面会交流の間接強制とは?要件と調停条項、制裁金の金額は?

家庭裁判所の調停・審判・訴訟で取り決めた面会交流が約束どおり実施されない場合、強制執行(間接強制)によって履行を強制する方法があります。

しかし、親子の交流という面会交流の性質上、養育費などの金銭債権の強制執行のように直接的に履行を強制する手続きは認められていません。

面会交流の間接強制(強制執行)とは

間接強制とは、調停や審判などで取り決めた内容について債務者が履行しない場合に、裁判所が、制裁金の支払を命じるなどの方法で心理的に強制することにより、債務者に債務を履行させる手続きです。

強制執行と言えば「債務者の直接財産を差し押さえるなどして債務を履行させる手続き(直接強制)」をイメージする人が多いですが、家事事件で取り決めた内容について利用できる強制執行には、間接強制と直接強制の2種類があります。

例えば、養育費など金銭債権については、債務者の給与や預貯金を差し押さえるなどする直接強制を利用することができます(間接強制も可能ですが、ほとんど利用されていません。)。

面会交流で利用できるのは間接強制だけ

面会交流について利用できる強制執行は間接強制だけであり、直接強制を利用することはできません。

理由は、子どもに不安や心配、恐怖などの感情を抱かせるおそれがあるからです。

直接強制が認められるとした場合、執行官が監護親の元を訪ねて強制的に子どもを引き取り、非監護親と子どもを引き合わせて面会交流を実施することが想定されます。

非監護親にとっては面会交流が実現できてうれしいかもしれませんが、子どもにとっては監護親が反対しているにも関わらず見知らぬ人に連行されることになり、強い恐怖や不安などを抱くことは想像に難くないでしょう。

面会交流の間接強制で課される制裁金の金額

面会交流の間接強制で課される制裁金の金額についての規定はありません。

しかし、「面会交流に応じなければ制裁金の支払いを命じる」という命令によって債務者に心理的圧力をかけて履行させる手続きであり、債務者が無理なく支払える金額では履行は望めません。

実際、過去には、制裁金を支払って面会交流を拒否し続ける人もいました。

そのため近年は、面会交流の間接強制で課される制裁金の金額が高くなる傾向にあり、月5~10万円のこともあれば、月100万円の制裁金が課されたケースも出ています。

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面会交流の間接強制ができる要件と調停条項

面会交流を取り決めていれば、必ず間接強制手続きが利用できるわけではなく、以下の要件を満たす必要があります。

家庭裁判所の手続きまたは公正証書で面会交流を取り決めていること

強制執行手続きが利用できるのは、家庭裁判所の調停・審判・訴訟で面会交流を取り決めたか、面会交流について父母が合意した内容を公正証書にしている必要があります。

父母間で面会交流の合意ができていても、口約束や父母が作成した離婚協議書しかない場合は強制執行を利用できず、改めて面会交流の調停や審判を申し立てなければなりません。

取決めの内容が間接強制ができる内容になっていること

間接強制手続きを利用するには、面会交流の取決めが、債務者が債務を履行していないことが明らかにできる内容になっていなければなりません。

この点については、最高裁判所が、面会交流について間接強制ができる基準を示しています。

面会交流の日時又は頻度、各回の面会交流時間の長さ、子の引渡しの方法等が具体的に定められているなど監護親がすべき給付の特定に欠けるところがないといえる場合は、上記審判に基づき監護親に対し間接強制決定をすることができる。

(平成25年3月28日最高裁判所第一小法廷決定)

2013(平成25)年3月28日に出した間接強制に関する決定の内容を確認すると、上記基準に基づいて判断されていることがよく分かります。

事例面会交流の取り決め内容間接強制
  1. 面会交流の日程等は、月1回、毎月第2土曜日の午前10時から午後4時までとし、場所は、子の福祉を考慮して非監護親の自宅以外の非監護親が定めた場所とする。
  2. 子の受渡場所は、監護親の自宅以外の場所とし、当事者間で協議して定めるが、協議が調わないときは、所定の駅改札口付近とし、監護親は、面会交流開始時に、受渡場所において子を非監護親に引き渡し、子を引き渡す場面のほかは、面会交流に立ち会わず、非監護親は、面会交流終了時に、受渡場所において子を監護親に引き渡す。

監護親がすべき給付の特定に欠けるところがない

  • 面会交流の頻度等につき1箇月に2回、土曜日又は日曜日に1回につき6時間とする

子の引渡しの方法については何ら定められていない(監護親がすべき給付が十分に特定されているとはいえない)

不可
  1. 面会交流は、2箇月に1回程度、原則として第3土曜日の翌日に、半日程度(原則として午前11時から午後5時まで)とするが、最初は1時間程度から始めることとし、子の様子を見ながら徐々に時間を延ばすこととする。
  2. 監護親は、上記(1)の面会交流の開始時に所定の喫茶店の前で子を非監護親に会わせ、非監護親は終了時間に同場所において子を監護親に引き渡すことを当面の原則とするが、面会交流の具体的な日時、場所、方法等は、子の福祉に慎重に配慮して、監護親と非監護親間で協議して定める。

監護親がすべき給付が十分に特定されているとはいえない

不可

間接強制ができる調停条項

上記の例でもイメージがつかめたと思いますが、間接強制ができる調停条項の文例についても書いておきます。

1 相手方は、申立人に対し、申立人が当事者間の長男太郎(平成20年2月2日生)及び長女花子(平成23年3月3日生)と面会交流することを認め、その時期、回数、場所を次のとおり定める。

  1. 平成30年4月4日午前9時から午後5時まで。
  2. 平成30年5月5日以降、毎月第3土曜日の午前10時から午後6時まで。
  3. 上記⑵の日時に面会交流をすることができないときは、第3日曜日の午前10時から午後6時まで。
  4. 上記⑴ないし⑶の面会交流の場所は、申立人の肩書住所地とする。

2 申立人は、相手方の肩書住所地に上記長男及び長女を迎えに行き、面会交流を実施した後、上記1⑴ないし⑶に定めた時間までに、相手方の肩書住所地に送り届ける。

3 当事者間の連絡は、携帯電話のメールによって行う。

面会交流の日時(頻度)、各回の面会交流時間の長さ、子の引渡しの方法など最高裁判所が示した基準を全て満たしています。

一般的な面会交流の調停条項は、「相手方は、申立人に対し、申立人が当事者間の長男太郎(平成20年2月2日生)及び長女花子(平成23年3月3日生)と、月1回程度の面会交流をすることを認める。その具体的日時、場所、方法については、子の福祉を慎重に考慮して、当事者間に事前に協議して定める。」というものです。

しかし、この調停条項では監護親がすべき給付が特定できておらず、間接強制を申し立てることはできません。

調停委員の中には間接強制ができる調停条項の作り方を知らない人もいるため、間接強制を想定している場合は、調停委員が示す調停案を確認し、細かく条件を指定するようにしてください。

調停委員だけでは話が進まない場合、担当の裁判所書記官や家庭裁判所調査官、裁判官に同席してもらって協議する方法もあります。

いずれにしても調停条項の作成を調停委員だけに任せないことが重要です。

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面会交流の調停条項案と調停条項例は?間接強制ができる条項は?

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家事事件(離婚、遺産分割、成年後見など)を専門に取り扱って12年の経験を踏まえ、「離婚ハンドブック」では、離婚に関する制度や手続きについて行政・司法機関よりも詳しく分かりやすく解説しています。
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サイト上では詳細なプロフィールは明かしておらず、仕事の依頼も受けていません。

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