家庭裁判所調査官とは?離婚調停や裁判における仕事内容は?

家庭裁判所調査官

家庭裁判所の調停や訴訟で離婚を目指す場合、子どもの親権や面会交流など子の監護に関する処分で対立した場合にキーマンとなるのは、裁判官、調停委員、弁護士ではなく「家庭裁判所調査官」です。

離婚調停が始まるまでは家庭裁判所調査官という職業があることすら知らない人も多いですが、一度でも経験すると、調査官の影響力の大きさを痛感することになります。

家庭裁判所調査官とは

家庭裁判所調査官(以下「家裁調査官」という。)とは、全国の家庭裁判所と高等裁判所に置かれ、裁判官の名を受けて、家事事件、少年事件、人事訴訟事件、裁判所法以外に規定された事務などを行う裁判所職員です。

家裁調査官は、「子どもの専門家」、「人間関係諸科学の専門家」などとされ、心理学、教育学、社会学など人間関係諸科学の知識やノウハウを駆使して家事事件や少年事件などを担当しており、司法を担う裁判所の中では異色の存在です。

根拠法令は、裁判所法です。

  1. 各家庭裁判所及び各高等裁判所に家庭裁判所調査官を置く。
  2. 家庭裁判所調査官は、各家庭裁判所においては、第31条の3第1項第1号の審判及び調停、同項第2号の裁判(人事訴訟法第32条第1項の附帯処分についての裁判及び同条第3項の親権者の指定についての裁判(以下この項において「附帯処分等の裁判」という。)に限る。)並びに第31条の3第1項第3号の審判に必要な調査その他他の法律において定める事務を掌り、各高等裁判所においては、同項第1号の審判に係る抗告審の審理及び附帯処分等の裁判に係る控訴審の審理に必要な調査その他他の法律において定める事務を掌る。
  3. 最高裁判所は、家庭裁判所調査官の中から、首席家庭裁判所調査官を命じ、調査事務の監督、関係行政機関その他の機関との連絡調整等の事務を掌らせることができる。家庭裁判所調査官は、その職務を行うについては、裁判官の命令に従う。

(裁判所法第61条の2)

家庭裁判所調査官になるには

家裁調査官になるには、旧国家公務員Ⅰ種試験と同レベルと言われる裁判所職員採用試験の総合職試験(家庭裁判所調査官補、院卒者区分または大卒程度区分)に合格しなければなりません。

試験に合格して家庭裁判所調査官補として採用された後は、約2年間の家裁調査官養成課程という研修を受け、家裁調査官に必要な法律や人間科学に関する知識やノウハウを習得します。

そして、研修修了後、家裁調査官として任官します。

日本の国家公務員の中ではトップクラスの試験に合格し、厳しい養成課程を経てようやく任官できる仕事であり、人間科学系の国家公務員の中では最高レベルの難易度となっています。

裁判所調査官と家庭裁判所調査官

家裁調査官と混同されやすいのが、「裁判所調査官」です。

裁判所調査官とは、最高裁判所、各高等裁判所、各地方裁判所に置かれ、裁判官の命を受けて、事件の審理や裁判に関する必要な調査、法律に規定された事務を行う職業です。

根拠法令は、家裁調査官と同じく裁判所法です。

  1. 最高裁判所、各高等裁判所及び各地方裁判所に裁判所調査官を置く。
  2. 裁判所調査官は、裁判官の命を受けて、事件(地方裁判所においては、知的財産又は租税に関する事件に限る。)の審理及び裁判に関して必要な調査その他他の法律において定める事務をつかさどる。

(裁判所法第57条)

裁判所調査官には、以下の種類があります。

最高裁判所調査官 最高裁判所裁判官の審理の補助

原則として判事の身分を持つ裁判官

知的財産を取り扱う裁判所調査官 専門性の高い知的財産に関する事件全般

原則として、特許庁の審判官

租税を取り扱う裁判所調査官 課税庁による処分の当否を争う税務訴訟

原則として、国税庁の税務職員

家庭裁判所調査官の仕事内容

家裁調査官の仕事内容は、裁判所法、家事事件手続法、少年法人事訴訟法、その他の法律で規定されており、家庭裁判所と高等裁判所では仕事内容が異なります。

法律上、いずれの仕事も裁判官の命令を受けて行うこととされています。

家庭裁判所における仕事内容

家庭裁判所における主な仕事内容は、以下のとおりです。

事件 仕事内容
家事事件 家事事件手続法で定められた家庭に関する事件の審判と調停に必要な調査

  • 事実の調査
  • 審判または調停の期日への出席、意見陳述
  • 社会福祉機関との連絡その他の調整措置
  • 子の意思の把握など
  • 成年後見、保佐、補助、未成年後見の事務の監督
  • 任意後見監督人の事務の調査
  • 審判または調停で定められた義務の履行状況の調査
  • 履行勧告
少年事件 少年法で定められた少年保護事件の審判に必要な調査

  • 事件の調査
  • 審判に付すべき少年の報告及び報告前調査
  • 事件の被害者などからの意見聴取
  • 同行状の執行
  • 観護措置
  • 観察(試験観察)
  • 決定の執行
  • 審判への出席、意見陳述
人事訴訟事件(離婚訴訟など) 人事訴訟法で定められた人事訴訟の第1審の裁判(附帯処分及び親権者の指定についての裁判に限定)に必要な調査

  • 事実の調査
  • 裁判で定められた義務の履行状況の調査
  • 履行勧告
事務 裁判所法以外の法律で定められた事務

高等裁判所における仕事内容

高等裁判所における主な仕事内容は、以下のとおりです。

  • 家事審判の抗告審の審理に必要な調査(家事事件)
  • 附帯処分などの裁判の控訴審の審理に必要な調査(人事訴訟事件)

