離婚とパニック障害!心の病気があると子どもの親権者になりにくい?

パニック障害 離婚

夫婦関係が悪化した後の婚姻生活や離婚紛争中は、強いストレスを感じて心のバランスを崩しやすい時期です。

こうした時期に起こりやすい心の病気の一つがパニック障害です。

パニック障害とは

パニック障害とは、パニック発作、予期不安、広場恐怖と特徴とする心の病気です。

パニック発作は急に動機やめまいなどの症状が出るもので、本人が「死ぬかもしれない」と感じることもありますが、症状は短時間で治まり、検査をしても異常は見つかりません。

パニック発作を繰り返すうちに「また、発作が起こるかもしれない。」という予期不安や、そうした状況を避けようとする広場恐怖が出現し、日常生活に支障が出るようになります。

夫婦の一方または両方がパニック障害になると、それまでの夫婦関係や家族関係の維持が困難になり、最悪の場合は離婚に至ります。

パニック障害の原因

パニック障害の原因は、脳内の神経機構の異常によるものだと考えられていますが、発症のメカニズムが特定されるには至っていません。

パニック発作の原因に関する説としては、ストレスや過労がパニック障害の発端となる、神経伝達物質の一つ「セロトニン」の不足や受容体の鈍化がパニック発作を引き起こすなどがあります。

また、タバコ、アルコール、向精神薬、カフェインなどがパニック障害の発症リスクを上げるという研究結果も発表されています。

パニック障害の症状

パニック障害の主な症状は、パニック発作、予期不安、広場恐怖の3つです。

パニック発作

パニック発作とは、急に強いストレスを感じて、動悸、めまい、過呼吸、呼吸困難などの自律神経症状と空間認知による強い不安を覚える発作です。

パニック発作によって起こる主な症状は、以下のとおりです。

  • 動悸、心悸亢進、または心拍数の増加
  • 死ぬかもしれないという恐怖
  • 異常感覚(感覚麻痺またはうずき感)
  • 冷感または熱感
  • 身震いまたは震え
  • 息切れ感または息苦しさ
  • 窒息感
  • 胸痛または胸部不快感
  • 発汗
  • めまい感、ふらつく感じ、頭が軽くなる感じ、気が遠くなる感じ
  • 現実感消失または離人症状(自分が自分でないような感じ)
  • コントロールを失うこと、または気が狂うことに対する恐怖
  • 吐き気または腹部の不快感

パニック発作は、起こってから10分程度でピークに達して1時間以内には治まりますが、その後も繰り返し起こります。

また、「死ぬかもしれない」という恐怖を感じる人が多いものですが、検査を受けても異常が見当たらないため、徐々に予期不安や広場恐怖に悩まされるようになります。

予期不安

予期不安とは、「パニック発作が再び起こるのではないか。」という不安を抱くことです。

パニック発作が繰り返されるうちに、「また、パニック発作が起こるのではないか。」、「今度、発作が起きたら死ぬかもしれない。」、「発作が起こっても誰も助けてくれないだろう。」などという強い不安を抱くようになります。

広場恐怖

広場恐怖とは、「パニック発作が起きたときに誰も助けてくれない。」、「パニック発作からは逃れられない。」という不安や恐怖を抱き、そうした状況を避けることです。

パニック発作は自力では抑えようがないため、発症した人は誰かに助けてほしいと考え、助けが得られない状況を避けるようになります。

例えば、公園、電車・バス、エレベーター、スーパーなどで広場恐怖を感じ、近づいただけで動悸やめまいなどの症状が現れることがあります。

広場恐怖の影響によって一人で外出できる範囲がごく限られることにより、日常生活への支障が大きくなります。

また、パニック発作、予期不安、外出恐怖の症状が進行すると、不安や恐怖を抱えて自宅に引きこもるようになって社会生活を送ることが困難になり、気持ちが落ち込んでうつ病を発症することもあります。

パニック障害は誰にでも発症のリスクがある

パニック障害は、男性よりも女性の発症率が高く、また、家族にパニック障害の人がいると発症しやすい傾向があります。

ただし、100人に1人はパニック障害を発症すると言われており、誰でも発症する可能性がある病気です

パニック障害は気づかれにくく、誤解を受けやすい病気

パニック障害は、パニック発作を起こして搬送されても、病院到着時には発作が治まっているため検査で異常は見つかりません。

発作を起こした本人や周囲の人がパニック障害だと気づかないことも多く、誰にも気づかれないまま症状が進行することが多いのです。

また、パニック障害の特徴である不安や恐怖は、性格や気持ちの弱さの問題だと捉えられがちで、周囲の冷たい目にさらされてしまうこともあります。

パニック障害の治療

パニック障害の治療は、薬物療法と認知行動療法を組み合わせて行うのが一般的です。

薬物療法によってパニック発作を抑える

パニック障害の治療では、SSRI(選択的セロトニン最取込阻害薬)と抗不安薬(ベンゾジアゼピン系)によって脳内伝達物質のバランスを調整し、パニック発作の出現を抑制します。

