後見開始の審判の申立てから審判まで:申立書書式と必要書類、費用は?

判断能力が低下し、協議離婚や調停離婚ができない配偶者と離婚する場合、まず家庭裁判所に後見開始の審判(判断能力の程度によっては保佐開始の審判または補助開始の審判)を申し立て、配偶者の後見人を選任してもらう必要があります。

後見開始の審判などは、申立てに必要な書類が多く、申立てから審判確定までの流れや手続きも複雑な上、準備をせずに申立てを行うと思った通りの結果が得られないこともあります。

そのため、事前準備を徹底した上で申立てを行うことが重要です。

後見開始の審判の流れ

後見開始の審判は、申立て前の準備から審判の確定まで大きく4つの段階があり、各段階ごとに所定の手続きを踏まなければなりません。

審判前の準備類型の選択
申立人・申立先・後見人候補者の決定
申立てに必要な書類と費用の準備
申立て申立ての受理
申立てから審判まで面接/事情聴取
親族照会
本人調査
鑑定
審判審判
不服申立て
審判確定
成年後見登記

以下、各手続について解説します。

後見開始の審判の流れ:申立て前の準備

後見開始の審判は、一連の手続きの中で申立て前の準備が何よりも重要です。

類型の選択

法定後見制度には、本人の判断能力の程度によって後見、保佐、補助の3つの類型があり、まずはどの類型を申し立てるか選ぶ必要があります。

類型判断能力
後見欠く常況にある財産管理も法律行為も一切できない
保佐著しく不十分金銭貸借や不動産の処分など重大な法律行為が一人ではできない
補助不十分重大な法律行為を一人でするのは不安がある

いずれの類型を選択するかは、医師が作成する診断書の内容を見て選択します。

家庭裁判所も診断書の内容で類型を決定しており、申し立てられた類型が診断書に記載された本人の判断能力の程度と合致しない場合、類型の変更を求められ、応じないと申立てが却下されます。

離婚紛争で成年後見制度を利用する場合、後見開始の審判を申し立てることが多いため、以下、同審判の申立てを前提として解説しています。

申立人・申立先・後見人候補者の決定

類型が決まったら、申立人と申立先を決めます。

申立人

民法第7条に規定されています。

精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。

(民法第7条)

  • 本人
  • 本人の配偶者
  • 4親等内の親族
  • 市町村長
  • 検察官
  • 成年後見人など
  • 成年後見監督人など

申立人は、必要書類の準備、申立て、各種費用負担、面接など手続きの大部分に関わる必要があり、その負担は相当に大きいものです。

そのため、親族や施設関係者などと協議し、時間的に余裕があり、最後まで責任を持って手続きをやり遂げるだけの能力と責任感のある人を選ぶ必要があります。

なお、判断能力を欠く常況にある本人が申し立てることができるのかと思うかもしれませんが、市区町村や施設関係者が制度利用を促す場合などは、申立人を本人として申立てを行うケースは少なくありません。

あくまで申立人が本人なだけで、申立書の作成や必要書類の準備などは支援者や司法書士などが行うことになります。

申立先(管轄の家庭裁判所)

後見開始の審判を申し立てるのは、本人の住所地を管轄する家庭裁判所です。

本人の住所地とは、住民票上の住所地ではなく「本人が実際に生活している場所」のことです。

高齢者の場合、住民票は自宅に置いたまま施設入所したり子供の家に住んだりしているケースが多いため、住民票上の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てをしないよう、注意しなければなりません。

管轄の家庭裁判所については、「住んでいる地域の都道府県+市区町村+家庭裁判所+管轄」でネット検索することで確認できます。

後見人候補者の決定

後見開始の審判の申立書には、後見人候補者を記載する欄があります。

成年後見人に選んでほしい人がいる場合は、氏名、住所、本人との関係などを記載する必要があります。

ただし、候補者に上げた人が必ず成年後見人に選任されるわけではなく、候補者がいない場合は空欄にしておいても問題ありません。

申立てに必要な書類と資料の準備

申立人、申立先、後見人候補者が決まったら、申立ての必要書類と費用の準備に取りかかります。

必要書類

後見開始の審判の申立てに必要な一般的な書類は、以下のとおりです。

  • 申立書、申立事情説明書
  • 親族関係図
  • 本人の財産目録、収支目録
  • 後見人等候補者事情説明書
  • 親族の同意書
  • 成年後見制度用の診断書、診断書付票
  • 本人の戸籍謄本・住民票
  • 後見人等候補者の戸籍謄本・住民票
  • 本人の登記されていないことの証明書
  • 本人の財産や収支についての資料のコピー
  • 療育手帳のコピー
  • 認印

