婚姻無効とは?婚姻無効確認調停・訴訟の流れは?取り消しとの違いは?

    最終更新日: 2019.07.31

日本においては、婚姻意思のある男女が市区町村役場に婚姻届を提出して受理されることで婚姻が成立しますが、婚姻意思がない婚姻は無効です。

無効な婚姻は婚姻無効確認調停や訴訟で争うことができるのですが、手続きの内容や流れについてはあまり知られていません。

また、婚姻の取り消しとの違いが分からず、どちらの手続きを利用するか悩む人も少なくありません。

この記事では、婚姻無効の効力、婚姻無効確認調停と訴訟の手続き、婚姻の取り消しとの違いについて解説します。

婚姻無効とは

婚姻無効とは、婚姻届が受理されて成立した婚姻が有効ではないということです。

成立した婚姻が無効になると、婚姻の効力は成立当初から生じていなかったことになります。

離婚と違って戸籍に離婚歴が記載されることはなく、婚姻した事実も消除されます。

婚姻の要件

「男女が婚姻(結婚)するにはどうすれば良いか。」と聞くと、多くの人が「婚姻届を提出する」と答えます。

確かに婚姻届を提出して市区町村役場で受理されることで婚姻は成立しますが、婚姻を「有効に」成立させるには届け出だけでは足りません。

日本では、婚姻が有効に成立するには、婚姻届けを提出する時点で、夫婦となる男女が婚姻意思と届出意思を有している必要があります。

婚姻意思とは

婚姻意思とは、婚姻をして夫婦共同生活を営もうという意思のことです。

婚姻届を提出して受理されたとしても、届出の時点で男女の一方または両方に夫婦共同生活を営む意思がない場合、その婚姻は無効です。

例えば、死亡時に遺産を相続させたい、外国人に在留資格を得させたい、苗字を変更したいなど、夫婦共同生活を営む意思を欠いた状態で法律婚によって生じる効力を目的として婚姻した場合、婚姻が成立しても無効な状態となります。

届出意思とは

届出意思とは、婚姻の届出をして法律上の夫婦関係になろうという意思のことです。

夫婦の両方に婚姻意思はあるが、夫婦の一方または両方に届出意思がない状態が事実婚・内縁です。

事実婚(内縁)については関連記事で詳しく解説しているので、関心がある人は読んでみてください。

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結婚の意味(婚姻の定義)とは?法律上の要件、結婚と婚姻の違いは?

婚姻無効の効力

婚姻無効を求める方法には調停(合意に相当する審判)と訴訟(裁判)がありますが、いずれの方法でも婚姻が無効となった場合は「婚姻の効力は成立当初から生じていなかった」ことになります。

したがって、無効な婚姻関係にある男女の間に生まれた子ども(嫡出子)は嫡出性を否定されます

また、戸籍訂正を申請することにより、戸籍も婚姻前の状態に戻ります。

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婚姻無効と婚姻取消しの違い

婚姻の無効と混同されやすいものに、婚姻の取消しがあります。

婚姻の取消しとは、婚姻障害がある婚姻や詐欺または脅迫による婚姻が成立した場合に、その婚姻を取り消すことです。

婚姻障害とは、以下のような状態を指します。

婚姻障害
  • 婚姻適齢(民法第731条)
  • 重婚(民法第732条)
  • 再婚禁止期間(民法第733条)
  • 近親婚(民法第734条~第736条)

婚姻が取り消された場合、将来に向かって婚姻の効力が失われます

婚姻無効と婚姻取消しの違いは、婚姻の無効では「婚姻の効力は成立当初から生じていなかった」と扱われるのに対し、婚姻の取消しでは「将来に向かって婚姻の効力が失われる」と扱われるところです。

婚姻が無効になる場合

婚姻が無効になる要件は、民法第742条に規定されています。

婚姻は、次に掲げる場合に限り、無効とする。

  1. 人違いその他の事由によって当事者間に婚姻をする意思がないとき。
  2. 当事者が婚姻の届出をしないとき。ただし、その届出が第739条第2項に定める方式を欠くだけであるときは、婚姻は、そのためにその効力を妨げられない。

