協議離婚無効確認調停とは?離婚届を無効化?離婚無効の訴えの前哨戦?

協議離婚無効確認調停

婚姻相手に離婚届を勝手に提出された場合、夫婦間に離婚の合意がなくても離婚は成立します。

しかし、離婚届が提出された時点で夫婦の一方または両方に離婚意思がない場合、その離婚は効力がない無効な離婚です。

無効な離婚については、協議離婚無効確認調停を申し立てて離婚の無効原因を主張・証明することにより、無効にできることがあります。

協議離婚の成立と離婚の有効・無効

協議離婚は、市区町村役場に提出した離婚届が受理されることで成立します。

夫婦間に離婚することの合意がなくても、離婚届に不備がなければ市区町村役場に受理されて離婚が成立するのです。

戸籍の身分事項欄には離婚した事実が記載され、婚姻時に氏を改めた(婚姻相手の戸籍に入った)人は原則として旧姓に戻ります(婚姻前の戸籍に戻ります。)。

しかし、夫婦の離婚意思がない離婚は無効です。

離婚が無効な状態とは、離婚の無効原因を主張・証明すれば、離婚が無効になる可能性がある状態のことです。

協議離婚の成立と離婚の有効・無効をまとめると、以下のとおりです。

形式的要件
実質的要件
離婚の成立成立成立不成立―――
有効・無効有効無効――――――

※形式的要件:離婚届が市区町村役場に受理されること

※実質的要件:離婚届を提出する時点で、夫婦間に離婚することの合意があること

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協議離婚無効確認調停(特殊調停、合意に相当する審判)の申立て

離婚届が受理されて成立した離婚を無効にするには、家庭裁判所に協議離婚無効確認調停(合意に相当する審判)を申し立てる必要があります。

離婚届を受理するのは市区町村役場ですが、離婚の無効を求めるには家庭裁判所の手続を利用する必要があるのです。

離婚届を無効化する手続きか

協議離婚無効確認調停は、離婚届が市区町村役場に受理されて成立した離婚を無効にする手続です。

離婚届を無効化するのではなく、成立した離婚が無効にするのです。

離婚届を無効化(受理しなくする)手続としては離婚届不受理申出があり、協議離婚無効確認調停とは別の手続きです。

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申立権者(申立てができる人)

協議離婚をした元夫または元妻です。

また、協議離婚をした元夫婦の親族など、「離婚無効について直接確認の利益を有する第三者」も申し立てることができます。

第三者が協議離婚無効確認調停を申し立てるには、「確認の利益を有する」の要件を満たす必要があります。

つまり、元夫婦が協議離婚した現状によって権利や法的地位が脅かされた状況に置かれ、協議離婚の無効が確認されることでそうした状態が解消する(確認の利益がある)第三者は、申立権者になることができるのです。

申立先(管轄の家庭裁判所)

相手方(元婚姻相手)の住所地の家庭裁判所、または、元夫婦が合意で定める家庭裁判所です。

相手方と同居している場合は自分の住所地の家庭裁判所、別居している場合は、たとえ遠方であっても相手方が住んでいる地域を管轄する家庭裁判所に申し立てなければなりません。

家事事件手続法第245条第1項は、家事調停事件の合意管轄を規定しています。

家事調停事件は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所の管轄に属する。

(家事事件手続法第245条第1項)

合意管轄の家庭裁判所に調停を申し立てる場合は、申立書などの必要書類と一緒に管轄合意書を提出します。

管轄合意書の記載事項

管轄合意書は、A4用紙に以下の事項を記載します。

  • 書類の名称(管轄合意書)
  • 提出先の家庭裁判所名
  • 書類の作成年月日
  • 申立人と相手方の住所と氏名・押印
  • 管轄に合意した旨の文章

管轄に合意した旨の文章は、以下のように記載します。

  • 「上記当事者間の貴庁平成○年(家イ)第◯号調停申立事件は、家庭裁判所◯支部の管轄に属する事件ですが、当事者双方合意の上、貴庁を管轄裁判所と定めたので、届け出ます。」