その他、本人の状態や親族関係、財産状況などによっては追加の資料提出を求められることがあります。

必要書類の入手場所や具体的な内容については、家庭裁判所の窓口や手続案内で交付される「成年後見申立ての手引き(各家庭裁判所によって名称が異なることがある)」を参照してください。

ネット上でも手引きを入手できますが、最新版でなかったり、各家庭裁判所によって必要書類が異なったりする可能性があるため、窓口などで交付してもらうのが確実です。

申立てにかかる費用

  • 収入印紙:800円~
  • 収入印紙(登記用):2600円
  • 郵便切手:約4000円
  • 鑑定費用:約10万円

収入印紙(登記用)とは、成年後見登記のために納める費用です。

家庭裁判所が本人に後見を開始する審判を出し、本人に後見が開始されて成年後見人が選任された場合、審判結果が東京法務局の後見登録課のコンピューターに登記されることになっています。

収入印紙(登記用)は、この登記にかかる費用です。

後見開始の審判では、本人の判断能力の程度について医学的な判定を行う鑑定という手続きが行われることがあり、鑑定を行う意思に支払う費用が鑑定費用です。

診断書の内容や本人の親族の情報などから本人の判断能力が判断できる場合は鑑定が省略されますが、鑑定が行われる場合には、原則として、10万円程度の費用を申立人が負担しなければなりません。

後見開始の審判の流れ:申立て

必要書類や費用が準備できたら、申立先の家庭裁判所の担当窓口へ行き、申立てを行います。

窓口では必要書類や費用の不備不足が確認され、問題がなければ申立てが受理されます。

受理された場合、担当職員から審判までの手続きの概要の説明があり、その場で申立人や後見人候補者に対する面接(事情聴取)を決めることもあります。

そのため、スケジュール帳やシフト表などを持参しておくようにしてください。

家庭裁判所によっては、申立てをしたその日に事情聴取が行われる場合もあるため、事前確認しておくことが大切です。

申立てが受理された後の取下げ制限について

後見開始の審判は、申立人の申立てによって手続きが開始されますが、本人保護の観点から、申立てが受理された後の取下げについては家庭裁判所の許可が必要となります。

例えば、「候補者が成年後見人に選任されそうにないので取り下げる」など、自己都合による取下げは認められません。

つまり、申立てをした後は、手続きに協力しながら審判が出るのを待つことになるのです。

後見開始の審判の申立て:申立てから審判まで

申立てが受理された後は、面接(事情聴取)、親族照会、鑑定などの手続きが行われます。

面接(事情聴取)

申立てが受理された後は、家庭裁判所の職員による面接または事情聴取が行われます。

聴取対象は、申立人、後見人候補者、その他関係人です。

申立人からの聴取は、家庭裁判所調査官が行う場合を面接、参与員が行う場合を事情聴取と呼びますが、内容に大きな違いはありません。

申立人以外への聴取は、原則として、家庭裁判所調査官の面接によって行われます。

面接や事情聴取で聞かれる主な内容は、以下のとおりです。

申立人
  • 後見開始の審判を申し立てた事情
  • 本人の生活状況
  • 本人の判断能力の程度(診断書と実際の違いなど)
  • 本人の財産と収支
  • 申立てに対する本人の親族等の意向
候補者
  • 従前の本人との関わり
  • 成年後見人候補者となった事情
  • 欠格事由の有無
  • 成年後見人になることに対する意見
その他関係人家庭裁判所が必要と考えた事項

申立書や申立事項説明書など申立て時に提出した書類に基づいて質問されます。

親族照会

後見開始の審判の結果は親族にも影響が及ぶことから、家庭裁判所から親族に対して審判に対する意見を聴取することがあります。

親族への聴取は、原則として、本人の推定相続人に対して、親族照会という書面を発送する方法によって行われます。

家庭裁判所は、本人の親族に対して、申立ての概要や成年後見人等の候補者を伝え、意向を確認することがあります。

親族照会で回答を求められるのは、申立てに対する意見と、候補者が成年後見人に選任されることへの意見であり、候補者の選任に反対する場合は後見人として適当な人物を挙げることもできます。