SSRIは、徐々に量を増やす必要があり効果が現れるまでに約1ヶ月程度かかるため、早く効果が現れるベンゾジアゼピン系抗不安薬も服用することが多くなっています。

ベンゾジアゼピン系抗不安薬は、用法用量を誤ると依存状態になるおそれがあるため、医師の判断に従って服用しなければなりません。

SSRIは、飲み始めた頃に下痢や吐き気などの副作用が現れることがありますが、通常は1、2週間で治まります。

また、興奮しやすくなる、怒りやすくなる、不安や苛立ちを感じるなど、感情面の症状が現れることもあるため、医師の判断で服用量が調節されることもあります。

SSRIの服用と認知行動療法を組み合わせて治療を行う

薬物療法でパニック発作が落ち着くと、薬物療法を継続しながら、認知行動療法によって予期不安や広場恐怖を失くしていく治療が行われます。

認知行動療法では、不安や恐怖を感じて避けようとする状況や場面と徐々に直面化させ、「発作が起こらない。」という体験を積むことにより、パニック発作を起こさずに過ごせる範囲を拡げていきます。

治療の終了は医師の判断に従うことが大切

自己判断で治療を中断すると、再発するおそれがあります。

治療を継続するか否かの判断は、医師と相談して慎重に決める必要があります。

パニック障害の再発を防ぐには、症状を抑えるだけでなく、ストレスに耐えられる心と身体を作ることが大切であり、規則正しい生活、適度な運動、バランスの良い食事、相談相手の確保、自分なりのストレス解消法などの獲得を目指すことになります。

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パニック障害と離婚

パニック障害は、婚姻中や離婚紛争中に発症することがあります。

例えば、夫婦仲の悪化、配偶者からのDVやモラハラ、子どもの非行化、嫁姑関係など家庭内の問題で強いストレスを感じてパニック障害を発症する人がいます。

また、離婚紛争中のストレスが原因でパニック障害になるケースも散見されます。

パニック障害を理由に離婚できるか

パニック障害の原因が配偶者にあると考えている場合、パニック障害を理由の一つとして離婚を請求することは可能です。

夫婦の合意が前提となる協議離婚や調停離婚では、理由が何であれ夫婦が離婚に合意すれば離婚が成立するため、パニック障害を離婚理由とし、それを相手が受け入れれば離婚することができます。

裁判離婚の場合は、法定離婚事由がないと離婚が認められないため、離婚事由があることを裏付け資料とともに主張する必要がありますが、パニック障害のみを離婚理由として主張して離婚が認められた判例は見当たりません。

配偶者によるDVやモラハラ、不貞、生活費を渡さないなどの事情の一つとしてパニック障害を主張するのが一般的です。

また、離婚裁判では、主張を裏付ける証拠が重視されるため、パニック障害の診断を受け、配偶者の言動や態度が発祥の一因となった旨の記載がある診断書を作成してもらう必要があります。

パニック障害の診断を受けていると子どもの親権者になりにくいか

家庭裁判所の手続きでは、民法766条第1項、同第2項の規定に基づいて子どもの親権を決めることになります。

1 父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。

2 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、同項の事項を定める。

(民法766条第1項、同第2項)

つまり、子どもの親権者を決める場合、子どもの福祉(子どもの利益)が第一に優先されるということです。

過去の判例では、子どもの福祉(子どもの利益)について、以下の事情が考慮されています。

  • 親権者の適格性
  • 子どもの意思
  • 監護態勢
  • 監護の継続性
  • 子の連れ去りの有無や程度
  • きょうだいの同居

パニック障害と診断されている場合、「診断されていることだけで親権者になれない。」ということはありません。

婚姻中に子どもを継続して監護しており、パニック障害の症状を抱えながらでも日常的な家事育児を支障なく行うことができ、監護補助が得られる状況であれば、親権者になることはできます。

一方で、パニック障害の症状の影響で家事育児を適切に行うことが困難な場合などは、親権者の適格性を疑われる可能性があります。

また、子どもが一定の年齢に達していれば、親権者を決める上で子どもの意向が重要な意味を持つようになります。

概ね10歳以上の子どもの親権を争う場合は、パニック障害やそれに伴う監護能力の程度などよりも、子どもの意向が重視される傾向があります。

家庭裁判所で子どもの親権者を決める場合の規準については、関連記事で詳しく解説しています。

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パニック障害を理由に慰謝料を請求できるか

PTSDを理由に慰謝料を請求することは可能です。

しかし、慰謝料請求が認められるか否かは証拠の有無や内容によるところ、配偶者の言動や態度が原因でパニック障害を発症したと客観的に証明することは困難です。

したがって、通常は、パニック障害の原因となった配偶者のDV(ドメスティックバイオレンス)、モラハラ(モラルハラスメント)、不貞などに対して慰謝料を請求します。

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離婚ハンドブック編集部

投稿者プロフィール

家事事件(離婚、遺産分割、成年後見など)を専門に取り扱って11年になります。
これまでの実務経験から、当事者自身が離婚に関する知識を得て、自分で考えて判断することが「後悔の少ない離婚」につながるという考えており、その考えに基づいて「離婚ハンドブック」を運営しています。
サイト上では詳細なプロフィールは明かしておらず、仕事の依頼も受けていません。

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