片親引き離し症候群(PAS)、片親疎外(PA)とは?原因と症状、対応策は?

片親引き離し症候群 片親疎外

近年、親の離婚や別居を経験した子どもが非監護親との面会交流を拒む「片親引き離し症候群」や「片親疎外」という状態が注目されるようになっています。

子どもは、親の離婚や別居により心に深刻な傷を負います。

それでも、離婚または別居した父母が子どもの前では争わず親として振る舞い、また、子どもと離れて暮らす親との面会交流が円滑に行うことができていれば、子どもは「両親から愛されている。」という感覚を抱くことができ、心の傷が少しずつ癒えていくと考えられています。

一方で、離婚または別居後も親がいがみ合い、子どもの監護親が非監護親のことを悪くいったり、面会交流に拒否的な態度を示したりすると、子どもはさらに心を傷つけられる上、非監護親との面会交流を拒否することがあります。

片親引き離し症候群(Parental Alienation Syndrome)と片親疎外(Parental Alienation)

まず、片親引き離し症候群と片親疎外の内容を確認しましょう。

片親引き離し症候群(PAS)とは

片親引き離し症候群とは、離婚または別居後に子どもを引き取って育てている親(同居親、監護親)が、もう一方の親(別居親、非監護親)の悪口や誹謗中傷を吹き込んで子どもを洗脳し、子どもが非監護親を拒否するよう仕向けて面会交流実施を阻んでいる状態です。

言い換えると、監護親の言動や態度によって、子どもと非監護親との関係が理不尽に壊されている状態です。

片親引き離し症候群は、リチャード・A・ガードナーが1980年代初めに提唱した用語で、英語では「Parental Alienation Syndrome」と表記し、「PAS」と略して呼ばれることが多くなっています。

日本では片親引き離し症候群の他、「洗脳虐待」と訳されることもあります。

諸外国の中には、片親引き離し症候群を虐待の一つとして重く受け止める国がありますが、日本では名前すら知られていないのが現状です。

片親疎外(PA)とは

片親疎外(PA)とは、子どもが監護親の影響を受けて、正当な理由がないのに非監護親との交流を拒否している状態のことです。

「片親引き離し症候群(PAS)が、診断学上のシンドローム(症候群)に該当しない。」という批判を受けた後、使用されるようになってきましたが、内容に大きく異なるところはありません。

この記事では、片親引き離し症候群(PAS)と片親疎外(PA)をまとめて、片親引き離し症候群(PAS)と表記しています。

片親引き離し症候群(片親疎外)の原因

片親引き離し症候群は、主に監護親の子どもに対する言動が原因で起こります。

監護親が、非監護親の悪口や誹謗中傷を繰り返す

子どもにとって父母はとても大きな存在で、その発言や態度の影響を受けやすいものです。

父母の別居や離婚により親の一方とだけ生活している子どもは、「監護親に見捨てられたらどうしよう。」という不安を常に抱えているため、監護親の言動に過敏に反応し、その言動には追従しやすい傾向があります。

特に、子どもの年齢が低いほど、親の言動に大きく影響を受けやすいものです。

そのため、監護親が子どもの前で非監護親の悪口や誹謗中傷を繰り返すと、子どもはそれを否定したり受け流したりすることができず、監護親の意見が自分の意見であるかのように思い込むようになります。

監護親が、非監護親の話を嫌がる

言葉にしなくても、子どもが非監護親の話をしたときに嫌な顔をしたり、無視したりすると、子どもは「非監護親の話はしてはいけないことなんだ。」と敏感に察知し、気を使うようになります。

そして少しずつ、監護親が抱いている非監護親に対する否定的な気持ちや感情を、自分のものとして取り入れていきます。

監護親が、子どもと非監護親の面会交流を嫌がる

離婚や別居で離れて暮らすことになった親子は、面会交流を行う権利があります。

また、親子の交流は、子どもの健全な成長に欠かせないと考えられています。

しかし、監護親が面会交流を嫌がると、子どもはそれに同調し、あたかも自分が面会交流を拒否したかのように振舞うことがあります。

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片親引き離し症候群(片親疎外)の症状

片親引き離し症候群の主な症状は、以下のとおりです。

  • 同居親は「すべて良くて好き」、非監護親は「すべて悪くて嫌い」という考え方になる
  • 監護親の主張や意見を無批判に支持する
  • 監護親が抱く非監護親への不満や敵意を取り入れ、自分の意見であるかのように話す
  • 非監護親を拒否するのは、自分の本心だと主張する
  • 非監護親への恨み、恐怖、嫌悪感をあらわにする
  • 理不尽な理由で非監護親を誹謗中傷する
  • 非監護親に対する苛烈な発言や態度に罪悪感を持たない
  • 非監護親の関係者にも敵意を向け、批判する

