婚約破棄を理由に慰謝料請求する方法と慰謝料の相場について

婚約破棄

「婚約をして結納まで済ませた後に相手から婚約の破棄を求められた」ということは、ドラマの中だけではなく現実にも起こっています。

正当な理由なく婚約を破棄された場合、債務不履行または不法行為を理由として慰謝料請求することができます。

婚約破棄を理由に慰謝料を請求するための条件

婚約破棄された場合に慰謝料を請求するには、3つの条件を満たす必要があります。

婚約の成立

婚約破棄を理由に慰謝料請求するのですから、婚約が成立している必要があります。

婚約とは、婚姻意思のある男女が将来婚姻することを約束する契約です。

婚姻の成立要件については民法に規定がありませんが、判例では「男女が誠心誠意をもって将来夫婦になる予期(婚姻意思)」があることとされており、口約束やプロポーズの承諾でも婚姻が成立します。

一般的には結納や婚約指輪の交換、親族への周知などがないと婚約は成立しないと思われがちですが、「婚約の成立」のみであれば、男女間に将来結婚しようという合意があれば足ります。

一方で、男女の一方または両方に婚姻する意思がない場合、婚約は不成立となります。

例えば、性行為の前後やクリスマスイブの夜など「一時の情熱に浮かれた」状態でプロポーズされて承諾したとしても、「誠心誠意をもって将来夫婦として生活する」意思を欠き、婚約の成立が認められないことがあります。

婚約の成立を証明できる客観的事実

婚約は、男女間の婚姻の合意のみで成立します。

しかし、婚約が男女間の口約束のみであった場合、婚約が成立したかどうかを証明することができず、「プロポーズされた」と主張しても、相手が反論すると水掛け論になってしまいます。

そのため、婚姻の成立を明らかにするには、男女間で婚姻しようという合意があったことを証明できる客観的事実を証拠として提出する必要があります。

婚約の成立の証拠としては、以下のようなものを挙げることができます。

  • 婚約指輪そのもの、購入したときの領収書
  • 結納時の写真や領収書、結納金の授受を示す書類
  • 結婚披露宴の式場を予約したときの資料、領収書、招待状や招待者リスト
  • 婚活パーティーへの参加や結婚相談所の紹介を証明する資料
  • 家族や友人知人に婚約したことを知らせる書面やメール
  • 作成済みの婚姻届
  • 共同生活を開始した住居の契約書
  • 女性の妊娠や出産を示す資料
  • 職場を寿退社したことを示す資料

いずれの一つだけでは婚約成立の証拠として弱いため、複数の証拠を準備しておくことが大切です。

正当な事由のない婚約破棄である

婚約破棄で慰謝料を請求するには、「正当な理由がないのに婚約を破棄されること」が必要になります。

例えば、相手が「他に好きな人ができた。」、「一緒に暮らしてみて、やっぱり結婚するのは無理だと思った。」などの理由で婚約を破棄してきた場合、慰謝料請求の対象となると考えられます。

一方で、あなた自身の暴力行為や経歴詐称、浮気など正当な理由によって婚約を破棄された場合、慰謝料を請求することは困難です。

「正当な理由」と「正当な理由がない場合」については、次の項目で詳しく解説します。

婚姻破棄の正当な理由と「正当な理由がない場合」

婚約を破棄されたことを理由として慰謝料を請求できるかどうかは、破棄の理由によります。

婚約破棄の正当な理由

婚約破棄に正当な理由がある場合、慰謝料請求は認められません。

判例では、婚約破棄の正当な理由として以下のようなものが挙げられています。

不貞行為 婚約者以外の異性と性的関係を持った
DV・モラハラ 婚約者に対するDVやモラハラがあった
犯罪・逸脱行動 犯罪行為に及んだ、検挙・逮捕された、非常識な言動や態度を繰り返した
障害 怪我や病気によって身体や精神に障害を抱えた
経済的困窮 ギャンブルによる借金や定職に就かないなど、自身の問題によって経済的に困窮した
経歴詐称 婚約者に嘘の経歴を伝えていたことが発覚した
依存 ギャンブル、飲酒、薬物などへの依存が発覚した
計画変更 婚姻後の計画(両親との同居、住む場所、共働きをするかどうかなど)を一方的に変更した