(民法第742条)

身分行為である婚姻については民法総則の無効と取消しに関する規定が適用されないというのが通説であり、民法上も婚姻が無効になる場合を限定的に規定しています。

「当事者間に婚姻する意思がないとき」というのが「婚姻意思がないとき」、「当事者が婚姻の届出をしないとき」というのが「届出意思がないとき(婚姻の届出をしないとき)」です。

届出意思がないとき

「婚姻は、戸籍法(昭和22年法律第224号)の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。(民法第739条第1項)」の規定されるとおり、婚姻の届出は婚姻が成立するための要件です。

しがたって、届出がなされないと婚姻は成立しません(通説)。

なお、「その届出が第739条第2項に定める方式を欠くだけであるときは、婚姻は、そのためにその効力を妨げられない」とは、証人の署名がないなど婚姻届が形式的要件を欠いていても、受理されれば婚姻は有効に成立するということです。

婚姻意思がないとき

婚姻意思がないときとは、「当事者間に真に社会観念上夫婦であると認められる関係の設定を欲する効果意思を有しない場合(最高裁判所昭和44年10月31日判決)」のことです。

例えば、男女間に婚姻意思の合致がない状態で、男女の一方または第三者が勝手に婚姻届を作成して提出した場合、受理されて婚姻が成立しても、その婚姻は無効となります。

また、婚姻する相手の同一性を誤って婚姻届を作成・提出した場合(民法第742条第1項規定の「人違い」)や偽装結婚をした場合も、婚姻は無効です。

ただし、詐欺によって経歴・職業・家族構成など相手の属性について誤りがあった場合、無効ではなく取消しの原因となります。

なお、婚姻届を勝手に提出した場合、戸籍に事実と異なる記載をさせたことで電磁的公正証書原本不実記録罪となり、署名や押印を偽造していれば有印私文書偽造罪や偽造有印私文書行使罪にも問われます。

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無効な婚姻が有効になる場合

無効な婚姻であっても、婚姻した男女が追認した場合は有効となることがあります。

例えば、以下のような判例があります。

事実上の夫婦の一方が他方の意思に基づかないで婚姻届を作成提出した場合においても、当時右両名に夫婦としての実質的生活関係が存在しており、後に右他方の配偶者が右届出の事実を知つてこれを追認したときは、右婚姻は追認によりその届出の当初に遡つて有効となる。

引用:最高裁判所昭和47年7月25日判決

婚姻無効確認調停・訴訟手続き

婚姻届が受理されて無効な婚姻が成立した場合、戸籍を訂正するには、家庭裁判所に婚姻無効確認調停を申し立てて合意に相当する審判を得るか、婚姻無効確認訴訟を提起して離婚無効の判決を得る必要があります。

申立権者(申立人)

婚姻した夫または妻と、婚姻無効確認の利益を有する親族などの第三者です。

申立先(管轄の家庭裁判所)

相手方の住所地を管轄する家庭裁判所、または、当事者が合意で定める家庭裁判所です。

当事者の合意で調停をする裁判所を決めた場合、合意したことを管轄合意書にして申立時に提出しなければなりません。

管轄合意書の書式は家庭裁判所で交付してもらうか裁判所ウェブサイトからダウンロードする方法により入手しますが、自ら作成することも認められています。

記載項目
  • 表題:管轄合意書
  • 提出先の家庭裁判所
  • 作成年月日
  • 申立人と相手方の住所・氏名の記載と押印
  • 管轄合意した旨の文言
文言例
  • 「上記当事者間の貴庁平成○年(家イ)第◯号調停申立事件は、家庭裁判所◯支部の管轄に属する事件ですが、当事者双方合意の上、貴庁を管轄裁判所と定めたので、届け出ます。」

必要書類

婚姻無効確認調停の必要書類は、以下のとおりです。

  • 申立書:原本とコピー各1通
  • 申立事情説明書:原本とコピー各1通
  • 進行に関する照会書:1通
  • 婚姻した男女(夫婦)の戸籍謄本(全部事項証明書):1通
  • 婚姻届の記載事項証明書:1通

