離婚時の財産分与!自宅と住宅ローンの分与手順とオーバーローン!

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離婚時の財産分与で問題となりやすいのが、自宅の住宅ローンです。

「住宅ローンを誰が支払うか」を決めることが最終目標ですが、そこへたどり着くには、離婚後に誰が自宅に住むか、自宅の名義をどうするか、住宅ローンの債務者の変更などの問題を解決しなければなりません。

住宅ローンが残った自宅(居住用不動産)の財産分与の手順

婚姻期間中に住宅ローンを組んで自宅を購入した場合、離婚時に、自宅とその住宅ローンをどうするかについて夫婦間で協議する必要があり、協議がまとまらない場合は離婚調停で話し合うことになります。

住宅ローンが残った自宅の財産分与は、原則として以下の手順で解決を目指します。

  1. 住宅ローン残高を確認する
  2. 住宅ローンの契約内容を確認する
  3. 現時点における自宅の価値を確認する
  4. オーバーローンかアンダーローンかを確認する
  5. 夫婦の一方が自宅に住み続けるか自宅を売却するかを決める
  6. 財産分与の協議(まとまらない場合は家庭裁判所の調停または離婚裁判)
  7. 自宅の名義変更(必要な場合のみ)
  8. 住宅ローンの債務者変更(必要な場合のみ)

住宅ローン残高を確認する

まず、借入先の金融機関などに連絡して住宅ローン残高を確認します。

住宅ローン残高の確認方法には、大きく電話照会と書面発行の2種類があります。

住宅ローン残高の電話照会

電話照会の場合、個人情報保護の観点から、原則として借り入れた本人が問い合わせなければならず、氏名、生年月日、電話番号、返済金引落口座番号、契約内容が分かる事項などの回答を求められます。

