離婚後の養育費請求:過去分や20歳以降の養育費は請求できるか?

離婚後の子供の養育費は、離婚するときに、夫婦の話し合いや家庭裁判所の手続きで取り決めておく条件の一つです。

しかし、「早く離婚したい」、「自分の収入や親の支援があれば生活できる」、「元配偶者と関わりたくない」などと考えて、養育費を取り決めずに離婚する夫婦が一定数います。

通常、子供の年齢が上がるにつれてかかる費用も高くなるので、離婚後、時間の経過とともに経済的に苦しくなりますが、離婚時にはそこまで考える余裕がない人が多いものです。

厚生労働省が公表している「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」では、養育費を取り決めずに離婚する夫婦の多さを示す結果が示されています。

世帯数養育費の取り決め
ありなし不詳
母子世帯数(割合)780(42.9)985(54.2)52(2.9)
父子世帯数(割合)64(20.8)229(74.4)15(4.9)

※調査対象:全国の母子世帯、父子世帯、養育者世帯のうち、平成22年国勢調査により設定された調査区から無作為に抽出された4,450調査区内の母子世帯、父子世帯、養育者世帯

なお、同調査結果では、協議離婚した夫婦は、他の離婚方法で離婚した夫婦と比較して養育費の取り決め割合が低くなるという結果も示されています。

離婚後に養育費を請求できるか

結論から言うと、離婚後に養育費を請求することは可能です。

養育費は、未成熟の子供の生活にかかる費用全般のことです。

父母の婚姻期間中は、「親権者の子供を監護養育する義務(民法第820条)」と「親の子供に対する扶養義務(民法877条1項)」に基づいて養育費が支払われています。

離婚により元配偶者が親権者となって子供を引き取ったとしても、非親権者(非監護親)と子供の親子関係が断絶することはなく、子供を扶養する義務も残ります。

したがって、親の子供の扶養義務に基づいて、子供が経済的に自立するまでは離婚後も養育費を支払い続けなければなりません。

養育費は誰の権利か

養育費を請求するのが親権者(監護者)なので、「養育費=非監護者が監護者に支払うもの」だと勘違いされがちですが、養育費を受け取るのは子供の権利です。

そのため、父母が養育費を請求しないと取り決めても、離婚後に元配偶者へ養育費を請求することは可能ですし、養育費請求調停や審判の申立ても妨げられません。

なお、養育費が継続的に支払われることで、親の離婚を経験した子供が経済的に困窮せずに生活を送ることができますし、間接的とはいえ「離れて暮らす親も自分のことを気にかけてくれている」と感じることができます。

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養育費の請求期限

離婚時に取り決める金銭給付については、請求時効が規定されているものがあります。

例えば、財産分与は離婚したときから2年間、慰謝料は離婚したときから3年間です。

原則は成人に達する月まで

養育費については請求時効は規定されていませんが、未成熟な子供の養育にかかる費用という養育費の性質上、養育費を請求できるのは「子供が親の扶養を必要としなくなるまで」です。

