認知症介助士とは?試験内容と合格率は?メリットとできることは?
- 認知症
最終更新日: 2019.06.25
高齢化に伴う認知症患者の増加に伴って、認知症高齢者の介護・ケアの需要が増す中で、認知症に関する資格がたくさん登場しています。
認知症介助士は、認知症に関する資格の中では比較的新しい資格です。
この記事では、認知症介助士の概要、試験内容、メリット、資格取得によりできることについて解説します。
目次
認知症患者数の推移
厚生労働省は、認知症を発症している65歳以上の高齢者について、2012年時点で推計約462万人、2025年には700万人を超える見込みであると発表しています。
認知症予備軍とされている軽度認知障害(MCI)の人については、2012年時点の約400万人から2025年には約600万人に増加すると推計されています。
2025年には、認知症の人と軽度認知障害(MCI)の人が合わせて1300万人に達する計算です。
また、2025年における日本の将来推計人口が1億2066万人(うち65歳以上が3698万人)であることを踏まえると、日本人の10人に1人(65歳以上の3人に1人)が認知症の人または軽度認知障害(MCI)の人になることが予想されているのです。
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認知症介助士とは
認知症介助士とは、日本ケアフィット共育機構が認定する認知症の民間資格です。
認知症介助士は、認知症を正しく理解するとともに、認知症の人やその家族への接し方や寄り添い方を学習した人に与えられます。
認知症「介護士」ではなく、認知症「介助士」です。
日本ケアフィット共育機構
日本ケアフィット共育機構とは、サービス介助士、防災介助士などの民間資格の講習や認定を行う公益財団法人です。
2014年4月から認知症介助士制度を開始し、セミナー開催、テキスト・問題集の製作・販売、試験・資格認定などを行っています。
「共育」とは、本人を取り巻く様々な人や地域、団体などが連携し、教育、養育、指導などを行うことや、教育などを与える側と受ける側がともに成長することなどを意味する言葉です。
認知症介助士に求められること
認知症介助士に求められることは、以下の3つです。
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まず、認知症に関する正しい知識を身につけ、認知症を正しく理解することが求められます。
その上で、認知症の人やその家族への「おもてなしの心」を持ち、寄り添って支えるという心構えが求められることになります。
つまり、認知症介助士に求められるのは、認知症の介護・ケアの専門家であることではなく、認知症の人やその家族をありのままで温かく受け入れ、寄り添って支えようという意欲を持っていることです。
認知症ケア専門士と認知症介助士の違い
認知症ケア専門士とは、一般社団法人日本認知症ケア学会が認定する資格制度、または、試験に合格することで得られる民間資格です。
認知症ケア専門士は、「認知症ケアに対する優れた学識と高度の技能,および倫理観を備えた専門技術士を養成し,わが国における認知症ケア技術の向上ならびに保健・福祉に貢献すること」を目的としています。
認知症ケア専門士との違いは、受験資格の有無と、受験者に占める医療・福祉機関の職員の割合です。
認知症介助士試験は、受験資格が設けられておらず誰でも受検できます。
一方で、認知症ケア専門士試験を受験するには、「認知症ケアに携わる施設等で、過去10年間のうち3年以上、認知症ケアの実務経験があること」という条件を満たす必要があります。
また、認知症ケア専門士試験の受験者の多くは、介護福祉士、介護支援専門員、ヘルパー、看護士、社会福祉士などの資格を持ち、医療機関、デイサービスセンター、グループホームなどの医療・福祉機関で認知症介護を実践しています。
一方で、認知症介助士試験の受験者は、医療・福祉機関の職員もいますが、認知症の家族、認知症に関心のある人など多様です。
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認知症介助士試験の内容
認知症介助士試験の内容について見ていきましょう。
認知症介助士試験の受験方法
認知症介助士試験の受験方法は、以下の3通りあります。
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認知症介助セミナーとは、共育センターが開催する認知症介助士試験用のセミナーです。
セミナーでは、インストラクターによる講義と受講生同士のディスカッションが行われます。
認知症に関する知識、認知症の人やその家族への接し方などを講義でインプットし、インプットしたことをディスカッションでアウトプットすることにより、知識を定着させることができます。
また、インストラクターから、試験のポイントなど試験合格に向けたアドバイスを受けることもできるため、個人で勉強して受験するより効率的に学習、合格できます。
ただし、受講料として19,440円がかかります(テキスト購入済みの場合は16,200円)。
認知症介助士試験の日程
認知症介助士の試験は、東京と大阪の共育センターの他、全国各地のCBTセンターでも受検することができ、それぞれ試験日時や試験回数が異なります。
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CBT(computer based testing)とは、コンピューターを活用することにより、随時、全国の会場で各種試験を受けることができるサービスです。
認知症介助士試験の試験内容
試験は、マークシート方式(共育センターで受験)またはクリック方式(CBTセンターで受験)です。
1問1点で30問出題(30点満点)され、21点以上で合格です。
試験時間は45分です。
出題される内容は、認知症介助士の基本理念、高齢社会の理解、認知症の基礎知識、認知症の人への介助、認知症の予防など、認知症介助士のテキストに記載されている内容です。
認知症介助士のテキスト
共育センターが「資格試験テキスト認知症介助士」と「認知症介助士資格試験対策問題集」を販売しています。
認知症介助士試験の合格率
認知症介助士試験の合格率は、90%を超えています。
出題範囲は認知症介助士のテキストの記載内容で、いずれも認知症に関する基本的な知識なので、テキストを読み込んでおけば合格することができます。
認知症介助士資格取得のメリットとできること
認知症介助士資格を取得することにより、認知症に関する基礎知識を身につけることができます。
認知症の正しい知識を得ることで、認知症の人やその家族が置かれた状況や気持ちなどに理解が及び、彼らに対する接し方や、彼らに寄り添って支えようという意欲も高まります。
地域のボランティア活動に参加したり、認知症介護の現場で働いたりするモチベーションが高まり、認知症の家族がいる場合は正しい接し方や介護ができるようになります。
また、今後ますます認知症患者が増えていく見込みの日本においては、認知症介護の専門家を養成するとともに、認知症の人やその家族が暮らしやすい地域づくりが大きな課題となっています。
認知症介助士は、特に、後者の実現に寄与するものと考えられています。
つまり、認知症介助士資格取得者が増えることで、認知症介護の専門家ではないものの、認知症の人やその家族の身近にいて、正しい知識や接し方で彼らを支援することができる人が増えることにつながるのです。