離婚の解決金とは?相場や税金(所得税)との関係、慰謝料との違いは?

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離婚調停では、「解決金」を取り決めることがあります。

慰謝料の代わりに解決金を取り決めるケースが多く、ネット上では「解決金は性質が曖昧だが便利」、「慰謝料より解決金を請求した方が手っ取り早い。」などとメリットに関する記載が目立ちます。

しかし、解決金は万能ではありません。

離婚調停で解決金を主張する場合は、そのデメリットも把握しておくべきです。

離婚の解決金とは

離婚の解決金とは、離婚調停で取り決める金銭給付のうち、支払いの原因となる法的根拠を明確にしないものです。

「離婚紛争を解決すること自体を目的とした金銭給付」と言い換えることもできます。

解決金の特徴

離婚時に取り決める金銭給付には、養育費、財産分与、婚姻費用(過去分を含む)、慰謝料などがあり、それぞれ支払いの原因となる法的根拠があります。

金銭給付 支払いの原因となる法的根拠
養育費
  • 未成熟子に対する親の扶養義務
  • 子の監護費用(民法第766条)
財産分与
  • 離婚時の財産分与請求権(民法第768条)
  • 清算的財産分与
  • 扶養的財産分与
  • 慰謝料的財産分与
婚姻費用 婚姻費用の分担(民法第760条)
慰謝料 不法行為に基づく損害賠償(民法709条)

通常、離婚時には夫婦間で金銭給付について協議し、夫婦間で合意できない場合は、家庭裁判所の離婚調停で解決を目指しますが、いずれにしても金銭給付の法的根拠は明らかにして請求します。

しかし、解決金は、離婚紛争を解決することを優先し、支払いの原因はあえて曖昧なままにしておきます。

解決金の相場

解決金の相場に関する統計などは見当たらず、実務上は、夫婦の収入や資産、有責性の有無や程度などに応じて個別に取り決められています。

離婚調停においては、50万円~100万円の範囲で解決金が取り決められるのが一般的です。

慰謝料の一般的な相場が50~500万円であることと比較すると低額ですが、支払う原因を曖昧にすることや、離婚紛争の早期解決を目的として取り決められる金銭給付であることを踏まえると、極端に低いわけではありません。

なお、離婚を拒否するために高額な解決金を提示するケースがありますが、提示した金額の支払いに合意されると後に引けなくなるため、離婚したくない場合はその旨を明確に主張すべきです。

解決金と税金

解決金が課税されるか否かは、解決金の内容によります。

財産分与や慰謝料として解決金を取り決めた場合は、原則として、課税されません。

名目 非課税の理由
慰謝料 不法行為に対する損害賠償であり、金銭を贈与されたわけではないため
財産分与 夫婦で築いた財産の清算であり、新たに財産を得たわけではないため

ただし、偽装離婚による慰謝料や財産分与、支払われる金額が社会通念上著しく高額な場合、現金以外で支払われた場合などは、例外的に課税対象となることがあります。

したがって、これらの要件に当てはまる場合は解決金にも課税される可能性があります。

解決金と慰謝料の違い

慰謝料とは、不法行為によって他人に精神的苦痛を与えた人が、相手に対して支払う損害賠償金のことです。

引用:離婚ハンドブック

離婚の慰謝料は、離婚の原因を作った夫婦の一方が、もう一方に支払う金銭です。

例えば、浮気、DV(ドメスティックバイオレンス)、モラハラ(モラルハラスメント)、悪意の遺棄(同居・協力・扶助義務違反)などの被害を受け、それが離婚の原因となった場合に請求することができます。

その法的根拠は、通常の慰謝料と同様「不法行為に基づく損害賠償」、つまり、「悪いことをして他人に精神的苦痛を与えたことに対してお金で償う」というものです。

一方の解決金は、離婚紛争の解決を優先して、支払いの原因を明確にせずに取り決める金銭給付です。

つまり、解決金と慰謝料の違いは、支払いの原因を明確にするか否かです。

解決金と慰謝料の違い
解決金 請求の原因を曖昧にしておく
慰謝料 不法行為に基づく損害賠償

解決金のメリットとデメリット

解決金はメリットが強調されがちですが、離婚後に後悔しないために、デメリットも知っておくべきです。

解決金のメリット

解決金のメリットは、その曖昧さゆえに、夫婦が金銭給付に合意しやすくなることです。

例えば、「浮気の慰謝料として、100万円の支払いを求める。」などと主張して夫婦間で協議します。

しかし、慰謝料を請求された人にとって、離婚の慰謝料を支払うことは、離婚原因が自分にあると認めることです。

たとえ、離婚原因が自分にあると自覚しており、慰謝料を支払う意思があっても、それを離婚調停の場で認めたり、調停調書に記載されたりすることに抵抗を示す人は少なくありません。

こうした場合に、不法行為に基づく損害賠償という法的根拠を持つ慰謝料から、法的根拠が曖昧な解決金に名目を代えることで、支払う人の抵抗感が和らぎ、金銭給付が合意できることがあります。

