介護保険制度とは?保険料の負担割合、申請方法は?年齢は65歳以上?

認知症の家族の介護が必要になったときに、多くの人が利用を検討するのが介護保険制度です。

介護保険制度は、認知症の人にとっても介護者にとっても心強い制度ですが、認知症の人の状態や家族の介護力などに応じて適切に利用するには、制度の仕組みを正しく理解しておく必要があります。

この記事では、介護保険制度の仕組み、保険料の負担割合、利用できる年齢、申請方法、利用できるサービスについて解説します。

介護保険制度とは

介護保険制度とは、介護サービスや介護支援など、介護にかかる負担を保障することを目的とした保険制度です。

高齢者の介護を社会全体で支えあうための仕組みとして、2000年に施行された介護保険法に基づいて実施されています。

介護保険制度導入の経緯

日本における高齢者福祉政策は1960年代から始まっており、以下のような政策が実施されてきました。

  • 1693年:老人福祉法制定(特別養護老人ホーム創設、老人家庭奉仕員(ホームヘルパー)の法制化)
  • 1973年:老人医療費無料化
  • 1982年:老人保健法制定(老人医療費の一定額負担導入)
  • 1989年:ゴールドプラン(高齢者保健福祉推進10か年戦略)策定(施設緊急整備と在宅福祉の推進)
  • 1994年:新ゴールドプラン(新・高齢者保健福祉推進10か年戦略)策定(在宅介護の充実)
  • 1997年:介護保険法成立
  • 2000年:介護保険法施行

介護保険制度導入前の高齢者保健福祉政策は、大きく老人福祉制度と老人医療制度がありましたが、それぞれ以下の課題を抱えていました。

老人福祉制度(老人福祉法)の課題

  • 市町村が、特別養護老人ホーム、ホームヘルパー、デイサービスなどサービスの種類や提供機関を決定する仕組みで、利用者に選択の余地がなかった
  • サービス利用時に所得調査が義務付けられており、抵抗感を抱く人が多かった
  • 原則、市町村または市町村の委託先がサービスを提供しており、競争原理が働かずサービス内容が画一的であった
  • 本人と不要義務者の所得に応じて利用者負担額が決まる仕組みで、高所得者層が利用しづらかった

老人医療制度(老人保健法)の課題

  • 高所得者層にとって、利用者負担額が老人福祉サービスより低く、介護を理由に病院へ長期入院する問題が生じた
  • 病院は治療を目的としているところ、介護を理由に入院した人が長期間療養する場所としての整備が不十分であった

社会の変化による課題

制度上の問題に加え、社会の変化による課題も顕在化します。

1960年に5.7%だった高齢化率は1995年には14.5%まで上昇し、高齢化に伴う要介護高齢者の増加、介護期間の長期化などの問題が深刻になりました。

一方で、核家族化の進行、介護する家族の高齢化、地域の相互扶助力の弱体化など、要介護高齢者を支える家族や地域の状況も変化していきました。

こうした状況下で、高齢者の介護を社会全体で支えあう仕組みとして、介護保険制度がつくられたのです。

介護保険制度の特徴

介護保険制度の特徴は、以下の3つに集約されています。

  • 自立支援:要介護高齢者の身の回りの世話をするだけでなく、自立支援をサポートする
  • 利用者本位:市町村ではなく、利用者やその家族が利用するサービスを選択し、総合的に介護サービスを受けることができる
  • 社会保険方式:納付した保険料に応じてサービスなどを受けることができる

以前の老人福祉制度や老人保健制度と違い、利用者が自由に利用したいサービスを選択して総合的な介護サービスを受けることができ、また、所得に関わらず利用者の負担は1割となっています。

また、市町村またはその委託先のみでなく、民間企業やNPOなど様々な事業者がサービス提供に参入したことで競争原理が働き、サービスの質も向上されています。

介護保険制度の対象者

介護保険制度の被保険者(加入者)と、介護保険サービスの対象者について見ていきましょう。

介護保険制度の被保険者

介護保険制度の被保険者は、第1号被保険者と第2号被保険者に分類されています。

  • 第1号被保険者:65歳以上の人
  • 第2号被保険者:40歳~64歳の医療保険加入者

日本に住んでいる人は、40歳になった月から第2号被保険者となり、介護保険料の支払い義務が生じます。

介護保険サービスの対象者(サービスを受けることができる人)

第1号被保険者は、原因や理由に関わらず、要支援または要介護状態になったときに、介護保険サービスを受けることができます。

第2号被保険者は、初老期における認知症、脳血管疾患、進行性核上性麻痺、末期がん、関節リウマチなど老化による特定疾患によって要介護状態になったときに限り、介護保険サービスを受けることができます。

介護保険制度に加入していない39歳以下の人は、原因や理由に関わらず介護保険サービスを利用することはできません。

介護保険制度の保険料と財源

介護保険の保険者は、各市区町村です。

各市区町村は、管轄地域内の被保険者数と介護保険サービスの利用状況を踏まえて介護保険料を決定し、被保険者から保険料を徴収するとともに、サービス利用に応じた費用を負担します。

つまり、介護保険料は住んでいる地域によって基準額が異なります。

また、所得によっても額が変わります。

サービス利用にかかった費用は、介護保険料が50%、国・都道府県・市区町村の税金が50%(国:25%、都道府県:12.5%、市区町村12.5%)の割合で負担することになっています。