文意が同じであれば、末尾などが違っていても問題ありません。

自庁処理の上申

相手方と管轄の合意ができなかったものの、事情があり自分の住所地を管轄する家庭裁判所で調停をしたい場合、自庁処理の上申書を提出します。

自庁処理の上申書の提出先は、自分の住所地を管轄する家庭裁判所です。

申立書など必要書類と一緒に提出します。

自庁処理の上申書に記載する必要がある事項は、以下のとおりです。

  • 事件の表示(事件番号、事件名、申立人と相手方の氏名)
  • 書類の名称(自庁処理上申書)
  • 書類の作成年月日
  • 上申先の家庭裁判所名
  • 上申の趣旨
  • 上申の理由
  • 申立人の住所と署名押印

上申の趣旨と上申の理由の記載例は、以下のとおりです。

上申の趣旨
  • 上記事件の管轄は家庭裁判所◯支部ですが、下記の理由により、貴庁で処理していただきたく、上申します。
上申の理由
  • 申立人は生活保護を受給しており、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所までの交通費を支出することが困難ですが、相手方は十分な収入があります。
  • 申立人は、0歳の乳児を監護養育しており、預け先となる親族や施設などもないことから、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所まで出頭することは困難です。

A4用紙に必要事項が記載されていれば、様式や書式は問われません。

なお、裁判所ウェブサイトに書式を掲載している家庭裁判所もあるため、記載例を入手したい場合は確認してください。

自庁処理が認められた場合、自分の住所地を管轄する家庭裁判所で調停をすることができます。

一方で、自庁処理が認められなかった場合、調停事件が本来の管轄の家庭裁判所(相手方の住所地を管轄する家庭裁判所)に移送され、そこで調停期日が指定されます。

協議離婚無効確認調停の費用

  • 収入印紙:1,200円分
  • 郵便切手:数百円分

郵便切手の金額と枚数は、各家庭裁判所が個別に設定しているため、申立先の家庭裁判所に事前確認してください。

いずれも郵便局で購入して申立て時に提出します。

大都市の家庭裁判所の中には、所内の売店で収入印紙や郵便切手を販売しているところもありますが、多くの本庁や支部・出張所では販売していません。

したがって、郵便局で購入するのが確実です。

協議離婚無効確認調停の必要書類

  • 申立書:原本とコピー各1通
  • 申立事情説明書:原本とコピー各1通
  • 進行に関する照会書:1通
  • 申立人の戸籍謄本(全部事項証明書):1通
  • 相手方の戸籍謄本(全部事項証明書):1通
  • 離婚届の記載事項証明書:1通
  • 利害関係を証する資料:利害関係人(第三者)からの申立ての場合のみ(戸籍謄本など)

