子どもの障害を理由に離婚できる?離婚前に検討したいことは?

子どもの障害 離婚

子どもに障害がある場合、互いに支え合いながら子どもの成長を見守る夫婦もいれば、子どもの障害をめぐって関係が悪化した末に離婚する夫婦もいます。

子どもの障害が家庭生活に及ぼす影響

子どもは、様々な障害を持って生まれることがありますし、生まれた後に病気や怪我の後遺症で障害が残ることもあります。

子どもが抱える障害には、発達障害(自閉症スペクトラム障害、学習障害、注意欠陥多動性障害など)、知的障害、ダウン症、身体障害、精神障害など様々なものがあります。

「互いに協力して助け合いながら障害がある子どもを育てる」ことが理想ですが、日常生活の制限、養育方針の違い、夫婦間の足並みの不揃いさ、育児分担の不平等、監護補助者の不在、周囲からの偏見や好奇の目など様々な要因によりストレスが蓄積し、夫婦関係が悪化するというのは珍しいことではありません。

日常生活の制限

一般的に、障害のある子どもは、障害のない子どもと比較してより手がかかります。

例えば、足が不自由な子どもの場合は、学校への送迎だけでなく家の中でも移動時のサポートが必要ですし、発達障害がある子どもの場合、障害の程度にはよりますが、学校とは別に療育を受けさせることになります。

障害の影響で集団行動が難しかったり問題行動を頻発させたりする場合、学童保育に入れず親が面倒を見なければならないことも珍しくありません。

保育園、幼稚園、学校、その他の施設などに預けている間に子どもが問題を起こすと、駆けつけて対応しなければならず、仕事や生活に大きな影響が及ぼします。

障害の程度によっては、父母の一方が仕事を辞めて付きっ切りで監護しなければならないこともあり、世帯収入が減って金銭に関する夫婦喧嘩が増えたり、夫婦間のキャリア形成に著しい差が生じて夫婦の一方が不公平感を抱いたりすることもあります。

いずれにしても、子どもに障害があることが親の生活を制限(就労やキャリア形成も含む)し、場合によっては大きなストレスを与えることになります。

ストレスが募って余裕がなくなると、障害のある子どもにきつく当たったり些細なことで夫婦喧嘩に発展したりして夫婦関係が悪化し、婚姻生活の継続が困難になるおそれがあります。

養育方針の違い

子どもに障害があると、夫と妻の間で養育方針をめぐる対立が起こりやすい傾向があります。

例えば、子どもが学習障害と診断された場合に、妻が「能力に合った教育を受けられる特別支援学級に通わせたい。」と希望するのに対し、夫が「世間体を考えて普通学級に通わせたい。」と希望するということがあり得ます。

身体障害者手帳、精神障害者手帳、療育手帳などの取得をめぐって父母の意見が対立することも珍しくありません。

また、子どもへの関わり方にも夫婦で差が生じます。

例えば、妻が障害のある子どもを献身的に支え、夫にももっと関わってほしいと希望している一方で、夫は「どう関わっても障害がなくなるわけではない。」と諦めて子どもとの接触を避けるというケースがあります。

また、通院の付き添いや家庭でのサポートなども夫婦間で差が出やすく、養育方針の違いをめぐって夫婦喧嘩が頻発し、徐々に関係性が悪化していきます。

障害受容の差

一般的に障害受容という言葉は「障害のある人が自分の障害を受け入れること」という意味で使用されますが、ここでいう障害受容は「親が子どもの障害を受け入れること」という意味で使用しています。

子どもの障害をいつ、どのように、どの程度受け入れることができるかについては、人によって個人差があります。

夫婦間でも当然に差があり、夫婦の一方が子どもの障害を全面的に受け入れて歩調を合わせて暮らす覚悟を決めても、もう一方は自分の子どもが障害児であることを受け入れられず、厳しく当たったり避けたりするというケースは珍しくありません。

一般的には母親の方が子どもの障害を受容しやすいとされており、その理由として、母親が妊娠から出産まで自分のお腹の中で子どもを育むうちに母性が芽生えることが挙げられます。

しかし、性別による差は何ら根拠はなく、その人の生い立ちや価値観、社会的地位などの要因の方が大きいでしょう。

子どもの障害受容について夫婦間に差があると、「なぜありのままの子どもを受け入れられないのか。」、「障害のある子どもをそう簡単に受け入れろと言われても無理がある。」などと対立し、夫婦間の溝が大きくなっていきます。

夫婦間の信頼関係が損なわれる

養育方針の違いや子どもの障害を受容する程度の差は、意識するとしないとに関わらず、普段の言動や態度ににじみ出てきます。

その結果、夫婦が互いに配偶者と自分の考え方や価値観の違いの大きさを痛感し、相手に対する信頼が揺らいでいきます。

これといったキッカケがないまま日常生活の中で徐々に信頼関係が失われ、気づいたときには婚姻関係を維持する意味が見いだせなくなると、夫婦の一方または両方が離婚を切り出したり、関心が家庭外に向いて趣味や娯楽への没頭や浮気に至ったりします。

子どもの障害を理由に離婚できる?

