離婚後の公的医療保険(健康保険)について知っておきたいこと

医療保険 健康保険

離婚後は、公的医療保険の手続きが必要になります。

期限が短い手続きもあるため、離婚前に手順などを調べておかないと、離婚後の慌ただしさのせいで期限までに手続できなくなるおそれがあります。

公的医療保険とは

公的医療保険とは、病気や怪我で治療を受けたときに支払う医療費の一部について、公的機関などが一定の割合で保証する制度です。

日本では「国民皆保険制度」が採用されており、全国民が何らかの公的医療保険に加入することになっていますが、職業や勤務先によって加入できる保険の種類があり、補償内容も保険によって異なるところがあります。

公的医療保険の種類

公的医療保険には、自営業者などが加入する国民健康保険、民間企業の会社員などが加入する健康保険(社会保険)、公務員が加入する共済組合保健、高齢者が加入する後期高齢者医療保険などがあります。

日本人の多くが加入している国民健康保険と健康保険(協会けんぽ、組合健保)の運営機関と加入者は、以下のとおりです。

公的医療保険 運営機関 加入者
国民健康保険 都道府県・市区町村

(2018年4月から)

自営業者

農業従事者

年金生活者

無職の人

長期在住外国人など

健康保険

(協会けんぽ)

全国健康保険協会 中小企業の従業員など
組合管掌健康保険

(組合健保)

企業の健康保険組合 大企業の従業員など

国民健康保険とは

国民健康保険とは、都道府県と市区町村が運営し、自営業者やその家族などが加入する公的医療保険です。

国民健康保険では加入者一人ひとりが被保険者となり、健康保険(社会保険)や共済保険のように扶養という制度はありません。

保険料は、「前年の1月から12月の所得」、「加入者の数」、「加入者の年齢」に基づいて住民票の世帯ごとに計算されます。

また、「医療分」、「後期高齢者支援金分」、40歳以上65歳未満の加入者が支払う「介護分」から構成され、いずれも加入者が均等負担する「均等割額」と所得に応じた「所得割額」の合計で金額が決まります。

ただし、異なる計算方法を採用している地域もあるため事前確認が必要です。

なお、世帯主本人が国民健康保険の加入者でなかった場合でも、同一世帯に一人でも国民健康保険加入者がいれば世帯主が納付義務者となります。

健康保険(社会保険とは)

健康保険(社会保険)とは、全国健康保険協会や企業の健康保険組合などが運営し、中小企業や大企業の従業員などが加入する公的医療保険です。

勤務先の社会保険に加入している従業員などが対象であり、全国健康保険協会が運営する「協会けんぽ」には中小企業の従業員が、企業の健康保険組合が運営する健康保険は大企業の従業員が多くなっています。

保険料は、従業員の標準報酬月額(原則として、4月から6月の給与総額の平均額)に基づいて算出されます。

また、保険料の全額を被保険者が負担する国民健康保険と異なり、運営機関(企業など)と被保険者(従業員など)が折半して負担します(労使折半)。

健康保険の最大の特徴は「扶養」という考え方が採用されているところです。

国民健康保険の場合、同一世帯であっても加入者一人ひとりが被保険者となり、加入者ごとに保険料がかかります。

一方で健康保険の場合、被保険者と同一生計の配偶者、子供、親を扶養家族(被扶養者)に入れることができ、扶養家族がいても、その人数が何人であっても、保険料は変わりません。

離婚した場合の公的医療保険

離婚した場合、婚姻時に加入していた公的医療保険の種類に応じて手続きを行う必要があります。

期限が設定されていることもあるため、離婚前に必要な手続きや期限などを運営機関へ確認しておくことが大切です。

加入している公的医療保険を知る方法

病院受診時などに提示する保険証に保険の運営機関が記載されています。

婚姻中に配偶者の扶養に入っていた場合は配偶者の勤務先の健康保険(社会保険)、自信が企業などで勤務していれば勤務先の健康保険(社会保険)、自営業などであれば国民健康保険に加入しているはずです。

以下、婚姻中に加入していた公的医療保険ごとに離婚後の手続きを解説していきます。

配偶者の勤務先の健康保険に加入していた場合

当てはまる人:配偶者が民間企業などに勤務しており、自身は専業主婦またはパートやアルバイトをしていた人など

婚姻中、民間企業に勤務する配偶者の扶養家族であった場合、原則として、配偶者の勤務先が運営する健康保険(公的医療保険)に被扶養家族として加入しています。

離婚すると、元配偶者の扶養家族ではなくなって医療保険の保険資格を失うため、脱退して別の公的医療保険に加入する手続きをとらなくてはなりません。

離婚後に加入する公的医療保険や手続きの窓口は、離婚後の職業や勤務先によって異なります。

離婚後の選択 公的医療保険 窓口
就職 勤務先の健康保険 勤務先
自営業 国民健康保険 市区町村役場

加入手続には、元配偶者の勤務が発行する資格喪失証明書が必要

パート

国民健康保険加入までの流れ

元配偶者の健康保険を脱退して新たに国民健康保険に加入するまでの流れは、以下のとおりです。

  1. 保険証を元配偶者に返し、脱退手続きを取ってもらう
  2. 元配偶者の勤務先から発行される「資格喪失証明書」を受け取る
  3. 市区町村役場へ行き、国民健康保険加入手続きを行う(資格喪失証明書が必要)