家事事件における家庭裁判所調査官の役割

家庭に関する問題を取り扱う家事事件では、当事者が抱える問題について、法律に基づく解決案を示したり判断を下したりするだけでなく、問題の背後にある人間関係や家庭環境を踏まえた解決を図る必要があります。

こうした考え方に基づいて、家裁調査官は、離婚紛争中の夫婦や子どもの調査を行って紛争の原因や背景を探ったり、社会福祉機関などと連絡調整して夫婦や子どもにとって最善の解決方法を検討したりし、裁判官や調停委員会は、調査結果に基づいて裁判、審判、調停を進行します。

また、離婚調停において、離婚紛争の中で冷静さを失った夫婦と面接し、落ち着いて調停期日に臨めるよう心理的援助を行ったり、調停期日に立ち会って夫婦の協議をサポートしたりすることもあります。

家庭裁判所調査官の調査

家裁調査官は、離婚調停や離婚訴訟において子どもの親権や子の監護に関する処分(面会交流など)が争われた場合に、裁判官の名を受けて調査を行います。

家裁調査官が行う主な調査は、以下のとおりです。

調査の種類 調査内容の例
子の状況
  • 父母の面接
  • 子どもの面接
  • 家庭訪問
  • 子どもの学校・保育園・幼稚園の担任などの面接
子の監護状況
  • 父母の面接
  • 子どもの面接
  • 監護補助者の面接
  • 家庭訪問
子の意向(心情)
  • 父母の面接
  • 子どもの面接
試行的面会交流(親子交流場面観察)
  • 父母の面接
  • 子どもの面接
  • プレイルームにおける面会交流
親権者の適格性
  • 原告と被告の面接
  • 子どもの面接
  • 監護補助者の面接
  • 家庭訪問
  • 子どもの学校・保育園・幼稚園の担任などの面接

上記に加え、調停に出頭しない当事者への出頭勧告や意向調査、精神的に不安定な当事者の主張整理、学校や幼稚園での子どもの態度が争点になった場合の関係機関調査など、事件に応じて様々な調査命令が出される可能性があります。

調査の種類と調査の内容のいずれも事件の内容を踏まえて家庭裁判所が検討し、裁判官が家裁調査官に命令します。

通常は、調査命令が出される前に夫婦にも説明され、意見を述べる機会が与えられます。

親権や面会交流は家庭裁判所調査官の調査結果で決まると言っても過言ではない

子どもの親権や面会交流については、原則として、家裁調査官の調査結果に基づいて調停や訴訟が進行するため、家裁調査官の調査結果次第で決まると言っても過言ではありません。

調停の進行は調停委員会、訴訟の進行は裁判官が行いますが、調停委員も裁判官も、家庭の問題や離婚紛争に巻き込まれた子どもの審理などについて必ずしも詳しいわけではないため、その道の専門家である家裁調査官の調査結果や意見を尊重しようとするのです。

したがって、親権や面会交流について争う場合、家裁調査官を意識した対応が求められます。

家庭裁判所調査官の調査に対するスタンス

調停や訴訟で家裁調査官が調査を行う方針が伝えられた場合、以下の点に注意する必要があります。

  • 調査にはできる限り協力する
  • 事実を話す
  • 子どもに余計なことを吹き込まない

家裁調査官の調査では、夫婦や家庭について立ち入った内容を聞かれたり、家庭訪問をされたりするため、許否的になってしまう人が一定数います。

しかし、調査に拒否的な態度を示したことは裁判官や調停委員に報告され、その後の手続きが思った方向に進まなくなるおそれがあるため、調査にはできる限り協力することが重要です。

また、家裁調査官は、心理学などの専門知識を有している上に関係機関の調査も行うため、調査で嘘をついたり子どもに入れ知恵したりしても、多くの場合は見破られて悪いイメージを与えてしまいます。

そのため、調査時には都合の悪いことも包み隠さず話し、子どもには調査時にありのままの気持ちを話すよう伝えることが大切です。

なお、弁護士などに相談すると、調査時に応える内容を指導されたり想定問答集を渡され、調査時に都合の悪いことを隠したり、子どもに入れ知恵したりするよう促されることがあります。

聞き入れるか否かは個人の判断ですが、たとえ一時的に家裁調査官を騙すことができたとしても、後になって発覚し、子どもの親権者になったり面会交流を実現したりするという目的の達成を難しくするおそれがあることは理解しておかなければなりません。

調査結果の閲覧謄写

家裁調査官の調査結果は、「調査報告書」という書面で裁判官に報告されます。

調査報告書は、申請することで閲覧謄写(読んだりコピーしたりすること)ができます。

調査報告書の最後には家裁調査官の意見が付されており、原則として、意見に基づいて調査後の手続きが進むことになるため、期日までに時間がない場合でも、意見欄だけは読んでおく必要があります。

また、調査報告書の記載に誤りがあったり、相手が虚偽の主張をしたりしていることもあるため、できる限り早く全文を読んでおくことが大切です。

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離婚ハンドブック編集部

投稿者プロフィール

家事事件(離婚、遺産分割、成年後見など)を専門に取り扱って11年になります。
これまでの実務経験から、当事者自身が離婚に関する知識を得て、自分で考えて判断することが「後悔の少ない離婚」につながるという考えており、その考えに基づいて「離婚ハンドブック」を運営しています。
サイト上では詳細なプロフィールは明かしておらず、仕事の依頼も受けていません。

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