この仕組みによって、介護保険加入者は1割負担でサービスを利用することができるのです。

介護保険料の納付

介護保険料の納付方法は、第1号被保険者と第2号被保険者で異なります。

  • 第1号被保険者:市区町村の納付通知書、年金からの天引き
  • 第2号被保険者:医療保険者が、医療保険料と一緒に介護保険料を徴収

介護保険制度の申請・認定

介護保険制度のサービスを利用するときの申請窓口は、住んでいる地域の市区町村です。

市区町村の窓口へ行き、介護保険被保険者証と申請書を提出します。

自力で申請するのが難しい場合は、かかりつけ医やケアマネージャー、介護保険事業者に代行を依頼することができます。

また、地域包括支援センターに相談すれば、対応する人を紹介してもらえます。

申請から認定までの主な流れは、以下のとおりです。

  1. 市区町村の窓口に介護保険制度のサービス利用を申請
  2. 訪問調査(全国共通の認定調査書を使用した、本人の状況、暮らしぶり、医療サービスの利用状況などの調査)
  3. コンピューターによる一次判定
  4. 介護認定審査会による二次判定(医療・保健・福祉の専門職による会議。一次判定の結果、かかりつけ医と調査員の意見書などに基づいて判定)
  5. 二次判定の結果が市区町村に届く
  6. 認定されたことが通知される

判定には、「自立(非該当)」、「要支援1~2」、「要介護1~5」に区分されており、区分によって介護保険を適用して利用できるサービスの上限額が決定されます。

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要介護認定とは

要介護認定とは、介護保険サービス利用者が、どの程度の介護を介護を必要とする状態にあるか判定することです。

保険者である市区町村が、介護認定審査会による二次判定の結果に基づいて認定します。

要介護認定は、自立(非認定)、要支援1~2、要介護1~5に区分されており、要支援または要介護の認定を受けることで介護保険が適用される介護サービスを受けることができます。

自立(非認定)

自立(非認定)とは、介助なしで日常生活を送ることが可能な状態です。

介護保険の給付金を受け取ることはできません。

要支援1

要支援1とは、日常生活動作(食事、排泄、入浴、移動など日常生活における基本的な行動)はほぼ自力でできるものの、症状の進行を予防するため、手段的日常生活動作(買い物、家事全般、服薬、金銭管理など)の一部に支援が必要な状態です。

要支援2

要支援2とは、手段的日常生活動作を行う能力も要支援1より低下し、日常生活動作の一部にも介助を必要とし、立ち上がる、座る、歩くなどの動作に支えが必要なことがある状態です。

要介護1

要介護1とは、手段的日常生活動作を行う能力が要介護2より低下し、部分的な介護が必要で、立ち上がる、着席、歩行などに不安定さがある状態です。

要介護2

要介護2とは、要介護1の状態に加え、日常生活動作に部分的な介護が必要となり、物忘れや理解力・判断力の低下がある状態です。

要介護3

要介護3とは、要介護2の状態より日常生活動作と手段的日常生活動作の両方の能力が低下し、食事や入浴などの日常生活動作は全面的な介護が必要になる状態です。

要介護4

要介護4とは、要介護3の状態に加えて動作能力が低下し、排泄の介護が必要になるなど、日常生活全般に介護が必要になる状態です。

要介護5

要介護5とは、日常生活動作、手段的日常生活動作、動作能力に著しい低下が見られ、日常生活全般において全面的な介助が必要になる状態です。

いわゆる寝たきり状態が要介護5に当たります。

介護保険で受けることができる介護サービス

介護保険で受けることができる主な介護サービスは、以下のとおりです。

  • 居宅サービス:訪問介護(介護福祉士や看護員が利用者宅を訪問して日常生活介助を行う)、通所介護(利用者がデイサービスセンターなどを訪問して介護サービスを受ける)など、自宅で生活しながら利用できるサービス
  • 施設サービス:介護老人保健施設、特別養護老人ホーム、介護療養型医療施設など施設入所して介護を受けるサービス
  • 地域密着型サービス:認知症高齢者用のケア、地域密着型グループホームへの入所、介護職員による定期巡回サービスの利用など、市区町村に指定された介護事業者が、地域に住む利用者を対象として行う介護サービス

要支援認定を受けた場合は居宅サービスのみ、要介護認定を受けた場合は居宅サービスと施設サービスの両方を利用できるなど、要介護認定によって利用できるサービスが細かく決められています。

また、介護サービスは非常に幅広く、本人に合った介護サービスを自力で見つけ出して利用するのは至難の業です。

そのため、要介護認定の結果を持って、住んでいる地域の地域包括支援センターの窓口に相談し、本人に合ったケアプランを作成してもらいましょう。

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離婚ハンドブック編集部

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家事事件(離婚、遺産分割、成年後見など)を専門に取り扱って12年の経験を踏まえ、「離婚ハンドブック」では、離婚に関する制度や手続きについて行政・司法機関よりも詳しく分かりやすく解説しています。
また、マイナンバー、国民年金、税金、養子縁組、青年後見など、日常生活の中で利用する制度や手続きを分かりやすく解説する記事も掲載しています。
サイト上では詳細なプロフィールは明かしておらず、仕事の依頼も受けていません。

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