国民年金の失業等による特例免除:手続きの申請方法と受給額への影響

会社を退職したり、倒産やリストラで失業したりして国民年金保険料の支払いが困難になった場合、保険料の特例免除を利用できることがあります。

しかし、「手続きがよく分からない。」、「将来受け取る年金額に影響するんじゃないの。」という人は多く、中には、不安や疑問を抱えたまま保険料の免除を受けず生活に困る人もいます。

この記事では、退職・失業後に国民年金保険料を免除してもらう方法と、将来の年金受給額への影響について解説します。

国民年金の失業等による特例免除とは

国民年金の失業等による特例免除とは、通常であれば国民年金保険料算定の審査対象となる所得を除外して審査し、保険料の納付を免除する制度です。

厚生年金に加入していた人が退職または失業した後は、国民年金に加入し、国民年金保険料を支払うことになります。

しかし、収入がなくなって貯蓄も少なく、継続して保険料を支払うことが困難な人も一定数います。

保険料を支払うことが難しい場合に、申請することで保険料の全額または一部を免除してもらえるのが、失業等による特例免除制度です。

国民年金の保険料

令和元年度の国民年金保険料は月額16,410円です。

1年間だと196,920円も支払うことになるので、退職または失業した人にとっては大きな負担になりますが、その負担を免除してもらうことができるのです。

関連記事

離婚後の国民年金:扶養から外れた場合の国民年金切り替え手続きを解説

離職理由は問われない

失業等による特例免除の大きな特徴は、離職理由が問われないことです。

自己都合による退職でも、リストラや倒産を原因とする失業でも、特例免除を受けることができるのです。

50歳未満の場合は「猶予制度」の審査が自動で行われる

申請者が50歳未満の場合、特例免除を申請すると猶予制度の審査も自動で行われます。

世帯主の所得は審査対象外で、あくまで申請者本人だけが審査対象となります。

免除は「一定期間の保険料を支払わなくてもよい」ということですが、猶予は「保険料の支払いを一定期間だけ待ってもらえる」ということなので、いずれ支払う必要があります。

特例免除で免除される保険料

特例免除で免除される保険料の範囲は、前年の所得によって4つに区分されています。

免除区分負担額
全額免除0円
4分の3免除4,100円
半額免除8,210円
4分の1免除12,310円

※令和元年度の月額保険料16,410円の場合

特例免除の免除期間はいつから、いつまでか

特例免除を申請できる期間には、始期(いつから)と終期(いつまで)が決まっています。

いつまで

離職した日の翌日(退職日)を含む月の前月からです。

例えば、令和元年7月に離職した場合、6月分の保険料から免除を申請できます。

いつまで

退職した年の翌々年の6月までです。

例えば、令和元年7月に離職した場合、令和3年6月分まで免除を申請できます。

過去分の保険料免除も申請できる

過去分の保険料についても、2年1ヶ月前まで遡って申請することができます。

退職・失業した年申請期間
令和元年

(1~12月)

令和3年6月まで
平成30年

(1~12月)

令和2年6月まで
平成29年

(1~12月)

令和元年6月まで
平成28年

(1~12月)

平成30年6月まで

ただし、12月31日に退職した場合、翌年1月が退職または失業した年という取り扱いになります。

失業等による特例免除が受けられる人の要件

失業等による特例免除が受けられるのは、以下の要件を満たす人です。

一定期間内に退職・失業した

失業等による特例免除なので、一定期間内に退職または失業していることが要件です。

事業を辞めた人も含まれます。

所得要件

特例免除の審査は、申請者の所得を0円としますが、世帯主と配偶者の所得が考慮されます。

世帯主と配偶者の所得が一定金額を上回る場合は、特例免除の対象外となります。

例えば、一人世帯の単身者の場合、世帯主=申請者で、世帯主の所得が0円として考慮されるので、全額免除となります。

一方で、実家暮らしをしていたり、収入のある配偶者と婚姻していたりする場合、親や配偶者の所得が所得要件を上回ると特例免除の対象外となります。

免除の種類所得収入
全額免除57万円122万円
4分の3免除93万円158万円
半額免除141万円227万円
4分の1免除189万円226万円

離職前に配偶者を扶養に入れていた場合

配偶者についても特例免除を申請することになります。

離職すると厚生年金の資格を喪失して国民年金に加入しますが、国民年金には扶養という概念がなく、配偶者の分の国民年金保険料も支払う必要が生じます。

そこで、申請者本人と配偶者の特例免除を利用して、2人分の保険料免除を受けることで保険料を免除してもらえるようになっているのです。

失業等による特例免除の申請方法

申請方法について解説していきます。

申請先

住民登録している(住民票がある)市区町村役場の国民年金担当課(名称は地域によって異なる)です。

必要書類

退職または失業した人は、以下の書類が必要です。

  • 申請書
  • 年金手帳またはマイナンバーカード
  • 雇用保険受給資格者証のコピー、または、雇用保険被保険者離職票等のコピー
  • 印鑑:認印

雇用保険未加入の場合は、勤務していた会社から退職証明書を発行してもらう必要があります。

配偶者の免除申請を同時に申請する場合、雇用保険受給資格者証のコピーが申請者と配偶者それぞれの申請で必要になります。

また、事業を廃止または休止した人は、以下の書類も必要になります。

a.厚生労働省が実施する総合支援資金貸付の貸付決定通知書の写し及びその申請時の添付書類の写し
b.履歴事項全部証明書または閉鎖事項全部証明書
c.税務署等への異動届出書、個人事業の開廃業等届出書または事業廃止届出書の写し(税務署等の受付印のあるものに限る。)
d.保健所への廃止届出書の控(受付印のあるものに限る。)
e.その他、公的機関が交付する証明書等であって失業の事実が確認できる書類
※ b.からe.までについては、別途、失業の状態にあることの申し立てが必要となります。

