住民税を産休・育休中に納付する方法と減免・猶予手続きの可否を解説

産休(産前産後休業)中や育休(育児休業)中も住民税の支払いは発生します。

「給料をもらっていないのに、どうして」と思うかもしれませんが、住民税の性質上、産休・育休中でも支払い義務があります。

休業中は給与が支払われないので家計が厳しくなりやすいので、猶予や減免ができるかどうかについても知っておきたいところです。

また、納付方法も働いているときとは異なるので、初めて休業する人は、事前に産休・育休中の住民税のことについて知っておくことが大切です。

この記事では、産休・育休中の住民税の納付方法、減免や猶予制度の手続きについて解説します。

住民税と産前産後休業・育児休業

はじめに、住民税と産休・育休について確認します。

住民税とは

住民税とは、地方税の1つで、住んでいる都道府県と市区町村に納める税金です。

支払う年の前年の1月1日から12月31日まで(1年間)の所得(収入)に対して課税され、後払いすることになっています。

例えば、2019年6月から翌年5月に支払う住民税は、2018年1月1日から12月31日の所得に対して課税された住民税であり、2019年度の所得とは関係がありません。

そのため、産休や育休を取得して給与が支払われなくなっても、住民税の支払義務は免除されません

産休・育休中の住民税はいくら?

産休・育休中に支払う住民税は、前年の所得に対するものです。

したがって、住民税額は休業前と変わりません。

産休とは

産休とは、同労基準法第65条に基づいて、出産前と出産後の女性が取得できる休業です。

正式名称は産前・産後休業で、産前と産後それぞれに取得できる期間が決められています。

休業の名称期間
産前休業
  • 出産前の6週間(自然分娩の予定日からカウント)
  • 双子などの多胎妊娠の場合は14週間
  • 女性が希望した場合に取得可能
産後休業
  • 出産後8週間
  • 出産後6週間は会社側に取得させる義務がある
  • 出産後6週間以降は、女性が働く意思を示し、健康上の問題がなければ就労可能

出産手当金は非課税

産休中は、会社から給与が支払われませんが、生活保障のために出産手当金を受給することができます。

出産手当金説明
支給期間「出産日前42日(多胎妊娠の場合は98日)」から「出産日の翌日以降56日」まで

※会社を休んで給与の支払いがなかった期間のみ

※出産が遅れた場合は期間が延長される

支給金額1日当たりの金額×休業した日数

※1日当たりの金額:支給開始日の以前12ヶ月間の各標準報酬月額を平均した額÷30日×(2/3)

この出産手当金は非課税なので、翌年度の住民税の算定には加算されません。

育休(育児休業)とは

育休とは、子供を育てる従業員が取得できる休業です。

育休は、子供が1歳の誕生日を迎える日の前日までの1年の間に取得できます。

また、保育園に申し込んだが入所できないなどの事情があれば、子供が1歳6ヶ月になるまで(再度の申請で最大2歳まで)延長できるようになっています。

育児休業給付金は非課税

育休取得中は、会社から給料が支払われませんが、育児休業給付金が支給されます。

育児休業給付金説明
支給期間育休取得期間
支給金額労働者の育児休業開始時賃金日額×支給日数×67%
※育児休業開始から6ヶ月が経過した後は50%に減額

育児休業給付金も非課税なので、翌年度の住民税の算定には加算されません。

産休・育休取得中の住民税の支払方法

住民税の支払方法には、特別徴収と普通徴収の2つがあります。

徴収方法支払方法
特別徴収毎月の給与や年金から天引きされる

毎月一定額を支払う(12回分割)

普通徴収納税者が納付書や口座振替によって自分で支払う

4月、8月、10月、翌年1月に支払う(4回分割)