金融機関によっては電話照会を受けつけていない場合もあるため、確認が必要です。

住宅ローン残高の書面発行

書面発行の場合、残高証明書または償還予定表を発行してもらうことになります。

金融機関によって依頼方法や発効までにかかる期間が異なるため、借入先金融機関に確認してください。

なお、離婚時の財産分与のために住宅ローン残高を確認する場合、電話照会ではなく残高証明書や償還予定表を発行してもらうのが基本です。

住宅ローンの契約内容を確認する

住宅ローンの残高と同時に契約書類で契約内容を確認しておく必要もあります。

確認しておきたいのは、債務者、連帯債務者、連帯保証人が誰になっているかです。

連帯保証人になっている場合、相手が住宅ローンを滞納した場合に支払いを求められることになります。

そのため、相手が自宅に住み続けて住宅ローンの支払いを継続する内容で財産分与を行う場合、連帯保証人を変更する手続を行うよう請求しておかなくてはなりません。

現時点における自宅の価値を確認する

住宅ローン残高の確認と並行して、自宅の価値を確認します。

自宅の価値を確認する方法には、専門家に鑑定を依頼する方法と無料査定を利用する方法があります。

専門家に鑑定を依頼する

自宅の正確な価値を把握したい場合は、不動産鑑定士に鑑定を依頼する必要があります。

しかし、鑑定には30~50万円程度の費用がかかる上、離婚紛争が調停や裁判にもつれ込んで長期化し、自宅の価値が変動して再鑑定が必要になる可能性もあります。

したがって、経済力や離婚紛争見通しを踏まえて、鑑定依頼をするか否かを検討してください。

無料査定を利用する

インターネットで「不動産 査定 無料」と検索すると、不動産を無料で査定できるサイトが複数表示されます。

無料査定サイトでは、物件種別や所在地などを入力するだけで、査定価格が表示されたり、大手企業に一括で査定依頼したりすることができます。

また、大手の不動産会社に無料訪問査定を依頼する方法もあります。

不動産会社の職員が実際に自宅を訪問して査定を行い、査定結果に基づいて査定書を作成してもらえます。

ただし、引っ越しなどと同じく会社によって査定額が大きく異なるため、複数社に査定依頼した結果から適正価格を算出しておかないと、財産分与の資料とはしにくいものです。

オーバーローンかアンダーローンかを確認する

オーバーローンとは、住宅ローン残高が自宅の価値を上回る状態、つまり、自宅売却益を住宅ローン返済に充当しても住宅ローンが残る状態です。

一方でアンダーローンとは、住宅ローン残高が自宅の価値を下回る状態、つまり、自宅売却益で住宅ローンを完済できる状態です。

オーバーローン 住宅ローン残高>自宅の価値
アンダーローン 住宅ローン残高<自宅の価値

夫婦の一方が自宅に住み続けるか自宅を売却するかを決める

自宅を残して夫婦の一方が住み続けるか、自宅を売却するかを決めます。

具体的には、自宅の名義人が住み続ける、名義人でない人が住み続ける、自宅を売却するという3つのパターンが考えられます。

自宅の名義人が住み続ける

アンダーローンの場合は、自宅の価値から住宅ローン残高を差し引いた金額を「自宅の実質的な価値」として、財産分与の割合に応じた金銭を相手に支払う義務があります。

例:財産分与時の自宅の価値が2000万円、住宅ローン残高が1000万円、財産分与の割合は50%

  • 自宅の実質的な価値:2000万円-1000万円=1000万円
  • 相手に支払う(請求される)金額:1000万円×0.5(50%)=500万円

相手に支払う義務がある金額:500万円

オーバーローンの場合は、自宅の実質的な価値を算出し、財産分与の割合に応じた金銭を相手に請求する権利があります。

例:財産分与時の自宅の価値が2000万円、住宅ローン残高が3000万円、財産分与の割合は50%

  • 自宅の実質的な価値:2000万円-3000万円=-1000万円
  • 相手に請求する金額:1000万円(-1000万円×0.5(50%)=500万円(-500万円

相手に請求する権利がある金額:500万円

名義人でない人が住み続ける場合

名義人でない人が自宅に住み続ける場合、自宅の名義と住宅ローンの債務者を変更するか否かで4つのパターンに分かれます。

住宅ローンの債務者
変更する 変更しない
自宅の名義 変更する
変更しない

1.自宅名義を「変更する」、住宅ローンの債務者を「変更する」

自宅に住む人が自宅の名義人(自宅の所有権を得る)および住宅ローンの債務者(ローンの支払義務を負う)となり、月々の住宅ローンを支払うパターンです。

ただし、住宅ローンについては、借入先の金融機関などに債務者の変更を申請して許可される必要があります。

申請を受けた金融機関などは、自宅に住む人の収入や資産を審査して債務者の変更を許可するか否か判断します。

離婚調停で住宅ローンの債務者を変更する旨の合意をしたとしても、金融機関などの審査には何ら影響がなく、金融機関などが許可をしない限り債務者は変更されません。

アンダーローンの場合は自宅がプラスの財産となるため、相手から請求を受けた場合は、自宅の実質的な価値を算出し、財産分与の割合に応じた金銭を支払うことになります。

2.自宅名義を「変更する」、住宅ローンの債務者を「変更しない」

自宅に住む人が自宅の名義人になり(自宅の所有権を得る)、住宅ローンの債務者は変更しない(ローンの支払義務は負わない)パターンです。

アンダーローンの場合は、自宅がプラスの財産となるため、相手から請求があれば、自宅の実質的な価値を算出し、財産分与の割合に応じた金額を相手に支払わなければなりません。

また、アンダーローンでもオーバーローンでも、住宅ローンの一部を負担するよう請求されたり、その他の財産で調整したりする可能性があります。

相手が住宅ローンの支払いを滞納する可能性も想定しておかなければなりません。

3.自宅の名義を「変更しない」、住宅ローンの債務者を「変更する」

自宅に住む人が自宅の名義人にならず(所有権を取得せず)、住宅ローンの債務者になる(住宅ローンの支払義務を負う)パターンです。

自宅に住む人のメリットが乏しく、このパターンが選択されるケースはほとんどありません。

4.自宅の名義を「変更しない」、住宅ローンの債務者を「変更しない」

自宅の名義も住宅ローンの債務者も相手のままにしておき、自宅の所有権を得ない代わりに住宅ローンの支払義務を負わないパターンです。

自宅が相手の所有財産となるため、アンダーローンの場合は自宅の実質的な価値と財産分与の割合に応じて金銭を請求することができます。

ただし、相手が住宅ローンの支払いを滞納する可能性があるため、公正証書や調停調書などは強制執行手続きが利用できる文言にしておく必要があります。

また、相手名義の自宅に住むことになるため、相手から家賃を請求されることもあります。

自宅を売却する

自宅を売却する場合、オーバーローンかアンダーローンかによって売却後の対応が異なります。

オーバーローン 自宅売却代金を充当した後に残った住宅ローンにつき、その他の財産から残高を差し引き、それでも残高が残る場合は、財産分与の割合に応じて夫婦それぞれが負担する。
アンダーローン 住宅ローンを完済しても自宅売却代金が残る場合、財産分与の割合に応じて夫婦で分ける。

財産分与の協議(まとまらない場合は家庭裁判所の調停または離婚裁判)

自宅と住宅ローンの財産分与について主張がまとまったら、夫婦間で財産分与について協議します。

同居中の場合は、残高証明書や支払予定表などの資料を示し、自身の希望を明確に伝えて協議します。

別居中の場合も直接協議するのが基本ですが、DVやモラハラなどの理由により会うことが困難な場合は、LINEやメールを介して協議することになります。

通常は、自宅や住宅ローンだけでなく、その他の財産分与もまとめて協議することになるため、その他の財産に関する資料を揃え、自分の主張をまとめてから協議に臨んでください。

