内縁関係調整調停とは?内縁解消時に慰謝料や財産分与や請求できる?

家庭裁判所の家事調停には、法律上の婚姻関係にある夫婦が離婚について話し合う「離婚調停(夫婦関係調整調停)」だけでなく、内縁関係にある男女を対象とした「内縁関係調整調停」という事件があります。

内縁関係調整調停とは

内縁関係調整調停とは、内縁関係にある男女が、関係解消やそれに伴う財産分与・慰謝料などについて話し合う調停です。

家事調停事件のうち、離婚調停や慰謝料調停などと同じく一般調停事件に分類され、内縁関係にある男女の関係調整のために利用されます。

内縁とは

内縁とは、男女が互いに夫婦であるという認識や夫婦関係を成立させる意思(婚姻意思)があり、夫婦共同生活を継続しているが、法律上の婚姻の成立条件である婚姻の届出を行っていない状態です。

言い換えると「法律婚の成立条件である婚姻意思と婚姻の届出のうち、後者を欠いた状態」が内縁です。

婚姻の届出を欠くため婚姻は成立しておらず、夫婦同姓(戸籍の変動)や成年擬制は適用されず、相続権や相手の親族との間の姻族関係も生じませんし、男女の間に生まれた子どもは非嫡出子となります。

ただし、婚姻に準じる準婚関係であるというのが通説であり、内縁関係にある男女間には、法律婚の夫婦と同様の権利義務関係が課されるものとされています。

具体的には「同居・協力・扶助義務」を定めた民法第752条が類推適用される他、貞操義務や婚姻費用分担義務(民法第760条)も課せられます。

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一般調停事件とは

一般調停事件とは、家事調停事件のうち別表第2調停事件と特殊調停事件を除く事件です。

分類のされ方の都合上、離婚や離縁、慰謝料、遺留分減殺請求など訴訟事項について話し合う事件もあれば、内縁関係調整調停や親族関係調整調停のように感情的な対立の解消を目指す事件も含まれています。

調停が成立すると調停調書が作成されて確定判決と同じ効力を持ちますが、不成立になると手続きが終了します。

内縁関係調整調停など訴訟事項でない事件については、調停が不成立になると、裁判所では他に紛争を解決する方法がなく、当事者間の話し合いを再開するか、再び同じ調停を申し立てるしかありません。

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内縁関係調整調停の申立てが想定されるケース

内縁関係調整調停は、内縁関係に関して解決を望む問題があれば申立てをすることができますが、一般的には以下のようなケースで利用されています。

  • 内縁関係を解消したいが当事者だけでは合意ができない
  • 内縁解消に伴って財産分与や慰謝料を請求したいが当事者だけでは合意できない
  • 内縁関係を解消するかどうか迷っている
  • 内縁関係解消を望む相手との関係を継続したい

内縁関係解消時に慰謝料や財産分与を請求できるか

法律婚の夫婦の場合、別居時には婚姻費用分担を、離婚時には子どもの養育費、財産分与、慰謝料などを請求することができます。

内縁関係の男女の場合も、これらの請求をすることが認められています。

請求内容請求できる範囲
婚姻費用同居中、または単身赴任・長期出張・長期入院など一時的に別居した場合の婚姻費用は請求できる

内縁関係は「同居を解消した時点」で関係終了と考えられるため、関係悪化による別居後の婚姻費用分担請求は困難

養育費非監護親には子どもを扶養する義務があるため、内縁関係であっても法律婚の場合と同じく養育費を請求できる
財産分与事実婚でも帰属不明財産の共有推定がはたらき、内縁関係解消時には財産分与を請求できる
慰謝料不貞、DV、モラハラ、悪意の遺棄(生活費を渡さないなど)など、請求の根拠となる事実と客観的証拠があれば請求できる
年金分割合意分割について協議することは可能だが、範囲の特定が困難なケースが多いため、内縁相手の被扶養者(第3号被保険者)であった期間のみ対象とする(合意分割を諦める)ケースもある

内縁関係調整調停の申立て

内縁関係調整調停は、家庭裁判所に申し立てを行います。

申立権者(申立人)