正当な理由がない場合

上記のような婚約破棄に正当な理由がない場合、破棄を理由として慰謝料を請求することができます。

具体的には、以下のような理由で婚約を破棄された場合、慰謝料請求を検討することになります。

心変わり 相手の一方的な気持ちの変化

例:今は仕事を頑張りたい、(特に理由はないが)結婚しても続かないと思ったなど

性格の不一致 婚約後に性格の不一致を理由に婚約を破棄された

例:価値観が合わない、考え方が気に食わない、喧嘩が多くて辟易したなど

好きな人ができた 婚約者が自分以外の異性に好意を持った

例:他に好きな人ができた、婚約後に別の異性と婚姻したなど

親の反対 親の反対を理由に婚約を破棄された

例:親が「もっと社会的地位のある人と結婚しろ」と言っているなど

差別 資力や出身などを理由に婚約を破棄された

例:自分より年収が低い人とは結婚できない、部落出身者と結婚すると世間体が悪いなど

いずれも婚約者側の一方的な都合によるものであり、婚約破棄の正当な理由とはいえず、慰謝料請求の原因となります。

婚約破棄による慰謝料請求の相場

判例を確認すると、婚約破棄による慰謝料請求の相場は30万円から300万円です。

慰謝料が認められる前提

婚約破棄に正当な理由がないことです。

言い換えると、「破棄した人が一方的な事情で婚約を破棄しており、婚約を破棄された人に過失がないこと」です。

慰謝料に影響する事情

婚約を破棄した人の不法性の程度が大きいほど、高額な慰謝料が認められる傾向があります。

実際の裁判では、婚約破棄に至るまでの男女の対応、婚姻破棄による精神的苦痛の大きさ、他人と恋愛や婚姻をする機会の損失などの事情が総合的に考慮されます。

判例で考慮されている具体的な事情は、以下のとおりです。

  • 婚約までの交際期間と経緯
  • 婚約破棄の原因と経緯
  • 婚約破棄の時期(婚約からの期間)
  • 性交渉、妊娠・出産の有無
  • 婚約が破棄された後の男女の状況
  • 男女の年齢
  • 男女の社会的地位、キャリア、資産

婚約破棄による慰謝料が高くなる事情

婚約破棄を理由とする慰謝料が高くなる主な事情は、以下のとおりです。

  • 交際開始から婚約までの期間が長い
  • 婚約から婚約破棄までの期間が長い
  • 婚姻直前に婚約が破棄された
  • 婚約破棄の原因が、破棄された人に大きな精神的苦痛を与えるものである(異性との交際や婚姻など)
  • 婚約破棄された人が、婚約を機に退職している(キャリアの損失)
  • 家族や友人知人に婚約したことを周知している
  • 女性が妊娠または出産している

精神的苦痛や機会損失などが大きくなる事情がある場合、高額な慰謝料が認められる傾向にあります。

婚約破棄による慰謝料が低くなる事情

慰謝料が低く抑えられる主な事情は、以下のとおりです。

  • 交際開始から婚約までの期間が短い
  • 婚約から婚姻破棄までの期間が短い
  • 婚約から期間を空けずに婚約を破棄された
  • 破棄された人にも、婚約を破棄させる原因の一部がある
  • 婚約の成立が曖昧
  • 婚約したことについて周囲の認識が曖昧

婚約破棄を理由に慰謝料を請求する方法

婚約を破棄されたことを理由に慰謝料を請求する主な方法は、男女間の協議、内容証明郵便による請求、慰謝料請求調停、損害賠償請求訴訟の4つです。

慰謝料請求の時効

慰謝料請求権には時効があります。

裁判所の手続きを利用して慰謝料請求する場合、原則として、婚姻を破棄されてから3年以内に請求する必要があります。

男女間で協議する場合は時効を気にする必要はありませんが、婚約破棄から時間が経過するほど相手の罪悪感が薄れていくため、できる限り早期に請求することが大切です。

男女間の協議

婚約破棄は男女間の問題であり、まずは婚約をした男女で話し合う場を持ち、慰謝料を請求することになります。

ただし、感情的対立が激しい場合や、DVやモラハラを受ける(または及ぶ)可能性がある場合は、直に会うのを避けるか、信頼できる第三者を同席させるなど協議の持ち方を工夫する必要があります。