その他、追加で提出を求められることがあります。

協議離婚無効確認調停の申立書の書き方

申立書の入手方法と書き方について見ていきましょう。

申立書の入手方法

申立書は、申し立てる家庭裁判所の調停担当窓口または手続案内で交付してもらうか、裁判所ウェブサイトで書式をダウンロードして入手します。

裁判所ウェブサイトに掲載されている記載例を参考にすれば、時間をかけずに作成することができます。

ただし、申立書のコピーが相手方に送付されるため、相手方が読んで反論してくることを念頭に置いて作成しなければなりません。

以下、申立書の書き方について確認しておきましょう。

事件の種類と事件名

申立書上部には事件の種類(調停と審判をチェックする欄)と事件名を記入する欄(カッコ欄)があります。

事件の種類は調停にチェックを入れ、事件名には「協議離婚無効確認」と書きます。

家庭裁判所の調停窓口や手続案内で申立書を交付してもらった場合、事件の種類と事件名が印字されているため、記入は不要です。

家庭裁判所名と申立書の作成年月日

申し立てる家庭裁判所名と、申立書を作成した年月日を記入します。

家庭裁判所は、全国に本庁が50ヶ所、支部が203ヶ所、出張所が77ヶ所あります。

申立先が支部または出張所の場合、家庭裁判所と印字された下に支部名や出張署名を書きます。

申立先(原則として相手方の住所地の家庭裁判所)が分からない場合、裁判所ウェブサイトの管轄区域表で確認してください。

【記載例】

  • 福岡家庭裁判所
  • 福岡家庭裁判所久留米支部

記入するのは赤字部分のみです。

添付書類

申立て時に添付する書類と通数を記入します。

通常は、申立人と相手方の戸籍謄本と離婚届の記載事項証明書を記入しますが、他に提出する書類があれば書類の名称を書きます。

家庭裁判所の調停窓口や手続案内で交付された申立書には添付書類名が印字されていることがあり、その場合は添付する書類にチェックを入れ、通数を書きます。

なお、申立事情説明書や進行に関する照会書など裁判所の書式を使用して作成する書面については、添付書類欄に記載する必要はありません。

【記載例】

  • 申立人の戸籍謄本(全部事項証明書)1通

申立人の記名押印

申立人の氏名を書き、押印します。

押印は認印でかまいませんが、シャチハタ(朱肉を必要としないもの)は使用できません。

申立人

本籍(外国籍の場合は国籍)、住所(電話番号)、連絡先、氏名(フリガナ)、生年月日、年齢を記入します。

本籍や住所は、添付する戸籍謄本などの記載どおり書かなくてはなりません。

例えば、「丁目」、「番地」、「号」などは省略しがちですが、戸籍どおり記載してください。

実家に住んでいる場合は実家の住所を記入し、住所欄の右下の(○○方)欄に父母の姓を書きます。

また、相手方に住所を知られたくない場合も、申立書には実家の住所を記載します。

その場合、連絡先等の届出書に実際の住所や連絡先を記載し、同書面を非開示にすることを希望した非開示の希望に関する申出書と一緒に提出します。

ただし、非開示が認められるか否かは家庭裁判所の判断となるため、非開示が認められない可能性があることも念頭に置いておく必要があります。

相手方

申立人欄と同じく、戸籍謄本などの記載のとおり、本籍(外国籍の場合は国籍)、住所(電話番号)、連絡先、氏名(フリガナ)、生年月日、年齢を書きます。

申立てが受理された後、相手方に申立書などのコピーや進行に関する照会書が郵送されるため、相手方の住所は必ず書かなければなりません。

つまり、相手方の住所が不明な場合、調べてから申立てをすることになります。

申立ての趣旨

「申立人と相手方との協議離婚は無効であることを確認するとの調停を求めます。」と記載します。

同じ意味のことが書かれていれば、一言一句同じにする必要はありません。

「確認」を「認める」や「判断する」、「調停」を「訴訟」と誤記するケースが散見されます。

しかし、協議離婚無効「確認」調停であり、家庭裁判所が何かを認めたり判断したりする事件ではなく、裁判をするわけでもないため、修正を求められます。

申立ての理由

申立ての理由欄に必ず記載すべきなのは、離婚の四肢がないのに離婚届を勝手に提出されて無効な離婚が成立したことと、離婚する意思がないこと、離婚の無効確認を求めることです。

もう少し具体的に書くとすれば、以下の内容を簡潔に書いてください。

  1. 申立人と相手方の婚姻年月日
  2. 子どもの有無
  3. 相手方が離婚を希望し、申立人は離婚したくなかったこと(理由も踏まえて)
  4. 離婚届が勝手に提出されたことを知った年月日とその経緯
  5. 離婚する意思がないこと
  6. 離婚の無効確認を求めること
  7. 申立人と相手方が婚姻した事実とその日付
  8. 離婚協議に合意していなかった、離婚協議は無かった、合意したが後で翻したなど、離婚を望んでいなかったこと
  9. 離婚届が無断で出された日付と離婚を知った経緯
  10. 申立人に離婚の意思がないこと

書ききれない場合は、申立ての理由欄の右下に「別紙に続く」と書き、別途用意したA4用紙に続きを書きます。

ただし、申立書には大まかな経緯を記載すれば足りるため、できるだけ申立書に収まる量を心がけましょう。

あまりに長くなると、事前に裁判官や調停委員が読んでくれないことがあります。

特に、相手方の誹謗中傷、申立人の心情、家庭裁判所や調停委員に申立人の正当性を認めてほしいなど、申立てに不要な内容が縷々記載されていると、読み飛ばされる可能性が高まります。

協議離婚無効確認調停の流れ

申立てが受理された後の流れを確認していきます。

調停期日の通知

申立てが受理されると、家庭裁判所が、担当する調停委員会を決定した上で、申立ての受理から約1ヶ月後に調停期日を指定します。

調停期日は、申立人と相手方に調停期日通知書を郵送する方法により通知されます。

調停期日通知書が届くのは、申立てから1~2週間後です。

手続の公平性を担保するため、相手方宛の封書には申立書などのコピーと進行に関する照会書も同封されており、相手方は内容を確認して進行に関する回答書を返送します。

調停期日の流れ

調停期日では、調停委員会が調停室に申立人と相手方を交互に呼び入れ、申立ての事情やそれに対する反論を聴取し、必要に応じて資料提出を促すなどしながら、調停内で合意できるよう助言やアドバイスをします。

