住民税は海外赴任・転出時で免除?支払方法と帰国時の手続を解説

海外へ引っ越すときに気になるのが「住民税ってどうなるの」ということです。

特に多いのが、「海外赴任や海外転出後でも住民税がかかるの。」という納税義務に対する疑問や、「海外からどうやって支払うの。」という支払いに関する疑問です。

また、海外へ出国するときや帰国したときの手続きを知りたいという人もたくさんいます。

この記事では、海外に引っ越した場合の住民税の取り扱い、出国時の手続き、住民税を支払う方法、帰国時の手続きについて解説します。

海外赴任や海外転出すると住民税は免除される?

結論から言うと、海外に引っ越しても住民税は免除されません。

住民税は、前年の1年間(1月1日から12月31日)の所得に対して、1月1日時点で住んでいた市区町村(住民登録がある市区町村)で課税される地方税です。

前年の所得に対して課税されるので、納税する年に海外へ引っ越したとしても、その年の納税額には影響せず、1月1日時点で住んでいた市区町村に全額支払わなければなりません。

出国した翌年度は住民税が非課税

住民税は、1月1日時点で日本国内に住所がある場合に課税されるので、海外へ引っ越した年度は住民税(前年の所得に対するもの)がかかります。

しかし、海外赴任や海外留学で1年間以上海外に住むことになり、出国した年の翌年の1月1日時点で海外に住所がある場合は、日本国内に住所がないと判断され、その年の住民税は免除されます(非課税)。

例えば、令和元年(2019年)7月1日に大阪市からアメリカ合衆国へ引っ越した場合を考えてみます。

令和元年度の住民税(令和元年6月~令和2年5月分)は大阪市に支払います。

しかし、令和2年1月1日時点でアメリカ合衆国にいて日本国内に住所がなければ、令和2年度の住民税は非課税です。

この例の場合、海外へ引っ越す前に日本の会社で働いていれば、6月分までは住民税は給与から天引きされ、会社が市区町村へ納税している(特別徴収)ので、本人が支払うのは7月分から翌年5月分までの住民税です。

翌年の住民税が非課税になるには出国届の提出が必要

海外へ引っ越した年の翌年度の住民税が課税されないようにするには、海外へ行く前に出国届を提出しておく必要があります。

届出人
  • 海外へ引っ越す本人
  • 本人の住民票の世帯主
  • 本人の住民票の世帯員
  • 代理人(委任状が必要)
届出先住んでいる地域の市区町村役場
届出期間海外へ出国する当日まで

(出国先、出国予定年月日を届け出る)

必要書類
  • 出国届:役場で入手
  • 住民基本台帳カード:持っている人だけ
  • 印鑑登録手帳:登録している人だけ
  • 国民健康保険被保険者証:加入者だけ
  • 後期高齢者医療被保険者証:加入者だけ
  • 本人確認書類:運転免許証、パスポートなど
  • 委任状:代理人が届け出る場合だけ
  • マイナンバーカードまたは個人番号の通知カード

本人がすでに出国している場合、本人のパスポートのコピー(顔写真のページと、出国のスタンプが押されたページ)と委任状を添付する必要があります。

海外へ転出するときに出国届の手続きをしないと、日本国内に住み続けているものと判断されるので、出国した年の翌年の1月1日時点で海外に住んでいても住民税が課税されるので、注意してください。

ワーキング・ホリデーで海外に引っ越す場合

ワーキング・ホリデーで海外へ出国する場合は、1年以上出国する予定があったとしても、日本国内に住所があるものと判断され、出国した年の1月1日時点で海外にいても住民税が課税されます

ワーキング・ホリデーによる海外滞在は、居住ではなく旅行とみなされるからです。

海外赴任や海外転出した人が住民税を支払う方法

海外へ引っ越した人が住民税を支払う方法は、4つあります。

一括徴収

一括徴収とは、海外へ引っ越すまで会社員として働き、毎月の給与から住民税が特別徴収されていた場合に、その年度の住民税を最後の給与から一括で天引きしてもらう方法です。