こうした症状は、①監護親が自分の意向を子どもに吹き込むことと、②子どもが監護親の意向を敏感に察知して自分の意向だと表明することで起こります。

子どもが監護親の意向を自分の意向だと表明するのは、父母の離婚問題に巻き込まれた上、一方の親と強制的に引き離されて混乱している状況で、さらに監護親の関心や愛情まで失いたくないという気持ちが働いていると考えられています。

子どもが情緒不安定になる

片親引き離し症候群の症状として最も深刻なのは、面会交流ができないことではなく、子どもの情緒が不安定になることです。

子どもは、親の離婚や別居によって深い心の傷を負い、自身のアイデンティティの危機に直面します。

そうした状況で、監護親から非監護親の悪口や誹謗中傷を聞かされ続けると、心の傷はさらに深くなり、情緒不安定になる傾向がありあます。

子どもが情緒不安定になると、日常生活の中で以下のような症状が見られるようになります。

  • 学業成績の低下
  • 抑うつ症状(気分の落ち込み、無気力感など)
  • 睡眠障害(不眠、眠りが浅いなど)
  • 自殺企図(リストカットなど)
  • 薬物依存
  • 非行や不良交友への傾倒

片親引き離し症候群(片親疎外)の対応

片親引き離し症候群を解消させるには、主な原因である監護親の言動を改善させることが欠かせません。

ただし、必ずしも監護親のみに非があるわけではありません。

離婚または別居前や面会交流中の非監護親の発言や態度が監護親や子どもの態度を硬化させ、片親引き離し症候群の遠因となっているケースも少なくないのです。

そのため、監護親と非監護親それぞれに求められる対応について記載します。

監護親側

  • 子どもに非監護親の悪口や誹謗中傷を言わない
  • 子どもと非監護親の面会交流を制限したり、妨害したりしない(LINE、メール、電話など間接的な交流、写真やプレゼントの授受などを含む)
  • 子どもが非監護親の話をしても、不快感をあらわにしたり、無視したり、話をそらしたりしない
  • 非監護親のイメージが悪くなるウソを子どもにつかない(「あなたを見捨てた」「死んでもういない」「あなたのことを嫌っている」など)
  • 子どもに一方の親を選択させるような質問をしない(「どちらの親が好きか」「どちらと住みたいか」など)
  • 子どもに夫婦の問題を相談したり、非監護親の動向を探らせたりしない
  • 子どもに非監護親を拒否するよう強要しない
  • 非監護親の呼び方を変えない/「あいつ」「あの人」などと呼ばせない
  • 再婚した場合、再婚相手だけを「お父さん」「お母さん」と呼ぶよう強要しない

非監護親側

  • 子どもとの面会交流を密にして、子どもが「離れ離れでも両親に見守られている。」という感覚を持てるようにする
  • 面会交流中に監護親の悪口を言わない
  • 監護親との連絡を維持して子どもの状況を確認する
  • 監護親の子育ての苦労をねぎらう
  • 子どもや監護親の予定を優先し、面会交流を強要しない
  • 子どもが監護親の話をしても、不快感をあらわにしたり、無視したり、話をそらしたりしない
  • 監護親のイメージが悪くなるウソを子どもにつかない(「男と会っている」「実は、あなたのことを嫌っている」など)
  • 子どもに一方の親を選択させるような質問をしない(「どちらの親が好きか」「こっちで住まないか」など)
  • 子どもに夫婦の問題を相談したり、監護親の動向を探らせたりしない
  • 子どもに監護親を拒否するよう強要しない
  • 監護親が嘘や間違った事実を吹き込んだことで、子どもが面会交流を拒否したことが分かっても、感情的にならず、監護親と冷静に話し合って修正を求める
  • 子どもに拒否された場合は、子どもとも監護親とも冷静に話し合い、今後の交流の方法を話し合う

離婚ハンドブック編集部

投稿者プロフィール

家事事件(離婚、遺産分割、成年後見など)を専門に取り扱って11年になります。
これまでの実務経験から、当事者自身が離婚に関する知識を得て、自分で考えて判断することが「後悔の少ない離婚」につながるという考えており、その考えに基づいて「離婚ハンドブック」を運営しています。
サイト上では詳細なプロフィールは明かしておらず、仕事の依頼も受けていません。

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