離婚とPTSD!心的外傷後ストレス障害で離婚や慰謝料請求はできる?

PTSD 離婚

婚姻中に配偶者からDV(ドメスティックバイオレンス)やモラハラなどを受けていた場合、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症することがあります。

PTSDは、婚姻中または離婚後後の生活に大きな影響を及ぼす状態であり、適切な治療を受けることが大切です。

しかし、夫婦関係が悪化して離婚をめぐる対立が生じると、自分の心の健康を後回しにして症状を悪化させてしまうことが少なくありません。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)とは

PTSDとは、自然災害や犯罪など苛烈な心的外傷体験をきっかけとして、体験から時間が経過した後もフラッシュバック、侵入的再体験(悪夢)、体験に関する刺激の回避、否定的な気分や思考、情緒不安定などの症状が続く状態です。

英語では「Post Traumatic Stress Disorder」と表記され、日本語では「心的外傷後ストレス障害」と訳されますが、英語表記の頭文字を並べてPTSDと呼ばれることが多くなっています。

通常、PTSDの症状は、心的外傷体験から数日が経過した後に発症し1ヶ月以上経過しても持続し、症状が悪化することもあります。

なお、PTSDの症状が1ヶ月を経過するまでに消失した場合、急性ストレス障害と診断され、PTSDとは区別されています。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)の原因

PTSDは、強い心理的ストレスを実際に体験する、またはそうした状況に直面することなどによって発症します。

PTSD発症の原因となるのは、以下のような出来事です。

  • 被災する(地震、津波、台風などの自然災害や火事などの人的災害など)
  • 交通事故や航空事故に遭う
  • 傷害や性犯罪などの犯罪被害に遭う
  • 暴力を伴ういじめを受ける
  • 紛争地域へ赴いて生命の危機を感じる状況に陥る
  • 配偶者から継続的にDV(ドメスティックバイオレンス)を受ける
  • 配偶者のモラハラ(モラルハラスメント)に継続的にさらされる
  • 父母から虐待(身体的虐待、精神的虐待、性的虐待、ネグレクト)される
  • 生命に関わる怪我をする
  • 家族などが目の前で死亡する

ある出来事に対して心理的ストレスを感じるか否かや感じる程度は人によって異なりますし、心理的ストレスを感じた後の立ち直る力も個人差があります。

例えば、配偶者から継続的にDVやモラハラを受けていた人が必ずPTSDを発症するとは限りません。

したがって、PTSDを発症するか否かについて、特定の出来事を体験したことだけで判断することはできません。

「PTSDになる=心が弱い」は大きな誤解

「PTSDになるのは心が弱いから。」と考えている人が一定数おり、PTSDを発症した本人が自分の心の弱さを責めることも珍しくありません。

しかし、PTSDは、苛烈な心的外傷経験をすることで誰でも発症する可能性があり、心が弱い人だけが発症するわけではありません。

PTSDを発症したということは、それだけ強い心理的ストレスを感じたという証であり、自分の弱さを責めるのではなく、辛い経験を乗り切った自分を労わってあげることが大切です。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状

PTSDの主な症状は、以下のとおりです。

フラッシュバック

フラッシュバックとは、心的外傷体験が突然また非常に鮮明に想起される現象です。

PTSDの代表的な症状の一つで、無意識のうちに思い出され、現実に起こっているかのような感覚に襲われるのが特徴です。

また、就寝中に心的外傷体験が悪夢として再現されることもあります。

心的外傷体験に関する刺激を回避する

PTSDを発症した人は、発症の原因となった刺激を避けることがあります。

例えば、家庭内でDVやモラハラを受け続けた人は、自宅に戻ることを頑なに拒否したり、自宅の特定の場所に出入りできなくなったりすることがあります。

また、父母から身体的虐待を受けてPTSDを発症した子どもは、父母や自宅に近づかなくなったり、電話や呼び鈴が鳴っただけで過剰に驚いたりすることがあります。

心的外傷体験をした状況や場所、場面を回避することで当時の記憶を想起しないようにする行動ですが、行動範囲が制限されて日常生活に支障が出ることが少なくありません。

否定的な気分や思考

心的外傷体験の後、自分自身や周囲の人が変わったと感じることもあります。

罪の意識に囚われたり、周囲の人が自分を陥れようとしていると感じたりして、自分のことも他人のことも信用できなくなります。

また、感情鈍麻や感覚麻痺の症状によって「嬉しい」、「楽しい」などの感情が湧かなくなったり、周囲に対する気配りや情緒的な関わりが失われたりすることもあります。

緊張状態の持続

フラッシュバックが繰り返され、自分や他人が信用できない状態が持続すると、常に危険を感じて安心できない状態に陥ります。

神経が張りつめて緊張した状態が持続し、集中力が低下する、怒りやすくなる、些細な刺激に過剰反応する、眠れなくなる、過呼吸発作が起こるなどの症状が現れることもあり、時間の経過とともに心と身体が疲弊して日常生活に支障が出るようになります。

