共同養育とは?日本や外国の状況と共同養育のメリットとデメリット

共同養育

近年、離婚後共同親権とともに注目されているのが離婚後の共同養育です。

日本以外の先進国では当たり前の共同養育ですが、日本では離婚した父母が共同養育を実践しているケースは稀で、子どもと非監護親の交流が断絶してしまうこともあるのが現状です。

共同養育とは

共同養育とは、離婚した父母が、夫婦関係と親子関係を切り分けて、子の利益(子どもの福祉)のために共同して子育てに関与することです。

平たく言えば、「離婚するほど険悪な夫婦関係は棚上げし、何の罪もない子どもが健全に成長できるように父母が協力すること」が共同養育です。

欧米における共同養育

欧米諸国では、100年ほど前までは、子どもは父の所有物とされ、親権も父の権利であるという考え方が一般的でした。

その後、野生児研究、ゲゼルの成熟論、ボウルビィの愛着理論(母性剥奪)など心理学分野の研究が進み、子どもの健全な成長には母親と子どもの密接な交流が不可欠であるとされ、離婚時に親権者を決めるときも「母性優先の原則」が採用されるようになりました。

しかし、アメリカ合衆国の心理学者ウォーラーステイン,J.S.の研究結果などを機に再び風向きが変わります。

ウォーラーステインは、長期にわたる離婚経験者を対象とした追跡調査を行い、離婚が子どもや父母に与える影響を研究しました。

その結果、親が離婚した子どもが強い精神的ショックを受けていること、親から見捨てられる不安を抱いていること、学習成績の低下、人間関係の構築と維持に消極的であること、成人後の社会的地位の低さ、婚姻生活の失敗が多いことが明らかになりました。

諸外国でも調査が行われたところ、ウォーラースタインの研究結果と同じく父がいない家庭で養育された子どもは、精神的な問題を抱えることが多いという結果が得られました。

これらの研究結果を踏まえ、心理学者のラム,M.らが父親の役割に関する研究を重ね、子どもの健全な成長に父親が果たす役割の大きさが明らかにされました。

現在、欧米諸国においては、子どもの健全な成長には父母の両方が子育てに関与することが大切であるという前提で、多くの国が離婚後共同親権制度を採用し、離婚後も父母が揃って子どもに関わる共同養育が当然に実践されています。

共同親権の行使方法は各国で異なりますが、例えば、子どもの誕生日に離婚した父母やその親せきが一堂に会したり、毎週のように泊付面会交流が実施されたりするのが一般的な国が多くなっています。

また、父母が離婚前から共同養育を念頭に置いているため、離婚後に親権者が子どもを囲い込んだり、面会交流を断絶させたりするケースは、日本と比較すると少ない傾向にあります。

国名 離婚後の親権
アメリカ 共同親権

(または面会交流権付の単独親権)

ドイツ 共同親権(共同配慮)
フランス 共同親権
イギリス 共同親権
イタリア 共同親権

なお、韓国でも共同親権と単独親権の選択制が採用されています。

日本の現状

日本の民法では、婚姻中は夫婦が共同して親権を行使すると規定されており、共同親権に基づいて当然に共同養育が実践されています。

一方で、離婚後は単独親権制度が採用されており、離婚時に子どもの親権者を父または母に定めなくてはならず、原則として、親権者が子どもを引き取って養育し、非親権者は面会交流というかたちで子どもと交流します。

しかし、親権者が面会交流を拒否する、子どもを洗脳して非親権者を拒否させる、住所や連絡先を秘匿するなど、主に親権者の親権濫用によって離婚後の非親権者と子どもの交流が阻害されるケースが後を絶たず、社会問題となっています。

なお、子育てに父が果たす役割の大きさに関する研究や欧米の状況は日本にも輸入されており、家庭裁判所もそれらを把握しています。

特に、心理学など人間科学の専門家とされる家庭裁判所調査官は、欧米の共同親権や共同養育に関する知見を豊富に有し、調停などで活用するケースも散見されます。

しかし、家庭裁判所全体の運用を見た場合、母性優先の原則と似た「監護の継続性」などを重視した判断を下し続けているのが現状です。

共同養育のメリット・デメリット

共同養育は、離婚後共同親権を採用する欧米諸国では、離婚後の子育ての原則的な形態として定着しています。

共同養育実現の機運が盛り上がっている日本ではメリットが取り上げられがちですが、欧米諸国ではデメリットも表面化しています。

共同養育のメリット

まず、共同養育のメリットを確認します。

子どもの気持ちが落ち着く

共同養育の最大のメリットは、父母の離婚によって子どもの気持ちが落ち着くことです。

父母の離婚を体験した子どもは、強い精神的ダメージを受けるとともに、非監護親に見捨てられたと感じ、監護親にも見捨てられるのではないかという不安を抱きます。

父母が共同養育を実践することで、子どもは「父母は離婚したが、二人とも自分に関心を持って接してくれる。」という安心感を抱き、離婚によって受けた精神的ダメージも和らいで、徐々に気持ちを落ち着けることができます。

子どものアイデンティティ確立につながる

子どもは、ある時期から「自分のルーツはどこか」、「自分は何者か」、「自分は何を為せるか」などに関心を持ち、自分探しを始めます。

そして、様々な挫折や混乱を経て、自分が価値ある存在であることを自覚し、「自分は何者か」の答えを見つけ出します。

いわゆる「アイデンティティの確立」です。

離婚して父母の一方と離別した場合、自分のルーツの半分に見捨てられたという思いを抱き、いつまで経っても「自分は何者か」の答えを見いだせず「アイデンティティの拡散」した状態に留まります。