稀ですが、婚約破棄された人が破棄した人に危害を加えようとするケースも報告されています。

内容証明郵便による請求

内容証明郵便とは、「いつ、どのような内容の文書が、誰から誰あてに差し出されたか」について郵便局が証明するものです。

内容証明に法的拘束力はありませんが、本気で慰謝料を請求していることが相手に伝わり、心理的圧力をかけることができます。

また、「慰謝料請求をしたこと」が書面として残るため、後日、「請求された覚えがない」などと主張されるのを防ぐことができます。

相手が慰謝料請求に応じる意向を示した場合、相手と協議して慰謝料の金額や支払い方法、支払い期限を決めます。

口約束では支払われないおそれがあるため、合意した内容は必ず示談書にしておくようにしてください。

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慰謝料請求調停

男女間の話し合いがまとまらない場合、家庭裁判所に慰謝料請求調停を申し立てる方法があります。

慰謝料請求調停では、調停委員が申立ての事情や請求を聴き、相手との調整や解決案の提示などを行うため、当事者だけでは解決できなかった問題を進展させることが期待できます。

ただし、当事者間の合意を前提とする手続であり、調停委員の調整や助言を得ても合意できない場合、調停は不成立で終了します。

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損害賠償請求訴訟

損害賠償請求訴訟は、男女間の協議や慰謝料請求調停で合意できなかった場合に、裁判所に慰謝料を決めてもらう手続きです。

訴訟で慰謝料が認められるためには、原告が「婚約が成立していたこと」を立証する必要があります。

婚約破棄に伴う財産の清算

婚約が破棄された場合、結納金や婚約指輪などについても男女間で清算することになります。

結納金

婚約が破棄された時点で結納金を支払っていた場合、返還を求めることができます。

結納の目的は婚姻であるところ、婚約破棄によって婚姻することはなくなるため、返還されるべきと考えられています。

ただし、婚姻破棄についての有責性によって判断が分かれるところであり、婚約破棄の原因が破棄された人にある場合、返還を求めることは認められないことがあります。

婚約指輪

婚約が破棄された場合、破棄された人に原因がなければ、返還を求めることができます。

結婚する前提で贈与しているため、婚約が破棄されて婚姻する見込みがなくなった時点で現状に戻すことが相当と考えられています。

ただし、換金性が低く、傷などがついていることもあるため、返還されても購入金額を補てんすることは難しいものです。

そのため、婚約指輪の返還の代わりに金銭で清算する方法もあります。

結納や結婚式の準備にかかった費用

婚姻が破棄された場合、結納の儀式や結婚式の準備にかかった費用についても、婚姻破棄の原因によっては賠償が認められることがあります。

例えば、結婚式場のキャンセル費用、披露宴招待状の発送費用、婚姻後に住む予定だった住居の敷金・礼金・仲介手数料・違約金などは賠償の対象となります。

女性が妊娠や出産をした場合

婚約破棄された女性が妊娠中絶した場合、中絶による女性の心身の負担を分担するという考え方に基づいて、慰謝料を請求することができます。

女性が出産している場合、男性に認知を請求して父子関係を生じさせた上で扶養(養育費)請求することが認められます。

男性が認知を拒む場合、強制認知の手続きを取ることになります。

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生活費

男女の一方が、婚約後の共同生活の費用を立て替えていた場合、一定の割合で返還が認められることがあります。

ただし、男女間で生活費の負担を分担する約束をしており、男女の一方が後で清算することを想定して立て替えていることが求められます。

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離婚ハンドブック編集部

投稿者プロフィール

家事事件(離婚、遺産分割、成年後見など)を専門に取り扱って11年になります。
これまでの実務経験から、当事者自身が離婚に関する知識を得て、自分で考えて判断することが「後悔の少ない離婚」につながるという考えており、その考えに基づいて「離婚ハンドブック」を運営しています。
サイト上では詳細なプロフィールは明かしておらず、仕事の依頼も受けていません。

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