【利害関係人が申し立てる場合】

  • 利害関係を証する資料:戸籍謄本など

申立てにかかる費用

収入印紙:1200円分

郵便切手:各家庭裁判所が指定した金額と枚数

婚姻無効確認調停の流れ

婚姻無効確認調停は、特殊調停(身分関係の形成や存否確認に関する事項についての調停)に分類されます。

本来、身分関係の形成や存否確認は人事訴訟事件として裁判所が判断すべきものですが、当事者が審判での解決に合意し、前提事実などに争いがない場合には、より簡易な審判手続き(特殊調停を経て合意に相当する審判をすること)による解決が認められているのです。

ただし、事件の性質上、当事者の合意のみによる解決は認められておらず、家庭裁判所が必要な調査をした上で、当事者の合意が相当であると認めた場合に、合意に沿った審判をすることになっています。

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特殊調停事件とは?離婚無効や取消しは合意に相当する審判が必要?

調停の流れ

婚姻無効確認調停は、調停委員が申立人と相手方の主張を交互に聴取し、それを相手に伝えることを繰り返す方法によって進みます。

申立人と相手方の間に婚姻が無効であることに争いがなく、婚姻無効の問題を審判で解決する合意ができた場合、家庭裁判所は、調停委員の意見を聴取した上で必要な事実の調査を実施します。

そして、当事者の合意が相当と判断すれば、合意に沿って婚姻無効の審判を出します。

一方で、申立人が婚姻無効を諦めた場合は取下げで終了します。

また、当事者間で合意ができない、相手方が出頭しない、当事者間で事実関係に争いがある、家庭裁判所が当事者の合意が正当ではないと判断したなどの場合、調停は不成立で終了します。

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婚姻無効確認訴訟

婚姻無効確認調停が不成立で終了した場合、婚姻無効確認訴訟を提起して裁判所に判断を求めることになります。

訴訟の原告は調停の申立人と同じで、原則として、申立先は調停をした家庭裁判所と同じです。

婚姻無効確認訴訟では、原告と被告が互いに主張とそれを裏づける証拠を提出し、家庭裁判所が婚姻が無効か否かを判断します。

家庭裁判所の判断に不服がある場合は、2週間以内に控訴すれば高等裁判所に再審理させることができます。

控訴期間が過ぎると、判決が確定します。

婚姻無効が確定した後の戸籍訂正

審判または判決の確定後は、裁判所書記官が、市区町村役場に審判または判決が確定したことを通知しますが、それだけでは戸籍は訂正されません。

戸籍を訂正するには、戸籍法第116条第1項の規定に基づいて、申立人が、審判確定から1ヶ月以内に市区町村役場に戸籍の訂正を申請する必要があります。

戸籍訂正の申請

戸籍訂正の申請には、婚姻無効確認事件の審判または判決の「確定証明書(家庭裁判所が発行する、審判または裁判が確定したことを証明する資料、1枚につき150円の手数料がかかる)」を添付する必要があります。

申請者

原則として、婚姻無効確認調停の申立人です。

申立人が申請しない場合、相手方が申請することもできます。

申請先

申請者の本籍地、または、所在地の市区町村役場です。

必要書類

  • 戸籍の訂正申請書:1通
  • 申請者の戸籍謄本(全部事項証明書):1通(本籍地に申請する場合は不要)
  • 審判または判決の確定証明書:1通
  • 申請者の印鑑:認印

申請にかかる費用

費用はかかりません。

申請が受理された場合

戸籍が婚姻前の状態に戻ります。

つまり、無効な婚姻をした男女の婚姻前の戸籍から婚姻事項が削除され、婚姻前の戸籍に戻されるとともに、婚姻によって作成された新戸籍が消除されます。

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戸籍訂正許可とは?申立てと申立書の記載例、戸籍訂正申請の方法は?

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家事事件(離婚、遺産分割、成年後見など)を専門に取り扱って12年の経験を踏まえ、「離婚ハンドブック」では、離婚に関する制度や手続きについて行政・司法機関よりも詳しく分かりやすく解説しています。
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サイト上では詳細なプロフィールは明かしておらず、仕事の依頼も受けていません。

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