家庭裁判所で養育費を取り決める場合、離婚前か離婚後かを問わず、「子供が成年に達する月まで」とするのが一般的です。

子供の進路によって変更できる

子供の進路によって「子供が成年に達する月まで」という支払期間を変更することもできます。

例えば、子供が高校卒業後に就職する見込みの場合、もはや親が扶養する必要はなくなるので、「子供が高校を卒業する月まで」とすることが考えられます。

また、子供が大学や専門学校に進学する場合、20歳を超えても親が扶養する必要があることが多いため、20歳以降も養育費の支払いを求めることになります。

例えば、「子供が大学を卒業する月まで」、「子供が大学院を卒業する月まで」など、子供の進路に応じて支払終期を取り決めます。

再婚した場合の養育費

離婚後に新たなパートナーと出会って再婚した場合、養育費支払義務が残る場合とそうでない場合があります。

養育費支払義務が残る場合

権利者(養育費の支払いを受ける人)と義務者(養育費支払義務がある人)のいずれが再婚した場合でも、養育費支払義務は発生します。

養育費支払義務がなくなる場合

権利者が再婚し、子供と再婚相手が養子縁組した場合、権利者と再婚相手(養親)が第一次的に子供の扶養義務を負い、子供の養育費を負担することになります。

したがって、義務者(非親権者)の養育費支払義務はなくなります。

ただし、恒久的に支払義務がなくなるわけではなく、権利者と再婚相手が離婚し、再婚相手と子供が離縁した場合は、義務者に養育費支払義務が発生します。

また、権利者や再婚相手が経済的に困窮し、子供が生活苦に陥った場合などは、子供から扶養請求を受ける可能性もあります。

つまり、養子縁組によって第一次的な扶養義務が再婚相手に移ることはあっても、実の親子関係やそれに伴う扶養義務が消滅するわけではないのです。

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養育費支払義務は残るが、減額請求できる場合

権利者が再婚し、ひとり親家庭だった頃よりも経済的に安定した場合、権利者の収入増加を理由に養育費減額請求を求められることがあります。

また、義務者が再婚した場合、養育費支払義務は残りますが、義務者は子供だけでなく再婚相手にも扶養義務を負いますし、再婚相手との間に子供が生まれた場合、その子供も扶養しなければなりません。

したがって、扶養義務を負う対象が増えたことを理由として養育費減額請求をされる可能性があります。

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過去分の未払養育費の請求

離婚時に養育費を請求する場合、養育費を請求したとき以降の「過去の未払養育費」を請求できます。

離婚後の養育費請求でも、原則として、離婚時と同じく養育費を請求したとき以降の未払養育費請求が認められます。

家庭裁判所の実務では、「養育費請求調停申立てが受理された日=養育費を請求したとき」として養育費を取り決めるのが一般的です。

例えば、2017年1月20日に離婚が成立した後、2018年1月20日に養育費請求調停を申し立て、同年5月20日の期日で養育費の支払いについて合意ができたとします。

この場合、調停調書に記載される養育費の支払い開始時期は、調停申立てが受理された2018年1月20日であり、支払われる養育費もそれ以降の分です。

調停申立て前に遡って養育費が請求できる場合

調停申立て以前に元配偶者へ養育費を請求した事実を証明できる資料があれば、調停申立て前に遡って養育費を請求することができます。

例えば、元配偶者に養育費を請求する内容のメール、電話でのやりとりの録音、内容証明郵便などの資料があれば、調停や審判で資料として提出することで、資料に記載された時点を養育費の支払い開始時期として支払いを受けられるようになります。

しかし、過去分の未払養育費を無制限に請求できるわけではありません。

未払養育費が多くなるほど支払義務者の負担は大きくなり、離婚から何年も経過してから多額の養育費請求を受けるのは支払義務者にとって酷ですし、支払い能力を超える養育費を取り決めても実効性が乏しいからです。

また、離婚してから養育費請求をするまで子供を何とか養育できていたのは事実であり、請求した全期間について過去の未払養育費が認められるとは限りません。

離婚後の養育費請求の金額・相場と算定方法

養育費の金額は、父母の収入や資産、子供の人数・年齢・進学状況・健康状態などを総合的に考慮して判断されるものであり、一律にいくらとは決まっていませんし、相場もありません。

しかし、養育費は親の子供に対する扶養義務(生活保持義務)に基づいて支払う金銭であり、その金額は、子供が養育費支払義務者(非親権者)と同程度の生活水準を維持できるだけの金額である必要があります。

そのため、養育費支払義務者の収入が少ない場合でも、無職であっても就労能力がある場合は支払義務は免れませんし、自分の生活水準を落としてでも養育費を支払わなければなりません。

実際に支払われている養育費の金額

平成29年司法統計年報では、子の監護事件のうち、養育費または扶養料の支払いが取り決められて認容または調停成立した件数や、取り決められた支払額を確認することができます。

金額(月額)件数
1万円以下1908
2万円以下3777
4万円以下4336
6万円以下989
8万円以下295
10万円以下154
10万円以上180

※平成29年司法統計年報第42表「子の監護事件のうち認容・調停成立の内容が養育費・扶養料支払いの取決め有り(父が支払者)の件数―支払額別子の性別及び年齢別―全家庭裁判所」を参考に離婚ハンドブックが作成