なお、「健康保険の資格を喪失した後、元配偶者から資格喪失証明書を受け取って国民健康保険に加入するまでの間は無保険状態になるのではないか。」と心配になるかもしれません。

しかし実務上、無保険期間が生じないように、「国民健康保険の加入日は、資格喪失証明書の取得日に遡る」取り扱いがなされています。

健康保険の資格喪失後から国民健康保険加入手続きが完了するまでに治療を受けた場合、一旦は全額自己負担し、国民健康保険加入後に市区町村役場で還付手続きをとることになります。

元配偶者から資格喪失証明書を渡してもらえない場合

実務上、以下のような理由により、元配偶者から資格喪失証明書を渡してもらえないというケースが頻発しています。

  • 世間体を気にして勤務先に離婚した事実を伝えていない
  • 感情的な対立から資格喪失証明書を渡そうとしない
  • 資格喪失証明書の交付に条件をつけてくる(「養育費を下げろ」、「面会交流の頻度を増やせ」など)

国民健康保険の加入手続きには期限があり、期限を過ぎると医療費を全額自己負担することになり、経済的に圧迫されてしまいます。

元配偶者から資格喪失証明書を渡してもらえない場合は、以下の方法を試してください。

  • 第三者から元配偶者に連絡してもらう(元配偶者と対立関係にない親族や友人・知人など)
  • 元配偶者に「渡してもらえないなら、勤務先に送付するよう求める」と伝える
  • 元配偶者の勤務先に発行・送付を依頼する
  • 住んでいる地域の市区町村役場の国民健康保険課窓口に相談する

配偶者を世帯主とする国民健康保険に加入していた場合

当てはまる人:配偶者が自営業などを営んでおり、自身は専業主婦またはパートやアルバイトをしていた人など

婚姻中、配偶者が自営業などを営み、自身は専業主婦やパート・アルバイトなどをしていた場合、原則として、配偶者を世帯主とする国民健康保険に加入しています。

離婚後は、夫の世帯から脱退し、新たに自分を世帯主とする国民健康保険に加入するか、就職して勤務先の健康保険に加入することになります。

離婚後の選択 公的医療保険 窓口
就職 勤務先の健康保険 勤務先
自営業 国民健康保険 市区町村役場
パート

自分の勤務先の健康保険に加入していた場合

当てはまる人:正社員として働き、配偶者の扶養家族ではなかった人など

婚姻中、正社員として民間企業などに勤務していた場合、原則として、勤務先の健康保険(公的医療保険)に被保険者として加入しています。

離婚後も同じ勤務先で働き続ける場合、保険の脱退や新規加入の必要はありませんが、扶養家族に変更があった場合は手続きをしなければなりません。

例えば、婚姻中に配偶者や子供を扶養家族にしており、離婚後は一人世帯となった場合は、扶養家族の変更手続きが必要です。

手続きの方法や必要書類は勤務先によって異なるため、離婚前に確認してください。

なお、離婚後に退職して自営業などを営む場合、勤務先から資格喪失証明書を発行してもらい、市区町村役場で国民健康保険加入の手続きを行うことになります。

自分を世帯主とする国民健康保険に加入していた場合

当てはまる人:自営業を営んでいた人など

婚姻中、自営業などを営んで主に家計を支えていた場合、原則として、自ら世帯主となって国民健康保険の被保険者となっています。

離婚後も自営業などを継続する場合、保険の脱退や新規加入の手続きは不要ですが、世帯の構成員が変わる場合は変更手続きが必要です。

また、離婚後に民間企業に就職する場合、勤務先の健康保険に加入することになります。

子供に関する公的医療保険の手続き

離婚後に子どもを引き取り、子どもを自分と同じ公的医療保険に加入させる場合、加入手続きが必要になります。

離婚前 離婚後 手続きの窓口
国民健康保険 国民健康保険 市区町村役場
健康保険 勤務先
健康保険 国民健康保険 市区町村役場

※資格喪失証明書が必要

健康保険 勤務先

健康保険の留意点

健康保険については、父母が離婚しても子どもは保険資格を喪失せず、離婚後も医療保険を利用し続けることが可能ですし、非親権者が加入する健康保険に子どもを加入させることもできます。

しかし、元夫婦間で保険証のやりとりを行ったり、各種手続のために協力しなければならなかったりするため、離婚後も紛争状態が継続している場合は、子供を引き取った親が自身の健康保険に加入させるのが無難です。

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離婚ハンドブック編集部

投稿者プロフィール

家事事件(離婚、遺産分割、成年後見など)を専門に取り扱って11年になります。
これまでの実務経験から、当事者自身が離婚に関する知識を得て、自分で考えて判断することが「後悔の少ない離婚」につながるという考えており、その考えに基づいて「離婚ハンドブック」を運営しています。
サイト上では詳細なプロフィールは明かしておらず、仕事の依頼も受けていません。

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