結論から言うと、子どもの障害を理由として離婚することは可能です。

離婚の方法には、協議離婚、調停離婚(審判離婚)、裁判離婚(認諾離婚、和解離婚、判決離婚)がありますが、いずれの方法でも離婚することができます。

子どもの障害を理由として協議離婚する場合

協議離婚は、離婚することと子どもの親権者について夫婦が合意した上で、離婚届を作成して市区町村役場に提出し、受理されることで成立します。

子どもの親権者は必ず定めなければなりませんが、離婚原因は問われません。

したがって、子どもの障害を理由として離婚を請求し、相手が合意すれば離婚することができます。

しかし、障害のある子どもの親権者になりたがらない親は少なからずいますし、親権者になる夫または妻が養育費を多めに請求したり、頻回の面会交流を求めたり(非監護親にも面倒を見させるため)して、合意できないこともあります。

なお、子どもの親権者以外の諸条件(養育費、面会交流、財産分与、慰謝料、年金分割など)は取り決めなくても離婚できますが、離婚後に紛争の火種を残さないためには取り決めておく方が良いでしょう。

また、取り決めた内容について公正証書で離婚協議書を作成しておくと、守られなかった場合に強制執行を利用することができます。

子どもの障害を理由として調停離婚する場合

夫婦間の協議で離婚できない場合、離婚調停を申し立てて話し合うことになります。

離婚調停は家庭裁判所の手続きであり、調停委員会という第三者を交えての話し合いですが、原則として、法律に違反しない範囲であれば夫婦の合意に基づいて様々なことを取り決めることができます。

子どもの障害を理由として離婚を請求した場合も、相手が合意すれば離婚に向けた話し合いを進めることになります。

ただし、子どもの障害が原因で離婚したいと大っぴらに主張すると、調停委員会に「障害のある子どもを見捨てるのか。」などと思われてしまい、再検討を促されることがあります。

子どもの障害が原因だとしても、それによって生じた配偶者への不信感、配偶者の浮気や悪意の遺棄などを強調した方が、調停委員の納得を得やすく、調停進行が円滑になります。

嘘をついてまで調停委員に気を使う必要はありませんが、調停進行を考えると、反感を買うような発言は控えるべきです。

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子どもの障害を理由として裁判離婚する場合

裁判離婚で離婚が認められるには、民法第770条第1項規定の法定離婚事由があることを家庭裁判所に認定させる必要があります。

夫婦の一方は、以下の場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。

  • 配偶者に不貞な行為があったとき。
  • 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
  • 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
  • 配偶者が強度の精神病に罹り、回復の見込みがないとき。
  • その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

(民法第770条第1項)

子どもの障害は不貞行為、悪意の遺棄、配偶者の生死不明、強度の精神病には当てはまらないため、離婚事由としては、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」を主張することになります。

しかし、原則として、その他の事由は夫婦間の問題である必要があるため、子どもに障害があることだけでは離婚事由に当てはまるとは認められません。

そのため、離婚訴訟で離婚を請求する場合は、離婚調停のときと同じく、子どもに障害があることによって生じた浮気や悪意の遺棄、夫婦関係悪化に伴うDVやモラハラなどを前面に出して主張することが重要です。

子どもの障害を理由として慰謝料請求できるか

当然ですが、子どもの障害を理由に慰謝料請求することはできません。

しかし、子どもに障害があることが原因で夫婦関係が悪化し、DVやモラハラ被害を受けた場合、配偶者が浮気や悪意の遺棄に及んだ場合などは、それらを根拠として慰謝料請求が認められます。

いずれの場合も慰謝料請求の根拠となる事情を客観的に証明できる証拠を提出することが求められるため、事前に準備しておかなければなりません。

子どもの障害を理由として離婚する前に

本来、子どもに障害がある場合は、夫婦が協力して子どもを監護養育し、子どもの成長を見守ることが求められます。

子どもの福祉(子どもの利益)の観点からは、養育方針の違いや障害受容の差が大きかったとしても、離婚という選択ではなく、時間をかけて違いや差を埋め、協力体制の構築を目指すことが大切です。

