年金分割とは?離婚時の年金分割は何を分ける?年金制度の基礎から解説

離婚する夫婦の間で離婚条件の一つとして協議されるのが、年金分割です。

年金分割は、婚姻期間中の厚生年金記録を離婚する夫婦間で分割する制度です。

しかし、「将来的に受給できる年金額を半分ずつにする手続」だと誤解していたり、「相手の浮気が原因で離婚するのだから、按分割合を100対0にしてもらいたい」と無理な主張をしたりする人が少なからずいます。

また、「年金分割をすれば将来の年金額が増える」と確信している人がいますが、必ずしも年金額が増えるとは限りません。

このように制度の理解が不十分なままで年金分割を主張すると、ただでさえ離婚前という激しく対立しやすい状況で不要な火種を蒔くことになりかねませんし、かえって自分が不利になることもあります。

したがって、年金分割制度の中身を理解し、主張するか否かを検討することが大切です。

年金(公的年金)制度とは

年金制度とは、納めた年金保険料に応じて、老後などに長期的かつ定期的に金銭給付を受けることができる制度です。

年金には国が管理運営する公的年金と、民間の企業や団体などが管理運営する私的年金がありますが、年金分割の対象となるのは公的年金の一部です。

公的年金の種類

公的年金には国民年金と厚生年金があり、それぞれ被保険者が異なります。

年金の種類 被保険者
国民年金 日本国内に住む20歳以上60歳未満の全ての人
厚生年金 厚生年金の適用事業所に雇用される会社員、公務員など

なお、2015年9月までは主に公務員を対象とする共済年金制度が設けられていましたが、同年10月から厚生年金に一元化されました。

この記事では、厚生年金を2015年10月以降の厚生年金(厚生年金と旧共済年金が一元化されたもの)という意味で使用しています。

公的年金は2階建て

公的年金は、図のとおり、国民年金と厚生年金の2階建てになっています。

国民年金 厚生年金 2階建て 図解

出典:日本の公的年金は「2階建て」|いっしょに検証!公的年金|厚生労働省

私的年金を含めると3階建てになりますが、私的年金は年金分割制度には関係がないため、この記事では割愛します。

国民年金(基礎年金)

1階部分の国民年金は、原則として日本国内に住む20歳以上60歳未満の全ての人が被保険者となって年金保険料を支払い、将来的に年金を受給することができます。

収入などに関わらず一定額の年金保険料を納め、加入年数に応じて将来の年金額が決定されるため、原則として加入年数が同じであれば受給できる年金額も同じです。

例外は、年金保険料の未納がある場合などです。

年金保険料の未納があると、未納分が年金額に反映されないため、加入年数が同じでも受給できる年金額は少なくなります。

厚生年金

2階部分の厚生年金は、厚生年金の適用事業所に雇用される会社員や公務員などの被保険者だけが年金保険料を支払い、将来、年金を受給します。

厚生年金は、収入が高いほど納付する保険料が高くなるため、勤続年数が長く、収入が高い(納付した保険料合計額が多い)ほど、受給できる年金額が多くなります。

また、厚生年金の保険料は労使折半(雇用者と被用者が半分ずつ支払うこと)です。

厚生年金加入者は、1階部分の国民年金の上に2階部分の厚生年金を増築し、その分だけ多くの年金を受け取ることができます。

加入する年金保険の種類と年金保険料

公的年金制度では、働き方や暮らし方によって被保険者を第1号被保険者、第2号被保険者、第3号被保険者の3つに分類しています。

  • 第1号被保険者:第2号被保険者と第3号被保険者を除く全ての人
  • 第2号被保険者:厚生年金に加入している人
  • 第3号被保険者:第2号被保険者の配偶者で収入が一定基準以下の人

職業や加入する年金をまとめると、以下の図のとおりです。

被保険者の種別 職業 加入する年金
第1号
  • 自営業
  • 学生
  • 無職など
  • 国民年金のみ
第2号
  • 会社員
  • 公務員など
  • 国民年金
  • 厚生年金
第3号
  • 専業主婦
  • 専業主夫など
  • 国民年金のみ(保険料負担なし)