自営業などで、納付書や口座振替によって毎月の住民税を自ら支払っていた場合(普通徴収)も、海外へ引っ越す年度の住民税を一括で支払うことができます。

徴収方法支払方法
特別徴収毎月の給与から住民税が天引きされる
普通徴収納付書などにより、自分で住民税を支払う

口座振替

毎月の住民税が口座から自動で引き落とされるようにしておくこともできます。

海外へ引っ越すために退職する場合、職場の担当部署に退職後の住民税の納付方法を伝えることになるので、そこで口座振替を希望しましょう。

ただし、口座振替の場合は納税通知書を受け取る人(納税管理人)を申告しておく必要があります。

納税管理人の申告

納税管理人とは、納税義務者(海外へ引っ越した人)に代わって税金に関する手続きを管理する人です。

海外へ引っ越す場合、納税通知書の受領や住民税の納付などを納税管理人に任せることになります。

以下のような事情がある場合は、出国前に、市区町村に納税管理人を申告しておく必要があります。

  • 住民税を口座振替で支払う
  • 納税通知書を受け取る前に海外へ引っ越す
  • 出国前に未納の住民税がある

納税管理人の申告方法

申告人海外へ引っ越す人
申告場所住んでいる地域の市区町村役場(税務担当課)
申告期間海外へ出国する当日まで
必要書類
  • 納税管理人申告書、または納税管理人承認申請書
  • 本人確認書類:運転免許証、パスポート、個人番号カード
  • マイナンバー確認書類:通知カード、マイナンバーが記載された住民票など(個人番号カードを所持している場合は不要)

本人と納税管理人になる人が同じ市区町村に住んでいる場合は「納税管理人申告書」、異なる場合は「納税管理人承認申請書」を市区町村の税務担当課に提出します。

納税管理人の選任を忘れると、市区町村は納税通知書を送達することができず、公示送達の手続きがとられます。

公示送達というのは、市区町村役場の掲示板に一定期間公示することで、期間経過後は書類の送達がされたものとみなす制度です。

また、公示送達がされてから納付期限までに住民税を納付しないと、督促状を届き、延滞金が加算されることが可能性があります。

給与から天引き(特別徴収のまま)

駐在員など、海外へ引っ越した後も日本の会社から給与が支払われ続ける場合、それまでと同じく特別徴収によって住民税を支払います。

2017年以降は特別徴収が徹底され、従業員や会社の意向で特別徴収を中止できなくなったので、手続きをしなくても特別徴収が継続されます。

海外から帰国したときの住民税の手続き

海外から帰国した場合、市区町村役場で転入届(国外からの転入)と納税管理人の解任手続きを行う必要があります。

転入届(国外からの転入)

届出人
  • 帰国した本人
  • 世帯主
  • 本人と同一世帯の世帯員
  • 代理人(本人と世帯が異なる場合は委任状が必要)
届出先帰国後に住む地域の市区町村役場
届出期間帰国後に住み始めた日から14日以内
必要書類
  • 転入届:役場で入手
  • パスポート:帰国日が確認できるパスポートや航空券の控えなど(転入者全員分が必要)
  • 戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)と戸籍附表の写し
  • マイナンバー確認書類:個人番号カード、通知カードなど
  • 委任状:代理人が届け出る場合のみ
  • 認印:シャチハタは不可

納税管理人の解任

納税管理人を選任していた場合、帰国後は解任の手続きが必要です。

申告人帰国した人
申告場所帰国後に住む地域の市区町村役場(税務担当課)
申告期間帰国後
必要書類
  • 納税管理人申告書
  • 本人確認書類:運転免許証、パスポート、個人番号カード
  • マイナンバー確認書類:通知カード、マイナンバーが記載された住民票など(個人番号カードを所持している場合は不要)