離婚調停で財産分与を請求する

夫婦間の協議で財産分与が取り決められない場合、離婚調停で財産分与を請求することができます。

離婚調停では、調停委員会に住宅ローンに関する資料を示しながら主張を行い、調停委員を介して財産分与の合意形成を目指します。

離婚調停の申立て方法、必要書類、流れなどの詳細は、関連記事で解説しています。

なお、家庭裁判所の手続には別表第2事件として「財産分与」調停または審判もあります。

しかし、財産分与調停または審判は、離婚後に財産分与を求めるための手続であり、離婚前は離婚調停によって財産分与を求めることになっています。

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離婚裁判で財産分与を請求する

離婚調停でも財産分与の合意ができない、または、その他の条件面で合意できずに離婚調停が不成立で終了した場合、離婚裁判を起こして離婚の附帯事項として財産分与を求めます。

離婚裁判は、訴訟提起から第1回口頭弁論期日の指定と呼出し、被告の答弁書作成・提出、口頭弁論期日、判決(認諾、和解)という流れで進み、離婚が認められるには民法に規定された5つの離婚事由があることを裁判所に認めさせる必要があります。

また、離婚裁判では証拠が重要な意味を持つため、残高証明書などの資料を揃えておかなければなりません。

離婚裁判の手続や流れについては、関連記事で詳しく解説しています。

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自宅の名義変更(必要な場合のみ)

財産分与により自宅の名義を変更した場合、法務局で不動産の所有権移転登記を行う必要があります。

協議離婚の場合

協議離婚の場合、登記義務者(財産分与をする人)と登記権利者(財産分与を受ける人)が共同して法務局で登記申請を行います。

申請に必要になる書類は、以下のとおりです。

登記義務者(財産分与をする人)

  • 自宅の登記済権利証または登記識別情報通知
  • 印鑑(実印)
  • 印鑑証明書(発行後3ヶ月以内のもの)
  • 固定資産税評価証明書(登記年度のもの)
  • 戸籍謄本(離婚の記載があるもの)
  • 本人確認書類

登記権利者(財産分与を受ける人)

  • 住民票(発行後3ヶ月以内のもの)
  • 印鑑(認印)
  • 本人確認書類

調停離婚(審判離婚)、裁判離婚の場合

家庭裁判所の離婚調停や離婚裁判で離婚して財産分与を取り決めた場合も、登記義務者と登記権利者の共同申請が原則です。

ただし、調停調書、審判書、判決書などに以下の文言が含まれている場合、登記権利者が、登記義務者の協力なしに単独で登記申請を行うことができます。

「申立人(登記権利者)は、相手方(登記義務者)に対し、離婚に伴う財産分与として、別紙物件目録記載の不動産を譲渡することとし、本日付け財産分与を原因とする所有権移転登記手続きをする。」

必要となる書類は、協議離婚の場合の必要書類に加え、調停調書、審判書、判決書(和解調書、認諾調書)などの登記原因証明情報です。

住宅ローンの債務者変更(必要な場合のみ)

離婚時の財産分与により自宅の住宅ローンの債務者を変更した場合、借入先の金融機関などに債務者変更を申請しなければなりません。

債務者変更の申請は、現債務者が金融機関などに行う必要があるため、通常は、調停条項などに以下の文言を記載しておきます。

申立人は、相手方に対し、申立人が平成○○年◯◯月○○日付け金銭消費貸借契約に基づいて、○○銀行○○支店から借り受けた債務(債権額○○万円)について、相手方を債務者とするように、○○銀行と交渉することを約束する。

金融機関などは、新しく債務者となる予定の人の収入や資産を審査し、債務者変更の許否を判断します。

債務者変更が認められるか否かは金融機関などの判断に委ねられており、調停や裁判の結果が影響することはありません。

なお、夫婦の一方が債務者、もう一方が連帯保証人になっている場合、夫婦間で連帯保証契約を解除する合意をした上で、金融機関などに申請することになります。

ただし、単に連帯保証人を解除することは難しく、別の人を連帯保証人とするか、住宅ローンを借り換えるのが一般的です。

離婚ハンドブック編集部

投稿者プロフィール

家事事件(離婚、遺産分割、成年後見など)を専門に取り扱って11年になります。
これまでの実務経験から、当事者自身が離婚に関する知識を得て、自分で考えて判断することが「後悔の少ない離婚」につながるという考えており、その考えに基づいて「離婚ハンドブック」を運営しています。
サイト上では詳細なプロフィールは明かしておらず、仕事の依頼も受けていません。

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