履行勧告とは?養育費や面会交流は勧告可?手続きは電話?無視すると?

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離婚時には子どもの養育費、面会交流、財産分与、慰謝料などを取り決めますが、離婚後に守られなくなることがあります。

家庭裁判所の調停、審判、裁判で取り決めた内容については、履行勧告という手続を利用することで、家庭裁判所から取り決めを守るよう促してもらうことができます。

履行勧告とは

履行勧告とは、家庭裁判所の調停・審判・裁判などで取り決められた義務を守らない人に対して、家庭裁判所が義務を利用するよう促す(勧告)手続きです。

調停・審判・裁判などで取り決められた義務とは、子どもの養育費、財産分与、慰謝料など金銭の支払いに関する内容だけでなく、離れて暮らす親子の直接・間接の面会交流も含まれます。

履行勧告は、家庭裁判所が調停などのアフターサービスとして行う手続です。

そのため、履行勧告の対象となるのは、調停調書、和解条項、審判の主文、判決の主文に記載された内容に限られています。

例えば、調停の中で子どもの養育費の支払いについて話し合われ、夫婦の合意内容が調停調書に記載されて調停が成立した場合は、調停調書に基づいて履行勧告を利用することができます。

一方で、調停では養育費について夫婦の合意ができず、調停調書に記載されていない場合、履行勧告を利用することはできません。

また、履行「勧告」という名前のとおり、あくまで履行を勧告する手続なので、調停などで取り決めた義務を守らない人(義務者)が履行勧告に応じないときは、履行を強制することはできません。

履行勧告の読み方

履行勧告と書いて「りこうかんこく」と読みます。

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履行勧告の申出の手続き

履行勧告の申出を行う方法について見ていきましょう。

履行勧告の申出人(利用できる人)

調停・審判・裁判などで金銭の支払いなどを受けることが決まった人(権利者)です。

履行勧告の手続では、金銭の支払いなどを行う義務がある人を義務者、金銭の支払いなどを受ける権利がある人を権利者と呼んでいます。

権利者の家族や親族が代わりに申出をすることはできません。

履行勧告の申出先

調停・審判・裁判などを行った家庭裁判所に申出を行います。

履行勧告を行うには調停記録や調停調書などが必要になるため、他の家庭裁判所では手続を行うことができません。

そのため、離婚後に転居したとしても、申出を行うのは調停などをした家庭裁判所で、住んでいる地域の家庭裁判所に申出を行おうとしても受け付けてもらえません。

履行勧告の申出を行う方法(申出書の書き方)

調停・審判・裁判などを行った家庭裁判所の受付窓口へ行き、履行勧告申出を行います。

担当者から履行勧告申出書の記載を求められるので、以下の内容を記載します。

  • 自分の氏名・住所・連絡先
  • 相手の氏名・住所・連絡先
  • 調停などで取り決めた内容と、履行勧告を希望する内容

家庭裁判所によっては、口頭で伝えた内容を担当者が申出書に書き込んでくれるところもあります。

電話による履行勧告

家庭裁判所へ出向くのが難しいときは、電話で履行勧告の申出を行うこともできます。

電話で申出を行うときは、自分と相手の氏名、住所、連絡先、調停などで取り決めた内容、履行勧告を希望する内容を口頭で伝えます。

特に、相手の住所や連絡先を伝え間違えると履行勧告ができないので、必ず復唱して確認してください。

履行勧告の申出にかかる費用

履行勧告の申出に費用はかかりません。

履行勧告の申出に必要な資料等

履行勧告の申出で必ず提出しなければならない資料はありません。

ただし、調停調書、審判書、判決書などのコピーがあると、事件番号や取り決め内容が分かるため手続がスムースに進みます。

また、養育費が振り込まれる口座の通帳のコピーなど、取り決め内容が未履行であることが分かる資料があれば、提出しておきましょう。

履行勧告の申出ができる期間

履行勧告の申出ができるのは、調停・審判・裁判などで定められた期間内です。

例えば、養育費の支払い期間について調停調書で「子どもが20歳に達する年の3月まで」を取り決めていた場合、その期間を過ぎた後の養育費については、履行勧告の申出を行うことはできません。

調停調書に定められた内容ではないからです。

上の例で調停調書の取り決め以降の養育費を求めたいときは、改めて家庭裁判所に養育費調停の申立てを行わなくてはなりません。

履行勧告の手続きを利用する条件

履行勧告は、家庭裁判所の調停・審判・裁判などで取り決め、調停調書、審判書、判決書などに記載された義務を守るよう促す手続です。

そのため、履行勧告の手続きを利用するには、家庭裁判所で作成された調停調書、審判書、判決書などが必要です。

協議離婚の前に公証役場で作成した離婚協議書(公正証書)、夫婦の口約束を書き記した書面など、家庭裁判所以外で作成された書面では、履行勧告の手続きは利用できません。

また、家庭裁判所で取り決めた内容が守られていない状態にある必要があります。

例えば、「離婚時に取り決めた内容が守られなくなるはずだから、あらかじめ履行勧告を申し出ておきたい。」という申出は認められていません。

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履行勧告を希望する内容の伝え方

履行勧告は、調停調書、審判書、判決書などの内容に基づいて行われるため、申出についてもそれらの記載に基づいて行う必要があります。

例えば、「調停調書上、「子どもの養育費について、毎月、月末までに3万円支払う。」と記載されているが、先月分の支払いがなかった。先月分の養育費を支払ってもらいたい。」と伝えます。