その結果、良好な対人関係が築きにくい、安定した社会生活が送れないなどの影響が出て、精神的に不安定になることもあります。

共同養育が実践されて父母の両方が日常的に関わることで、子どもは自分のルーツを確認することができますし、父母などをモデルに自分像を作り上げていくこともできます。

アイデンティティの確立については、関連記事を参考にしています。

関連記事(外部リンク)

アイデンティティ

養育費が支払われやすくなる

打算的は話ですが、共同養育が実践されることで、養育費が支払われやすくなると考えられています。

養育費は、親の子に対する扶養義務に基づいて非監護親が支払う金銭ですが、離婚時に取り決めをしていない、取り決めても支払われない、支払われていたが中断したなどのケースが多数を占めています。

受給中 受給歴 不詳
あり なし
母子世帯数

(割合)

442

(24.3)

281

(15.5)

1,017

(56.0)

77

(4.2)

父子世帯数

(割合)

10

(3.2)

15

(4.9)

266

(86.0)

18

(5.8)

※調査対象:全国の母子世帯、父子世帯、養育者世帯のうち、平成22年国勢調査で設定された調査区から無作為に抽出された4,450調査区内の母子世帯、父子世帯、養育者世帯

出典:平成28年度 全国ひとり親世帯等調査の結果

養育費が支払われない事情は様々ですが、中には「希望どおりの面会交流が実現されない」、「養育費が子ども以外のことに使われている」という不満や妄想から養育費の支払いを中断する非監護親がいます。

共同養育が実践されていれば、非監護親が比較的自由に子どもと関わり、その成長を見ることができるため、子どものために養育費を支払おうという意欲が湧きやすいと考えられます。

監護親が養育できなくなった場合に非監護親が引き継ぎやすい

子供が成長して独立するまでの間に、病気や事故で監護親が死亡したり長期にわたって養育困難になったりする可能性があります。

非監護親と子どもの関係が断たれていると、監護親の両親や親族などが子どもの養育を引き継ぎますが、馴染めず疎外感を募らせやすいものです。

また、非監護親が引き取った場合も、親子とはいえ長期間の交流断絶によってできた溝を埋めるのは容易ではありません。

共同養育によって日常的に非監護親が子どもに関与していれば、監護親が養育困難になった場合に養育を引き継ぎやすく、子どもも馴染みやすいものです。

共同親権のデメリット

離婚後共同親権制度が採用される欧米諸国では、共同養育のデメリットも指摘されています。

子どもが疎外感を抱く

共同養育下の子どもは、父母の家庭を行き来して養育されることが多く、父母両方が子どもに関与できるというメリットを享受できる一方で、「どちらの家庭にも属していない。」という疎外感を抱くことがあります。

例えば、離婚した父母が再婚し、再婚相手との間に子どもを儲けた場合、「なぜ自分だけが父母の家を行き来し、きょうだいは1つの家にいるのか。」という疑問を持ち、「自分だけが仲間外れだ。」という疎外感を抱きやすいものです。

離婚した父母が、父母の家庭を行き来する事情について、子どもが肯定的に受け止められる説明をすることで疎外感は緩和されますが、子どもの受け止め方によっては人格形成に悪影響を及ぼします。

父母の連絡や対面の機会が増える

共同養育を実践すると、当然ながら離婚した父母が連絡を取り合い、場合によっては対面する機会が増加します。

大きな問題なく離婚した父母ならともかく、不貞、DV、モラハラなどが原因で離婚し、慰謝料などで激しく争った父母の場合、子どものためとはいえ、強いストレスを抱えることになります。

また、対面中にDVやモラハラ被害を受けるケースもあり、第三者の関与などの対策を講じる必要も生じます。

養育方針をめぐって対立することがある

欧米諸国における共同養育の大きなデメリットが、養育方針をめぐって対立する可能性があることです。

欧米諸国では、共同養育の前提として離婚後共同親権制度があり、離婚後も父母が共同して親権を行使するため、子どもの養育に関しては父母が合意しなければなりません。

例えば、子どもの居所、通う学校、習い事、小遣いの金額などについて、父母が協議して合意する必要があります。

しかし、離婚するほど関係が悪化した父母が協議で合意に至ることは、想像以上にハードルが高く、合意できず親権が行使できない状態が長引くことも珍しくありません。

日本のような離婚後単独親権下で共同養育を実施する場合、こうした問題は生じにくいですが、一方で、親権者の養育方針に非親権者が不満を募らせ、父母の関係が悪化して共同養育が中断されるおそれがあります。

子どもから比較される

子どもは、幼少時から父母の言動や態度をよく観察していますが、ある時期からは厳しく評価するようになります。

離婚後単独親権の場合、身近な監護親が良く評価され、離れて暮らす非監護親が悪く評価される傾向がありますが、共同養育を実践した場合は、父母がほぼ平等に評価されます。

監護親であっても不適切な言動や態度を繰り返すと子どもから見放され、非監護親であっても子どものことを考えて接していれば監護親より評価されるようになるのです。

その結果、「父の方が良い。」、「母は〇〇してくれたのに、父はしてくれないのか。」などと子どもから比較される機会が増えます。

【参考】

  • CHILDREN OF DIVORCE:The Psychological Tasks of the Child|Judith S. Wallerstein
  • The Role of the Father in Child Development|Michael E. Lamb|Wiley

離婚ハンドブック編集部

投稿者プロフィール

家事事件(離婚、遺産分割、成年後見など)を専門に取り扱って11年になります。
これまでの実務経験から、当事者自身が離婚に関する知識を得て、自分で考えて判断することが「後悔の少ない離婚」につながるという考えており、その考えに基づいて「離婚ハンドブック」を運営しています。
サイト上では詳細なプロフィールは明かしておらず、仕事の依頼も受けていません。

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