※支払月は地域によって異なることがある

2017年度以降は全国的に特別徴収の徹底されており、会社に勤めて給与をもらっている場合は、毎月の給与から住民税が天引きされ、会社から市区町村へ支払われています。

しかし、産休・育休中は会社から給与が支払われず、住民税の天引きも停止するので、以下のいずれかの方法で支払うことになります。

一括支払い

産休・育児休業を取得する前の給与(休業前の最後の月の給与)から、その年度の住民税を一括で天引きしてもらう方法です。

また、ボーナスから一括で天引きしてもらうことも可能です。

一括で天引きしてもらっておけば、後は会社側が通常どおり住民税を支払ってくれるので、産休・育休取得者が自分で支払う手間が省けます。

ただし、休業中は給与が支払われず、手当金・給付金と預貯金の切り崩しで生活することになるので、一括で支払うと休業中の家計を圧迫するおそれがあります。

普通徴収に切り替え

産休・育休期間中だけ普通徴収に切り替え、納付書や口座振替によって自分で住民税を支払う方法です。

普通徴収では1年間の住民税を4回に分割して4月、8月、10月、翌年1月に支払うことになるので、一括で支払うよりも家計への影響が少なくて済みます。

産休・育休を取得する場合、担当部署の職員から普通徴収への切り替えを勧められることが多いです。

会社が立て替え払い

会社によっては、産休・育休中の従業員の住民税を立て替えてくれるところもあります。

会社の立て替え払いを利用する場合、立て替えてもらった住民税は、以下の方法で支払います。

支払方法説明
毎月払い毎月、住民税額を会社に支払う
育休明け払い育休明けに立替分を一括で支払う

支払方法は会社のルールに従う

産休・育休中の住民税の支払方法については、各会社が取り決めたルールに従うことになります。

複数の支払方法を選択できるところが多いですが、特定の方法しかないところもあるので、休業前に確認しておきましょう。

休業時期によって支払方法が限定される

退職時期支払方法
1月1日~5月31日一括支払い
6月1日~12月31日一括支払いか普通徴収

一括支払いと普通徴収を選択できるのは、6月1日から12月31日の間に産休・育休を取得した場合です。

1月1日から5月31日に休業した場合は、住民税を一括支払いすることになります。

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母子家庭の税金(住民税):非課税世帯とは?免除の年収はいくらまで?

産休・育休中に住民税の支払が難しい場合=猶予制度を利用する

出産や育児には想像以上にお金がかかります。

休業前は「給付金と預貯金があれば日常生活に支障はない。」と思っていても、家計が厳しくなり、住民税の支払が困難になることもあります。

その場合、住民税の徴収を猶予するよう市区町村に申し出ることができます。

住民税の徴収猶予が認められると、育児休業期間中の1年以内の期間に限り、住民税の徴収が猶予されます。

延滞金が発生する

支払が猶予された住民税は、職場復帰した後に延滞金とともに支払うことになります。

つまり、本来の納税額+延滞金を支払う必要があるのです。

休業中の家計が厳しい時期に住民税の負担がなくなるメリットは大きいですが、その分、復職後の負担が大きくなるので注意してください。

延滞金は年14.6%で算出されますが、市区町村の判断で、対応する部分の2分の1または全額が免除されることになっています。

全額免除なら延滞金のデメリットなく猶予を利用できるので、事前に確認してください。

産休・育休中に住民税の減免措置が受けられるか

一般的に、住民税の減免措置が受けられるのは、以下のような事情がある場合です。

  • 生活保護を受けている
  • 障害者、未成年者、寡婦(寡夫)
  • 3ヶ月以上の入院加療を要する状態で、収入の見込みが全くない
  • 災害により死亡した、障がい者となった人、住居の被害を受けた
  • 失業、休業または廃業により、所得が前年の1/2以下に減少した

産休・育休中が当てはまるとすれば、「失業、休業または廃業により、所得が前年の1/2以下に減少した」という事情でしょう。

しかし、住民税の減免措置は各市区町村が独自に実施している制度であり、住んでいる地域で利用できるかどうかは、事前に確認する必要があります。

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離婚ハンドブック編集部

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家事事件(離婚、遺産分割、成年後見など)を専門に取り扱って12年の経験を踏まえ、「離婚ハンドブック」では、離婚に関する制度や手続きについて行政・司法機関よりも詳しく分かりやすく解説しています。
また、マイナンバー、国民年金、税金、養子縁組、青年後見など、日常生活の中で利用する制度や手続きを分かりやすく解説する記事も掲載しています。
サイト上では詳細なプロフィールは明かしておらず、仕事の依頼も受けていません。

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