解決金のデメリット

解決金のデメリットは、その曖昧さゆえに、解決金を取り決めた後も、慰謝料や財産分与などの金銭給付を請求されるおそれがあることです。

例えば、離婚調停において、解決金として夫が妻に100万円を支払う旨の合意をしたとします。

この場合、夫が「財産分与と慰謝料をまとめて解決するために解決金の支払いに合意した。」という認識でいたとしても、妻が「解決金に含まれるのは慰謝料のみで、財産分与は別途請求する。」という認識だった場合、妻から財産分与を請求することができるのです。

実際のところ、解決金を取り決めた後に慰謝料や財産分与を別途請求されたというケースは少なくありません。

解決金の主張が適当な場合とそうでない場合

解決金は、離婚紛争解決のために主張するのが適当な場合とそうでない場合があります。

解決金を主張するのが適当な場合

解決金を主張するのが適当なのは、以下のような場合です。

  • 夫婦がともに離婚紛争の早期解決を望んでいる。
  • 慰謝料を請求された人は、金銭給付に応じる意向はあるが、名目を慰謝料とすることに抵抗がある。
  • 慰謝料を請求した人は、金銭給付の名目よりも、金銭給付を確実に取り決めることを重視している。

「夫婦ともに早期解決希望」、「金銭給付に応じる意向あり」、「名目よりも金銭給付自体を重視」という条件が揃っていれば、解決金を主張することで離婚紛争を早期解決に導くことができる可能性があります。

解決金を主張するのが適当でない場合

解決金を主張するのが適当でないのは、以下のような場合です。

  • 夫婦の一方または両方が、離婚原因が夫婦のいずれにあるか明らかにすることを重要視している。
  • 慰謝料を請求した人が、「離婚に伴う慰謝料」という名目にこだわっている。
  • 慰謝料を請求された人が、金銭給付に応じる意向がない。

離婚原因の所在が争点となっている場合や、金銭給付の名目にこだわる場合は、解決金を主張しても合意に至る見込みは乏しく、かえって紛争を激化させるおそれがあります。

また、金銭給付に応じる意向がない相手に解決金を提示しても、離婚紛争の解決には役立ちません。

むしろ、慰謝料から解決金へと安易に主張を変えると、「慰謝料の証拠が揃っていないのかもしれない。拒否し続ければ主張を下げるかもしれない。」などと相手に思わせることになりかねません。

その他、扶養的財産分与を解決金として取り決めたり、離婚に伴う金銭給付を全てまとめて解決金としたりすることも、解決金のデメリットで書いた理由から慎重に検討すべきです。

離婚に消極的な相手への解決金の支払いはリスクが高い

弁護士の中には、離婚に消極的な相手に対して、解決金を提示して離婚に合意させようと提案してくる人がいます。

また、解決金を支払って離婚に合意させる方法を紹介しているサイトも散見されます。

確かに、相手に金を積めば離婚することはできるかもしれません。

しかし、離婚後に追加で金銭を要求されたり、「本当は離婚したくなかった。」と復縁を求められたりするケースが後を絶たず、「金で離婚させるなんて卑怯だ。」と逆恨みされて傷害事件に発展したケースも報告されています。

したがって、離婚に消極的な相手に解決金を払って離婚する方法は、離婚後の紛争を誘発するリスクがあることは理解しておく必要があります。

解決金の調停条項

離婚調停において、夫婦の一方がもう一方に解決金を支払う旨の合意ができた場合、調停条項には以下のように記載します。

申立人は、相手方に対し、解決金として○○万円を支払う。

申立人は、相手方に対し、前項記載の解決金について、平成○○年○○月○○日限り、○○銀行○○支店の相手方名義の預金口座(口座番○○○○○○○)に振り込む方法により支払う。

振込手数料は申立人の負担とする。

シンプルですが、支払義務と内容が確定されているため、調停調書を債務名義として強制執行手続きを利用することができます。

解決金と慰謝料の違いを知るために、慰謝料の調停条項についても見ておきましょう。

相手方は、申立人に対し、本件離婚に伴う慰謝料として○○万円の支払義務があることを認め、これを平成○○年○○月限り、上記記載の申立人名義の銀行預金口座に振り込む方法により支払う。

「慰謝料として」、「支払義務があることを認め」などと慰謝料の支払義務を認める内容となっており、解決金の調停条項との差は明らかです。

清算条項を入れる

解決金のデメリットである追加請求を防止するために、解決金を含めて離婚調停を成立させる場合は、調停条項に清算条項を記載します。

清算条項とは、離婚調停で決まった以外の一切の請求権が当事者双方にないことを確認する文言です。

具体的には、以下のような文言を調停条項の最後に記載します。

当事者双方は、本件に関し、本調停条項に定めるほか、何らの債権債務のないことを相互に確認し、今後、名義のいかんを問わず、互いに金銭その他一切の請求をしない。

なお、「解決金を取り決めて離婚するが、離婚後に解決を持ちこす金銭給付がある」場合は、上記の清算条項を入れると離婚後に請求できなくなります。

したがって、離婚後に解決を持ちこす金銭給付を除外することを明記しておく必要があります。

離婚ハンドブック編集部

投稿者プロフィール

家事事件(離婚、遺産分割、成年後見など)を専門に取り扱って11年になります。
これまでの実務経験から、当事者自身が離婚に関する知識を得て、自分で考えて判断することが「後悔の少ない離婚」につながるという考えており、その考えに基づいて「離婚ハンドブック」を運営しています。
サイト上では詳細なプロフィールは明かしておらず、仕事の依頼も受けていません。

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