面会交流拒否なら養育費を払わない、養育費も面会もなしと主張できる?

面会交流は、子どもが健全に成長するために欠かせないものだと考えられており、家庭裁判所も、子どもの福祉を害する事情がない限り面会交流を実施すべきというスタンスです。

しかし、子どもの福祉を害する事情が認められないにも関わらず、頑なに面会交流を拒否する親が一定数います。

また、面会交流の拒否に「養育費を払わない」という対抗手段をとったり、面会交流と養育費を互いに請求しない約束をしたりする父母も少なくありません。

面会交流は誰の権利か

面会交流が誰の権利なのかについては、複数の学説があります。

  • 子どもの親であることから自然発生的に生じる権利
  • 子どもの監護養育に関する権利
  • 父母の協議や家庭裁判所の調停・審判で形成される権利
  • 子どもの権利だが、親の協議や調停・審判で形成される
  • 親権や監護権の一部に含まれる親の権利
  • 子どもの福祉のために認められる子どもの権利

それぞれ根拠や他の学説の批判を展開しており、面会交流が誰の権利なのか統一的な考え方はありません。

家庭裁判所の実務では、面会交流調停や審判は「子どもの監護養育のために適正な措置を求める権利」であり、子どもの監護に関する処分を求めるもの位置づけられています。

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「面会交流を拒否されたから養育費を払わない」という主張は可能か

面会交流の調停や審判では、「面会交流を拒否するなら、養育費は払わない。」と主張する親が一定数います。

面会交流とは、非監護親が離れて暮らす子どもと直接的または間接的に交流することです。

面会交流の権利性については一致した学説がないものの、家庭裁判所の実務では「子どもの監護養育のために適正な措置を求める権利」とされていることは解説したとおりで、非監護親から監護親に対して請求することになっています。

また、虐待や父母間のDVなど子どもの福祉を害する特段の事情がない限り、何らかの方法で面会交流を実施するべきというのが家庭裁判所のスタンスとなっています。

一方の養育費とは、非監護親が離れて暮らす子どもの生活にかかる費用を負担するものです。

養育費の法的根拠は、民法822条と民法877条1項に定められています。

親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。

(民法820条)

直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。

(民法877条1項)

義務者の養育費支払義務は、父母が結婚している間は①親権者の子どもを監護養育する義務(民法820条)と②親の子どもに対する扶養義務(民法877条1項)の両方から、離婚後は②親の子どもに対する扶養義務から生じます。

面会交流と養育費は親が子どものために行う(支払う)というところは共通していますが、法的根拠も方法も異なる別のものです。

離婚調停や離婚裁判では、離婚に伴う条件(附帯処分)として養育費と面会交流を定めることができ、離婚後は養育費請求調停と面会交流調停を同時に申し立てることができますが、それぞれ父母や子どもの状況に応じて個別に取り決められるべきです。

しかし、面会交流と養育費をバーター(交換条件)だと誤解し、調停や審判で「養育費を支払っているのだから、面会交流をさせてほしい。」、「面会交流をさせているのだから、養育費を支払ってほしい。」などと主張する親が少なからずいます。

家庭裁判所の審判では、面会交流の拒否を理由に養育費を払わないという主張は認められず、面会交流と養育費を切り離して判断が示されます。

養育費を払わないことを理由に面会交流を拒否するという主張も同様です。

調停では、父母が合意すれば「面会交流を請求しない」という内容が調停調書に記載されて調停が成立することはあります。

しかし、子どもの福祉を考えると不適切な合意であり、調停委員会から面会交流や養育費の意義について説明され、主張変更の検討を促されます。

面会交流を請求しないという父母の合意に基づいて調停が成立した後、非監護親から面会交流を求めることができるか否かについては、肯定意見と否定意見があります。

家庭裁判所の実務では、申立ては必要書類などがそろっていれば受理され、調停で父母の合意ができれば面会交流を認める内容で合意させることができます。

審判では、面会交流を取り決めた時点では予想できない事情の変更があるときは、面会交流を認められることがあります。

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「面会交流と養育費を互いに請求しない」約束は有効か

父母が面会交流と養育費をバーター(交換条件)だと誤解している場合、「面会交流と養育費を互いに請求しない」という約束をしてしまうことがあります。

「養育費はいらないから、面会交流をさせたくない。」、「面会交流をあきらめるから、養育費を払いたくない。」という父母の思惑が一致し、面会交流と養育費をお互いに求めないという合意ができてしまうのです。

しかし、面会交流も養育費はいずれも子どもの成長や生活にかかるものであり、子どもの権利であるため、父母が子ども抜きで約束するのは不適切です。

家庭裁判所の調停では、父母が「面会交流と養育費を互いに請求しない」という取り決めを希望した場合、調停委員から面会交流と養育費の意義が説明され、それでも父母が考えを改めないときは、「面会交流と養育費を取り決めない」という案が示されることがあります。

つまり、調停調書に面会交流と養育費について何ら記載しないということです。

調停調書に記載がない以上、いくら父母が口約束をしても法的な効力はなく、子どものために必要が生じたときはいつでも面会交流と養育費を請求することができます。

なお、審判では、面会交流と養育費を互いに請求しない合意が認められることはありません。

養育費を請求しない合意

なお、養育費については、子どもの生活にかかる費用をどのように負担するかの問題であり、監護親がすべて負担することもあり得ることから、父母による「養育費を請求しない合意」は有効とされています。

ただし、養育費は、ある時点の父母の収入や子どもの人数・年齢などの事情を考慮して取り決めるため、事情の変更があれば減額・増額できることとなっています。

したがって、父母が「養育費を請求しない合意」をして、それが調停調書に記載されて調停が成立したとしても、その後、事情の変更があれば養育費を請求する余地は残されています。

また、父母が「養育費を請求しない合意」をしたとしても、非監護親の子どもに対する扶養義務は消滅しないと考えられています。

つまり、父母が「養育費を請求しない合意」をしても、子どもが非監護親に対して扶養請求を行うことは妨げられません。

扶養請求を認めることは、監護親からの養育費請求を認めるのと実質的に同じだという批判はありますが、実務上は子どもからの扶養請求を認め、父母の合意は扶養料算定の一事情として考慮されています。

少し古い判例ですが、「養育費を請求しない合意」と扶養請求の関係について、大阪高等裁判所が決定を出しています。

父母の間でなされた母から父に養育費を請求しない旨の合意は、父の子に対する扶養義務を免れさせる効果を有するものではなく、母が子を扶養する能力を欠くときは、父から子に対する扶養義務が果されなければならず、養育費不請求の合意は父から母に支払うべき扶養料の額を定めるについて有力な斟酌事由となるにとどまる。

(昭和54年6月18日大阪高等裁判所決定)

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