国民健康保険料の減免の要件は?母子家庭は免除・減額される?

経済的に困って国民健康保険料の支払いが生活を圧迫するような場合、保険料の減免を求めることができます。

母子家庭のシングルマザーや父子家庭のシングルファザーなどひとり親世帯も、収入要件などを満たせば減免が認められ、保険料の負担を軽減できる場合があります。

国民健康保険料の仕組み

国民健康保険料には、企業などの健康保険(社会保険)のような「扶養」の概念がなく、年齢や収入の有無・多寡に関わらず加入者一人ひとりが保険料を負担しなければなりません。

母子家庭で子供が幼い場合、母が働いて子供を養っていることが多いですが、母親も子供も保険料を納付する必要があります。

国民健康保険料は世帯ごとに納付する

国民健康保険料は加入者一人ひとりについて金額が計算されますが、世帯ごとに納付することになっています。

納付義務者は世帯主です。

世帯主が国民健康保険に加入していない場合でも、世帯内に国民健康保険加入者が一人でもいる場合は、世帯主が納付義務を負います。

国民健康保険料の内訳と計算方法

国民健康保険料は、医療分(医療給付費分)保険料、支援金分(後期高齢者支援金分)保険料、介護分(介護納付金分)保険料という3種類の保険料の合算で算出されます。

医療分保険料国保加入者全員が支払う、国保加入者の医療給付費などに充当される費用
支援金分保険料国保加入者全員が支払う、後期高齢者医療制度加入者の医療給付費支援に充当される費用
介護分保険料40歳以上65歳未満の国保加入者が支払う費用

また、医療分保険料、支援金分保険料、介護分保険料は、それぞれ均等割額と所得割額の合計で計算されます。

均等割額全ての国保加入者が収入や年齢に関わらず平等に負担する保険料
所得割額国保加入者の前年の所得に応じて決まる保険料

※地域によっては平等割や資産割を採用しているところもあります。

ここまでの説明を踏まえると、国民健康保険料は以下のような計算式で算出できることになります。

  • 加入者1人の国民健康保険料:医療分保険料(均等割額+所得割額)+支援分保険料(均等割額+所得割額)+介護分保険料(均等割額+所得割額)
  • 世帯の国民健康保険料:加入者1人の国民健康保険料×世帯の人数

※介護分保険料は40歳以上65歳未満の人だけが負担する

国民健康保険料の計算方法については、関連記事で事例を使って詳しく解説しています。

国民健康保険料は加入時期によって保険料が大幅に変化することがあるため、特に、離婚前の人はチェックしてみてください。

関連記事

母子家庭の国民健康保険料の計算方法と軽減・免除基準を解説

国民健康保険料を減免制度は3種類

国民健康保険には、減額(軽減)、減免、全額免除という3種類の保険料減免制度があります。

各制度ごとに申請対象者や要件が異なるため、制度の概要を理解した上で自分の家庭がどの制度を申請できるか検討することになります。

国民健康保険料の減額(軽減)

国民健康保険料の減額とは、世帯所得が一定基準を下回る世帯を対象として、医療分保険料、支援金分保険料、介護分保険料のうち均等割を軽減する制度です。

世帯人数7割軽減5割軽減2割軽減
133万円以下61万円以下84万円以下
289万円以下135万円以下
3117万円以下186万円以下
4145万円以下245万円以下

※平成31(令和元、2019)年の軽減判定所得

世帯の全員または一部の人が働いて収入を得ていても、世帯全員の所得の合計が基準額以下であれば、保険料が減額されます。

失業や退職などの理由や、母子家庭や障害者がいるなどの家庭状況は問われません。

ただし、住民税の申告によって世帯全員の所得が明らかになっていなければなりません。

減額の判定

国民健康保険料の減額の判定は、毎年4月1日(判定基準日)時点の世帯状況に基づいて、世帯における国保加入者全員の総所得金額などを合算して行われます。

年度途中に加入した場合は、加入日の世帯状況が基準となります。

世帯全員の所得は住民税の申告によって明らかになるため、申請しなくても役場が世帯所得に応じて制度を適用します。

国民健康保険料の減免

国民健康保険料の減免とは、災害や年度途中の退職といった不測の事態で一時的に保険料を支払えなくなった人などを対象として、保険料を減額または免除する制度です。

保険料減免の対象となるのは、以下のような人です。

  • 被災者
  • 失業者(倒産や解雇など)
  • 退職者など
  • 65歳以上の高齢者(国民健康保険資格を取得した場合)
  • 生活保護受給者
  • 障害者
  • 拘禁中の人

減免の割合や内容は地域によって異なります。

この記事では、大阪市の減免措置を参考にして解説していきます。

被災者

震災、風水害、火災などに被災した場合に、国民健康保険料(医療分、支援金分、介護分それぞれの均等割、所得割、平等割)が以下の減免率表に基づいて減免されます。

減免期間は被災した月から最大で12ヶ月間です。

損害の程度減免率
全壊、全焼、大規模半壊100%
半壊、半焼70%
火災による水損、床上浸水50%

申請には、印鑑(自署できる場合は不要)と罹災証明書(被災した事実を証明する資料)などが必要です。

失業者(倒産や解雇など)

