後見人の解任とは?解任請求手続の申立方法は?横領は解任事由になる?

後見人 解任

家庭裁判所に選任された成年後見人は、原則、本人が死亡するまで後見事務を継続することになります。

しかし、成年被後見人(本人)の財産を横領した、本人の財産を投機的に運用した、後見事務の懈怠などの事情がある場合には、家庭裁判所が成年後見人を解任することがあります。

成年後見人による本人財産の横領などの不正トラブルはニュースでもよく報道されており、成年後見人に対する不信感を抱いたり、現実に解任請求を考えたりしている人はたくさんいます。

しかし、本人や親族が希望すれば必ず成年後見人が解任されるわけではなく、解任事由が存在する状態で、解任請求手続きを適切に行う必要があります。

この記事では、成年被後見人による不正トラブルと解任件数、成年後見人の解任事由、解任請求手続きの申立て方法、解任後の手続きについて解説します。

後見人による不正トラブルと解任件数

2000年に成年後見制度が開始された当初から、後見人による不正トラブルはたくさん報告されています。

2011年から2017年の間の不正報告件数と被害額は、以下のとおりです。

成年後見人 不正

出典:成年後見制度の利用の促進に関する施策の状況(平成30年5月)

年度不正件数被害額
2012624(18)約48億1000万円(約3億1000万円)
2013662(14)約44億9000万円(約9000万円)
2014831(22)約56億7000万円(約5億6000万円)
2015521(37)約29億7000万円(約1億1000万円)
2016502(30)約26億円(約9000万円)
2017294(11)約14億4000万円(約5000万円)

不正件数も被害額も2014年をピークに下がっていますが、それでも毎年10億円を超える被害額が出ています。

また、不正の一部は弁護士や司法書士などの専門職によるものです。

記載しているのは、最高裁判所に不正の報告があった件数のみで、実際の件数や被害額はさらに多いと考えられています。

最高裁判所の発表では、後見人による不正の90%以上が親族後見人によるものであり、裏を返すと残り約10%は専門職後見人によるものです。

家庭裁判所が後見人に選任するのは、弁護士、司法書士、社会福祉士、精神保健福祉士など、高い職業倫理が求められる法律や福祉の専門職ですが、横領などの使い込みが繰り返されています。

後見人の解任件数

後見人の解任件数は、以下のとおりです。

年(西暦)件数(うち職権によるもの)
2012883(360件)
2013971件(503件)
20141095件(586件)
2015876件(420件)
2016658件(382件)

参考:司法統計

2014年には、成年後見人の解任件数が1000件を超えています。

2015年以降は減少していますが、専門職後見人の利用促進、後見制度支援信託の開始、監督区分の見直しなどの要因が考えられます。

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後見人の解任とは

解任とは、後見人に①不正な行為、②著しい不行跡、③その他後見の任務に適さない事由があるときに、家庭裁判所が後見人の解任の審判をすることです。

後見人の解任については、民法第846条に規定されています。

後見人に不正な行為、著しい不行跡その他後見の任務に適しない事由があるときは、家庭裁判所は、後見監督人、被後見人若しくはその親族若しくは検察官の請求により又は職権で、これを解任することができる

(民法第846条)

後見人の解任の審判に至るルート

民法846条には「後見監督人、被後見人若しくはその親族若しくは検察官の請求により又は職権で」と記載されています。

つまり、後見人の解任の審判は、①後見監督人や成年被後見人などが成年後見人の解任の審判の申立てを行うか、②家庭裁判所が職権立件する方法で行うことになります。

後見人の解任事由

民法846条には「後見人に不正な行為、著しい不行跡その他後見の任務に適しない事由があるとき」とあり、以下の3つの事由が解任事由に該当すると定められています。

  • 後見人に不正な行為があるとき
  • 後見人に著しい不行跡があるとき
  • その他後見の任務に適しない事由があるとき

後見人に不正な行為があるとき

不正な行為とは、法律に違反する行為や社会的に非難されるべき行為のことです。

例えば、後見人による本人財産の横領や使い込みや、本人の不動産を後見人の所有であると第三者に主張する行為などが不正な行為に該当します。

後見人による不正な行為は、解任事由になるだけでなく、本人の財産に与えた損害の賠償を請求され、不正が悪質な場合には刑事訴追されることもあります。

後見人に著しい不行跡があるとき

著しい不行跡とは、後見人として著しく品行を欠く行為により、本人の財産管理や身上監護に悪影響を及ぼすことです。

例えば、後見人の素行が著しく悪く、それが原因で本人の入所施設と対立し、本人が出所せざるを得なくなったなどの場合が該当します。

あくまで、不行跡によって本人の財産管理や身上監護(後見人が本人を援助すべき事項)に悪影響を与えた場合であり、単に素行が悪いだけでは著しい不行跡に当たらないとされています。