※月額は子供1人当たりの金額

一番多いのが月額4万円以下で、2万円以下、1万円以下と続きます。

養育費の算定方法

家庭裁判所の実務では、養育費の算定に簡易算定方式とそれに基づく「養育費算定表」が活用されています。

養育費算定表とは、父母(養育費支払義務者と権利者)の年収、子供の人数、子供の年齢から目安となる養育費の金額の範囲を算出することができる表です。

ネット上でも閲覧できるため、元夫婦間で協議する場合にも活用することができますし、調停の前に算出しておけば調停進行がスムースになります。

ただし、職業費の算出が過大、住居費・保険医療費・保険掛金を特別経費として控除している、子供の年齢区分が2区分のみで生活実態と乖離している、税制改正や物価変動が反映されていないなどの問題が指摘されており、日本弁護士連合会が「新養育費算定方式・新養育費算定表」を提言しています。

2019年現在、最高裁判所の司法研修所が、「養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究」という司法研究で養育費算定方式の見直しを進めており、今後、算定方式や算定表が変更される可能性があります。

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離婚後に養育費請求をする方法

離婚後に養育費請求をする方法は、元夫婦の協議、養育費請求調停、養育費請求審判の3つあります。

元夫婦の協議

養育費については、まずは元配偶者に連絡して元夫婦間で協議し、養育費の金額や支払方法について話し合います。

養育費の協議では、互いの現在の収入、子供の人数・年齢・就学状況・習いごと、どちらが子供を監護しているか、健康状態、子供以外に扶養している人の有無や人数などを考慮し、相当額を決めます。

元夫婦間で養育費の支払いについて合意ができた場合は、公証役場で公正証書を作成することを検討してください。

合意した養育費が支払われなくなった場合、元夫婦間の口約束や覚書だけでは支払いを強制できませんが、公正証書を作成していれば強制執行の手続きを利用することができます。

養育費請求調停

離婚から時間が経過するほど互いに新しい生活や人間関係に馴染むもので、養育費を請求しても「何をいまさら」と思われて、支払いはおろか協議の場を持つことさえ拒否されることもあります。

元夫婦間の協議で養育費が取り決められない場合は、養育費請求調停を申し立てることになります。

養育費調停の申立て
  • 申立人:子供を養育する父または母
  • 申立先:相手方の住所地を管轄する家庭裁判所、または、当事者が合意で定める管轄の家庭裁判所
  • 必要書類:申立書(原本とコピー各1通)、子供の戸籍謄本、収入に関する資料(源泉徴収票、確定申告書のコピーなど)
  • 費用:収入印紙(子供1人につき1200円分)、郵便切手(申立先の家庭裁判所が指定した額)

養育費請求調停では、調停委員会を交えて養育費の金額や支払方法について協議します。

養育費の金額については、申立人・相手方の収入と双方が監護する子供の数を養育費算定表に当てはめて目安となる養育費を算定し、その金額に基づいて調整が図られます。

調停で合意ができると調停調書が作成されて調停が成立し、その後、合意内容が守られない場合は履行勧告で履行を促したり、強制執行で強制的に取り立てたりできるようになります。

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養育費請求審判

養育費請求は別表第2事件であり、調停が不成立で終了した場合は自動的に審判へ移行します。

養育費請求審判では、裁判官が、申立人と相手方の主張やそれらを裏づける資料に基づいて、養育費の金額などを判断します。

なお、調停を経ず審判を申し立てることも認められていますが、通常は、家庭裁判所が職権で調停に付すため、まずは調停で話し合うことになります。

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【参考】

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家事事件(離婚、遺産分割、成年後見など)を専門に取り扱って12年の経験を踏まえ、「離婚ハンドブック」では、離婚に関する制度や手続きについて行政・司法機関よりも詳しく分かりやすく解説しています。
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サイト上では詳細なプロフィールは明かしておらず、仕事の依頼も受けていません。

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