倒産や解雇など自分の意思によらない理由で離職し、離職時に65歳未満だった人を対象として国民健康保険料を減免する制度です。

雇用保険受給資格者証の離職理由が以下のいずれかであることが減免の要件です。

離職

区分

コード離職理由
1A11解雇(1B及び5Eに該当するものを除く)
1B12天災等の事由により事業の継続が不可能となったことによる解雇
2A21会社都合による雇い止めで雇用期間が3年以上
2B22会社都合による雇い止めで雇用期間が3年未満(契約更新の明示あり)
2C23会社都合による雇い止めで雇用期間が3年未満(契約更新の明示はないが本人は契約更新を希望)
2D24その他の契約期間満了による退職
3A31事業主からの働きかけによる正当な理由のある自己都合退職
3B32事務所移転等に伴う正当な理由のある自己都合退職
3C33正当な理由のある自己都合退職(離職日以前の2年間に被保険者期間が通算して12ヶ月以上)
3D34正当な理由のある自己都合退職(離職日以前の1年間に被保険者期間が通算して6ヶ月以上)

出典:減免対象離職理由一覧表|大阪市

減免期間は、離職年月日の翌日が属する月から翌年度末までです。

減免率は、以下のとおりです。

所得割給与所得を30/100として計算
均等割、平等割7割、5割、2割判定の場合は給与所得を30/100として判定

届出には、印鑑(自署できる場合は不要)と雇用保険受給資格者証が必要です。

退職者など

退職、倒産、廃業、休業や営業不振等の理由により、減免を希望する年の見込所得が前年と比べて10分の7以下になる人を対象とする減免制度です。

減免されるのは医療分、支援金分、介護分保険料の所得割で、以下の減免率表に基づいて減免されます。

所得減少率減免率
100%100%
90%以上100%未満90%
80%以上90%未満80%
70%以上80%未満70%
60%以上70%未満60%
50%以上60%未満50%
40%以上50%未満40%
30%以上40%未満30%

申請には、以下のものが必要です。

  • 印鑑
  • 事実を証明する書類(退職証明書、離職票、雇用保険受給資格者証、廃業届など)
  • 退職など事実発生後の収入がわかる書類(年金振込通知書など)

65歳以上の高齢者(国民健康保険資格を取得した場合)

被用者保険の被扶養者を対象として、国家健康保険の資格を取得した月から保険料を減免する制度です。

医療分と支援金分保険料について、以下のとおり減免されます。

所得割全額減免
均等割2分の1

(7割または5割の軽減適用の場合を除く)

平等割2分の1

(同上)

減額期間は、均等割と平等割は旧被扶養者該当付きから24ヶ月間、所得割は当分の間です。

申請には印鑑と旧被扶養者異動連絡票が必要です。

学生

親と同居中で無職の学生は、国民健康保険料を支払う必要はありません。

アルバイト収入がある場合や、親元を離れて一人暮らしを始めた場合は保険料を支払う必要が生じますが、免除申請をすることができます。

前年の所得が少ない場合は免除申請をすれば認められます。

また、学生期間中は学生納付特例制度という特例があります。

学生納付特例制度とは、学生期間は年金保険料を免除してもらい、就職して安定した収入が得られるようになってから過去分の保険料を支払うようにする制度です。

免除ではなく支払いが猶予されるだけであることに注意してください。

国民健康保険料の全額免除

国民健康保険料の全額免除とは、一定要件を満たす人を対象として保険料が全て免除される制度です。

生活保護受給者

生活保護受給者は国民健康保険の加入者とみなされず、国が医療費を負担するため保険料は全額免除されています。

したがって、生活保護受給中は保険料は発生しません。

障害者

一定の基準を満たす障害者は、国民健康保険料の全額が免除対象となります。

法律上は、障害者年金1級または2級に該当する障害者が全額免除の対象ですが、市区町村によって障害者の基準が異なるため、住んでいる地域を管轄する市区町村に確認する必要があります。

大阪市の場合は、地方税法に規定された障害者で、前年の所得が125万円以下の人が保険料全額免除の対象です。

拘禁されている人

国民健康保険の給付を受けることができない期間の医療分、支援金分、介護分保険料の均等割と所得割を免除する制度です。

例えば、刑務所や少年院に収容されている期間については、保険料が全額免除されることになります(一部減免されない地域あり)。

申請には印鑑と収容証明書などが必要です。

国民健康保険料の減額・減免・全額免除に伴うデメリット

国民健康保険料は、減額(軽減)、減免、全額免除のいずれの制度を利用していても、全額給付の場合と同じサービスを受けることができます。

例えば、医療費が軽減され、要件を満たせば出産育児一時金や葬祭費も支給されます。

そのため、減額・減免・全額免除によるデメリットはこれといってありません。

ただし、減額・減免・全額免除のいずれも期限が設定されており、状況に変化がなくても期限を過ぎた場合、再度の申請を行わないと、通常の保険料を納付しなければならなくなります。

母子家庭のシングルマザーと国民健康保険料の減額・減免・全額免除

母子家庭の場合も、上で解説した要件を満たせば国民健康保険料が減額・減免・全額免除されます。

つまり、母子家庭やシングルマザーであること自体が要件となるのではなく、一定の要件を満たす場合に減額などが認められます。

例えば、世帯所得が一定基準を下回る場合には、所得に応じて保険料が減額されることになります。

ただし、住んでいる地域によって要件が異なるため、事前確認が必要です。

>>>「シングルマザー」の記事一覧に戻る

【参考】

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離婚ハンドブック編集部

投稿者プロフィール

家事事件(離婚、遺産分割、成年後見など)を専門に取り扱って12年の経験を踏まえ、「離婚ハンドブック」では、離婚に関する制度や手続きについて行政・司法機関よりも詳しく分かりやすく解説しています。
また、マイナンバー、国民年金、税金、養子縁組、青年後見など、日常生活の中で利用する制度や手続きを分かりやすく解説する記事も掲載しています。
サイト上では詳細なプロフィールは明かしておらず、仕事の依頼も受けていません。

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