申立人と相手方が離婚が無効であることについて合意し、申立ての原因となった事実にも争いがない場合、家庭裁判所は、必要な事実の調査を実施し、担当調停委員の意見を聴取して、調停における合意が正当であると判断すれば、合意に相当する審判をします。

申立人が離婚無効を主張することをあきらめた場合、調停取下げによって終了します。

一方で、以下の場合には調停が不成立で終了します。

  • 申立人と相手方の合意ができなかった
  • 相手方が不出頭を続けた
  • 申立ての原因となる事実に争いがある
  • 事実の調査の結果、家庭裁判所が申立人と相手方の合意を正当でないと判断した

調停が不成立で終了した後に離婚無効を求める場合、別途、協議離婚無効確認訴訟を提起する必要があります。

協議離婚無効確認調停は離婚無効の訴えの前哨戦か

協議離婚無効確認調停に限らず、調停手続を訴訟の前哨戦のように考える人がいます。

確かに、一般調停や特殊調停が不成立になった場合は訴訟で紛争解決を図ることになりますし、紛争の程度によっては最初から訴訟見込みで手続を勧めざるを得ないケースもあるでしょう。

しかし調停は、それ自体が優れた紛争解決のための制度であり、離婚後に紛争の火種を残しにくいという意味では、訴訟よりもはるかに有効です。

したがって、当事者間で話し合いの余地がなく、訴訟によるしか紛争解決は望めないという極めて例外的なケースを除き、調停を訴訟の前哨戦だと捉えるのではなく、まずは調停での解決を目指すべきです。

離婚無効が確定した後の戸籍訂正

協議離婚無効確認事件で合意に相当する審判が確定した後は、市区町村役場で戸籍訂正を行う必要があります。

審判確定後は、家事事件手続規則第134条の規定に基づいて、裁判所書記官が、市区町村役場の戸籍担当課に対して協議離婚無効確認事件の審判が確定したことを通知します。

しかし、通知されただけでは戸籍上の離婚した事実は訂正されません。

申立人は、戸籍法第116条第1項の規定に基づき、審判確定から1ヶ月以内に、市区町村役場に戸籍訂正の申請をしなければなりません。

戸籍訂正の方法

戸籍訂正の申請には、協議離婚無効確認事件の審判が確定したことを証明する「確定証明書」を添付する必要があります。

そのため、事前に審判をした家庭裁判所に確定証明書の交付申請をして証明書を入手した上で、戸籍訂正を申請します。

確定証明書の発行には1枚につき150円の手数料がかかります。

戸籍訂正の申請者

協議離婚無効確認調停の申立人です。

戸籍訂正の申請先

申請者の本籍地または所在地の市区町村役場です。

戸籍訂正の必要書類

  • 戸籍の訂正申請書:市区町村役場に備え置き
  • 戸籍謄本(全部事項証明書):1通(本籍地に申請する場合は不要)
  • 審判の確定証明書:1通
  • 申請者の印鑑:認印で可

なお、費用はかかりません。

離婚届を勝手に提出した元夫または元妻が再婚していた場合

協議離婚無効確認は、元夫婦の離婚が無効であったことを確認し、戸籍の記載を回復させる手続です。

離婚届を勝手に提出して離婚を成立させた元夫または元妻が再婚している場合、離婚無効の審判が確定して戸籍訂正の申請が受理されると、戸籍上、元夫または元妻は申立人と再婚相手の2人と婚姻した状態(重婚)となります。

日本の民法では重婚が認められておらず、元夫または元妻が再婚している場合、その再婚相手を相手方として婚姻取消しの調停を申し立てる必要があります。

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離婚ハンドブック編集部

投稿者プロフィール

家事事件(離婚、遺産分割、成年後見など)を専門に取り扱って11年になります。
これまでの実務経験から、当事者自身が離婚に関する知識を得て、自分で考えて判断することが「後悔の少ない離婚」につながるという考えており、その考えに基づいて「離婚ハンドブック」を運営しています。
サイト上では詳細なプロフィールは明かしておらず、仕事の依頼も受けていません。

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