その他後見の任務に適しない事由があるとき

その他後見の任務に適しない事由があるときとは、不正な行為や著しい不行跡には該当しないものの、後見人としてふさわしくない事情があることです。

後見人の権限の濫用、不適切な財産管理、家庭裁判所の指示に従わない、報告の懈怠などが「その他後見の任務に適しない事由」という解任事由に該当します。

例えば、後見人による権限の濫用、多額の使途不明金を生じさせた、本人の財産を投機的に運用して損害を与えた、正当な理由なく本人に不利な条件で遺産分割協議(調停)を成立させた、家庭裁判所や後見監督人等の指示に従わない、保険金受領や不動産処分などの手続きを行ったのに家庭裁判所に報告をしないなどです。

後見人の解任請求手続きの申立て

後見人の解任請求手続きを行うには、家庭裁判所に「後見人(成年後見人、保佐人、補助人等)の解任」の審判を申し立てる必要があります。

申立権者

後見監督人(保佐監督人、補助監督人)、被後見人(成年被後見人、被保佐人、被補助人)、被後見人の4親等内の親族です。

法律上、検察官の請求も認められていますが、実務上はごく稀です。

申立先

後見開始(保佐開始、補助開始)の審判をした家庭裁判所です。

本人が転居しているときは、後見開始の審判をした家庭裁判所に相談してください。

相談を受けた家庭裁判所が自ら審理するか、本人の住所地を管轄する家庭裁判所で審理するかを決定します。

申立てに必要な書類

  • 申立書
  • 本人の登記事項証明書
  • 申立人と本人の戸籍謄本(提出済の戸籍謄本に変更がなければ不要)
  • 申立人と本人の住民票または戸籍附票(提出済のものに変更がなければ不要)
  • 解任を求める事情を記載した書面
  • 解任を求める事情を証明する資料

申立てに必要な費用

  • 収入印紙:800円分
  • 郵便切手:約2000円分(各家庭裁判所によって異なります)

家庭裁判所の審理

申立てを受理した家庭裁判所は、解任事由の有無や程度(好意の悪質性や結果の重大性)、後見人と本人の関係性などを考慮し、後見人を解任するか否かを審判で決定します。

また、本人の財産管理や身上監護に空白期間が生じないよう、解任と同時に新しい成年後見人も選任して後見事務を行わせることになっています。

後見人の解任と保全処分

後見人の解任の申立てがあると、家庭裁判所は、必要に応じて審判前の保全処分を行うことがあります。

審判前の保全処分とは、審判の確定を待っていたのでは、本人の権利の実現が困難になり、本人の権利が損害されるおそれがある場合に、審判の確定までの間に臨時的な処分をすることです。

つまり、後見人の解任の審判前の保全処分とは、後見人に解任事由が存在する蓋然性があり、保全の必要性があると家庭裁判所が認めた場合に、本人の財産や身体・生命の保護のために必要な処分をすることです。

具体的には、後見人の職務執行停止と職務代行者の選任の保全処分を行い、後見人が本人の財産を処分できないようにするとともに、職務代行者に適切な財産管理をさせます。

なお、後見人に不正な行為があると疑われるケースでは、専門職後見人を追加で選任し、同人に財産管理の権限を付与する(不正が疑われる後見人は身上監護の権限のみを残す)対応がとられることもあります。

後見人の解任後の手続き

後見人が不正などにより本人の財産に損害を与えた場合、その損害を賠償する必要があります。

新しく選任された専門職後見人が、家庭裁判所の指示を受けて、解任された後見人に対して損害賠償請求を行います。

本人の財産の横領や使い込みがあった場合、専門職はもちろん親族であっても刑事告訴され、業務上横領などの罪に問われることになります。

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家事事件(離婚、遺産分割、成年後見など)を専門に取り扱って11年になります。
これまでの実務経験から、当事者自身が離婚に関する知識を得て、自分で考えて判断することが「後悔の少ない離婚」につながるという考えており、その考えに基づいて「離婚ハンドブック」を運営しています。
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