なお、遺産争いなど申立てが親族間紛争と密接に関わっている場合、家庭裁判所調査官が直接親族と面接して事情を聴き取ることもあるようです。

本人調査

成年後見制度は、本人の権利や財産の保護を目的とした制度ですが、後見が開始されると本人の権利や身分が制限されます。

そのため、本人の意思を尊重するために、診断書などから本人が自分の意見を述べることができる状態だと判断された場合、家庭裁判所調査官が本人と面接し、申立てや候補者に対する意見を聴取することがあります。

本人調査は、本人が家庭裁判所に出頭することもあれば、家庭裁判所調査官が本人の自宅や入所施設を訪問して行うこともあり、ケースによって異なります。

鑑定

鑑定とは、本人の判断能力がどの程度であるかについて、医学的に判定する手続きです。

申立て時に診断書を提出しますが、それとは別に、鑑定依頼を受けた医師が本人との面接や事情聴取などを行い、本人の判断能力をより詳細に確認して判定を行います。

しかし、鑑定手続きには数ヶ月程度の時間がかかることが多く、約10万円という高額な費用もかかりますし、診断書や親族からの聴取で本人の状態がほぼ正確に把握できるケースも多いのが実情です。

そのため近年は、診断書などから本人の状態が把握できる場合には鑑定を省略するという運用が増えています。

その分、診断書の記載内容が重視されるようになっており、診断書の内容次第で利用できる類型が決まり、後見人に付与される権限も決まると言っても過言ではありません。

後見開始の審判の流れ:審判

面接や親族照会など一連の審理が終わると、得られた情報に基づいて家庭裁判所が審判を出します。

審判

後見開始の審判で示されるのは、「本人について後見を開始するかどうか」と「誰を成年後見人に選任するか」の2つです。

審判結果については、家庭裁判所から申立人と成年後見人に郵送される審判書の謄本に記載されています。

不服申立て

後見開始の審判で示される2つの事項のうち、「誰を成年後見人に選任するか」については家庭裁判所の職権事項であり、不服申し立ては認められません。

近年の家庭裁判所は、本人の利益の観点から、申立人が挙げた候補者ではなく弁護士などの専門家を選任するケースが増えていますが、候補者以外が選任されたとしても不服申し立てをすることはできません。

「本人について後見を開始するかどうか」という点については、申立人や利害関係人(本人とその配偶者、4親等内の親族)が不服申し立てをすれば、高等裁判所で再審理をしてもらうことができます。

審判確定

審判書が成年後見人や申立人に届いてから2週間以内に不服申立てがなされなかった場合、審判が確定して法的な効力が生じます。

審判確定後は、不服申立ては認められません。

成年後見登記

成年後見登記とは、成年後見制度に関する事項を東京法務局のコンピューターに登記(一定事項を公の帳簿である「登記簿」に記載すること)し、登記事項証明書の発行によって登記事項証明する制度です。

審判確定後、家庭裁判所の裁判所書記官が、東京法務局へ審判の内容を登記するよう依頼します。

登記費用は、申立て時に収入印紙(登記用)として提出しているため、審判後に準備する必要はありません。

後見開始の審判が確定した後に登記される事項は、以下の通りです。

  • 後見等開始の審判:家庭裁判所名、事件番号、審判確定日、登記年月日、登記番号
  • 成年被後見人:氏名、生年月日、住所、本籍
  • 成年後見人:氏名、住所、選任の審判確定日、登記年月日、(辞任の審判確定日、解任の審判確定日)
  • (後見監督人が選任された場合、後見監督人:氏名、住所、選任の審判確定日、登記年月日、(辞任の審判確定日、解任の審判確定日))

審判書の謄本が成年後見人に届いてから約1ヶ月で登記手続きが完了し、成年後見人などが、東京法務局や地方法務局本局で「登記事項証明書(成年後見人に選任されたことの証明書)」を取得できるようになります。

登記事項証明書は、成年後見人が本人のために法律行為を行う場合に提出を求められる書類であり、例えば、以下のような手続きで提出しなければなりません。

  • 預貯金の引き出し、口座の解約
  • 不動産の処分、賃貸の契約
  • 介護サービス・医療サービスなどの契約締結
  • 施設入所契約締結など

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また、マイナンバー、国民年金、税金、養子縁組、青年後見など、日常生活の中で利用する制度や手続きを分かりやすく解説する記事も掲載しています。
サイト上では詳細なプロフィールは明かしておらず、仕事の依頼も受けていません。

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