結婚の法的効果・効力は?婚姻した夫婦の義務は貞操義務と何?

離婚すると、法律上の婚姻によって生じた権利や義務が消失します。
そのため、離婚の効力を理解するには、婚姻の効力を理解しておかなければなりません。
目次
婚姻の効果・効力(婚姻した夫婦の義務)
法律上の婚姻が有効に成立すると、夫婦の間には身分や財産に関する様々な効果・効力が生じます。
民法では、法律上の婚姻によって生じる効力について「婚姻の効力」、「夫婦財産制」などに定められています。
婚姻の効力
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法律上、明確に「義務」とされているのは同居・協力・扶助義務のみですが、夫婦には貞操義務があるとされます。
夫婦財産制
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夫婦財産制に関しては、婚姻費用分担義務と日常の家事に関する債務の連帯責任という義務が課されます。
その他
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婚姻すると、互いに配偶者の相続権という権利が発生します。
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婚姻の効力
民法の「婚姻の効力」の節には、夫婦同氏、同居・協力・扶助義務、貞操義務、成年擬制、夫婦間の契約の取消権について定められています。
夫婦同氏(民法第750条)
民法では、夫婦は、婚姻届を提出するまでに、夫または妻どちらの氏を称するかを決め、婚姻期間中はその氏を名乗らなければならないと定められています。
夫婦同氏(夫婦同姓)の原則と呼ばれるもので、婚姻期間中に夫婦が別の氏を名乗ることは認められません(夫婦別姓の禁止)。
婚姻届には夫婦が婚姻期間中に称する氏を記載する欄があり、その欄に記載した氏が夫婦の氏として登録されます。
夫婦が夫の氏を名乗る場合は夫が、妻の氏を名乗る場合は妻が戸籍の筆頭者となります。
仕事などで婚姻前の氏(旧姓)を使用することもできますが、あくまで「通称」であり、戸籍上の氏は夫婦どちらかの氏にする必要があります。
また、夫婦が同姓であっても、どちらの氏を使うか決めなければなりません。
なお、婚姻時に氏を相手の姓に改めた人は、離婚(婚姻の解消)時、婚姻前の氏に戻る(復氏)か、婚姻中の氏を使い続ける(婚氏続称)か決めることになります。
同居・協力・扶助義務(民法第752条、婚姻した夫婦の義務)
同居・協力・扶助義務とひとまとめにされていますが、同居義務と協力・扶助義務では内容が異なります。
同居義務
民法では、夫婦は、同居するとともに、互いに協力して扶助する(助け合う)必要があると定められています。
同居する場所は夫婦で話し合って決めます。
夫婦の一方が同居を拒否する場合は、同居を請求することができますが、無理強いすることはできません。
また、単身赴任、長期入院、収監など、夫婦の合意ややむを得ない事情によって別居生活を送ったとしても、同居義務違反とはなりません。
ただし、正当な理由がないのに同居を拒んだ場合、「悪意の遺棄」という法定離婚事由を理由に離婚を請求されたり、扶養を拒まれたりすることがあります。
協力義務
協力義務とは、婚姻生活を継続するために必要なことを、夫婦で協力して行う義務です。
夫婦で協力すべきこととしては、家事育児の分担や病気になった相手の看病などが挙げられます。
扶助義務
扶助義務とは、夫婦間の扶養義務のことです。
夫婦には、生活保持義務(夫婦の生活水準を同じレベルに保持する義務)があります。
成年擬制(民法第753条)
成年擬制とは、未成年のうちに婚姻した人が、婚姻によって成年とみなされることです。
未成年者は、親権や未成年後見に服しており、法律行為を行うのに法定代理人の同意が必要であるなど、行為能力が制限されていますが、婚姻後もこれらの状態が継続すると、独立した婚姻生活を送ることが困難です。
そのため、法律婚をした未成年者を成年とみなすことで、親権や未成年後見を終了させるとともに、行為能力の制限をなくすことになっています。
ただし、成年擬制が適用されるのは私法的な法律関係に限られており、公法的な法律関係には及びません。
例えば、公職選挙法、未成年者飲酒禁止法、未成年者喫煙禁止法などには婚姻による成年擬制には適用の効果が及びません。
つまり、成年に達するまで選挙権はなく、飲酒や喫煙も認められません。
夫婦間の契約の取消権(民法第754条)
夫婦間で結んだ契約について、婚姻期間中であれば、いつでも取り消すことができるというものです。
