停止を求めることになります。

児童手当の支給元の市区町村役場の窓口で交付してもらえますし、ウェブサイト上に書式を掲載している自治体もあります。

しかし、夫婦関係が悪いほど夫の協力を得にくく、「離婚時まで消滅届に署名押印してもらえなかった」というケースも少なくありません。

妻が児童手当の認定請求をする

夫への児童手当支給が停止された後は、妻が新規に児童手当の認定請求をします。

認定請求に必要な書類は、以下のとおりです。

  • 児童手当・特例給付認定請求書
  • 印鑑(認印可能、シャチハタは不可)
  • 本人確認書類(運転免許証、パスポート、住民基本台帳カードなど)
  • 請求者名義の預金通帳など(児童手当の振込みを希望する口座の情報)
  • 請求者、配偶者及び児童(別居中の場合のみ)のマイナンバーが確認できる書類(マイナンバーカードまたはマイナンバー通知カード、マイナンバーの記載された住民票のコピー)
  • 請求者本人の健康保険証(会社員などで、厚生年金などに加入している場合)

この他にも、追加で提出を求められることがあります。

認定が認められた場合は、請求者宛に認定通知書が郵送されてきます。

離婚後に児童手当の受給者を夫から妻へ変更する方法

続いて、離婚後に児童手当の受給者を変更する方法について解説していきます。

対象となるのは、以下のような状況にある女性(元妻)です。

  • 離婚前は夫が児童手当の受給者であった
  • 離婚後に子供を引き取って養育している

離婚後に住民票を異動させた場合

離婚後に子供を引き取り、住民票を異動させたとしても、自動的に児童手当の受給者が変更されるわけではありませんが、「元妻だけで」児童手当の受給者を変更することができます。

住民票を異動させていれば、「児童手当における受給者の同居優先認定」が適用されるため、別居時と同じく「児童手当・特例給付の受給資格に係る申立て」で受給資格があることが確認され、「児童手当認定請求」で認定されることで受給者の変更が完了します。

離婚後に住民票を異動させていない場合

離婚後も住民票を異動させていない場合、児童手当における受給者の同居優先認定が適用されないため、受給者を変更するには「元夫の協力」を求める必要があります。

具体的には、以下の手順で受給者を変更することになります。

  1. 「児童手当・特例給付受給事由消滅届(元夫の署名押印あり)」を市区町村役場へ提出する
  2. 元妻が児童手当の認定請求をする

具体的な手順や、認定されると請求者宛に認定通知書が郵送されるのは、別居中の場合と同じです。

住民票を異動させる方が早い

実際のところ、離婚してから元夫に協力を求めても応じてもらえないことが多いですし、そもそも「元夫と連絡をとりたくない。」という元妻も少なくありません。

そのため、離婚後に住民票を異動させ、「児童手当における受給者の同居優先認定」が適用される状況にした上で児童手当の受給者を変更するのが一般的です。

【重要】手続きは早めに!

児童手当は、2月、6月、10月の年3回、それぞれ前月までの4ヶ月分が支給されます。

2月10月~翌年1月分
6月2月~5月分
10月6月~9月分

例えば、9月に児童手当の受給者を変更する手続をした場合、10月支給分は夫(または元夫)に支給されます。

夫婦間の協議で別居または離婚後に振り込まれた児童手当を請求することはできますが、夫(または元夫)が応じなければ基本的にはあきらめざるをえません。

また、児童手当の受給者変更の手続きには一定の時間がかかります。

したがって、夫婦同居中の児童手当の受給者が夫であり、別居または離婚に伴って子どもを引き取った場合は、早いうちに児童手当の受給者を変更することが大切です。

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離婚ハンドブック編集部

投稿者プロフィール

家事事件(離婚、遺産分割、成年後見など)を専門に取り扱って12年の経験を踏まえ、「離婚ハンドブック」では、離婚に関する制度や手続きについて行政・司法機関よりも詳しく分かりやすく解説しています。
また、マイナンバー、国民年金、税金、養子縁組、青年後見など、日常生活の中で利用する制度や手続きを分かりやすく解説する記事も掲載しています。
サイト上では詳細なプロフィールは明かしておらず、仕事の依頼も受けていません。

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