内縁の夫または内縁の妻です。

申立人と相手方が内縁関係にあることを証明するには、住民票(内縁相手の続柄欄に「夫(未届)」または「妻(未届)」と記載されたもの)を提出するのが一般的です。

ただし、調停の申立てでは内縁関係の証明をしなくても、その他の記載や添付書類に不備がなければ申立てが受理されることが多くなっています。

申立先(管轄の家庭裁判所)

相手方の住所地の家庭裁判所、または、当事者が合意で定める家庭裁判所(合意管轄)です。

合意管轄を利用する場合、家庭裁判所で交付される管轄合意書に必要事項を記載するか、以下の事項を記載した管轄合意書を自作して申立て時に提出しなければなりません。

自作した管轄合意書はA4用紙にプリントアウトしてください。

記載事項
  • タイトル:管轄合意書
  • 宛名:○○家庭裁判所(○○支部)御中
  • 提出年月日:平成○○年○○月○○日
  • 申立人:住所、氏名、押印
  • 相手方:住所、氏名、押印
本文の例上記当事者間の貴庁平成○○年(家イ)第○○号調停申立事件は、○○家庭裁判所(○○支部)の管轄に属する事件ですが、当事者双方合意の上、基調を管轄裁判所と定めたので、お届けします。

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必要書類

内縁関係調整調停の申立てには、以下の書類が必要になります。

  • 申立書:原本とコピー各1通(自分用に1部余分にコピーしておくと安心です)
  • 申立事情説明書:原本とコピー各1通
  • 進行に関する照会書:1通
  • 住民票または戸籍附票:いずれか1通

【年金分割を主張する場合】

  • 年金分割のための情報通知書:1通

裁判所ウェブサイトには、必要書類は申立書しか記載されていません。

しかし、家庭裁判所の窓口で交付される申立書式一式の中には申立事情説明書と進行に関する照会書の用紙が挟まっており、必要事項を記入した上で、申立て時に提出しなければなりません。

進行に関する照会書とは、調停を進行する上で必要な情報を記載する用紙です。

調停委員が申立ての事情や当事者の関係などを把握し、調停の進行を検討するために使用するもので、相手方にも調停期日通知書に同封する方法で送付され、提出するよう求められます。

また、申立人と相手方の住所を把握するための資料として、住民票または戸籍附票の提出を求められます。

申立てにかかる費用

  • 収入印紙:1200円分
  • 郵便切手:申立先の家庭裁判所が指定した金額と枚数(事前確認が必要)

内縁関係調整調停の手続きの流れ

申立てが受理されると、2週間程度で申立人と相手方に調停期日通知書が届きます。

調停期日通知書には、調停期日(通常は申立てが受理された日から約1ヶ月後)、担当裁判所書記官とその連絡先、事件番号などが記載されているので、指定された期日に申立先の家庭裁判所に出頭します。

調停期日では、調停委員が申立人と相手方を交互に調停室へ呼んで事情や主張を聴取し、それを相手に伝えることを繰り返すことで、内縁関係にある男女間の問題を整理し、合意形成に向けて働きかけを行います。

調停は裁判所の手続きですが、当事者の合意を前提としており、当事者が合意すれば調停が成立し、合意しなければ調停不成立で終了します。

期日間に合意できなくても調整の余地がある場合には、約1か月後に次回期日が指定されて改めて話し合いが行われますが、調整の余地がない場合には調停不成立となります。

調整の余地を判断するのは調停委員会であり、当事者が調停の継続を望んでも、調停委員会が「これ以上話し合いを続けても解決する見込みがない。」と判断すれば、調停は終了となります。

なお、申立人は、調停継続中であればいつでも取り下げることが認められています。

調停が成立すると、当事者間で取り決めた内容が調停条項として記載された調停調書が作成されます。

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調停の終わり方(成立、不成立、取下げ、調停をしない措置、当然終了等)

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投稿者プロフィール

家事事件(離婚、遺産分割、成年後見など)を専門に取り扱って12年の経験を踏まえ、「離婚ハンドブック」では、離婚に関する制度や手続きについて行政・司法機関よりも詳しく分かりやすく解説しています。
また、マイナンバー、国民年金、税金、養子縁組、青年後見など、日常生活の中で利用する制度や手続きを分かりやすく解説する記事も掲載しています。
サイト上では詳細なプロフィールは明かしておらず、仕事の依頼も受けていません。

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