ただし、夫婦以外の第三者の権利を侵害することはできません。
以前から、削除すべきとの意見が多く、今後、削除される可能性があります。
貞操義務(婚姻した夫婦の義務)
貞操義務とは、婚姻相手以外と性的関係を持たない(貞操を守る)という義務です。
貞操義務に違反した場合、不貞行為という法定離婚事由となります。
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夫婦財産制
民法の「夫婦財産制」の節には、夫婦間の財産を規定する2つの制度が定められています。
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それぞれの夫婦財産制について、詳しく見ていきましょう。
夫婦財産契約(民法第755~第759条)
夫婦財産契約とは、婚姻中の夫婦の財産について、夫婦の契約で自由に決めることができる制度です。
しかし、婚姻前に契約する必要があること、婚姻後に変更できないこと、婚姻前に契約を結ぶ習慣がないことなどの理由から、契約を結んでいる夫婦は稀です。
婚姻費用の分担(民法第760条、婚姻した夫婦の義務)
婚姻費用とは、婚姻期間中において、夫婦やその間の子にかかる費用のことです。
衣食住にかかる費用、出産費用、養育費、教育費、医療費、遊興費など、婚姻期間中にかかる費用全般が含まれています。
民法では、「夫婦は、その資産・収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する(民法760条)」と定められています。
すでに解説したとおり、夫婦には互いに協力・扶助しあい、相手に自分と同程度の水準の生活を送らせる義務(生活扶助義務)があり、婚姻費用もこれらの義務の範囲で分担することになります。
夫婦が同居している間は、婚姻費用の分担が問題になることはあまりありません。
しかし、夫婦が別居する場合、収入が多い方に別居する相手の婚姻費用を支払う義務が生じ、婚姻費用の額や支払い方法でもめることがあります。
婚姻費用の分担方法については、まず、夫婦の話し合いで決め、夫婦だけで決められない場合は、家庭裁判所の調停や審判を利用して決めることもできます。
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日常の家事に関する債務の連帯責任(民法第761条、婚姻した夫婦の義務)
民法上、夫婦は、日常の家事に関する債務について連帯して責任を負うと定められています。
夫婦間では別産制が採用されており、夫婦の一方が他人とした取引について、もう一方が責任を負うことはありません。
しかし、取引相手となる他人からすると、夫婦の一方が婚姻生活を維持するために行った取引については夫婦で責任を負うものと考えるのが普通です。
そのため、日常の家事に関する債務に限っては、夫婦の一方が他人とした取引について、夫婦のもう一方も連帯して責任を負うことが定められたのです。
日常の家事に関する法律行為には、生活必需品の購入、家屋の賃貸借契約、子どもの養育・教育・医療・保険に関する契約などが挙げられます。
その他(嫡出推定、姻族関係、配偶者の相続権)
その他、法律上の婚姻によって以下の効果が生じます。
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嫡出推定(民法第772条)
嫡出推定とは、婚姻中に妻が懐胎(妊娠)した子どもについて、法律上、夫の子であると推定することです。
民法上、「婚姻の成立から200日が経過した後」または「離婚後300日以内」に生まれた子どもは、婚姻中に妊娠したと推定され、嫡出子(婚姻中の夫婦の間に生まれた子ども)として戸籍に記載されます。
嫡出推定は、「子どもの父親が誰なのか早期に確定させることにより、親子関係を安定させることが子どもの利益につながる。」という考えに基づいて定められた制度です。
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姻族関係(民法第725条第3項)
姻族関係とは、法律上の婚姻によって生じる親族関係のことです。
婚姻すると、婚姻相手の伯父・叔父や伯母・叔母などとの間に姻族関係が発生します。
民法では、婚姻相手の3親等内の姻族を親族とすると定められています。
姻族関係は、離婚によって消滅します。
配偶者の相続権(民法第890条)
民法上、「被相続人の配偶者は、常に相続人となる。」と定められています。
法律上の婚姻をした夫婦の一方が死亡した場合、もう一方が相続人となります。
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