帰国後に住民税の支払いが開始する時期

住民税は、1月1日時点で日本に住んでいれば支払い義務が生じ、前年の1年間に日本国内で得た所得に対して課税されます。

帰国日課税
1月1日

帰国した年から支払う

  • 1月1日:納税義務はあるが、前年度の所得がないので住民税の支払いはない
  • 翌年1月1日:前年1月1日から12月31日の1年間の所得が住民税の課税対象となる
  • 翌年6月~:前年1年間の所得に基づいて計算された住民税を支払う
4月1日帰国した年の翌年から支払う

  • 4月1日:1月1日時点で日本国内にいなかったので前年の所得に応じた住民税は非課税
  • 翌年1月1日:前年4月1日(帰国日)から12月分の所得が住民税の課税対象となる
  • 翌年6月~:9ヶ月分(前年の4月~12月分)の所得に基づいて計算された住民税を支払う

関連記事

母子家庭の住民税:非課税世帯になるシングルマザーの年収はいくらまで?

>>>「シングルマザー」の記事一覧に戻る

アバター

離婚ハンドブック編集部

投稿者プロフィール

家事事件(離婚、遺産分割、成年後見など)を専門に取り扱って12年の経験を踏まえ、「離婚ハンドブック」では、離婚に関する制度や手続きについて行政・司法機関よりも詳しく分かりやすく解説しています。
また、マイナンバー、国民年金、税金、養子縁組、青年後見など、日常生活の中で利用する制度や手続きを分かりやすく解説する記事も掲載しています。
サイト上では詳細なプロフィールは明かしておらず、仕事の依頼も受けていません。

この著者の最新の記事

ピックアップ記事

  1. 離婚後 選択的共同親権
    離婚後単独親権に対する問題提起や批判は以前からありましたが、近年、欧米諸国などで採用されている離婚後…
  2. 専業主婦 離婚 準備
    「専業主婦(主夫)だけど離婚したい。でも、離婚後の生活が不安。」、「離婚したいが、専業主婦は離婚後に…
  3. 離婚協議書 公正証書
    協議離婚する場合、離婚することと諸条件について夫婦で話し合い、合意した内容を離婚合意書にまとめた上で…
  4. 離婚調停 相手方 準備
    「ある日突然、見知らぬ住所と差出人の名前が書かれた茶封筒が自宅のポストに届き、中を開けてみると「調停…
  5. 弁護士会照会制度
    離婚紛争を弁護士に依頼すると高額な費用がかかりますが、依頼によって得られるメリットもあります。 …
  6. モラハラ 離婚
    配偶者のモラハラ(モラルハラスメント)を理由に離婚したいと考える人は少なくありません。 しかし…
  7. 離婚調停 成立 調停条項
    離婚調停は、夫婦間で離婚やそれに伴う条件面の合意ができると調停調書が作成され、調停が成立します。 …
  8. 養育費 強制執行 手続き 流れ
    夫婦間で取り決めた養育費が支払われない場合の対応には、履行勧告、履行命令、強制執行があります。 …
  9. 離婚 弁護士費用 相場
    離婚を弁護士に依頼する場合、注意しなければならないのが弁護士費用です。 「離婚 弁護士費用 相…
  10. 離婚調停 弁護士
    「離婚調停で弁護士は必要か。」と聞かれたら、弁護士としての立場では「必要です。ぜひご依頼ください。」…

スポンサーリンク

ピックアップ記事

  1. 離婚後 選択的共同親権

    選択的共同親権とは?法務省が検討する「離婚後の親権の選択制」の意味

  2. 専業主婦 離婚 準備

    専業主婦の離婚準備:仕事と生活費、子どもの親権、年金のことなど

  3. 離婚協議書 公正証書

    離婚協議書を自分で作成:書き方サンプル付き!公正証書の作り方も解説

  4. 離婚調停 相手方 準備

    離婚調停を申し立てられた相手方が調停第1回期日までに準備すること

ページ上部へ戻る