就職、転職、退職などで被保険者の種別が変わることがあります。

年金分割を考える場合、婚姻期間中、自分が被保険者喉の種別に当てはまっていたのか確認しておく必要があります。

公的年金の支給額の計算方法

将来、受給できる年金額は、受給年齢までに納付された年金保険料によって決定されます。

年金保険料を納付した実績は納付記録に記録されますが、厚生年金の加入状況は人によって異なるため、国民年金と厚生年金は別々に記録されることになっています。

年金分割に関わるのは厚生年金ですが、比較の意味もあり国民年金についても触れておきます。

国民年金

国民年金は、受給年齢に達すると、納付記録に基づいて計算された金額が老齢基礎年金として支給されます。

保険料が定額で加入期間のみで支給額が決まるため、計算方法は比較的簡単です。

2018年度の計算方法は、以下のとおりです。

  • 77万9300円×加入期間(月数、保険料納付期間)÷480

20歳から60歳までの480ヶ月(40年)の間に未納なく保険料を納めた場合は、年間で80万円弱の老齢基礎年金を受給することができます。

未納があれば、その分だけ支給割合が減らされることになります。

なお、保険料の免除期間がある場合、全額免除、4分の3免除、半額免除、4分の1免除など免除の種類に応じて年金額に反映される金額が異なりますが、この記事では割愛しています。

厚生年金

厚生年金は、加入期間とその期間中の平均収入に基づいて支給額が決まります。

つまり、加入期間が同じでも、加入期間中の平均給料によって支給される金額が異なるのです。

平均給料の計算方法は、2003年4月に総報酬制が導入されたのを境に大きく変化しました。

  • 2013年3月までは平均標準報酬月額=月給の平均
  • 2003年4月からは平均標準報酬額=月給+ボーナスの平均(年収の平均)

厚生年金では、給料やボーナスがそのまま記録されるのではなく、給料は標準報酬月額、ボーナスは標準賞与額に当てはめた金額が厚生年金の納付記録に記録され、それが保険料や年金額の計算の基礎となります。

また、過去分の標準報酬月額についても現在の価値に再評価しています。

乗率も本来水準と従前額保障×スライドの2つあり、両方の乗率で計算して高い方が支給されます。

さらに、65歳未満の配偶者や18歳未満の子どもがいる場合には加給年金が加算されることもあります。

以上を踏まえた厚生年金の計算式は、以下のとおりです。

  • 厚生年金支給額=報酬比例年金額+経過的加算+加給年金額
  • 報酬比例年金額=(平均標準報酬月額×生年月日に応じた乗率×2003年3月までの被保険者期間の月数)+(平均標準報酬額×生年月日に応じた乗率×2003年4月以降の被保険者期間の月数)

自力で正確な厚生年金支給額を算出することは相当に難しいものですが、年金分割に関してのみであれば、厚生年金記録(標準報酬月額と標準賞与額)が分割の対象になることを覚えておけば十分です。

年金分割とは

年金分割とは、夫婦が離婚する場合に、婚姻期間中に支払った厚生年金の保険料を夫婦が共同して支払ったものとみなし、厚生年金記録を分割する制度です。

年金分割の対象となる年金

年金分割の対象となる年金は、以下のとおりです。

  • 厚生年金(旧共済年金)
  • 旧共済年金職域部分(2015年9月30日までの分)
  • 厚生年金基金のうち厚生年金の代行部分

年金分割は何を分ける?

年金分割で分けるのは、厚生年金「記録」(年金記録)です。

  • 第1号、第2号被保険者:婚姻期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)
  • 第3号被保険者:婚姻期間中の3号被保険者期間における相手方の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)

つまり、夫婦が婚姻期間中に納付した年金保険料の記録を分け合い、夫及び妻が離婚後に年金分割後の年金記録に基づいて年金を受給するのです。

老後に支給される年金そのものを分ける制度ではないため、注意してください。

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年金分割の対象となる期間

婚姻成立時(離婚届を提出して受理された時点)から離婚成立時の年金記録までです。

なお、年金分割は事実婚(内縁)を選択した男女にも適用されます。

例えば、法律上の婚姻をする前に事実婚の期間がある場合、事実婚の期間と法律上の婚姻期間を合算して年金分割の対象期間として主張することができます。

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保険料の納付期間を分け合うことはできない

年金分割制度は、あくまで厚生年金記録を離婚する夫婦が分け合う制度であり、年金の受給資格を算定する期間は変動しません。

年金の受給資格を得るには、10年間の国民年金加入実績が必要ですが、年金分割をしても加入期間を分け合うことはできません。

したがって、自身の国民年金加入期間が10年未満の場合、年金分割で厚生年金記録が分割されても、その記録に基づいて年金を受給することができません。

年金分割をした時点で受給資格を満たしていない場合、離婚後に自ら国民年金に加入して保険料を納め、受給資格を満たす必要があります。

年金を受給できるのは受給年齢に達した後

年金分割は、厚生年金記録を分割する制度であり、年金の受給時期には影響を及ぼしません。

したがって、年金分割をしたとしても、年金を受給できるのは受給年齢に達した後です。

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【参考】

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