PTSDは気づきにくい

発症した本人も周囲の人も、PTSD発症の原因と症状の関係に気づきにくく、原因が分からないまま症状に悩まされ続けることが少なくありません。

また、PTSDの症状は、急に起こる上に周囲からは挙動不審に見えやすいため、思わぬ誤解を生んでしまうこともあります。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)の治療法

PTSDの治療は、心理療法と薬物療法を併用して行います。

心理療法では、PTSD発症の原因となった心的外傷体験の記憶をあえて想起させ、「体験は過去のことであり、想起しても身の危険はなく、怖くもない。」ということを実感させることで、治療を行います。

例えば、眼球を動かしながら心的外傷体験を想起したり、PTSDを発症した人が集まって不安や体験を共有したりする治療法が実践されています。

なお、PTSDを発症した人の中には、「大切な人を守れなかった。」などと自分を責め続けるうちに、客観的には不合理な自責の念を抱える人がいます。

こうした場合は、カウンセリングによって思考や認知を修正することを目指します。

薬物療法では、不安症状には抗不安薬、気分の落ち込みには抗うつ薬、睡眠障害には睡眠薬というように、症状に応じて薬が処方されます。

PTSDの治療に用いられる薬は、いずれも効果や副作用が強く、用法用量を誤ると症状の悪化につながりかねないため、医師の指示に従って服用する必要があります。

薬の効果が出るまでには一定の期間が必要であり、「効果がない」と勝手に判断して服薬を止めてしまわないことが大切です。

また、「薬の種類や量が多すぎる」、「副作用が怖い」などと考えて独断で薬の量や回数を減らすと、医師が「薬の効果が出ていない。」と誤解し、薬の量を増やしたり薬を変えたりするなど誤った判断をするリスクがあります。

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PTSD(心的外傷後ストレス障害)と離婚

PTSDは、配偶者との関係が原因で発症することもあります。

例えば、婚姻生活の中で配偶者からDVやモラハラを継続的に受けていた場合、配偶者の不貞や薬物・アルコール依存を目の当たりにした場合などにPTSDを発症する人がいます。

PTSDを理由に離婚できるか

配偶者のDVなどでPTSDを発症した場合、PTSDを理由の一つとして離婚を請求することは可能です。

協議離婚や調停離婚の場合、相手が離婚や条件に合意すれば離婚できますが、裁判離婚の場合は、夫婦関係を破たんさせた事情(法定離婚事由)がないと離婚が認められません。

PTSDを理由に離婚を請求する場合、法定離婚事由のうち「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」を主張することになります。

ただし、PTSDのみを理由とした離婚請求が認められた判例は見当たらず、通常は、配偶者の不貞、DV、モラハラ、子どもへの虐待、生活費を渡さないなどの事情と併せてPTSDが主張されています。

また、離婚裁判では主張を裏付ける証拠が重要な判断材料となります。

したがって、PTSDを発症したら病院で診断を受け、診断書を入手しておく必要があります。

子どものPTSDを理由に離婚できるか

配偶者から虐待を受けた子どもがPTSDを発症した場合も、離婚を求める事情の一つとして主張することができます。

この場合も証拠が重要な意味を持つため、診断書を入手しておくことが大切です。

PTSDを理由に慰謝料を請求できるか

結論からいうと、PTSDを理由に慰謝料を請求することは可能ですが、慰謝料請求が認められるか否かは証拠の有無や内容によります。

慰謝料とは、不法行為によって受けた精神的苦痛に対する損害賠償です。

配偶者の言動や態度でPTSDを発症したことを証明できれば、慰謝料が認められることがあります。

ただし、PTSDの原因となったDV、モラハラ、不貞などに対する慰謝料を請求するのが一般的であり、PTSDだけで慰謝料を求めるケースは多くありません。

なお、離婚に伴う慰謝料請求額の相場は、以下のとおりです。

請求理由 慰謝料の相場
不貞 50~300万円
悪意の遺棄 50~200万円
DV(家庭内暴力) 50~500万円
モラハラ(モラルハラスメント) 50~300万円

あくまで相場であり、請求額どおりに認められるか否かは証拠の有無や内容によります。

離婚と慰謝料については、関連記事で詳しく解説しています。

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離婚ハンドブック編集部

投稿者プロフィール

家事事件(離婚、遺産分割、成年後見など)を専門に取り扱って11年になります。
これまでの実務経験から、当事者自身が離婚に関する知識を得て、自分で考えて判断することが「後悔の少ない離婚」につながるという考えており、その考えに基づいて「離婚ハンドブック」を運営しています。
サイト上では詳細なプロフィールは明かしておらず、仕事の依頼も受けていません。

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