引用:日本年金機構

申請書の書き方

「国民年金保険料免除・納付猶予申請書」は、日本年金機構ウェブサイトからダウンロードするか、申請先の窓口で交付してもらいます。

国民年金保険料免除納付猶予申請書

出典:日本年金機構

記入例を参考にすれば必要事項を埋めることができますが、分からないところがあれば空欄にしたまま窓口へ持参するのが無難です。

詳しい書き方については、関連記事で記入例を示しながら解説しています。

関連記事

国民年金の免除:特例免除申請書の書き方を記入例を示して解説

郵送申請について

失業等による特例免除の申請は、郵送ですることも可能です。

郵送申請する場合、必要書類と本人確認書類のコピーを封筒に入れ、期限内に最寄りの年金事務所に送ります。

全国の相談・手続き窓口|日本年金機構

ただし、不備不足があった場合は訂正や追加提出を求められることになり、窓口申請よりも時間がかかる傾向があります。

申請から結果が出るまでにかかる期間

失業等による特例免除を申請してから審査結果が通知されるまでにかかる期間は、2~3ヶ月です。

書類の不備不足があった場合、3ヶ月以上かかるケースもあります。

3ヶ月を経過しても結果通知が届かない場合は、申請先の市区町村役場または最寄りの年金事務所に問い合わせてください。

年度ごとの申請が必要

失業等による特例免除の年度は、7月から翌年6月です。

継続申請は認められていないので、年度が替わっても引き続き特例免除を受けたい場合は、毎年7月~8月に申請しなければなりません。

受給資格期間と将来の年金受給額への影響

失業等による特例免除を利用した場合、国民年金の「受給資格期間」と「将来の年金受給額」に影響します。

影響の内容は、免除された保険料の範囲によって異なります。

全額免除の場合

影響具体的な内容
受給資格期間影響なし

※免除期間は老齢基礎年金の受給資格期間にカウント

将来の年金受給額全額支払った場合の2分の1

※全額免除期間について、2分の1の保険料を納付したものとして年金額に反映

全額免除を受けている期間は保険料負担が0円ですが、2分の1の保険料を納めたことにしてもらえます。

4分の3免除の場合

影響具体的な内容
受給資格期間残り4分の1を支払うことで、老齢基礎年金の受給資格期間にカウント

※免除期間から2年以内に支払わなかった場合、未納期間となる

将来の年金受給額全額支払った場合の8分の5

※残り4分の1を納付した場合

半額免除

影響具体的な内容
受給資格期間残り半額を納付することで、老齢基礎年金の受給資格期間にカウント

※免除期間から2年以内に支払わなかった場合、未納期間となる

将来の年金受給額全額支払った場合の4分の3

※残り半額を納付した場合

4分の1免除

影響具体的な内容
受給資格期間残り4分の3を納付することで、老齢基礎年金の受給資格期間にカウント

※免除期間から2年以内に支払わなかった場合、未納期間となる

将来の年金受給額全額支払った場合の8分の7

※残り4分の3を納付した場合

免除された残りの保険料を支払い続けていれば、受給資格期間としてカウントされ、将来受給できる年金額も優遇される(国が負担する)ことになっています。

免除された保険料は追納できる

特例免除で免除された保険料は、後ほど追納することができます。

免除された保険料を全額追納すれば、保険料を満額支払ったのと同じ年金額を受給できるようになります。

免除期間中に就職した場合

失業等による特例免除を受けている期間中に就職することもあるでしょう。

「免除を取り消す手続きが必要ではないか」と思うかもしれませんが、免除を受けている人が手続きをする必要はありません。

就職先の会社が、免除を受けている人を厚生年金に加入させる手続きをすることで、国民年金から厚生年金に切り替わり、国民年金の免除期間は終了します。

「就職が内定するとすぐに免除が終了するのか」と心配になる人もいるかもしれませんが、免除期間が終了するのは「就職して厚生年金の加入手続きをした段階」です。

内定しただけでは終了しないので安心してください。

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離婚ハンドブック編集部

投稿者プロフィール

家事事件(離婚、遺産分割、成年後見など)を専門に取り扱って12年の経験を踏まえ、「離婚ハンドブック」では、離婚に関する制度や手続きについて行政・司法機関よりも詳しく分かりやすく解説しています。
また、マイナンバー、国民年金、税金、養子縁組、青年後見など、日常生活の中で利用する制度や手続きを分かりやすく解説する記事も掲載しています。
サイト上では詳細なプロフィールは明かしておらず、仕事の依頼も受けていません。

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