そこで、子どもの障害を理由として離婚を考えたときに、離婚以外の選択肢を選ぶ可能性を探るためにやっておきたいことと相談機関についても触れておきます。

離婚以外の選択肢を選ぶ可能性を探るためにやっておきたいこと

離婚したいと思うまでには様々なエピソードがあったはずですが、「離婚したい」から「離婚する」に変わる前に、以下の内容を試してみてください。

親兄弟や関係機関を頼る

子育て全般に言えることですが、一人または夫婦だけで抱え込み過ぎないことが大切です。

各家族が一般的な家族形態となった現代日本では、子育ては親子を単位とする家族の中で行うものと認識している夫婦が多くなっています。

しかし本来、子どもは次世代を担う社会の資源であり、子育ては親だけでなく親族や地域住民が協力して行うものです。

子育てに疲れたら親きょうだいに頼ったり、子育て支援を行っている期間に相談したりしてください。

特に、子どもに障害がある場合、健常児以上に監護養育が大変な傾向があるため、早め早めに周囲を頼ることが重要です。

親きょうだいに子育ての愚痴をこぼす、仕事が抜けられない日の監護を祖父母に頼む、行政や各種団体が実施している障害者支援制度(放課後デイサービス、保育所の訪問支援、一時預かり、一時入所など)を活用するなど、周りにある資源を最大限に利用することを検討しましょう。

本音をぶつけてみる

養育方針の違いや障害受容の差は、日常生活における言動や態度に現れ、互いに違いや差を感じるうちに不満や不信感が募っていくものです。

つまり、夫婦関係を悪化させる決定的な出来事があるわけではなく、夫婦双方がはっきりと自覚しないまま、日々の積み重ねで夫婦の関係性が少しずつおかしくなっていくことが多いのです。

そのため、配偶者の言動や態度に不満や不信感を抱いたら、間を空けずに夫婦で話し合い、「私はこう思う。」とぶつけてみてください。

考え方や価値観の違いは簡単に埋まるものではありませんが、少なくとも自分の意見が相手に伝わりますし、相手が自分の言動や態度に気づいて改めるきっかけにもなります。

子どもの障害を理解させる

夫婦の一方が子どもの障害を理解できない、または、理解しようとしていない場合、理解できるように働きかけることが大切です。

障害受容が乏しい人は、「障害がある=社会の中で生きにくい」、「自分の子どもに障害がある=世間体が悪い」、「先天的な障害は自分や配偶者のせい」などと子どもの障害をネガティブに捉えていることが多いものです。

しかし、周囲の理解とサポートがあれば、障害があっても十分に社会生活を送ることができますし、社会全体として障害者に対する偏見や差別をなくしていく動きも活発です。

先天的な障害に遺伝が絡んでいることはありますが、親が責任を感じることではありません。

こうしたことは、障害受容が乏しい人が自分で気づくことは難しいため、周囲の人が積極的に説明してあげる必要があります。

また、まずは子どもと関わってみるよう勧めることも、子どもの障害を直視し、親として守り育てる意識が芽生えるきっかけとなり得ます。

子どもの障害を理由として離婚を考えたときの相談機関

相談機関 相談内容
児童相談所 子どもの監護養育に関する相談全般

  • 医師、臨床心理士、ケースワーカーなどから助言や指導を受けることができる
  • 子どもの障害に応じた支援制度を教示してもらえる
  • 子どもが未診断の場合、発達検査・知能検査を受け、関係機関を紹介してもらえる
福祉事務所 子どもの監護養育に関する相談全般

  • 子どもの障害に応じた機関を紹介してもらえる
  • 家庭訪問や子育てサービスの案内を受けることができる
市役所 子どもの監護養育に関する相談全般

  • 子どもの障害に応じた機関を紹介してもらえる
  • 子育て支援サービスの案内を受けることができる
  • 必要に応じて関係機関を紹介してもらえる

なお、離婚意思が固い場合は弁護士への相談も考えられますが、離婚したいと思った時点では弁護士に相談するべきではありません。

弁護士に相談すると、どういう経緯であれ離婚の方向で話が進んでいきやすいからです。

相談するにしても、他の関係機関に相談した後にしておきましょう。

離婚ハンドブック編集部

投稿者プロフィール

家事事件(離婚、遺産分割、成年後見など)を専門に取り扱って11年になります。
これまでの実務経験から、当事者自身が離婚に関する知識を得て、自分で考えて判断することが「後悔の少ない離婚」につながるという考えており、その考えに基づいて「離婚ハンドブック」を運営しています。
サイト上では詳細なプロフィールは明かしておらず、仕事の依頼も受けていません。

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