このケースの場合、申出をした時点で、申出をした月の養育費も支払われていない可能性がありますが、調停調書上の支払い期限が月末なので、履行勧告の申出ができるのは先月分のみです。

履行勧告の担当者

履行勧告を担当するのは、家庭裁判所の職員です。

受付窓口で申出を受けつけるのは裁判所事務菅や裁判所書記官、実際の履行勧告を担当するのは裁判所書記官や家庭裁判所調査官です。

金銭の支払いに関する履行勧告は裁判所書記官、面会交流など子どもに関する履行勧告は家庭裁判所調査官が行うことが多いですが、各家庭裁判所によって異なります。

裁判官や調停委員が履行勧告を担当することはなく、また、調停などを担当した職員が履行勧告をすることもあまりありません。

履行勧告の方法は書面が原則

原則、履行勧告は、家庭裁判所から義務者に対して、履行勧告書を送付する方法により行われます。

履行勧告書には、権利者が履行勧告を希望する内容、履行期限、家庭裁判所の担当者名と連絡先が記載されています。

また、履行勧告に対する意見などを記載する照会書が同封されています。

履行勧告書を受け取った義務者は、履行勧告書記載の内容を期限までに履行する、履行できない理由を照会書または電話で家庭裁判所の担当者に伝えることになります。

電話や面接による履行勧告

家庭裁判所の職員が電話や面接により、履行勧告を行うこともあります。

ただし、義務者が電話連絡した、義務者が家庭裁判所へ出頭したなど、例外的な場合に限られます。

履行勧告の終了

履行勧告書を受け取った義務者が義務を履行した場合、履行勧告は終了します。

権利者は、履行勧告を希望した内容が履行されたときは、家庭裁判所に報告して勧告を終了してよいと伝える必要があります。

義務者が義務を履行しない、履行しないことを家庭裁判所に申し出たなどの場合も、家庭裁判所の判断で履行勧告が終了します。

履行勧告の限界

履行勧告は、調停などで取り決めた義務の履行を促すために手軽に利用できる手続きですが、限界もあります。

義務の履行を強制することはできない(無視や拒否をされると履行できない)

履行勧告は、調停などで取り決めた義務を守らない相手に対して、履行するように促す勧告する手続きです。

義務者が、履行勧告を無視して義務を履行しない場合、履行勧告の手続きでは強制的に義務を履行させることはできず、不履行のまま手続が終了することになります。

履行勧告をどの段階で終了するかについては家庭裁判所が判断するため、権利者が履行勧告の続行を希望しても、家庭裁判所が終了すると判断すれば、手続は終了します。

義務者の住所や連絡先を伝える必要がある

履行勧告書を送付するための義務者の住所や、電話連絡するための義務者の電話番号などは、権利者が申出時に家庭裁判所へ伝えなくてはなりません。

家庭裁判所が調べてくれることはないため、義務者の住所や連絡先が分からない場合は、自力で調べてから申出を行うよう促されます。

原則、義務者の職場などに勧告することはできない

原則、履行勧告書を送付するのは義務者の住所で、義務者の勤務先などに送付することはできません。

勤務先などが事情を知っていて、義務者が履行勧告書の送付を了解していたとしても、送付される取扱いは稀です。

履行勧告では義務が履行されない場合

義務者が、履行勧告を無視したり、義務の履行を拒否したりした場合、履行勧告は終了します。

履行勧告で義務を履行しなかった義務者に対しては、強制執行という手続きによって、義務者に義務の履行を強制することができます。

ただし、強制執行の手続きをするには時間、手間、費用がかかります。

なお、履行命令という方法もありますが、効果が履行勧告と大差ない一方で、手続きに若干の手間と費用がかかるため、利用されるケースは限られています。

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離婚ハンドブック編集部

投稿者プロフィール

家事事件(離婚、遺産分割、成年後見など)を専門に取り扱って11年になります。
これまでの実務経験から、当事者自身が離婚に関する知識を得て、自分で考えて判断することが「後悔の少ない離婚」につながるという考えており、その考えに基づいて「離婚ハンドブック」を運営しています。
サイト上では詳細なプロフィールは明かしておらず、仕事の依頼も受けていません。

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